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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
70/217

調査チーム その2 5番地点襲撃

暇だ。

本当にやる事がない。こんな事ならモンスターの一体や二体くらい出てきてもいいのに・・・・

<何やら不穏な気配がします。シド、変な事を考えていませんか?>

<・・・いいや?>

<暇だからモンスターが出てこないか?とか考えていましたね?>

<・・・いいや?>

<シドのフラグは最悪な形で回収されるのです。気を付けてください>

<・・・・・・・>

レオナとライトがシステムに侵入して早1時間半。

シドは暇を持て余している。

ヤシロとドンガもその辺に座り込み、なにやら話し込んでいる。

もうそろそろ2時間に差し掛かろうとしていると

「うん、だいたい把握できたよ」

レオナがそういい、ライトを連れてこちらの方に来る。

「お?終わったか?」

「うん、この遺跡のコントロールセンターだったみたいだね。この遺跡のマップも回収できたよ」

レオナはそういって大きな胸を張る。

「それは大収穫ね。いつもより時間が掛かってたから心配したわ」

ドンガはそういい立ち上がった。この情報とデータを持って帰れば今回の調査は十分な収穫となる。

「苦労したよ。ライトがいなかったら諦めてたね。凄いよ、また何かあったら手伝ってね」

レオナはライトにウィンクをしながらそういう。ヤシロはレオナの様子から、これはお世辞ではなく本心で言っていると感じた。

「よし、そんじゃー戻るぞ」

そういうとヤシロは先頭を切って扉の方へ向かっていく。

<お疲れ、どんな感じだった?>

<かなり複雑だったよ。トラップもてんこ盛りだったし。でも一回パスしたら後は芋蔓式だったね。レオナさんも凄い勢いで解析してたし>

<そうなのか、ランク40越えは伊達じゃねーな>

<そうだね、もっと精進しないと>

シドとライトもヤシロ達の後を付いていく。



ヤシロ率いる調査チームは、5番地点の手前まで戻ってきていた。

その辺りで、ライトが周囲の異変に気付く。

<シドさん、イデア、ここを通る時に近くにモンスターの巣があったはずなんだけど、今はモンスターの影がないんだ・・・どう思う?>

<・・・どうだろうな?移動したんじゃないのか?それか攻撃チームが全滅させたか>

<我々には遺跡での探索経験が乏しいです。ヤシロかレオナに聞いてみるのが一番でしょう>


「レオナさん、ちょっといいですか?」

ライトは、念話で相談しレオナに聞いてみる事にしたようだ。

「ん?なに?ライト」

「ええっと、こっちに来る時もこの通路を通りましたよね?来る時は向こうの方向にモンスターのたまり場みたいな反応があったはずなんですけど、今はモンスターの反応がありません。これはどう判断したらいいですか?」

「・・・・・それって本当?」

レオナの表情が引き締まり、ライトに確認をしてくる。

「はい、ここから400mくらいの場所です。通路はこっちと繋がって無さそうなんで関係無いとは思いますけど・・・」

レオナはライトの言葉を聞き考える。自分がここを通った時にモンスターの巣の情報はキャッチしていない。この遺跡の中でその距離を探知できるという事は、ライトは広範囲索敵に特化した情報収集機を装備しているのだろう。それなら中近距離に特化した自分の情報収集機では感知できなかったモンスターの反応を見つけることも可能かもしれない。

そして、来る時はいたモンスターが帰る時にはいなくなっている。これで考えられるのは2通りしかない。

攻撃チームが殲滅したか、何処かの獲物を攻撃しに出払っているかだ。

レオナはヤシロを見る。彼の表情を見るに自分と同じことを考えている様だった。

「急いで戻るぞ、嫌な予感がする」

レオナと目を合わせて1秒。ヤシロは自分の勘に従い早急に防衛地点まで下がることを決める。

「「了解」」

レオナとドンガは直ぐに了承し、シドとライトも3人の後ろについて駆けていく。


もうすぐ5番地点に到着するといった所で、ライトは5番地点が襲われていることに気が付く。

「5番地点、モンスターの襲撃を受けています!」

「チ!」

ライトの報告を聞き、ヤシロは速度を上げる。

「ありゃりゃ、これは大群に襲われてるね」

レオナも襲撃に気づいたようで苦い顔をする。

「ドンガ、お前が先頭で突っ込んでくれ。俺たちはそれぞれのフォローに入る」

「わかったわ」

ヤシロとドンガの位置が入れ替わり、さらにスピードが上がる。シドとライトはその様子を後ろから見ながら高ランクワーカー達の連携というものを感じていた。

<すげーな。高ランクハンターってこんな感じで戦ってるんだな>

<そうだね、ボク達はラッキーだよ。こんなに近くで観察できるんだから>

<そうですね、生きた教材ほど貴重な物はありません>

シドとライトは歴戦の高ランクワーカー達からその場その場での判断や行動を学んでいく。

<・・・・あ~、こりゃ後ろからも来るな>

<そうだね、生物系 機械系 色々混じってるね>

シドとライトは自分達の後方からもモンスターが迫ってきていることを察知する。

「ヤシロさん!後ろからも来てます!後方の対処は俺たちがやりますんで、ヤシロさん達は5番地点のフォロー行ってください!」

シドはヤシロにそう声をかけ、自分たちは後方のモンスターの迎撃態勢を整える。

「!・・・悪い!任せた!」

ヤシロは振り返ることも無くそういい、レオナとドンガを率いて5番地点へと向かった。


シドとライトは、その場に陣取りモンスターが到着するのを待つ。

「ライト、数ってどれくらいだ?俺じゃ沢山くらいにしかわからん」

「・・・ボクの方も沢山しかわからないね」

「なるほど、一応は特殊弾頭を使う事も視野に入れるか・・・・お前の専用弾は使うなよ?」

「大丈夫だよ、流石に連日同じ失敗しないって」

シドとライトの視界にはモンスターが向かってきていることがハッキリと映っていた。イデアのサポートのお陰で射撃タイミングのカウントダウンも視界に表示されていた。

2人は並んで銃を構え、モンスターが現れるのを待つ。



視界に表示されるモンスターのシルエットが高速で近づいて来る。



先頭の一体は中型クラスの大きさだ、シドの特殊弾の方が効率がいい。ライトはソレに続く小型を仕留める為に集中する。



双方時間を圧縮し、自分が認識できる限界まで集中する。万が一にもここを抜かれる訳にはいかない。



シドは両手に持ったS200からSH弾を発射し、金属で構成されたモンスターの頭部と胴体に撃ち込む。

増幅された衝撃を受け、空中に打ち上げられながらへしゃげて行くモンスターを見ながら次に現れるモンスターに照準を合わせる。


続々と曲がり角から現れるモンスター。


小型と言っているが、浅層にいたラクーンより大きい。それが高速で天井や壁を蹴りながらこちらに向かってくる。


しかし、シドもライトもそんな拙い回避行動につられ射線を誤る事などしない。全弾正確に急所に叩き込み、モンスターの命を絶っていく。

曲がり角から姿を見せた瞬間に撃ち殺されていくモンスター達。通路に屍を積み上げられながらも、こちらを襲う気配は鳴りを潜めることは無く、モンスターの増援はとどまることを知らなかった。


奥の方から新たな中型が出現してくる。最初の多足型の機械モンスターではなく、キャタピラ式の重量型モンスターのようだった。

ライトは自分の装備では撃破に時間が取られると判断し、シドとコンタクトをとる。すると、シドは自分が排除すると返答を返してきた。

ライトはそのまま小型の処理に全力を尽くす、連射速度と弾幕の厚さはライトの方が上の為、大物はシドに任せた方が効率がいい。


中型モンスターが通路に姿を見せる。

シドは右手のS200を宙に投げ、背中からPST-バレルを取り外し、中型モンスター目掛けて専用弾を撃ち放つ。

大口径から放たれた専用弾は、中型モンスターに命中し、そのぶ厚い装甲を軽く貫通する。

専用弾はモンスターの内部構造を貫き、背後から飛び出ると通路の壁に深々と突き刺った。

正面から後方まで貫かれたモンスターは、重要機関をごっそりと抉られ機能を停止し、横滑りを起こしながら壁に激突する。


シドは中型モンスターへの着弾を確認し、背中にPST-バレルを戻すと、宙に投げたS200をキャッチし小型モンスターを狙い撃った。

<お見事>

<まあな>

ライトがシドを賞賛し、シドが軽く流す。

普通のワーカー達が命を諦めかねない大群の前でも、シドとライトは平常心で戦っていた。



ヤシロ達は5番地点へ駆け込み状況を確認する。全通路に向かってワーカー達が持てる全火力を放っていた。

「おい!状況は!」

ヤシロは近場のワーカーに声をかけ状況の説明を受ける。

「見ての通りだよ!小型がうじゃうじゃと襲って来やがる!」

そのワーカーも精一杯なのか言葉少なめに説明した。

「チ!」

ヤシロは舌打ちを打ってドンガとレオナに指示を出す。

「それぞれヤバそうなところをフォローしろ!俺はあの養殖どもの所に加勢する!」

ドンガとレオナは返事もせずに迅速に行動を開始する。ヤシロは同じ天覇所属の少年達が担当している通路の方に目を向けると、彼らを引率しているはずの担当が見当たらない。

「カズマ!ミランダは何処へ行った!?」

「いない!」

カズマはこちらに視線を向けずに吐き捨てる様に言う。

(いない?どういうことだ?)

今の状況は自分達が戻って来た通路以外3方向全てからモンスターが襲ってきている。

どこにも行ける状況ではない。なら、最初からここに来ていないのでは無いか?と考える。

視線を前に戻すと、既にモンスターが目と鼻の先にまで迫っていた。

(クソ!)

ヤシロは急いで銃を構え、モンスターへの攻撃を開始する。

「余計な事をするな!俺達だけで倒せる!」

カズマは援護に入ったヤシロに罵倒を投げかける。

ヤシロはカズマのあまりの天狗っぷりに怒髪天を突く。

「ふざけんな!ここまで近寄られて何が撃退できるだクソッタレが!!!!」

手持ちの特殊弾頭を連射し一番危険なモンスターを狙い撃ちながら大声で叱責する。

「テメー等が抜かれたら5番地点が全滅するんだぞ!!自分の名誉だけ考えて道連れを増やすくらいならワーカーなんか辞めちまえ!!!!」

そういいながら目の前まで迫ってきているモンスターを銃撃し続ける。

しかし、撃てども撃てどもモンスターの圧は減らない。右手にアサルトライフルを保持し、背中に背負っていた榴弾砲を左手に構え、モンスターの奥を目掛けて連射する。

着弾した榴弾が爆発し、手前のモンスターと奥のモンスターを分断する。これで手前を片付ければ距離的に猶予が取れるはずだった。

しかし、カズマのチームの一人がモンスターの圧に耐え切れずに銃を手放し戦線を離れてしまう。

「もう無理無理ムリむりーーー!!!」

恐怖からバニックを起こし、中央の通信機に縋りついて蹲ってしまった。

ヤシロは榴弾砲を背中に戻し、もう1丁のアサルトライフルを左手に持ち替え、両手で銃弾を撃ち続けた。

一人が恐怖に負け離脱したため、他の連中も及び腰になっている事が空気でわかる。

(まずい・・・・)

今ここで誰かが臆病風に吹かれたらここは持たなくなる。

そう考えていると、後ろから銃弾が飛んできてモンスターを攻撃し始めた。

「向こうは片付いたよ」

ヤシロの右隣に走り込んでいたのはレオナだった。

シーカーではあるが、そこらのハンターよりも頼りになる相棒がフォローに付いてくれたおかげで、機運がかわる。

「助かったぞレオナ」

短く礼を言い、ヤシロは目の前のモンスターを討伐していく。

目の前からモンスターが居なくなると、後方から走って来るモンスターが目に入る。榴弾で吹き飛んだ死骸を踏みつけ、こちらに猛然と向かって来ていた。

(あれを殺ればとりあえず終了だな)

ヤシロはもうひと踏ん張りだと、銃を構え引き金を引く。レオナもそれに続き、攻撃を行いモンスターを討伐していった。

すると、左隣にドンガが現れ大型のアサルトライフルを連射する。

「子供たちは後ろに下げたわ。これ以上は無理だと思ったからね」

「・・・わるいな」

「いいのよ、ワーカーになりたてでしょ?それでこの修羅場はきついわ」

3人の中で一番の高火力を持つドンガが参戦し、加速度的にモンスターの殲滅スピードが上がる。

目に見える最後の一体を討伐し、レオナが周囲の状況を確認する。

「もう大丈夫ね。あたりにモンスターはいないよ」

「シド達の方は?」

「それも大丈夫。かなりの数だったけど全滅させたみたい」

「やっぱり、やるわね。あの子たち。何か凄い音もしてたわよ?」

レオナが襲撃の終了を宣言し、一旦落ち着ける状況が出来たなと一息つく。


「お前!なんで逃げた!!」


ヤシロが振り返ると、カズマが最初に逃亡した少女の胸倉を掴んで喚いていた。

「お前の様な臆病者は俺のチームには必要ない!!」

カズマは表情に怒りを載せて喚く。

「いい加減にしなさいよ!!」

そのカズマをもう一人の少女が止めに入り、カズマの手を振りほどく。

「アズサ!!お前はこんなやつを庇うのか!!!」

「この状況に陥ったのはアンタのせいでしょ!!最初の襲撃があった時に攻撃チームに救援を頼んでいれば、ここまでにはならなかったのに!!!!」

カズマの怒鳴り声にアズサが怒鳴り返す。

「なんだと!!」

「本当の事じゃない!!他のワーカーチームに救援を出せって言われてるのに「俺達なら大丈夫!」とか言って拒否したのはアナタでしょ!!救援依頼を掛けようとしたミサトを止めたのもアナタじゃない!!!」

「救援を呼んだら評価が・・・!!!」

「命があってこその評価でしょ!!!???私たちはアナタの使い捨ての駒じゃない!!!!ヤシロさん達がフォローしてくれなかったら私たち全滅してたのよ!!!!」

反論しようとしたカズマの声に被せアズサは大声で言い捨てる。

アズサの足元に崩れ落ちていたミサトは俯き、目から涙が流れ落ちていた。

「・・・・・レオナ・・・頼んでいいか?」

「・・・了解」

ヤシロの頼みを聞き、事態を収拾しようとレオナは彼らに向かっていった。

「・・・はあ~・・・」

「ギルドの若手育成も大変ね」

ドンガはそういい、ヤシロの肩に手を置く。



「ヤシロさん・・・・ん?なんだ?この空気?」

「ほんとだ、なんで喧嘩してるの?」

後ろからシドとライトの声が聞こえ、ヤシロとドンガは2人に振り向く。そして、彼らの恰好と手に持っているモノが目に入り固まった。

シドは頭に怪我を負ったのか顔面血まみれで、ライトの方も防護服がズタボロになっていた。


そしてシドとライトの手には、オートマタと思われる残骸があった。


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