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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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ライトのコーディネイト

<それでは、ライトには身体拡張ユニットを使用してもらいましょう>

そうイデアが宣言し、ライトに拡張ユニットを持ってこさせる。

<まずはライトの血液とユニットを反応させ起動します。その後はユニットが流すアナウンスに従ってください>

「血?」

シドは不思議そうにそう聞き返す。

「俺の時は知らないうちに起動してなかったか?」

シドとしては寝ている間に勝手に起動していたような?と思っていたのだが、ちゃんとしたプロセスが存在していたらしい。

<シドはユニットを血の付いた布の上に置いたことによって反応したのです。そして翌日に起動した私に気づきリンクしたと言う訳になります>

「・・・なるほど・・・そうだったのか」

「それで、何処に血を付けるの?」

ライトは何処を見ても同じに見えるユニットをクルクル回しながらイデアに質問する。

<どこに付けても起動します>

そうイデアに言われ、ライトは指の皮を噛みきりユニットに押し付ける。

すると、今まで青一色だった箱の表面が動き出し、回路の様な模様を描きながら点滅を繰り返した。

その様子を興味深げに眺めるシドとライト。しばらくすると模様の変化が落ち着き、アナウンスが流れる。

<システムユーザーとの接触を確認>

<ユーザーとのリンクプロセスを開始します>

<当ユニットを両手で保持してください>

おおっとライトは声を上げ、まじまじと手の中のユニットを見る。

「凄いね、どうやって音を出してるんだろう」

<ライト、興味があるのは分かりましたが、アナウンスに従ってください>

「あ、了解」

ライトはイデアに言われた通り、両手でユニットを保持する。その様子を少しニヤニヤしながらシドは見守った。

「・・・・・なんでシドさんは笑ってるの?」

シドの様子を訝しんだライトが不審そうな目でシドを見る。

「いや?俺の時も同じだったな~と思って」

この後に起こることを知っているシドは、その時のライトの反応を少し楽しみにしていた。


<当ユニットの正常な固定を確認、ユーザーとのリンクを開始します>

<当ユニットはユーザーと物理的にリンクしユーザーのコーディネイトを行います>

<当ユニットとリンクすることを承認しますか?>

「はい、承認します」

<承認を確認・・・・リンクを開始します>

ライトが承認し、その確認をユニットが取ると、ライトの両手の甲から複数の棘が飛び出す。

「うわ!!!!」

ライトは突然の痛みに驚いて手を放そうとするが、ユニットが融解しライトの手を包み込む事によってそれも不可能になる。

「ちょ!ちょ!ちょっと!!!なにこれ!!!!」

狼狽するライトを見てシドは笑い声を上げた。

「あっはっはっは!やっぱりそういう反応になるよな?落ち着けよ、もう痛みもないだろ?」

シドのそう言われ、ライトは自分の両手を見る、液状になって自分の手を包んでいたユニットが両手に染み込む様に消えていく。手の甲を確認するが、そこには穴等なく綺麗な状態だった。

「・・・・・シドさん知ってたでしょ!」

ライトはシドがこうなることを知っていて、自分に黙っていた事に腹を立てる。

「ああ知ってた!いや~、共有できる相手が増えて嬉しいぞ」

未だケラケラと笑い声を上げるシドに恨みがましい視線を投げるライトだったが、急にハッとしたような顔をしてベットの方に移動する。

「お前は何時間だって?」

恐らくユニットから、コーディネイトの開始を宣言されたのだろうと思ったシドは、ライトのコーディネイトに必要な時間を聞いた。

「27時間だって」

「俺の時の約半分か・・・ま、ゆっくり寝とけ。起きたらめっちゃスッキリしてるだろうからな」

「わかった。おやすみ」

「ああ、おやすみ」

<おやすみなさい。ライト>

そして、ライトの部屋を出たシドは、今度は自分の部屋へ移動する。

ベットに寝転がり、イデアにどの様な内容になるのかを確認した。

「それで?今回のコーディネイトの内容はどうなってるんだ?」

<筋力の上昇や骨格の強化と、蓄電器官の作成を行い、いちいち発電しなくても身体能力の強化を行えるようにします。後は感覚器官の強化を行い、限りなくリアルタイムな現状を認識できる様にしたいと思います>

「なるほどな、今の強化版って感じか?」

<はい、それと格闘戦の知識のインストールですね。もうすこし効率的に体を動かせるようにしたいと思います>

「わかった、よろしく頼む」

<はい、それではコーディネイトを開始します>

イデアはそういい、シドの意識は闇の中に溶けていった。




シドの意識が浮上してくる。もうコーディネイトが終わったと言う事なのだろう。一度目のコーディネイトが終了してから、シドは久しぶりに覚醒する感覚を思い出していた。

<おはようございます>

「おはよ、イデア」

<体調はいかがですか?>

「ん、特に何もないな。気分も悪くない」

<そうですか、それは良かったです。体内栄養素を大量に消費しましたので、補充をお願いします>

シドは時間を確認すると夜の22時だった。

コーディネイトを開始して、ほぼ丸一日ベットに横たわっていたことになる。

<ライトの時間に合わせました。もうすぐライトも起きてくるでしょう。それまでに食事の支度をしてはいかがですか?>

「そうだな、ちゃちゃっと何か作るか」

シドはベットから起き上がり、2階にあるキッチンまで移動する。

(何作るかな~・・・)

保冷庫の中身を確認し、適当に食材を取り出す。

(ん~、パンもあるし、大量に作れるシチューにするか)

ここ数日、料理を行ってきたため、調理も手馴れてきたシド。肉や野菜の切り方もだいぶん洗練されてきた。

「ん?なんだか今までより思ったように切れるな」

シドは以前より包丁さばきが上達したように思える。

<コーディネイトの効果ですね、シドの意識と体のズレをさらに小さく調整しました。眼球の性能も向上していますので拡大縮小を自由に行えるはずです>

シドはその言葉を聞き、視界に映るものを拡大したり縮小したりと色々試しながら調理をすすめる。

「おお!肉の繊維まではっきり見えるぞ!」

なんだか楽しくなってきたシドは、能力向上した体を使い高速で調理を行っていく。


半寸胴の中でシチューがコトコトと音を立てる。

鍋の前に椅子を持ってきて座るシドが、腕を組みながら強化された体の感想をイデアに伝えた。

「自分の思うように体が動くってやっぱり凄いな。自分の身の回りもハッキリ認識できるし、スピードもかなり上がってる」

<そうですね。神経伝達速度も上昇していますので、体を動かす際のタイムラグも減少しているはずです>

「これで時間のかかりそうな料理もささっと作ることが出来るな!」

<・・・・・・料理人に転向する気ですか?>

なにやら目的が変わっている様な発言をしだすシド。

「冗談だよ。これなら遺跡の深部でも活動できるようになるかもな」

<そうですね。まずは受けた依頼でウォーミングアップを終わらせましょう>


シドとイデアが話していると、上の階からメキ!っと破壊音が聞こえてきた。

「・・・・・ライトが起きたか?」

<その様ですね。強化された身体能力を持て余している様です>

「しゃーない、ちょっと見に行ってやるか」

よっこらしょ とシドは腰を上げ、鍋の火を止めてから3階にいるライトの様子を見に行く。


ライト視点


ライトの意識が浮上していき、目を開ける。

すると今まで以上に眼球から送られてくる情報量が多くなっており、急な変化に脳が混乱してしまい眩暈が襲ってきた。

「う・・・」

ライトは目を閉じ、手で押さえながら呻く。

眩暈が収まるまでじっとしていたライトだったが、ゆっくりと目を開け、飛び込んでくる情報に慣れ始める。

コーディネイト前と比べると、明らかに世界が鮮明に映った。

これが旧文明の人たちが見ていた世界かと感動しながら、ライトはベットから降り服を着替えようとした。

着ていたシャツを脱ごうとしたのだが、耳にビリビリと音が聞こえ(なんだ?)と思いシャツを見ると肩のあたりが裂けてしまっていた。

「あれ?そんなに傷んでたのかな?」

不思議そうに首をかしげるライト。

普段着に袖を通し、部屋から出ようとドアノブを捻り扉を開けようとすると、メキ!っと音がしてドアノブが取れてしまった。

「え?」

混乱するライト。これはコーディネイトで身体能力が上がり、腕力や握力が飛躍的に向上した為、力加減が分からずにドアノブをもぎ取ってしまったのだった。

ライトは手に持っているドアノブを見ると、自分の手に合わせて変形しており、自分が握りつぶしたと言う事がハッキリとわかる。

ライトは自分の状況を正確に判断し、自分の力がもの凄く強くなったと言う事は理解できた。

しかし、その対処方法が分からない。

どうしたらいいのかと混乱していると、ドアの向こう側からシドが声をかけてきた。

「ライト~。大丈夫か~?」

大丈夫ではない。ドアノブは破壊してしまったので、ドアを蹴破りでもしなければ部屋から出られなかった。

「ええっと・・・ドアノブ壊しちゃって・・・」

ライトは素直に現状をシドに伝える。

「わかった。開けるぞ」

シドがそういうと、バキ!っと音と共にドアからシドの手が生えてくる。そのままドアを掴むと、ドアの金具ごと引きはがした。

「おはよーさん。起きて速攻やらかしたな。今日から力加減の訓練開始だな」

そういい、シドはドアを持ったまま2階へ降りていく。

「・・・・・・・その開け方ならボクも出来たと思うよ?」

ライトの呟きは誰にも聞かれることなく消えていった。


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