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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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ワーカーランク上昇とライトのライセンス更新

翌日、シドとライトは昨日の激戦もあって少し寝過ごすことになった。

時間を確認すると10時半。

本来なら完全な遅刻なのだが、本日2人は休日という事になっていた。

ベットからのそのそと起き上がり、2人揃って食堂へ移動する。

「何喰うかな~・・・」

「ん~・・・サンドイッチでいいんじゃない?」

2人は遅い朝食を頼み、テーブルに着く。

「シドさんの防護服直ってるかな?」

「たぶんな、損傷って言っても軽い部類だろ?あれくらいなら。それよりお前の防護服だよ。丸焦げだったじゃないか」

「そうだよね~・・・ミスカさん達もう行っちゃったし・・・」

一昨日の夕食を共にしたミスカ達は、昨日の朝に東方都市へと出発しており、ライトの防護服の補充が出来なかった。

「あれが無いと流石に遺跡には入れないし・・・・」

モソモソと届いたサンドイッチを食べながらため息を吐くライト。

「アレ以下の装備だとまたオートマタと戦闘になったら死んじまうしな」

「そうだよね~」

昨日のオートマタは過去一の強敵だった。ライトの作戦とイデアの指示、シドの身体能力が無ければ皆殺しにされていただろう。

「まあ、あんなのが何体も出てくるとは思えねーけどな」

<そうとも限りません。遺跡の奥にストック、もしくは生産拠点があれば複数出現する可能性はあります>

イデアは、昨日の戦闘は一回限りではないと主張する。

「・・・・帰るか?」

「勝手に帰っていいの?」

ダメだよな~とシドが思っていると、スピーカーから放送が流れ、全ワーカーは遺跡前の広場に集合するよう通達される。

「なんだ?」

「とりあえず行ってみる?」

シドとライトは席を立ち、広場に向かう。


広場では、都市の職員がトラックの上に立ち、連絡事項を伝えていた。

「この遺跡は調査の結果、非常に高難易度であると判明した。よって、最低限の準備が出来るまでは封鎖とする!繰り返す・・・・・・」

「・・・シドさん、封鎖だってさ・・・」

「俺たち来てまだ3日目だぞ?」

戦える装備が揃っていないとはいえ、いきなり封鎖とは何たることか?と思っていると、シドの端末にキクチから着信が入る。

「はい」

『おうシド、その遺跡の封鎖処置が決まった事は知ってるか?』

「ああ、今職員の人が説明してる。何かあったのか?」

『昨日お前たちが倒したオートマタと同等かそれ以上の敵が存在する可能性が浮上してな。防衛設備と高ランクワーカーの招集が終わるまで封鎖されることになった。お前たちも都市に戻って来てオフィスに顔を出せ』

「わかった・・・とりあえずの依頼は終了でいいんだな?」

『ああ、昨日の時点でお前たちへの依頼は終了だ。報酬とランクの変更があるから、絶対にオフィスに来いよ?わかったな?』

「わかったよ、都市に着いたらその足で向かうって」

『待ってるぞ』

キクチはそういい、通信を切る。

通信に映っていた顔は、やはり疲れた顔をしていた。

「キクチさん大丈夫かな?死にそうな顔してたけど・・・・」

「・・・・まあ、都市に戻ろうか。高性能な回復薬でも持って行ってやろうぜ?」

「そうだね」



2人はダゴラ都市に戻ってきて、その足でワーカーオフィスまで向かう。

総合窓口で受付をし、キクチに連絡を取ってもらった。

暫くするとキクチが姿を見せ、シドとライトのワーカーライセンスを出せと言ってくる。2人はライセンスを渡し、ランクの再表示を行ってもらった。

「シド、お前のランクは42だ。そしてライトは28になる。ライトはライセンスの更新だな。シーカーでいいな?」

「また結構上がったな?こんなに上がりやすいもんなのか?」

「ほんとに、ボクなんて12も上がったよ?」

「そんなわけあるか・・・普通は20から30に行くには4・5年はかかるんだぞ?あのヤシロでも2年かかってる」

キクチが2人にツッコミ、ライトのライセンスの更新を行う。

「ほら、これがライトのシーカーライセンスだ」

キクチはライトに青色に染められた強化銀製のライセンスを渡す。

ライトはライセンスを受け取り、しげしげと見つめた。

「んで?お前らはこれからどうするんだ?」

「ん?まずはライトの防護服かパワードスーツを手に入れるかだな。どっちになるかは今回の報酬次第になるな」

「なるほどな、なるべく高性能なヤツにしておけよ。お前らにはまたキョウグチに行ってもらう事になるだろうからな」

「封鎖中だろ?」

「解かれたらだよ。東方のワーカー達にも協力を仰ぐことが決定した。3大ギルドも前線並みの装備を用意して参加するよう準備させてる。お前たちもしっかり装備を整えて備えてくれ」

前日の会議で決定した東方のワーカー召集と、ダゴラ都市の3大ギルドへの全力調査要請の話をする。オートマタを討伐したシドとライトもその調査隊に入ることがワーカーオフィスの会議で決定したのだった。

この判断はワーカーオフィス統括とハンター管理部門の後押しがあり決定したのだ。キクチはどちらかと言うと反対派だ。

危険度が未知数の遺跡に、この2人を伴って調査など、何を考えているのかと言わざるを得なかったのだが、他の部門からは相手にされず却下されたのだった。

この時点でキクチは自分達の予想の斜め上をぶっ飛んでいく様な事態を覚悟した。

シドが聞けば何を大げさなと笑い飛ばすだろうが、キクチは本気だった。

「ライトは軽量の防護服かパワードスーツが良いのか?なら俺からお勧めの企業を紹介するが?」

キクチは担当ワーカーがそのぶっ飛んだ状況から生きて帰って来れるように全力でサポートするつもりだった。

「いいんですか?ならよろしくお願いします」

ライトとしても渡りに船、今までガンスの見立てで防護服を調達していたため、どこのメーカーが良いかなどの知識が無かった。

「ああ、後で情報を送る。シドは何かないか?」

「う~~ん、強いて言うならこの双剣の代わりって心当たりある?」

シドはいつも腰に付けている双剣をキクチに渡す。

「お前、双剣なんか使ってたのか?」

キクチは驚きシドを見た。

「まあな、超接近戦になったらソイツが最後の砦なんだよ。あのオートマタはソイツが無かったら負けてたんだぞ?」

シドはオートマタとの戦闘で双剣で戦い、動きを止めることに成功した。

しかし、高出力のオートマタと打ち合ったり、攻撃を受け止めたりしたせいで、鞘に付属されている自動メンテナンス機能ではカバーできない負荷が掛かっていた。

「・・・・お前、これどこで手に入れた?」

「俺が最初に探索した遺跡の建物にあった」

「遺物かよ・・・・ちょっと抜くぞ?」

キクチはそうシドに断り、鞘から剣を引き抜く。そして色々な角度から剣を観察し、また鞘に納めた。

「・・・・尾佐舟刀工ってメーカーがある。あそこは一般的な刃物を作ってる企業だが、ワーカー向けの刀なんかも作ってる。あそこならコレの代わりになる物があると思うぞ」

キクチはそういい、シドに双剣を返してくる。

「お?そうなのか?なら連絡先をくれ」

「だが北方の企業だ。連絡しても作ってこっちに持ってくるのに時間も金もかかるぞ?」

「それでもだ。今まで強敵の場合はコイツが決め手になってきたからな」

シドは少々コストが嵩んでも双剣の代わりが欲しかった。

「わかった。連絡先を送るからまた自分で連絡してみろ」

「ああ、ありがとう」

「あ、キクチさん。これあげます」

ライトが差し出したのは旧文明製の回復薬だった。元は自分用に取っておいたのだが、ライトも旧文明製の身体拡張ユニットを使用し、体内に治療ナノマシンを宿した今、必要なくなったのだ。最近キクチの体調が優れない為、いつも世話になっているからと渡すことにしたのだ。

「これは・・・いいのか?」

「はい、まだ持ってますんで」

ライトは笑いながら嘘をつく。しかし、キクチにはコレが必要だろうと思っていた。

「・・・・・すまんな。ありがたく使わせてもらうよ」

キクチもライトの心遣いに笑顔で礼を言う。

「んじゃ、また依頼の詳細が決まったら連絡くれな」

「ああ、その間も無茶するなよ」


シド達はワーカーオフィスを後にし、自分達の拠点に帰っていった。


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