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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
76/217

タカヤとユキ  アズミとミリー チームでの遺跡探索  そして地獄の訓練ふたたび?

ライトの友人たちを登場させたかったので書いてみました。


また訓練編みたいな物も書いてみようか?と思います

ファーレン遺跡 中層


「ユキ、周囲の状況は?」

「400m付近にモンスターはいません。このまま進んでも大丈夫です」

「わかった。行こう」


ライトと共に養成所で訓練を受けていたタカヤとユキ、それと彼らとチームを組んだアズミとミリーがファーレン遺跡の探索に来ていた。

彼女たちはシーカー志望のユキが加入することによって、比較的安全に遺跡探索を行えるようになり、遺物の回収作業やモンスター討伐による戦績を着実に重ねていた。

「今日はこの建物を調べるんだったよな?」

このチームに一人だけの男性であるタカヤがユキに確認を取る。

「そうだよ、前回の探索の時、気になる反応があったから」

あれから2か月程、ユキはシーカーとしての能力を上昇させ、遺跡の隠し通路や扉を発見するなどチームに貢献していた。

「よし、俺が先頭で入るぞ。後ろは任せる」

タカヤもこの期間で遺跡探索の経験を積み、チームの盾役を担えるほどに成長していた。

タカヤが前衛、中衛にアズミとユキ、後方警戒にミリーが付く布陣でビルの中に入っていく4人。ユキが情報収集機を調整しながら辺りを捜索し、違和感が無いかを探っていく。

しばらく探っていくと、不自然に何も反応しない場所が見つかり、ユキがその場所に張り付く。

情報収集機からコードを伸ばし、扉と思わしき場所を開く方法を探っていく。ユキが処理を行っている間、3人で周囲を警戒するという方法を取る。

「開きました」

ユキがそういうと、扉部分が少し引っ込みスライドして奥に続く通路が現れる。

「おお~、さっすが~♪」

ミリーが声を上げ、ユキを褒める。

「・・・・うん、誰かが入った形跡なし。私たちが此処の最初の発見者だね」

アズミがそういい、タカヤが前に出る。

「よし、注意していこう。ユキ、罠の感知は任せるぞ」

「うん、任せて」

タカヤはそういい、ユキの返事を受けて通路の奥に進んでいく。慎重に歩を進めていくと、さらに重厚な扉が現れる。金属製の扉で、無理やりこじ開けることは出来そうにない。

「またユキの出番ね」

アズミがそういい、ユキが扉にとりつく。

アズミは何かあった時の為のフォロー、タカヤとミリーは後方の警戒に当たる。しばらくすると、ユキが扉のロックを解除した様で、電子音と共に扉が開き始めた。

タカヤがユキとアズミの間に入り奥を警戒し、ユキは情報収集機でモンスターの気配を探る。

「大丈夫、敵性反応は無いよ」

ユキがそういい、全員が警戒を解いた。

全員で扉を通ると、そこには手つかずの遺物が残されていた。

「おお~、今度は大量だね!」

「本当に。ユキとタカヤが加入してくれてから、稼ぎが大幅に増えたわ」

ミリーとアズミが嬉しそうに声を上げる。

ユキも実績を挙げられて嬉しそうに遺物を眺めていた。

「よし、さっそく詰めようか」

タカヤがバックパックを降ろし、遺物の物色を始める。

「もう、タカヤ。もうちょっとこの感動を嚙み締めたら?」

ミリーが茶化すようにタカヤに言う。

「ああ~・・・こういう時にグズグズするのは危険って教わったから」

タカヤは少し恥ずかしそうに頭を掻きながら言う。

「シド君だっけ?同時期にワーカーになったんでしょ?」

「そうですね。俺達より半年くらい先にワーカー登録したみたいです」

「う~ん、未だに信じられないよね。タカヤとユキが二人掛かりでも勝てないって話」

「3人掛かりでも返り討ちにあいましたよ」

ユキも遺物をバックパックに詰めながら話に混ざってくる。

「でも最後の方は一撃入れられるようになったんでしょ?」

「ほんとに一撃だけでしたけどね・・・」

タカヤは苦笑い気味にそういう。

「「!」」

急にタカヤとユキが反応を示す。

「ユキ・・・」

「5人だね。入口の所からコッチに向かってくるよ」

ユキの言葉でアズミとミリーも銃を手に警戒する。

すると、扉から3人の男が入って来た。

「なんだよ、やっぱり人いるじゃねーか」

こちらを見渡し、口を開いた男は続けて言う。

「お前等、ここの物全部置いて出ていけ」

傲慢にも吐き出された言葉は、4人には受け入れられない内容だった。

「なんでそんな事しないといけないの?ここは私たちが見つけたんだから出ていくのはあんた達の方よ」

アズミは毅然と言い返した。

「バカか?お前は。女3人と男1人、その内2人はガキだろうがよ。俺たちは5人いるんだぞ?表にも仲間がいる、勝てると思ってんのか?」

男は完全にこちらを見下した表情で言い放つ。タカヤとユキは、その言葉で意識を戦闘態勢に切り替える。

目に映る男たちはどう見てもライトより弱い、シドとは同じ秤にも乗らないだろう。向こうが攻撃の意志を見せた瞬間に戦闘開始。後はゴングが鳴る瞬間を待つだけだった。

タカヤとユキの空気が変わるのを感じたアズミとミリーは自分達も戦う覚悟を決める。ユキから送られてくる情報で敵の配置を確認し、どう戦うかを考える。

相手の男たちも、こちらに引く気が無い事を感じとったのか銃を持ち上げ最後の言葉を言い放った。

「おい、マジで殺す・・・」

彼は言い終わる前にタカヤが放った弾丸で頭を粉砕され絶命する。

「「!!」」

部屋に入ってきていた2人の男は、急に発砲したタカヤに反応が遅れ、それが致命的な隙となりアズミとユキの攻撃を受け胸部に風穴を開けることになる。

扉の外にいた2人はあっという間に3人が殺され、慌てて逃げ出そうとする。しかし、それを見送ってやるほどこちらもボケてはいない。

タカヤとミリーが直ぐに追い、彼らの背中を撃ちぬく。

瞬く間に5人全員を片付けたタカヤ達は息と一緒に殺気を吐き出していく。

「・・・よし、さっさと詰め込んで外に出よう。死体は外にほおっておけばいいか」

タカヤはそういうと、遺物を詰め終わったバックパックを背負い、男たちの死体を引きずって外に出ようとする。しかし、そこにユキが待ったを掛けた。

「タカヤ待って。外に後1人反応がある」

その言葉を聞き、タカヤは手に持った死体を手放し、銃を手に鋭い視線を出口に向ける。

ユキはバイザーに移る情報を精査しようと情報収集機を操り、手を止めた。

「あ・・・・この反応・・・」

ユキのバイザーに、表にいるであろう人物からメッセージが表示された。

『ユキ、そっちは平気?』



タカヤ達が隠し扉から出ていくと、そこには思った通りの人物が立っていた。

「ひさしぶり、元気だった?」

「ライト、久しぶりだな」

「うん、元気だったよ。ライトも元気そうだね」

そこにいたのは2か月ぶりに会うライトだった。

ワーカーライセンスを取得し、アズミ達とチームを組んでからは会っていなかったが、久しぶりに会ったライトはより一層強くなっている雰囲気を感じさせた。

「ライト君、ひさしぶりね」

アズミとミリーの2人も会話に参加してくる。

「はい、お久しぶりです。お元気そうで何よりですね」

前に助けられた時と同じように笑顔で応えるライト。彼もこの遺跡探索に来ていたという事だろう。背中にはパンパンに膨れ上がったバックパックを背負っていた。

「んで?ライト一人か?シドさんは?」

タカヤはライトが一人なのを訝しんだようだ。

「ああ、シドさんは外でドンパチの最中だよ」

「ん?」

ライトが軽く答え、タカヤが聞き直す。

「外に20人くらい居てさ。ボク達が通りかかったら難癖つけて来たんだよ。それでシドさんが相手をするって飛び出しちゃって。ボクは他に居ないか探ってたらユキ達を見つけて声をかけたって訳」

「へ・・・へ~」

相変わらずの様で何より、と思ったかどうかは定かではない。

「あ、終わったみたい。もう外に出ても大丈夫かな」

ライトはそういうと、ビルの外に出ていく。

タカヤ達もついて外に出ると、そこには綺麗に並べられた男たちから装備をはぎ取っているシドの姿が見える。

「・・・・何してるの?」

その様子にライトも困惑を隠せなかったらしい。

「ん?装備をはぎ取ってるんだよ。でもコイツら碌なの持ってねーぞ。売っても二束三文だな」

「「「「・・・・・」」」」

特に隠すことも無く断言するシドに無言となる4人。

するとシドはこっちに気が付いたようで、声をかけてくる。

「おう、タカヤとユキじゃないか。久しぶりだな。それと・・・え~、アズミさんとミリーさんだったっけ?お久しぶりです」

「あ、うん」「ひさしぶり」

「・・・・ええ、お久しぶりシド君」「シド君も久しぶり・・・」

そう言いつつ、機械系モンスターの外骨格の様な物に、剝ぎ取った戦利品を放り込んでいくシドを眺める。

「シドさん、その死体蹴りはどうなんだ?」

タカヤがあまりにスムーズな手際に突っ込む。

「ん?コイツら死んでないぞ?」

「「「「え?」」」」

「単純に殴って気絶させただけだよ。銃声でモンスターが寄って来ても面倒くさいし、オフィスの担当者に殺すときは考えろって言われてるしな」

シドはお喋りを続けながらも手は止まらない。

「でも、ここで装備を失ったら死んじゃうよね・・・?」

ユキはそういう。ここは遺跡の中層なのだ。丸腰でいればすぐにモンスターに殺されてしまう。

「そこまでは責任持たん。襲ってきたなら返り討ちに遭う覚悟は持つべきだ」


そう言いつつ、最後の被害者?襲撃者?から装備を剥ぎ取り、器(モンスターの外骨格)に放り込むシド。



作業が終了し、手をパンパンと叩いて器を持ち上げ「帰ろう」といい歩き出すシド。

ライトはため息を吐きながらこちらに視線を向け「みんなはまだ探索を続けるの」と聞いて来る。

「え?ああ、私たちも帰る所よ」

代表してアズミが答え、どうせならと一緒に帰ることになった。

アズミとミリーは数が増えれば安全に遺跡から脱出できると考えたようだ。


帰路の最中、本来なら瓦礫や建物の影を通り、モンスターに捕捉されない様注意して移動するのだが、シドとライトは堂々と道を辿って帰っていく。当然モンスターに発見されるのだが、敵の射程に入るまでに2人がさっさと迎撃し、何事も無かったかのように進んでいった。

アズミとミリーは信じられないといった面持ちで付いていき、タカヤとユキは平然と付いていく。


特に大きな問題も発生せず、遺跡から脱出した一行は、シド達の車で都市にまで帰ることになった。

シドは荷台の上に戦利品を置き、自分が運転すると運転席に乗り込む。

ライトとタカヤ達4人は荷台に乗り込み、腰を下ろす。

車が都市に向かって走り出し、5人は思い思いに話し始めた。

「やっぱり車があると便利だね」

ユキは車の利便性を羨ましがる。

「そうだね、4人ならなおの事あった方がいいよ。銃を買うより費用対効果が高いってシドさん言ってたよ」

「そうなのか?でも荒野用の車って高いだろ?」

「1人1台って考えたら高いけど、チームで考えて人数割すると安い部類に入らない?」

ライトにそう言われると、銃が400万~800万と考えれば4人で割るとそれほど高いというわけでは無かった。

「私たちも車買った方がいいかもね」

ミリーがそういい、アズミも同意を示してくる。

「そうね、運搬効率も時間の節約にもなるしね」

チームリーダーのアズミが同意したことで、車の導入が決定的となり嬉しそうな顔をするタカヤとユキ。

「それにしても、ライト君もシド君も凄く強かったんだね。中層のモンスターくらいならもう怖くないって感じだった」

ミリーが探る意味を含めてライトにそう言う。シドとライトの実力は確実に自分達より上だ。明らかに年下の2人に劣るという事実に忸怩たる思いが湧かないでもないが、事実なのでこの際彼らがどのようなレベルで活動しているのかが知りたかった。

「今日は常時討伐依頼が目的でしたからね。モンスターと戦うのが目的で遺跡に入ったんです。適当に彷徨ってたら遺物も発見できたのはラッキーでしたけど」

「常時討伐依頼か・・・でもあれって遺物が見つからなかった時の保険みたいな依頼だよね?」

ユキが聞いたことは間違っていない。ワーカー達が常時討伐依頼を受けるのは、遺跡探索で遺物が発見できなかった場合、弾薬費だけでも補填しようと受ける意味合いが大きかった。

「低価格の遺物の納品よりも中層のモンスターを狩った方がランクが上がり易いみたいなんだ。だから、訓練の意味合いもあってモンスター討伐をしてたって訳。最後に余計なのもでてきたけど・・・」

余計なモノとは、あの追剥ワーカー達の事だろう。獲物を狩ろうとしてバケモノに噛みついた不運な連中の事など正直どうでもいいが、ライトとしては余計な出来事だったようだ。

「・・・ライトはランクを上げたいの?」

ユキがそういい、少し不思議そうにする。今までの付き合いからライトがランクに固執する様なタイプには思えなかったからだ。

「もっといい装備を揃えたいんだ。この前遺跡の調査チームに入ったんだけど、そこでオートマタと戦って防護服がボロボロになっちゃって・・・もっといい装備に変えようと思ったら、ランク制限で購入できなかったんだ・・・」

そういい、ライトがため息を吐き出す。

話には聞いたことがあるオートマタと戦ったようだ。大昔に北方の都市を壊滅させたことがあるとの話を聞いたことがあったが、まさかそのレベルのモンスターと戦ったとは思っていないユキ達。

しかし、アズミやミリーからすると、オートマタと戦ったと聞けば驚きは大きい。

「オートマタと戦ったの?!」

「良く生きてたね。最近ミナギ方面で見つかった遺跡でオートマタが出たって聞いたけど、やっぱり強かったの?」

20代に満たないワーカー達の間で噂になっているキョウグチ地下街遺跡。そこで強力なオートマタが出現し、戦闘能力の高いチームが全滅したとの噂が広まっていた。

「あ、その遺跡で戦ったんです。取って置きの専用弾を撃ち込んだんですけど、それにも耐えられて・・・最終的には討伐出来ましたけど、もう一度戦う可能性があるとなると今の防護服じゃ不安で・・・」

ライトは今では危険度が高すぎて封鎖されている遺跡に行き、オートマタと戦ってきたようだった。

「え?でもあそこってランク20以上の専門ライセンスか、大手ギルドに所属してないと召集されないはずよね?」

アズミがそう聞くと

「ええっと、ボク達の担当者になってるキクチさんって人からの依頼です。防衛はまあ楽だったんですけど、調査チームに配属になってからが大変でした。オートマタと戦ったのも調査チームの時でしたし」

「・・・ライトってさ、今のランクはいくつになったの?」

ユキがそう聞いて来る。

「ん?ボクは今28だよ。ちなみにシドさんが42」

ユキとタカヤは「ああ、やっぱり」と言った顔で返す。しかし、アズミとミリーはそれでは済まなかった。

アズミ達は養成所を卒業して2年間の時間をかけ、現在ランク19と18。

それも、ユキとタカヤが加入し、比較的に安全かつ正確に遺物を回収できるようになった為にここまでランクを上げることが叶ったのだった。

自分たちが必死に積み上げて来たランクを、ユキ達と同期のはずのライトが軽々と飛び越えて28にまで行っている。

ユキはシーカーの為分かり辛いが、実際にタカヤの戦闘能力は装備云々では無く、戦闘勘や動き方、ポジションの取り方等で自分たちの能力を超えていると感じる部分が多々ある。ワーカーとしての経験は自分たちの方が上だという確証は持っているが、銃を持って戦った場合、タカヤに勝てるとは断言できなかった。

「ねえアズミ、これってちょっと考える必要あるよね?」コソ

「そうね・・・これは先輩としての沽券に関わるわ・・・」コソ

アズミとミリーが先輩としての尊厳を守る方法について考えようとしていると、運転席の方からシドの声が響いて来る。

「ワーカーオフィスについたぞ~」

その言葉で一旦会議を止め、車から降りる。そしてそれぞれのチームに分かれてワーカーオフィスに遺物の納品を行うためにカウンターに向かっていった。

自分たちの遺物の買取を行ってもらう間、チラっとライト達の方を見ると、普段はいない職員が対応しており、何か買取以外の話をしている様だった。

その様子を横目に、査定された金額は過去最高の物となり、貯蓄を合わせると荒野仕様の車くらいなら十分購入できるだけの金額を手にしたことになる。

タカヤとユキは嬉しそうにしており、拠点に帰る足取りも軽い。しかし、アズミとミリーは先ほどの考えが頭から離れず少しうつむき気味に帰路に就くのであった。


拠点に帰り、全員で食事を取った後、勇気をもって切り出す。

「ねえ、2人共、今の実力ってどうやって身に着けたの?」

ミリーが切り出し、ポカンとしたタカヤとユキにアズミが畳みかける。

「養成所の訓練であそこまでの実力はつかないはず。それは卒業した私たちが良く知ってるから」

タカヤの戦闘勘、そしてシーカーのはずのユキの行動力、どれをとっても養成所の訓練では身に着けられるものではない事は2人にはわかっていた。

「このままだと、私たちは一山幾らのワーカーで終わってしまう。だから強くなる方法が知りたいの」

ミリーは真剣な表情でタカヤとユキに訴えかけた。

すると2人はハイライトの消えた目でポツポツと言葉を漏らす。

「あぁ・・・・ライトもあの時こんな気持ちだったのか・・・・」

「・・・・・・そうだね・・・やっと本当に理解できたよ・・・・」

急に変わった2人の様子に困惑するアズミとミリー。

しかし、引くに引けぬ事情が自分達にもある為、さらに追及を重ねる。

「強くなる秘訣があるなら教えてほしいの」

「なんでもするから!お願い!」

ミリーは力強く手を合わせ、タカヤ達に頼み込む。

「ええっと・・・俺たちはライトと一緒にシドさんに訓練を付けてもらったんです」

「私たちの実力が高いと思ってもらえるのは間違いなくその訓練のお陰ですね」

「どんな訓練なの?!」

ミリーは身を乗り出し聞いた。

「・・・あれは拷問だと思う・・・」

「そうだな、3日坊主どころか3時間で逃げ出したくなった・・・申し訳ないですけど、俺たちにあの訓練は出来ません。あの訓練はシドさんとライトに頼まない限り無理だと思います」

タカヤとユキの様子に只ならぬ気配を感じるが、ここで引くわけにはいかないとさらに前のめりになるミリー。

「恥と無理を承知で、シド君たちにお願いできないかな?」

タカヤもユキも即答できなかった。

それはこの人たちをあの地獄に叩き落としていいモノかと思うと同時に、OKを貰った場合、漏れなく自分達も再度あの地獄に舞い戻る事になるのだと、その恐怖が2人に返答を遅らせる。

視線を上げ、前を見ると真剣な表情をしたアズミとミリーがいる。その目には力が溢れており、引けない決心がみなぎっていた。故に、こう言うしかない。

「シドさんに一度聞いてみます・・・・」

タカヤの言葉を聞いた2人はホッとしたような、そして凄く嬉しそうな顔でお互いの目を合わせていた。

だが、タカヤとユキは知っている。シドからOKの言葉を貰い、訓練が始まれば、その表情は苦痛と絶望に歪むことを・・・・


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