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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
78/217

ライトのシールドスーツ シドのバイク

日々数々の誤字報告を頂き、誠にありがとうございます。

一応読み返してチェックしてるのですが・・・・


これからもよろしくお願いします

前回の遺跡探索から数日が経ち、シドとライトは、拠点のソファーに寝そべり、それぞれ企業から送られてきたカタログを眺めていた。

シドの方は尾佐舟刀工から送られてきたカタログ・・・というより、どの様な形状が良いかなどのスペックシートの様な物をアレコレ考えながら弄っている最中である。

ライトの方はというと、先日遺物をワーカーオフィスに納品した際にキクチにランクの事を相談したのだった。

すると、キクチの方もランク制限の事をすっかり忘れていたらしく、漸く予定が開いた今日の午後から、キクチが保証人として霧生プロテクターの販売所に同行することになっている。

その時に悩む必要が無いように、購入品をある程度絞る為、カタログを眺めている最中だった。

「そういえばシドさん」

「ん~?」

「車に取り付ける銃ってどうするの?」

「あ~あれな~・・・・考えたんだけどさ、ガンスさんに丸投げで良くね?」

「うわ~・・・適当・・」

<無責任にも程がありませんか?>

「いやだってさ・・・自分で手に持つならちゃんと選ぶのは分かるぞ?でも車に取り付けて勝手に撃つならある程度の攻撃力があったらそれで良くないか?」

「・・・・・まあ」<言いたいことは分かります>

「それに、車の銃ってライトが操作するんだろ?お前が好きな銃でいいんじゃないか?

「ん~~・・・イデア、どう思う?」

<大型の複合銃を4つでよいのでは?連射・大口径・榴弾 この3様に対応できる複合銃を取り付ければ、取りあえずの攻撃力は確保できます>

「なるほどね~・・・じゃーそれでいこうかな」

「お前も適当じゃないかよ」

「シドさん、適当ってさ。適して当たるって書くんだよ」

「・・・・・・・」

<ライトも屁理屈が上手くなりましたね>

「ふふん」

ライトはドヤりながらカタログを閉じ、身を起こす。

「さて、午後の買い物だけどボクは1億4000万コール分使わせてもらうね。なかなかいい防護服が買えそうだよ」

「おう、俺は双剣に9500万コールとバイク関係に4500万コール使う事にするわ」

「バイクも買うの?」

「ああ、バイクなら今のT6に乗せられるし、この前のコーディネイトで遠隔操作も出来るようになったみたいだからな。ハンター用のバイクも買う事にした」

シドは東方の遺跡に行く際に、ライトとは別の移動手段を持つべきだと考えていた。

ミナギ方面防衛拠点で、大型トカゲ襲来の際、天覇のメンバーがトラックや強化外装で出撃していったのを思い出し、ライトはT6で、自分はバイクで移動するのが効率的かと考えたようだった。

軽く調べると、バイクにも銃やブレードを保持するアームが取り付けられるようなので、それも併せて購入するつもりだった。

「じゃ~、昼からシドさんも買い物ってことだね」

「そうなるな、双剣の方はもう仕様が決まったし、さっき金も振り込んだ。2週間くらいで届くらしいぞ」

「どんな感じにしたの?」

「こんな感じ」

シドは自分の情報端末からライトの情報収集機にデータを飛ばす。今ではシドも端末を直接操作しなくても、自身に増設された情報器官を使い、データのやり取りくらいは出来るようになっていた。

「ふ~ん・・・結構見た目が変わるんだね?」

シドから送られてきたデータを見たライトはそう感想を漏らす。

今までの使っていた双剣との違いは、長さが長くなったという事が一つ。刃渡りが65cm程度の長さになっており、大きめの反りが有る。刃厚も薄く、パッと見た感じだと、激しく打ち合えば折れてしまうのでは?思う見た目だった。

「なんでも刀って武器らしいぞ?切れ味に特化した形状で、素材はアダマントとコーラル結晶体を使うらしい」

「・・・アダマントはわかるけど、コーラル結晶体って刃物にどう使うの?」

アダマントは硬く強靭で、防護服の表面処理などに使用される金属である。形状を決定した後に電子処理を行うとさらに硬度・靭性を向上させることができ、シドの持つKARASAWA S200のバレル部分にも使用されている。しかし、非常に重く、高価である為、今回の様に塊で使用される事が少ない金属である。

そして、コーラル結晶体とは、液体エネルギー物質であるコーラルが凝固した物質である。液体の状態ではさまざまな活用方法があるコーラルだが、一度凝固するとエネルギーを取り出すことが出来なくなってしまい、使用箇所がほぼなくなってしまう。性質としては軟鉄程度の硬度を持ち、安易に加工変形させることができ、衝撃を吸収・拡散する特性を持つ。稀に機械などの衝撃吸収材に使用される事もあるのだが、それほど多くの量を確保できるような物ではなく活用場所も少ない。よって基本的には産業廃棄物扱いを受けるものだった。

「・・・さあ?わからん。けどプロが選定した材料なんだから、使いようがあるんだろうな」



時は昼をまたぎ、ライトは霧生プロテクターの販売店に再度顔を出す。

そこには既にキクチが到着しており、店員のウシジマと話をしていた。

「おう、ライト。こっちの話は付いたぞ。後はお前が話せ」

数日前より格段に顔色の良くなったキクチがライトにそういってくる。

「ありがとうございます。それじゃー、天衣シリーズのTH-ZAを見せてもらえますか?」

ライトはカタログで調べていた防護服をウシジマに伝える。

「!・・・承知しました。しばらくお待ちください」

ウシジマはライトが述べた防護服を聞き、一瞬キクチに目を向けたが、キクチは特に反応を示さなかったため、要望の品を取りに店の奥に消えていく。

「二度足踏ませたな。すまん・・・気が抜けていた」

「いえ、ボクの方もランク制限の事を考えてませんでした」

「・・・それにしても、ずいぶんハイエンドなシールドスーツを選んだな。この辺のワーカーで着てる奴なんかいないぞ?」

ライトが選んだ防護服は、系統としてシールドスーツと呼ばれ、装甲は無く防御は全てエネルギーシールドで行うタイプの防護服だ。情報収集機と連動させ、全身に取り付けられたシールド発生器から発生するエネルギーシールドは、非常に自由度が高く様々な用途に使用できる。発生場所や角度、強度や面積などを自分の意志で変えられるため高ランクのシーカーには好まれる傾向にあった。しかし、自由度が高いという事は設定をミスれば何が起こるかわからないという特徴があり、よほど慣れていないと普通の防護服以下の防御力となってしまうキワモノと言われる分類である。

「遺跡調査での報酬がありますからね。奮発しました」

ニコニコと笑いながらランク20代とは思えないセリフを吐くライト。

(お前くらいのランクなら1000万でも高い買い物なんだぞ?)

キクチは苦笑いをしながらライトを眺める。

「まあ、お前らの装備が充実するのは良いことだ。次の依頼でも頑張ってくれよ」

「はい!がんばります!」

「・・・それで?あの大問題児が居ないのが気になるんだが?」

「シドさんですか?あの人ならバイクを買いに行くって言ってましたよ?」

ライトは大問題児とはシドの事だろうと思い、彼の行動をキクチに伝える。

「バイク?お前ら車持ってるのにか?」

「なんでもボクとシドさんが分かれて行動するかもしれないから、俺はバイクを買ってくるって言ってましたけど」

キクチはライトの話を聞き、(まあ、そういう状況もあるかもしれないな)と考える。車に関しても真面な選択をしていたから、バイクでも問題ないだろうと軽く考えた。

「まあ、お前たちが稼いだ金だ。不正に使うような事以外なら好きに使ったらいいさ」


ライトとキクチが話していると、商品を運んでくるウシジマの姿が見えた。


「お待たせしました。こちらが天衣シリーズ TH-ZAになります」

それはかなり薄手のボディースーツの様な見た目で、恐らくシールド発生装置があると思われる箇所が少し厚くなっているようだ。カラーリングは赤と白になっており、見た印象としては鳥の様なイメージを受ける。

「・・・・・う~ん、やっぱり派手だね・・・」

本品を見れば印象が変わるかと思っていたようだが、カタログに表示されていた通りの見た目に悩みだすライト。

「性能は把握されていると思われますが、一度試着されてはいかがでしょうか?」

そういわれ、ライトは一度着てみることにする。

「試着室で着替え終わりましたら、向こうの扉から出てください。性能テストルームに繋がっておりますので」

ウシジマはそう言うと、試着室を出ていく。

ライトは今着ているものを脱ぎ、TH-ZAを着てみる。最初はブカブカだったが、手首の部分に触れると体にフィットする様に調整される。

鏡で自分の姿を見ると、薄いスーツは体に張り付いた様になっており、自分の筋肉の形が薄っすらと浮いている。

シドと出会ってから、キツイ訓練と戦闘を繰り返し、満腹になるまで食べられる食事環境のお陰で、ライトの体はかなり成長していた。身長はいつのまにかシドを超え170くらいあるのでは?というくらいに伸び、程よく発達した筋肉はバランスよくライトの体を包んでいた。

(う~ん・・・この上に何か着ないとちょっとはずかしいな・・・)

ライトは、先ほどまで上に着ていた防護服を羽織ろうかと考えたが、この後は性能チェックがある為、そのままテストルームの方に移動する。

そこにはキクチとウシジマがライトを待っていた。

「お、着替え終わったな・・・なかなかワーカーらしい体つきになったな。お前」

「ええ、まあ。なんか一気に背も伸びましたよ」

照れた様に後頭部を掻きながら答えるライト。

「それでは、シールドスーツの性能チェックをお願いします」

「はい、わかりました」

ウシジマに促され、ライトはTH-ZAと情報収集機をリンクさせ、シールドを発生させてみる。

全身を包んでみたり、手や足などを部分的に包んだりして性能を確かめていく。

「最大出力でどれくらいの攻撃を防げますか?」

ライトはウシジマにシールドの強度を質問する。

「性能テストですと、1㎥でアンチマテリアルライフルの専用弾を食い止めることが出来ると、結果が得ております」

「なるほど・・・」

アンチマテリアルライフルは、モンスターの装甲を貫通させることに特化した銃種で、シドのS200が放つPN弾と同等の貫通力を誇った。

(それなら部分的に強化すれば、あのレーザーガンも防げるかな?)

「エネルギー攻撃に対してはどうですか?」

「エネルギー攻撃としましては、先ほどの申しました大きさでクラス6.8まで防御可能です」

「・・・・なるほど」

エネルギー兵器の威力はクラスで表され、ダゴラ都市防衛隊が所有するエネルギーガンでクラス3.2、防壁に取り付けられた大型レーザー砲でクラス8の威力を誇る。

防衛隊のエネルギー兵器は十分防ぐ能力があるが、大型レーザーとなると心許無いといった性能だった。

「ちなみに、例のレーザーガンの威力は6.2位と試算されてる」

キクチが小声で教えてくれた。

「・・・・ありがとうございます」

人が携帯できる大きさで、それほどの高出力を叩き出す兵器だった様だ。

防げることは防げるが、真面に防御していればすぐにエネルギー切れを起こすことは間違いない。やはり回避を基本とし、万一の時に使用するのがベターだとライトは判断する。

「わかりました。これでお願いします・・・・それと、上に何か羽織る物もセットでないですか?」

流石にこのスーツだけで外を歩くのは戸惑われる。イメージとしては、どこかの親愛なる隣人 蜘蛛男 みたいな感じなのだ。

「外部装甲が施された防護服をセットで如何でしょう?あまり重ね着すると、薄手の意味が無くなってしまうので、コートタイプかジャケットタイプがよろしいかと」

ライトは2種類のアウターを着させてもらい、意外と動きを邪魔しない構造になっていたコートタイプを合わせて購入する事にした。

「お買い上げありがとうございます」

ウシジマが深くお辞儀をし、ライトとキクチを見送る。

「今日はありがとうございました」

「どういたしまして。まあ、元はと言えば俺のミスなんだが」

ライトはキクチに礼をいい、キクチも受け取る。

すると、ライトにシドから通信が入った。

「はい」

『ライト、もう買い物終わったか?』

「うん、そっちも終わったの?」

『ああ、結構時間掛かったけど、いいのが買えたぞ。今霧生プロテクターなんだろ?なんなら迎えに行くぞ』

「あ、なら頼もうかな」

『おし3分くらいで着くからな』

そういい、シドは通信を切る。

「シドさんが寄ってくれるらしいので、ボクはここで待ってます」

「そうか・・・・いや、俺もちょっと待たせてもらおう。アイツがどんなバイクを買ったのか興味がある」

どうやらキクチもこのままシドを待つらしい。バイクなのだからそんな変な物は売っていないと思うが?とも思わないでもないが、シドは勢いで突っ走る傾向がある為、チェックは欠かせないのだろうとライトは納得する。

「そうですか、3分くらいで到着するみたいです」

「わかった」


数分後・・・


「お~~い、ライト~・・・」

暫く待っていると、上の方からシドの声が聞こえてくる。

ライトとキクチはまさかと思い、上を見上げるとほぼ真上からバイクに乗ったシドが、それはそれは楽しそうな笑顔を称えて爆走してきた。

2人の前でターンを決め、バイクを止めたシドは、笑顔のままバイクを降りてくる。

「どうだライト。このバイクは!!」

あっはっは!と笑いながらバイクをペンペン叩くシド。

(シドさんって乗り物系好きだよね~)

ライトはシドが空から現れた事にはスルーを決め込み、車を自分達に紹介した時と同じように嬉しそうにしているシドをほほえましく思った。

しかし、キクチはそうは行かなかったようだ。

「・・・・・・・おいシド。なんでお前が空走バイクを買えるんだ???」

空走バイクは本来ランクが60以上になり、都市からの許可が無いと買えない品だった。

高速で空を駆け、防壁内でも自由に行き来できてしまう(違法行為だが)装備となれば、厳格に管理しなければならない。当然他の都市にも連絡が行き、ワーカーオフィス内でも情報の共有が行われる事になる。

シドが乗っていいものではなかった。

「ん?これは空走じゃなくで地走だぞ?俺が発生させたエネルギーシールドの上をタイヤで走ってるから空中も走行できるって寸法だ」

シドはドヤ顔を披露しながら胸を張る。

ライトはキクチの様子を見て、これはかなり不味い事をシドがやらかしていると感付く。

「空を飛ぶとか走る場合は都市からの許可がいるんだよ!!!下手したら撃ち落されるんだぞ?!!?」

バイクを買っただけでキクチを怒らせるシド・・・いや、走行方法だろうか?

[キクチ怒りの咆哮]になれてきたライトは、この後どうなるのかを興味深く観察しだす。

「許可なら貰ったぞ?これでいいんじゃないのか?」

シドはハンターライセンスをキクチに見せる。

するとそこには、空走許可の文字が印字されており、正式に都市から許可が出されていることの証左だった。

「!!ば・・・バカな!!!一体だれが?!」

「なんかディーラーにいたおっさんがさ、自分に勝ったら許可をくれるって言ってきて勝負したんだよ。相手はガチの空走バイクだったけど、俺はコイツでぶち抜いてやったんだ。そしたら高笑いしながら許可くれたぞ?」

「・・・・・・なぜだ?なぜそんなことになる???どうなってるんだ???というか相手は誰だ?!」

キクチは頭を抱えぶつぶつと呻き始めた。

「名刺貰ったぞ。バイクの事なら俺に言えって言ってた」

そういいながらシドは一枚の名刺を取り出し、キクチに見せる。

それを見たキクチは目を見開き震え始め額から汗が噴き出してくる。

<ねえイデア、シドさん今度はなにしたの?>

ライトは震えるキクチを目端に置いたまま、全てを把握しているであろうイデアに尋ねる。

<シドが知り合ったのは喜多野マテリアル 兵器開発部門 部門長のゴンダバヤシ氏です。この辺りのエリアを統括している企業の部門長ですので、地位としてはダゴラ都市市長より上位になります>

<・・・・・それはまた・・・>

なぜそんな人物と知り合いになるのだろうか?

国で表現するならば、一国の大臣クラスの人物である。南部では重要な都市であるとはいえ、辺境にある一都市の第二区画に居ていい人物ではない。

キクチの様子を伺うと、青くなったり白くなったり赤くなったりしてシドに詰めかけている。

<なんでそんな人がここに?どうしてシドさんに声を掛けてくるの?>

<シドがディーラーであのバイクの事を店員に質問していたのですが、エネルギーシールドの上を走れるかとシドが発言すると、近くにいたゴンダバヤシ氏が会話に入ってきました。可能か不可能か、出来るなら自分と勝負しろ。そして勝利すれば空走の許可を出そうとシドに提案してきたのです>

<へ~・・・なんでこの都市にいたのかな?>

<キョウグチ地下街遺跡の件で視察に来ていた様です。本人もバイク好きで、まだ少年に見えるシドがバイクを購入しようとしている事に興味を持ったのでしょう>


「ライト!!お前も付き合え!!何がどうなってんのかハッキリキッチリさせないと夜も眠れん!!!」

キクチは大声でそういい、ライトの方を向く。

ライトはイデアと話していたため、シドとキクチの会話の内容は把握していなかった。

<今からワーカーオフィスに行って、事情聴取をするようです>

バイクを買っただけで事情聴取されるシド、ライトはププっと笑いながらキクチに頷き付いていくことを了承する。

「え~~・・今からツーリング・・・」

「拒否権なんぞあると思ってんのか?」

目を見開き地獄の底から這いあがってくるような声色で言うキクチに、シドは観念し付いていくことを了承した。


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型破りなおっちゃん連中にやけに好かれそうなタイプしてますよね…(
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