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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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シド&ライト VS 戦闘用オートマタ

ヤシロ達を5番地点の援護に行ってもらい、シドとライトは後方から迫って来るモンスターを迎撃していた。

小型・中型のモンスターを高火力の銃で一掃していき、屍の山を築いていく。


2人の足元には大量の薬莢が散らばり、今まで撃ち放った弾丸の数がどれほど物か一目でわかる。

<なかなか終わらねーな>

<そうだね・・・どこにこんな数がいたんだろう>

念話でモンスターの数に驚く2人だが、全くモンスターを寄せ付けずに撃退していく。


2人の目に映る情報では、もう少しで全滅させられる所まできていた。


しかし、不自然にゆっくりこちらに向かってくる個体がおり、その赤い点が不気味な雰囲気を醸し出していた。

<ライト、あの遅いヤツって何だと思う?>

<わからない、反応の大きさからいって小型だと思うけど>


程なく2人はモンスターの群れを全滅させる。しかし、後方からゆっくり向かってくるモンスターの反応は止まること無くこちらに向かってきていた。

ただの小型モンスターの反応としてはおかしい。本来なら遮二無二に人に向かって突っ込んでくるのがモンスターだ。

しかし、この反応は終始、人の徒歩と同じくらいのペースで向かってくる。

<なんかヤバイ気配がする、ライト気を付けろよ>

シドはS200のマガジンを交換し、万全の状態で迎え撃つ構えを取る。

<うん、わかってる>

ライトも同じようにマガジンを交換し、シドより一歩後ろに下がる。

イデアによって視界にモンスターのシルエットが表示される。

それは2m程度の大きさの人型だった。

通路の曲がり角から姿を現したモンスターは、両手に銃器を装備したオートマタだった。


オートマタはシド達の姿を認めると、一気に速度を上げて向かってくる。

2人は両手の銃をオートマタに向け特殊弾頭を撃ち込んだ。しかし、オートマタは弾道を見切っているのかヒラヒラと避けながらこちらに向かってくる。

<戦闘用オートマタです。ただの弾幕では通用しません>

<!!ライト、俺が抑える!お前はSH弾で体勢を崩してくれ!>

<わかった!>

シドはオートマタに向かって距離を詰め、ライトは逆に戦闘領域から遠ざかる。

2丁のS200から大量の弾丸を撃ち放ち、オートマタを攻撃するが、相手も両手の銃をシドに向けて撃って来る。

オートマタが手にする銃が撃って来るのは、実弾では無くエネルギー弾の様だった。エネルギー弾は実弾よりも弾速が速く、空気抵抗による弾速の減少もない。硬度による物理的な防御は効果が薄く、シドの装備するDMD防護服ですら貫通させるだけの威力があった。

シドはオートマタの放つ弾丸を躱しながら銃撃を続け、ライトはオートマタが避ける方向を予測し弾丸を置いていく。

2人の作戦は成功し、無数の弾丸を命中させる事に成功するが、オートマタが纏う強力なエネルギーシールドに弾かれてしまう。

(マジかよ!)

このまま攻撃し続ければ、シールドを抜ける可能性も有るのだが、オートマタの速さはシドと同等のスピードを誇り、易々と攻撃を当てさせてくれなかった。

<イデア!サポート頼む!>

<承知しました>

イデアはシドの脳にアクセスし、シドの処理能力を向上させる。

シドの視界が一気に鮮明になりオートマタの動きを正確に捉えることが出来た。生体電気も使用し、身体能力を底上げ、オートマタが回避できないタイミングを狙ってアンチシールド弾(AS弾)を撃ち込む。

AS弾は非常に高価であるが、シドはもしもの時の取って置きとして少量ミスカから購入していたのだった。

(買っててよかったマジで!)

必中のタイミングで放たれたAS弾は狙い通りにオートマタのエネルギーシールドを貫通。本体に命中したが、オートマタの頑丈なボディーに弾かれ、表面を僅かに凹ませる程度のダメージしか与えられなかった。

<硬すぎだろ!>

シドの驚きは非常に大きく、今まで当てることが出来ればどんなモンスターでも目に見えるダメージを与えてきたS200の弾丸を弾き飛ばしたオートマタに瞠目する。

<シド!><シドさん!!>

イデアとライトに言われ、オートマタの銃から吐き出されたエネルギー弾が向かってくることに気づくシド。

「うお!!!」

横に飛びながら体を捻り、僅かに開いた隙間に体をねじ込む。

しかし、完全に避けきることは出来ず、右肩と左わき腹をかすめる様に被弾してしまった。

DMDとシド自身のエネルギーシールドを貫通し、DMD自身の装甲をも削り取られ、シドは冷や汗をかく。

<クソ!なんだコイツ!三ツ星重工で戦ったヤツよりかなり強いぞ!>

<あれは訓練用の調整機です。今戦っているオートマタは完全な戦闘用ですので性能はこちらの方が上です>

<集中して!ボクもなんとか目で追えてるけど体までついていけない!シドさんがやられたら終わりだよ!>

シド達が会話している間にも、オートマタの猛攻は止まらない。

次第にシドを追い詰める様に攻撃してきて、回避に余裕がなくなって来る。

シドは懸命に反撃し、ライトもフォローする為弾丸を放ち続けた。

するとライトが反撃の糸口になりそうな法則を見つける。

<シドさん!アイツ攻撃してる時はエネルギーシールドを展開してない!多分、エネルギーシールドが外と内を完全に遮断してるんだ!>

オートマタのエネルギーシールドは、機体全体を包み込むタイプの様で、シド達の様に銃口辺りのみ解除する事が出来ないのだろう。すなわち、相手がシールドを展開している時は、相手もシールドに閉じ込められていると言う事になる。

ライトはイデアを通して作戦をシドに伝える。

その内容を直接脳内に転送させたシドは驚き声を上げた。

「ライト正気か?!」

「これしかないって!!!」

<タイミングはこちらで指定します。2人とも、それまで耐えて下さい>

2人は針に糸を通すような作戦を決行することに決める。

2人はイデアから送られてくる指示に従いオートマタを攻撃し、来るべきタイミングに備える。

イデアはオートマタが攻撃を回避できない状況を作り出す為、シドとライトに弾種から射線、ポジションまで厳密に要求した。

シドとライトはその要求に答え、オートマタから放たれるエネルギー弾を避けながら弾丸を放つ。

オートマタの回避選択肢を削って行き、絶好のポジショニングが取れた。

シドがオートマタの足を狙うように撃ち、ライトが頭を押さえる軌道で弾丸を撃ち込む。オートマタはそれを回避する為に小さく飛び上がり、両手の銃でシドとライトをそれぞれ狙う。

<今です!>

イデアが合図を送り、シドとライトの網膜にターゲットポイントが表示される。

シドはすかさずAS弾を発射しオートマタのシールドに穴を開ける。そしてシドが開けた穴にライトが放ったハンター5専用弾が飛び込んでいった。

AS弾はオートマタの装甲に弾き飛ばされたが、専用弾はオートマタに命中し、その衝撃で後方に吹き飛ばす。

爆発のタイミングを調整されていた専用弾は、オートマタのシールドが再展開されたタイミングで爆発。シールド内を凄まじい爆圧と高温で満たした。

流石のエネルギーシールドもこの内圧には耐えきれず崩壊し、暴れていたエネルギーが四方に向かって放たれる。

シドとライトは全力でエネルギーシールドを展開し防御を行うが、あまりの圧力に吹き飛ばされる。


2人は受け身を取り、地面に叩きつけられるのを防ぐ。

「あち!あち!あちち!!」

ライトはエネルギーシールドの出力が足りなかったようで、防護服に火が燃え移っていた。急いで叩き消しオートマタがどうなったのかを確認する。

爆発で発生した煙が晴れ、オートマタの姿が見えてくる。


「・・・・・・まじか~」

「・・・・・・うそでしょ?」


そこには全身焼け焦げ、カバーの至る所が破損しているが、動作には問題なさそうに立っているオートマタの姿があった。

両手にもっていたエネルギーガンは爆圧で破損しているようで、足元に捨てこちらに向かってくる。

オートマタは完全に接近戦を行うようで、もう飛び道具の様な物は持っていないと予想できた。シドはS200をホルスターに収め、双剣を抜き放ってオートマタに向かい地面を蹴る。

ライトは先程と同じようにシドのフォローに回った。


シドは電光石火を発動させ、一撃のもとに両断せんと双剣を振るう。しかし、オートマタはシドの動きを認識している様で、腕と足を使いシドの攻撃を防いできた。

戦闘用オートマタの出力は凄まじく、シドの新たにコーディネイトを行い、強化された腕力でも押し負け、このまま鍔迫り合いをしても弾き飛ばされることは確実だった。

(なら!)

シドは自分から体勢を崩し、地面スレスレからオートマタの軸足を切りつける。

双剣は甲高い金属音と共に弾かれ、オートマタの足のカバーは2本の切り跡が残る程度のダメージしか与えられていなかった。

(硬ッ!!!)

足元にいるシド目掛けてオートマタは踏みつける様に攻撃し、それを横にそれる事で回避するシド。

避け様に回転しながらオートマタの胴体を切りつけるが、オートマタは肘を畳む様に腕でガードを行い、損傷を軽微に収めてしまった。

オートマタがシドの方に向き直り、構えをとる。シドの目にはカバーが破損した部分が強調されて表示され、そこを集中的に狙っていく方針を決めると、オートマタがシドに向かって攻撃を仕掛けてくる。

前回戦ったオートマタと同じように、両手を剣に見立てた手刀での攻撃、シドは受け流そうと剣を動かすと、オートマタにターゲットマークが表示され、ライトが放った弾丸が命中する。

多数のSH弾を当てられたオートマタは専用弾の爆発で歪んでいたカバーを弾き飛ばされ宙に飛ばされる。

シドはその隙を見逃さず、連撃を叩き込む。

カバーの割れて装甲が無い部分を攻撃しようとしても、オートマタはシドの攻撃の脅威度を正確に判定し、致命的なダメージを受ける攻撃を防御してくる。

シドは今のチャンスで機能停止まで持っていきたかったが、そこまでの成果は上げられず、ボディーを捻り、地面に着地されてしまう。

しかし、左足の制御部分を傷つける事に成功したのか、オートマタの左足の動きが著しく悪くなった。

(畳み掛けるか?それとも仕切り直すか?)

シドの一瞬の迷いに反応したのか、オートマタはまだ無事な右足で地面を蹴り、シドに向かって砲弾の様に突っ込んでくる。

シドを剣圏に捉えたオートマタは、両腕を振るいX字にシドを切り裂こうとする。


(この体勢・・・ライトは俺の後ろ側・・・だったら!)

シドはその攻撃を避けず、両腕に渾身の力を込めて受け止める。シドの足元にひび割れが発生し、オートマタの出力の高さを物語っていた。シドの両腕はオートマタの出力に負け、頭部に攻撃が激突。頭皮が裂け、大量の血が噴き出しシドの顔を染めた。

「うおらーーーー!!!」

シドは雄たけびを上げながら、双剣でオートマタの両腕の関節を固定し、相手の勢いを利用し後ろに倒れ込み、頭から地面に叩きつけた。

「ライトーーー!!!」

ライトはシドの考えを正確に読み取り、オートマタの剥き出しになった背中を狙える位置に移動していた。

頭を地面に叩きつけられ、無防備になった背中に計6つの銃口からありったけのPN弾とSH弾を叩き込む。

ハンター5の凄まじい投射力で撃ち出された特殊弾頭には、カバーが弾け飛び、剥き出しになったオートマタは耐え切れずに千切れ飛ぶ。

吹き飛んだ下半身が地面に落ち、金属音を奏でながら転がっていく。


シドは素早く身を起こし、ライトと挟み込む様に、上半身が動き出さないか警戒する。


オートマタは腕を動かし、床にめり込んだ頭部を引き抜くと、シドにモノアイを向けてくる。

シドは双剣を構え、飛び掛かられても反撃できる様に警戒し、オートマタを観察した。

オートマタは腕を立て、起き上がろうとする動きを見せるが、動力源を損傷したのだろう、バチバチと放電音が鳴り、力が抜けたように崩れ落ちる。

最後までシドを睨みつけていたモノアイは点滅を開始し、次第に光が消え完全に消滅する。



「・・・・・・倒したか?」

「これだけやってまだ動いたら驚きだよ」

<エネルギー反応が完全に消えています。倒せたようですね>

「「はあぁ~・・・・」」

イデアの言葉を聞き、2人は安心したように腰を下ろす。

「なんか、最近遺跡に行くたびにコイツらと戦ってる気がする・・・・・」

「そうだね・・・しばらくはお腹いっぱいだよ・・・で、シドさん頭の傷大丈夫なの?」

「ん?ちょっとクラクラするけど平気だ」

<現在治療中です。頭頂部が割られていますが脳に影響はありません。もう少しシドの力が弱ければ完全に粉砕されていたでしょう。しばらくそのままでお待ちください>

「「・・・・・・」」

「ほんとにヤベーやつだな・・・」

「こんなのと戦ってる北方とか東方のワーカー達ってどんな人達なんだろ?」

「まだ俺達には早いだろうな。ちょっと東方に行った所の遺跡で死にかけるんだからな」

「そうだね・・・もっと実力を上げないとね」



シドの治療が終わり、シドとライトはオートマタの残骸を引きずって5番地点に着いた。

するとそこには大声で言い合う少年と少女。それを宥めようとするレオナ、そして項垂れるヤシロとそれを慰めるように肩に手を置くドンガの姿が目に入る。


「ヤシロさん・・・・ん?なんだ?この空気?」

「ほんとだ、なんで喧嘩してるの?」


シド達の声に反応したのだろう、ヤシロとドンガがこちらに振り向き、目を見開いて動きを止めた。


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