新装備 と 三ツ星重工支社跡へ
「いらっしゃ~い、二人共えらい活躍してるみたいやん?今度はオートマタやって?」
ミスカは2人を笑顔で迎え入れ、先日ワーカーオフィスに持ち込んだ遺物の話を持ち出してきた。
流石は商人と言ったところか、情報を仕入れるのが早い。
「ええ、まあ。なぜかキクチには怒られましたけどね」
「そらしゃーないやろ。大量の再生可能な記憶媒体と再生機、そんでオートマタの残骸やで。オフィスがオタつくのも分からんでもないわ」
ガンスがそうキクチの心境に理解をしめす。
「そうなんですね。ボク達もワーカーオフィスの統括が出てきてビックリしました」
ライトがオートマタ等をオフィスに持ち込んだ時の事を思い出す。
ワーカーオフィスの統括まで出張って来た事に驚くガンスとミスカだった。
「そらまた、えらい大物まででてきたんやな・・・」
「下手したら都市まで動くんちゃうか?」
ワーカーオフィスの統括が動くとは、それほどの案件になったと言う事なのだ。
<オートマタ1体でそんな事になるか?>
<わかんない・・・・そんなに強敵だったって感じはしないけど・・・>
2人はあまり実感として感じていないが、オートマタは北部で猛威を振るった過去があった。
戦闘用のオートマタが起動し、一つの都市が壊滅寸前まで追い込まれた事があったのだ。頑丈で機動力も高く、様々な旧文明の兵器を使用して攻撃してくるため、高ランクワーカー達でも手を焼いたモンスターとして広まっている。
全体から見て中堅クラスしか存在しないダゴラ都市付近の遺跡でオートマタが発見されたとなれば、相応の警戒がされて然るべきである。
<戦闘用のオートマタがダゴラ都市に攻撃を仕掛けてきた場合、非常に大きな被害を出すと考えられます。そのオートマタの武装にも左右されますが、ランク40以上のワーカーが総出で対応する必要が出てきます>
イデアの言葉を聞き、シドとライトはそりゃ大ごとだなと納得した。
「まあ、難しい事は偉い人に任せるとして、今日はライトの銃を買い替えたいのと、バックパックの見直しをしたいと思ったんです」
シドはそうガンスにいう。
「なるほどな。ライトはどんな銃が良いんだ?」
ガンスはライトに視線を向け要望を聞いてくる。
「今度遺跡の調査隊に参加することになったんです。恐らく地下での活動が増えるだろうってことで、取り回しの良い銃が欲しいなと・・・あと、今の銃だと威力不足だってシドさんに言われました」
ライトは自分の要望をガンスに伝える。
取り回しが良くて高威力の銃というわがまま要望だが、ワーカー達からその様な要望は多い。企業達もその要望に応える為、様々は銃を開発していた。
「うーん・・・そういう銃は結構あるからな・・・・とりあえず見てみるか?オススメを何種類か持ってくるさかい」
ガンスはそういい、トラックの2階へと上がっていった。
「ほいでシド。バックパックの方は?」
ミスカがシドにいう。
「今使ってるヤツなんですけど、容量は沢山入るんですけ戦闘時とか狭い場所に入る時嵩張るんですよね。それで拡張技術が使われてる様なバックパックは無い物か?と思いまして」
「ああ~・・・そういうのは無いな~・・・たぶんどの企業も作ってないと思う・・・需要が見込めへんからな」
「え?そうなんですか?小さいバックパックで量を入れられたら便利なんじゃ?」
ライトが需要が無いと聞いて不思議そうな顔をする。
「それがそう簡単違うねん。拡張技術をバックパックに応用すると金属製になってもて、そもそもの重量がかなり重たなるんよ。ほんで、価格自体も跳ね上がってまうから低ランクのワーカーは買われへんし、高ランクになったら車とか強化外装持ってるヤツがおおいから、そもそも必要ないって話になるんよな」
「そうなんですか・・・でも車が入れない所に探索に行ったりしますよね?その場合ってやっぱりバックパックが邪魔になったりするんじゃ?」
「そうゆう場合は、ギルドの場合はペーペーに荷物持ちさせるし、チーム単位のワーカーはポーター雇ったりするんよ」
ポーターとは、遺跡に行くワーカー達の荷物持ちをする者達のことだ。基本戦闘には参加せず、食料や水の運搬から遺跡で発見された遺物の入ったバックパックを背負ってワーカー達に随伴する者達である。
専門の組合も存在しており、ポーターだけで無く、遺跡から都市までの運送やワーカーオフィスへの納品を代行してくれるサービス等も存在していて、遺跡中層で活動するワーカー達はポーターと契約している者も多く存在した。
信頼できるポーターは貴重である。
重量物を運び、ワーカー達の行動に付いていける者となると相応の訓練が必要になって来る為、彼らと契約を結ぶには相応の報酬を渡さなければならなかった。
「へ~、そんな組織もあるんだな」
「言われてみれば当然かもね」
シドもライトも納得の表情を浮かべる。
「なら、防護服に直接取り付けられる給弾カートリッジってあります?俺らバックパックを降ろして戦う事があるんですけど、今のって一々取り付け取り外ししないとダメなんですよね」
「それやったらあるで、ちょっと待っとき」
ミスカは後ろの棚あたりから給弾カートリッジを2個引っ張り出してきた。
「腰から背中にかけて着けるタイプやな。邪魔にもならんってことでこのタイプが一番人気や」
「ならこれを2つ貰います」
「おおきに、お会計はライトの銃と一緒でええか?」
「はい、お願いします」
シド達がミスカと話していると、ガンスが2階から戻って来る。
それと同時に搬送用のエレベーターが下りてきて、そこには3種類の銃が置かれていた。
「待たせたな。これがオススメなんやけど、どないする?」
1つ目は今使っているG-MK330を製造した久我テックの複合銃 CP-540。
有効射程は1.5kmと今の物と変わらないが、威力・集弾性・連射機能が向上しており、連射はマシンガン並みの連射力を持つ。
弾頭は通常弾頭・PN弾頭・SH弾頭を基本とし、AS弾頭と大口径のチャージバレット(CB弾)にも対応しており、総合火力は非常に向上しているが、その分重量もかなり重くなっている。基本的にパワードスーツを着用して使用するタイプの銃だ。
値段2500万コール
2つ目はドゥエルグ・ガンスミスという完全に銃器だけを製造している企業の製品。
パペックシューターシリーズ PST-バレル。
連射機能を持たせた大口径ライフルであり、今の銃より銃身は短くコンパクトな形状をしているが、口径が大きく威力そのものは跳ね上がる。連射機能もあるが、1秒につき3発と弾幕を張るには向いていないが、頑強な大型モンスターには非常に突き刺さる性能を持っている。その分反動も大きい。
弾種は通常弾と専用弾の2種類であるが、専用弾は旧文明のビルですら貫通する威力を持ち、都市防衛戦で戦ったキャノンウォーカーくらいなら一撃で貫通する威力を発揮する。
値段3200万コール
3つ目は唐澤重工製、ガントレット型複合銃 ハンター5。
ピーキーな性能を追い求める唐澤重工としては珍しく、一般的なハンター達にも人気があるハンターシリーズの第5世代機。
4つの銃口を持ち、1つは大口径の専用弾用、3つは連射用となっている。有効射程はそれぞれが1.5kmと800mとなっており、中短距離戦闘に対応可能な銃である。
3つの銃口から放たれる銃弾は圧倒的な投射量を誇り、破壊力・殲滅力が非常に高い。
3つの銃口はある程度独立して稼働可能であり、情報収集機と連結させることで、それぞれのターゲットに向けることが出来る。
対応弾頭も基本的な3種類の他にAS弾頭と対物弾に対応しており、専用弾は単発であるが大口径の銃口から強力な弾丸を射出し、大型モンスターにも対応可能だった。
手の先から二の腕にかけてカバーする形状になっている為取り回しもスムーズに行えるが、重量は重く使いこなすには腕力が必要になる。
値段2800万コール
「とまぁ、説明はこんな感じやな」
ガンスはそれぞれの銃の特性を説明した。
皆高い性能を誇り、ランク10台のワーカーが持つにはかなりの高性能であることが分かる。
ライトは頭を悩ませ、どれが良いかと考えた。
「う~ん・・・ボクの戦闘スタイルで考えたらCP-540かハンター5なんだけど・・・重量的にどうなんだろ?」
「その辺は持ってみないと分からないだろ。俺的にはハンター5がオススメ」
「・・・・・・・・・・なんでそう思うの?」
「唐澤製は使いこなせれば非常に強力」
シドは今まで唐澤重工製の銃に散々振り回されてきたが、一度使いこなせるようになると手放せなくなると感じていた。
順調に唐澤ファンの心理に嵌っているシドである。
「まあな、ハンター5はシドの持っとるKARASAWA S200みたいなじゃじゃ馬やないから、ライトでも扱えると思うで?反動もMKライフルを2丁持ちで使えるんやったら問題ないやろ」
「そうでしょうか・・・・?」
ライトはシドのA60の件で唐澤製の銃に若干アレルギーを発症していた。しかし、情報収集機の方では確かにこれ以上は無いと思える性能である為、シドとガンスの言葉を否定しきれない自分もいる。
「・・・とりあえず、持たせてもらっても?」
「はいよ」
ガンスはライトにハンター5を渡す。
ライトはハンター5を腕に合わせ、カバーを閉める。グリップの握りやトリガーの感覚を確かめたり、腕を動かしたときの重量感等を確認する。
「持った感じは特に違和感はないね。後は撃った時の反動かな?情報収集機との連動性も見てみたい」
「わかった、シドが試し打ちした時の荒野までいってみるか?」
「そうですね。お願いできますか?」
「んじゃ、俺は車で追いかけるか。ライトの銃が決まったらその足で遺跡に行こう」
話は決まり、ミスカ達のトラックとシドの車が荒野に出ていく。
ライトは車の中でガンスと相談しながら情報収集機とハンター5のリンクを行い、細かな調整はイデアと行った。
岩や瓦礫が点在する荒野に到着し、ライトの試し撃ちが始まる。
単発での射撃から連射、複数のターゲットに向けての射撃、専用弾の使用感などを試す。
「この銃、情報収集機とリンクさせてたら3つの内のどの銃口から弾を撃つかも選択できるんだ・・・・すごいね」
「そうなのか?」
「うん、さっき3連発で撃ったけど、どの銃口からどの順番で撃ち出すのかも選択できるし、撃つタイミングもボクが指定できるみたい」
<これは、少し設定を改良すればトリガーを引く必要もなく、ライトが考えただけで発射する事も可能になりますね>
「すげーな・・・反動はどうなんだ?」
「A60に比べたらなんてことないよ」
なにかとA60を引き合いに出してくるライト。
「そんなトラウマになってんのか?一回コレ(S200)撃ってみるか?」
<やめて下さい。ライトの腕が壊れます>
「おいおい、ライトの腕力はすげーけど、流石にその銃は無理だろ。腕がぶっ壊れるぞ」
イデアとガンスが同時に止めに入る。
「シドさん、もう自分が人間じゃないって事自覚しようよ」
ライトがそういい、シドはカチンとくる。
無音でライトに近づき、ライトの頬をつねり上げる。
「いふぁふぁふぁ!」
必死にライトが抵抗し、シドが手を離すとライトは頬を摩りながら「・・・ひどい・・・」と呟く。
「失礼な事いうからだ」
シドは腕を組み、なんてことを言うんだとばかりにライトを睨みつける。
(((いやS200を生身で扱える時点で人間離れはしてる・・・)))
その言葉を聞いていた3人はそう思った。
「んで?ライト。その銃でええんか?」
「はい、これが一番汎用性が高そうですし」
ライトはハンター5の購入を決めた様だった。
「あ、俺もPST-バレルを1丁もらえますか?」
シドはライトが選ばなかった銃を買うと言い始める。
「ん?シドも買うんか?S200だけで十分やと思うけど」
ガンスが不思議そうに聞いてくる。
「ええ、まあ。コイツも非常にいいんですけど、大型を相手にするには弾丸のサイズが小さいと思う時があってですね。大口径のライフルが一つあれば便利かなって、今度遺跡の調査隊に参加することになりましたし」
<大口径の銃があれば大型モンスターにも有効打を放てますね。賛成です>
イデアの賛成もあり、シドはPST-バレルを1丁。ライトはハンター5を2丁購入することにした。
シド達は決済を済ませ、ミスカ達と別れる。
「おし、いよいよ中層奥部を目指すぞ」
「うん、その道中で新装備の試運転もしないとね」
<気を引き締めて下さい。旧文明の軍事企業ですので、防衛施設も充実していたはずです。今までとは難易度は桁が違います>
「「了解」」
シド達はファーレン遺跡の中層奥部、三ツ星重工支社跡を目指して車を走らせた。
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