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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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イデアのアップデート

シドとライトはファーレン遺跡中層奥部に足を踏み入れていた。

この辺りは浅層の様にボロボロの外見のビルや瓦礫は少なくなり、当時の姿をそのまま残している様だ。


しかし、街並みが綺麗になるのに比例してモンスターの出現率も上がり、戦闘回数も大幅に向上している。

基本的には、モンスターに気取られる前に狙撃で片付けているが、複数のモンスターが居る場合は本格的な戦闘になる。ライトが新しく新調した銃はその性能を遺憾なく発揮し、モンスターを屠っていく。


唐澤重工製のハンター5はライトの情報収集機と接続されることによって、計6個ある銃口をそれぞれのターゲットに振り分け適切な弾丸を吐き出しながら殲滅していく。


「なかなか便利そうな銃だな」

シドは10を超えるモンスターの群れを瞬時に殲滅するライトに、そう声を掛ける。

「うん、1体1体狙わなくていいのがすごく楽。ある程度腕を向けたらボクの考えてる通りに銃口が動いてくれるからね」

広範囲の索敵能力を持つIFG‐EX80と連動させている為、腕で細かく照準を合わせる必要が無く、ライトの思考内で照準を合わせ引き金を引くと思った通りに弾丸が発射された。

「これならキャノンクラブくらいなら何体来ても大丈夫じゃないかな?」

ライトの言う通り、2・30体程度ならものの数秒で撃破出来てしまうため、シドは大・中型や強固な装甲を持つモンスターに集中することが出来ていた。

「シドさんの新しい銃はどう?」

シドも新しく購入したPST-バレルを使用し戦闘を行っている。

この辺りに出る中型程度ならS200で楽に討伐できるが、10mを超える様な大型の機械系モンスターにはPST-バレルを使用して戦った。

大口径から発射される弾丸の威力は高く、通常弾でもキャノンウォーカーを一撃で仕留める威力を持っていた。

「専用弾は使いどころが難しいな。威力が高すぎてモンスターの後ろのビルまで貫通したのは驚いた・・・。通常弾でもこの辺りなら通用するから暫く専用弾は封印だな」

新しい銃にテンションが上がったシドが、機械系モンスターに専用弾を撃ち込んだところ、楽々貫通して後ろ側にあったビルの壁まで貫いたのだった。そのせいで、周囲のモンスターを呼び寄せることになり、ライトと2人で大乱闘を行ったのだった。

「あの威力はすごかったね。その後も大変だったけど・・・」

<キャノンウォーカーを貫通すると聞いていたのに、あのような中型に専用弾を使うからです>

いつもより厳しめの突っ込みを入れてくるイデア。

「・・・・悪かったよ。しばらく封印しますよ・・・」

あれは自分が悪かったと自覚のあるシドは、反論せずに先に進んでいく。


「しかし、建物は綺麗だけど、遺物らしい遺物が見当たらないな?」

「そうだね、家具とかばっかりでさ。嵩張るし持って帰ろうって気にならないよ」

<この辺りは一般人向けの商業施設のようですからね。しっかり探索すれば価値の高い物が発見できると思いますが、ある程度は他のワーカー達に回収されているでしょう>

「他のワーカー達が来ててモンスターもいる・・・なんでこんなに綺麗なんだろう?」

ライトはこの辺りのビル群が綺麗な状態のままなのが不思議だった。

<おそらく自動修復機能が生きていると思われます。ある程度の時間が立てば外見上の欠損等は修復されているようです>

「へ~」

旧文明の技術力の高さに感心するライト。

「おっとまた来たぞ。今度は中型と14m級って感じだな」

シドが新しいモンスターの気配に気づき、ライトに知らせる。二人は直ぐに散開し、モンスターを効率的に討伐できるポイントに移動する。

シドはモンスター正面から迎え撃ち、ライトは横に回り込む。モンスターがシドに向かって突進してくれば横からの銃撃で中型を撃破する戦い方を取った。


モンスター達がシドに気づき一気に接近してくる。

シドは射線が通った瞬間に両手に持ったS200から弾丸を発射、中型のモンスターを粉砕していく。大型のモンスターが姿を見せ、シドに向かって砲身とミサイルの照準を合わせてくる。

シドは撃たれる前に砲身の射線から身をズラし、ミサイルに向かってSH弾を撃ち込んだ。

発射寸前だったミサイルにSH弾が命中し、モンスターの背中で爆発する。その衝撃で大型モンスターはよろけるが、それほど大きなダメージは与えていない様だった。

動きの速い中型が先行してシドに駆け寄って来る。

すると横道に隠れていたライトから嵐の様な弾幕を浴びせられ、生物系・機械系関係なく破壊されていく。


シドを狙った大型モンスターは、6本の足を動かしながらシドを砲身で狙い砲撃してくる。しかし、今更単発の攻撃を食らうシドではない。

簡単に射線から離れ、距離を詰めていく。両手のS200で弾頭を変更し、PN弾とSH弾を交互に撃ち出す。

砲身の付け根と、両前足の付け根に正確に命中した弾丸は、それぞれの特性を発揮し砲身と前足の付け根を破壊し、胴体から切り離す。

最後に残った武装と重心を支える足を失ったモンスターは、走っていた勢いのまま前傾に倒れ地面を削りながら止まる。


S200からPST-バレルに持ち替えたシドは、イデアによって表示されている弱点部位に通常弾を撃ち込む。

大型の弾丸はシドの思い描いた弾道を正確になぞりながら、モンスターに命中。

装甲を貫通し、内部の重要機関を蹂躙した。

制御装置を破壊されたモンスターは、直ぐに沈黙し動かなくなる。


「フ~。短時間で片付いたな」

「うん、大型がさっと片付いて良かったよ」

合流してきたライトがシドに返す。

「PST-バレルは優秀だな。S200だとあの装甲をぶち抜くには特殊弾数発撃たないとダメだろうから、こっちの方が経済的だ」

「そうだね、発射音が大きいから隠密中は使えないけど」

「その割に反動が小さいんだよな~・・・なんか撃ってる気がしない」

<PST-バレルは反動制御機構が組み込まれていますからね。S200と同じ反動ではほとんどのワーカーが使用できない銃となってしまします>

「ライトも弾頭の切り替えには慣れてきたんじゃないか?」

「そうだね、時間操作と併用したらそこまで難しくないから、後は数を熟していけば特に考えなくても自然と出来るようになると思うよ」


2人は新しい武装の感想を言い合いながら遺跡の奥へと向かって行く。


<二人共、そろそろ到着します>

イデアがそういい、目的のビルをマークで示す。

「おお~、あれが・・・・あんまり他のビルと変わらないか?」

「そうだね、ちょっと大きいくらいかな?」

<支社ですからね。そこまで大きな建物は必要なかったのかと>


2人はビルの中に入り、辺りを見渡した。

正面には来客用であろうカウンターがあり、右手にはエレベーターと思わしき扉、左手には歓談用であろうか?テーブルセットなどが並んでおり、外からはコンクリートの壁にしか見えなかったが、透き通ったガラスの様な壁になっており、外からの光が差し込んでいた。

「おー、すげーな」

「ほんとだね。なんかワーカーオフィスみたい・・・・でも、ほんと綺麗だね。他のワーカーってここに来てないのかな?」

<ここのビルに入るには資格が必要になります。会員証の様な物が必要であったり、企業関係者である必要がありますが、今回は私のユーザーであるシドがいる為、セキュリティが作動しませんでした。他のワーカー達なら入口を開く手段がありません。ライトの情報収集機でも端末を外部接続した段階で警報が鳴り、防衛機構が作動するようになっています>

「なるほど・・・厳重だね」

<本社程の重要機密を扱う事は無かったと思いますが、軍事企業です。外部からの接触は多くない方が望ましいのでしょう>

「それで?何処に行ったらいいんだ?」

<あのカウンターに向かってください。端末が生きていればアクセスできるはずです>

「了解」

シドとライトは受付カウンターに向かい、カウンターに埋め込まれている端末に触れる。

すると、イデアが操作しているのであろうか?画面が切り替わり、高速で文字が流れていく。

「これって何してんだ?」

「多分、この施設の概要とマップを取得してるんだと思うよ。暗号化されてるっぽいから良く分からないけど」

<流石ですねライト、その通りです。あと1分程でセキュリティを突破できますので、しばらくお待ちください>



しばらくしてイデアから終了したと聞き、シドは端末から手を放す。

「それで?どんな感じだ?」

<重要な情報や貴重品は持ち出されていますね。残っているのは当時では取るに足らない物と判断されたモノのみの様です。しかし、アップデートが可能な施設は未だ稼働しているようですので、そこまで行きましょう>

「わかった。セキュリティは殺せたのか?」

<いいえ、この端末から操作するのは不可能なようです。その為、防衛システムを掻い潜っていく必要があります>

「なかなか困難な話だね・・・」

「最初に遺跡に来た時を思い出すな・・・」

<ライトの腕の見せ所ですね。扉などはジャックして開けていく必要があります。幸い施設のマップは取得しましたので道に迷う事はありません>

イデアはそういい、シドの網膜にマップを表示し、ライトにもデータを送信した。


<このビルの3階になります。エレベーターでは無く、階段を使いましょう>

イデアに促され、シドとライトは階段の方に向かう。

階段へ続く扉はロックされており、ライトが解除しにかかるが、今までの遺跡と違いかなり複雑なセキュリティシステムになっているようだ。

「う~ん・・・これじゃない・・・・・・・・これかな?・・・あ、違う・・・・・・あぶね、トラップだった」

とブツブツ言いながら扉と向かい合うライト。

シドは万が一モンスターに襲われても対処できるように周囲の警戒を行っていた。

ピピっと電子音が響き、扉のロックが解除される。

「ふ~~~・・・・結構難しいね・・・」

「おつかれ、邪魔が入らないうちに進むぞ」

シドはそういい、扉の中に入り階段を上っていく。

3階までは何事も無く上って来れたが、扉にはまたロックが掛かっていた。

「またロックが掛かってるな」

「まあそうだよね。開けてみるよ」

ライトは扉の端末にコードを差し込み、解除を始める。

1階の時の経験からか、今回は直ぐに解除できたようだ。扉が開き、2人は奥へ進んでいった。


<二人とも、ここからは声を出さないようにお願いします>

イデアが二人にそう注意してくる。

<やっぱりここにもあったか>

シドは目を眇め、前方を睨みつける。シドの目の前には、赤い線が無数に走っており、初めて遺跡の探索を行った時に掻い潜ったのと同じような防犯システムがひかれていた。

<これって赤い線を遮ったら防衛機構が作動するやつだよね?>

ライトにも見えている様で、目の前の赤い線に警戒を示す。

<たぶんな。俺は最初の探索でコレに触れちまって、機銃と取っ組み合いすることになった>

<なるほどね。イデア、声も出したらダメなの?>

<ここには音声に反応する機器があるようです。警戒するに越したことはありません>

シドやライトは分からなかったが、イデアが言うのだから間違いないと、音声でのやり取りは行わずに念話でやり取りすることにした。

<行くぞ>

まずはシドが先陣を切り、赤い線に触れないように超えていく。シドとライトの体格ならなんとか超えていける様な隙間があり、その間に体を滑り込ませていった。

一番奥までたどり着いたが、そこにはまた扉がありまたロックが掛かっている。

<えらく厳重だな。軍事企業ならこれくらいのセキュリティは当然なのか?>

<そうだね。不法侵入者への対策としてはまだ不十分かな?ボク達がここまで来れてるんだから>

ライトはそう言いながら、端末にコードを接続する。

今度は音も無く扉が開き、奥に進めるようになった。

シド達は扉の中の様子を見ると、そこは処置室の様な感じになっていた。

中に入り、左手の方を見るとエレベーターのものであろう扉があり、右手は一面ガラス張りになっており、向こう側には訓練場の様な空間が広がっていた。

<なんだろここ?>

<ここが処置室の様です。私の様なAIのアップデートとコーディネイトを行い、隣の空間で試用が出来るという部屋のようですね>

<なるほどな。で、どうしたらいい?>

<シドはあの処置台の上に寝転んでください。後は私の方で処置します>

シドはイデアの言う通りに処置台まで歩いていき寝転んだ。

<ライトは何かあった時の為に警戒をお願いします>

<わかった>

ライトは情報収集機で周りの様子を警戒する。

すると、シドの頭の上に機器が下りてきて、シドの頭部を覆った。

<・・・・・・・イデア・・・大丈夫なんだよな?>

<問題ありません。何気にシドはこういう時臆病ですよね?>

<仕方ないだろ?!なんか変に改造される様な雰囲気で怖いんだよ!>

<言い得て妙ですね。あながち間違いではありません>

<・・・ぷくく>

ライトは普段は怖気とは無縁そうなシドが怖がっている様子に笑いがこみあげて来た。

<・・・・何笑ってんだよライト>

シドはライトの様子に不満そうにする。

<いや・・シドさんのそういう所、初めて見たから>

ライトは笑いを押し殺して言った。

<・・・ふん>

シドは若干不貞腐れながらイデアの操作が終わるのを待つ。

<それではアップデートを開始します。兵種は中近距離戦に特化した兵種としますが、よろしいですか?>

<ああ、それでいいよ>

<承知しました。これよりシドの意識が15分間シャットダウンされます>

イデアが宣言すると、シドの意識が落ちたようで、何も反応しなくなった。

ライトは(ボクがマイクロチップを植え付けた時もこんな感じだったのかな?)と思う。

イデアのアップデートが終わるまでの間、特に問題が起きる訳でもなく時間だけが過ぎていき、シドの意識が回復する。

<おはよ、シドさん。調子はどう?>

<ん~?特に変化はなさそうだけどな>

<はい、まだシドに対するコーディネイトは行っておりません。よってシド自身に変化はありません。流石に遺跡で数十時間意識を失ったままというのは危険すぎますので、拠点に帰り次第コーディネイトを開始します>

<そうか、よろしく頼むよ>

<はい、それとライト、今から取り出す装置を持って帰って・・!シド!>

イデアがそういうと同時に、隣のガラス張りの向こう側に気配が出現する。シドとライトは同時にその方向を振り向き、出現した気配の正体を確かめる。



ガラス張りの向こう側に、いつの間にか一体のオートマタが出現しており、こちらにモノアイを向けていた。


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