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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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シーカーの重要性

ああ、書き溜めが・・・・・

無くなっていく・・・・どうすれば・・・・

2日目の戦闘訓練 1セット目が終わり、メンバー全員が岩場の外に運ばれてくる。

キサラギ以外の殆どが気絶しているが、目を覚まし自力で集合場所まで移動した者たちもいた。


タカヤ・ユキ・レオナの3人であり、戻ってくる途中、今回の戦闘訓練の反省点を話し合っている。


「ごめん・・・私が油断したから・・・」

しょんぼりしながら歩くレオナをユキとタカヤが励ましながら共に歩いていく。

「そんな事ないですよ。レオナさんがキル判定受けたら俺達直ぐに全滅させられたんですから」

「そうですよ。キサラギさんが生き残ったのは間違いなくレオナさんのお陰です」

2人はそういうが、レオナはこの訓練に参加している中で最もランクが高い。いくら奮闘したとはいえ、最初に撃破されたのは心に来るものがあった。

「まさかあの体勢からこっちに向かって撃って来るとは思わなかったな・・・」

正規の射撃体勢では無く、しかも空中でA60の反動をモノともせずに撃ち放って来るのは脅威以外の何物でもない。

それに、視覚外のこちらの動きを正確に把握しており、放った弾丸まで確実に避けてくる。

レオナはシドを倒すイメージが全く湧かなかった。

「まあ、シドさんだからな。何回あり得ないって思わされたことか・・・」

「何があっても可笑しくないって思わないと、逃げることもできないからね~。でも、今回は一人逃げ切れたよ。この調子で頑張ろう」

ユキは腕を振り上げて、気合を入れる。


3人が集合場所に戻って来ると、他の全員を運んできたシドがすでに待っていた。

「なんで私たちより速いのかな?」

「相変わらず意味不明だよなこの人」

「深く突っ込まない方が良いよ」

小声で話す3人にシドが声を掛ける。

「これで全員だな。回復薬を飲んだら10分休憩だ。今回は一人逃げられたから次は少し難易度を上げていくぞ」

そういい、シドは車の方へ歩いていく。



暫くすると、気絶組が起き上がり始め、全員で作戦会議を行う。

「さっきの作戦を基本に、迎撃メンバーと逃走メンバーを入れ替えようと思うんだけどどうかな?」

「良いんじゃない?迎撃メンバーのリーダーになった人が迎撃場所と逃走ルートを選択するのはどう?」

「そうだね。それなら皆満遍なく訓練出来ると思うよ」

ユキ・アリア・レオナの3人が主になって次のセットでの行動方法を考えていく。

他の5人は次のセットで振り分けられる役の事で話し合っていた。

「俺は迎撃役だけど、シド君を抑えられるイメージが湧かないんだよな・・・どうしたらいい?」

「ん~・・・まだ2日目だしな。その内なんとなくこうしたら良いってのが分かって来るんだよ。それを自分で見つける訓練でもあるかな?」

「・・・・俺はどうしたらいいんだ?お前達みたいにモンスターと戦った事は無いし、完全に足を引っ張るだけだと思うんだが・・・」

「シドさんを良く見て狙って撃つ。これしかねーよ。大丈夫、毎回ズタボロにされてたら段々と分かって来るから」

「わかるって何がだよ」

「銃の狙い方とか、移動してる相手に当てる方法とかだよ。これは人によって感覚が違うみたいだから俺からはアドバイスは難しいな」

「とにかく集中するしかないね。気を抜くと一瞬で姿を眩ませるか倒されてるかのどちらだから」

キサラギは、タカヤとラインハルトの言葉に深い溜息を吐く。


「ミリー、さっきの戦闘はどんな感じだったの?」

「一旦狙われたらホントに最後まで追い掛け回されるよ。他のメンバーの攻撃も全部避けられるし・・・・でも、その攻撃に対処するスキをうまく利用して逃げ回ったら大丈夫なんじゃないかな?」

「なるほどね・・・援護射撃を利用して逃げるって感じにすればいい訳か」

「でも、稀に誘いの時もあるから気を付けたほうがいいな」

「誘い?」

「そう、コッチに気を向ける余裕ありませんって顔して、私が移動しようとすると撃ち込んでくるのよ。あの時足を滑らせてなかったらその一撃でダウンしてたね」

「・・・・そんなの見分けつく?」

「私はなんとなく分かって来たよ?なんていうの?こう・・・空気感ってヤツ?」

「・・・・この感覚派め・・・・」


相談しているとあっという間に時間が過ぎ、2セット目を行うためシドがこちらに向かってくる。


「んじゃ~2セット目な。条件はさっきと同じだ」

その宣言を聞き、メンバーは岩場の中に駆け込んでいく。

今回のリーダーはアズミが行うようだったが、情報収集機は持っているものの、ユキやレオナの様に使いこなしている訳ではない。精々がモンスターの早期発見に役立つ索敵装置として使った経験しかない為、どこに逃げ込めばいいのか良く分からず、とにかくシドから距離を取る為に走って行く。


5分の時間が過ぎ、シドが動き出す。

その情報はレオナが提供し、アズミは、この場での迎撃を決めた。

見通しは良くなく、遮蔽物の多い場所なら身を隠しながら戦うのにいいと判断したようだ。

「ここで散開して!」

アズミの号令で、迎撃組はこの場に留まりシドを待ち構え、逃走組はシドから逃げ切れるようにと全力で遠ざかっていく。

「アズミ、なんでここで戦う事にしたの?」

アリアがそうアズミに聞いてくる。

「私はユキみたいに戦いやすい場所を探すスキルなんてないわ。だから、少しでも隠れやすそうな場所で待ち構えて、シーカー組が上手く逃げ切ってくれる事を最優先にしたのよ」

自身の能力を考慮した苦肉の策だった様だ。

「なるほど、俺達は全滅確定の死に要員って訳だ」

キサラギがそういい、皮肉そうに笑う。

「まあ妥当かな。シーカーがチームに一人もいないって考えれば仕方ないのかもしれないね」

4人はこういう場合の戦闘で、情報担当のシーカーの重要性を再認識した。

周囲の地理情報や、モンスター・襲撃者の位置情報等、戦闘に不可欠な情報が今は手に入らない。

アズミが所持している情報収集機は最低限の性能しかなく、近接戦闘用と言っても過言ではない性能だった。

シドの場合、近接戦闘距離に入ってくれば、猶予はほんの数秒しか与えてくれないだろう。

それを、いつ来るか、どこから来るか分からない状況で警戒し続けるのは非常に精神を消耗させた。


「来た!」

アズミが声を上げ、全員が銃を握りしめて警戒するが、何処から来るのか分からない。

消音機で減少され、威力の割に小さい発砲音が聞こえてくるが、遮蔽物が多くシドの姿を誰も捉えることが出来ない。

(場所を間違えた!!)

アズミは後悔するが今更どうしようもない。

情報収集機でシドの姿を探すが、結局発見できずに弾丸を撃ち込まれ意識を手放してしまう。


2セット目は早々に迎撃チームが全滅し、時間的猶予が少なく遠くに逃げることが出来なかった逃走チームも敢え無く全滅する。


集合場所で目を覚まし、回復薬を飲み込むとまた全員で話し合いを始める。


「ごめんなさい、私の選択ミスだったわ」

開口一番にアズミが謝罪する。

「大丈夫ですよ。次に生かしていきましょう」

ユキはそういい、アズミを励ます。

「小柄でスピードのある相手に遮蔽物の多い場所で戦うのは危険だな。最後まで見つけられなかった」

「そうだな、俺も何が何だか分からないうちに撃たれて気づいたらここに居たって感じだった」

「遮蔽物が無さ過ぎても駄目ね。弾丸を避けながら撃って来る相手に広場で戦うなんて自殺行為だし」

先程の反省を述べるラインハルト・キサラギ・アリア。

「それを踏まえて3セット目の事を考えようか。メンバーはどうする?」

レオナがそういい、ラインハルトが発言する。

「出来ればどちらのチームにもシーカーが要ると感じた。周囲の遮蔽物は襲撃者の動向が全く分からないとなると目隠しされているのと変わらないと思う」

「そうね、私の情報収集機じゃ全く意味が無かったわ」

アズミは自分の機器に触れながらそういう。

「なら私とユキは別れてチームを組みましょう」


そう話が決まり、組み分けを複数回変えながら午後の訓練を終える。


ほぼ丸一日走り回った事で全身に大きな疲労感がのしかかる。回復薬で誤魔化しているが、これ以上動くのは無理だと全員が考えるほどの疲労が溜まっている。


「全員乗りましたか?それでは宿まで帰ってシッカリ休んでくださいね」

車に乗り込んだ全員に向かってライトがそういい、車を降りようとする。

「ライト君は帰らないの?」

帰るつもりが無さそうなライトにレオナが質問する。

「ああ、ボクはシドさんとちょっと訓練して帰ります。夕飯には間に合うように帰りますんで。それじゃ」

ライトはそういうと、車から降りていった。

「がんばれよ~」「いってらっしゃーい」

タカヤとユキだけは普通に送り出す。

「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

ワーカー組他の5人は誰もが絶句し言葉が出てこなかった。

ちなみにワーカー志望組・スラム組のメンバーは疲れ切っており、気絶しているか席に座った直後に夢の住人と化している。

「・・・・あの二人 人間?」

アリアが呟き、皆が同意した。

「俺達はまだまだ所か本当にひよっこなんだな・・・」

ラインハルトも苦笑いが止まらない様だ。ワーカー歴としてはラインハルトの方が長いが、実力的には足元にも及ばない。

アズミとミリーは呆然としており、タカヤとユキが平然としている事にも驚きを隠せない様だった。

「・・・・あの2人の認識をさらに上げる必要があるわね・・・」

レオナはこの事を相棒にも共有しようと考える。

一昨日にこの訓練へ参加要請が来たことはヤシロにメッセージで伝えた。

返信がないと言う事はまだ見てもいないのだろう。

これは、出来るだけこの訓練に参加して、ヤシロにも負けない戦闘能力を得てやろうかと密かに企むレオナであった。



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