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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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大量の記憶媒体とオートマタ

2人は縦穴を上り、元の扉の前までやって来る。

<ねえ、この中ってさモンスターが入って行ったよね?>

<そうだったな・・・>

<いきなり大群に囲まれるって事ないかな?>

<扉の向こうがどうなってるかって所じゃないか?ライトは扉が開いた時、向こう側の事わかったか?>

<エレベーターみたいになってた事しかわからなかった>

<俺もなんだよな・・・遺跡で動いてるエレベーターに乗るってどうなんだ?>

<一度動かせばボクの方である程度制御できるから閉じ込められるって事にはならないけど、モンスターに関してはどうかな?>

<中層レベルのモンスターであれば、エネルギーシールドを全面に展開すれば反撃の時間くらいは稼げると判断します>


2人はイデアの意見と、最悪退路は確保できるとの事で、一度乗ってみることにした。

ライトが情報収集機で制御室にアクセスし、扉を開く。

2人は油断なく銃を構え、扉の中に危険が無いか確認し中に入る。部屋の中は何もなく、操作盤の様な物も存在しなかった。

暫くすると自動でドアがしまり、部屋全体が降下している感覚を受ける。

<やっぱりエレベーターみたいだったね>

<とりあえず全方向を警戒しとけよ。この部屋の形だったらどこが開くかわからんからな>

2分程で部屋は停止したようで、シド達が入ってきた方が開き始める。

2人は銃を構えたまま扉の方を警戒する。

扉が開ききると、向こう側には通路が続いており扉が見えた。

<この通路は綺麗だね>

<そうだな・・・警戒だけは怠るなよ>

ライトの言う通り、外の外観とはうって変わって通路は非常に綺麗な状態が保たれていた。

<空気は循環してるみたいだな>

<うん、旧文明のシステムがまだ生きてるって事だね。警報装置やトラップなんかは見当たらないけど、何の施設なんだろう?>

2人は通路を歩きながら、感想を言い合う。

奥の扉までたどり着き、取っ手に手をかけ押し込んだ。扉は抵抗なく開き、シド達は奥の部屋に入って行く。


そこには無数の棚が置かれ、記憶媒体の様な物が収められていた。

棚にあったであろう表示パネルは沈黙しているが、何かしらのデータ置場だった事は間違いない。

<凄い数の記憶媒体だね。数千本はありそう>

<ここって何の施設だったんだろうな?あれだけ厳重に入口の管理をしてるって事は貴重な資料が置かれてるって事か?>

<とりあえず調べてみないと何とも言えないね。それとシドさん。モンスターの気配ってある?ボクの方では感知できないんだけど>

<俺の方にもない、動いたら空気が揺らぐから直ぐわかると思ったんだけどな>

<ここには来ていないと言う可能性もありますね。別の場所に送られた可能性もあるかと>

<うーん、通信コードは一つだったんだけどな・・・とにかく調べよう。ボクが中身を確認してみるから、シドさんは警戒をお願いしていい?>

<了解>

ライトはシドに周囲の警戒を頼み、記憶媒体の一つを手に取る。

<ライト、万が一危険な情報量が流れる恐れがありますので、私と接続した状態で行った方がよいかと>

<そうだね、シドさん、コレ>

ライトはシドに情報収集機から伸びたコードを手渡す。シドがコードに触れることによって、イデアがライトの情報収集機に直接アクセスできるようになる。危険な状況に陥れば、イデアの方で情報を遮断することも可能だった。

<じゃー、始めるよ>

ライトは真剣な顔で記憶媒体を情報収集機に接続し、中身の確認を行う。この状況になれば基本ライトは無防備状態になる為、シドは殊更に辺りの気配を探った。

しばらく記憶媒体の中身を閲覧しているのか、ライトは動かなかったが急に驚いたような顔をして目を白黒させ始める。

シドはライトの変わり様に驚くが、イデアから危険信号など出ていない為、変わらず警戒を続けることにした。


「うわ~~~!!」

急にライトが顔を両手で庇い、尻餅を付いて叫び出した。

「おい!どうした!!なにがあった!!」

シドは慌ててライトに近寄り肩を揺らす。

<大丈夫です、私の方で停止しましたのでもう目を開けても問題ありません>

イデアは特に焦った様子も無くライトにそういう。

「・・・・・」

ライトは腕を降ろし、恐る恐る目を開く。その顔は真っ赤になっており、一体何が起こったのかシドにはわからなかった。

「おい、イデアなんだったんだ?ライトは大丈夫なのか?」

シドはイデアに詳細を聞こうとする。

<はい、身体的に影響はありません。この媒体の中に保存されていたのは一種の娯楽データだったようです>

「娯楽?」

シドは意味不明だと言う表情をし、未だ顔が紅潮したままのライトを見つめる。

<はい、タイトルは「乱れた人・・・「ワーーワーーワーーー!!!!」>

イデアが何か言おうとしたとき、ライトが慌てたように自分の声でかき消した。

「おい、なんだよ急に・・・」

「なんでもない!なんでもないよ!ここには特に重要なデータがあるわけじゃなさそうだから他に行こう!」

ライトは自分の情報収集機から記憶媒体を外し、律儀に棚に戻すと急ぎ足で他の棚に向かった。

<なんだあれ?>

<今閲覧した媒体内の内容に動揺しているのでしょう。年齢的にもああなってしまうのは仕方がないかもしれません>

「???」

シドはライトの様子に首をかしげながらチラっと先程の棚に視線をやる。


ライトは先程の棚から離れた所にある記憶媒体を手に取り、恐る恐る情報端末に接続する。

自分に追いついてきたシドにまたコードを渡し、媒体の中身を確認した。

脳に直接情報を送って来る機器で再生され、網膜に映し出された映像は非常にリアルだった。


この媒体の中に保存されているものは過去に起こったことを題材としたドキュメンタリー映画のようだった。


触りだけ確認したライトは映像を停止し、機器から媒体を取り外す。

ライトはこの施設が何なのか大体の予想がついたようだった。

<ここって、要するに娯楽映像提供施設だよね?>

<そのようですね。この媒体も本来の歴史を保存している訳ではなく、脚本家や監督の脚色が入っている為歴史的価値が高いかと言われればそうでもありませんが、現代で考えれば歴史研究機関などからは生唾物でしょう。技術的にも現代より優れていると判断します>

<娯楽映像提供施設?>

<防壁内でVRシアターってあるじゃない?あれのデータが沢山置かれてて、それを売ったり貸したりしてる店舗なんじゃないかな?>

<それがなんであんなに厳重に隠されてるんだ?>

<おそらくアングラな内容を扱っているからでしょう。当時の倫理観からは逸脱していた内容の物が取り扱われていると推測できます>

<???>

シドはあまりピンと来ていない様だったが、ライトはその一端を先程閲覧したため、会話に参加しないように努めた。

<で?持って帰って大丈夫なのか?これ>

シドとしては遺物が金になるのかどうかが重要だった。

<はい、どれほどの価格になるか分かりませんが、ワーカーオフィスなら問題なく買い取ってくれると判断します>

<その前に、他にも何かないか調べよう。このエリアは記憶媒体しか並んでないみたいだし>

ライトの言う通り、此処には無数の記憶媒体があるだけで、他にめぼしいものは無い。しかし、他のエリアに行けばまだ何かある可能性があった。


特にモンスターの気配がある訳ではないが、単独で行動するのは危険と言う事で一緒に探索を開始する。

この部屋を隅々まで探索したが、記憶媒体しか置かれておらず、別のエリアに続く扉が一つだけ存在した。

その扉も特にロックは掛かっておらず、簡単に中に入ることが出来、その奥には無数の扉が存在していた。

一番手前の扉を開けて中を見ると4㎡程度の広さがあり、一番奥には映像の再生機と投射機が一体になった様な機器が一つ設置されていた。

「これでさっきの媒体を再生するって事か?」

「そうだろうね。でも意外と小さいね」

再生機は20cm四方で高さが50cm程度の四角柱の形をしている。取り外せれば持ち運びも出来そうだった。

「・・・・使って見るか?」

「使い方がわからないよ・・・エネルギーがきてるかもわからないし・・・」

<この機器は部屋全体にホログラムを発生させる機器になります。壁から取り外しコードを抜けば持ち帰る事が出来るかと。この場で使用するのはお勧めできません>

イデアがそういい、シド達は壁から機器を取り外そうとする。

かなり強固に取り付けられている様で、工具などで引っぺがすと本体ごと壊れてしまいそうだった。

「しかたないな」

シドはそういい、拳を握りしめ壁に正拳突きを叩き込む。

現代のコンクリート程度なら、壁を貫通するほどの威力があるが、旧文明の壁は頑丈で罅と凹みが出来る程度にしか破壊出来なかった。

「お、頑丈だな」

「・・・・・そうだね」

ボクあの拳で殴られた事あったな~と遠い目をするライト。

暫く人間重機と化したシドは壁を破壊し、再生機を壁から取り外すことが出来るようになった。

壁から機器に繋がっているコードを少し残した状態で切断し、ジャックなどは機器に残った状態のまま持ち帰ることにする。

これは、ライトが養成所で得た知識の中にあった対処方法であった。

<あの養成所もまんざら役立たずって訳でもないみたいだな>

<まあ、知識の面では十分な教育だったと思うよ?>

<私もその部分は否定しません>


シド達は他の部屋も見て回り、何かないか探してみたが、一様に同じ部屋が並んでいるだけだった。

そこでもう一つ再生機を取り外し、一人1個ずつ持って帰ることにしたのだった。

棚が並んでいる部屋まで戻って、適当に記憶媒体もバックパックに入れていく。バックパックに8割ほど入った所で手を止め、そろそろ帰ろうかと思っていると、入口にあったエレベーターが動いている事に気づいた。

<何か来るぞ>

<・・・そうみたいだね・・・人じゃなさそうだ>

<とりあえず隠れるぞ>

シド達は二手に分かれ、棚に身を隠す。もし戦闘になってもお互いがフォローし合える状態を維持し、エレベーターの方を見つめた。

エレベーターのドアが開くが、中には何も乗っていない様に見える。しかし、シドとライトにはそれが光学迷彩で隠れた存在であることが分かった。

それはエレベーターから降りると迷彩を解き、姿を見せる。

その姿は人に似せられて作られた、所謂オートマタと言われる機械系モンスターだった。

北方の方で散見され、起動前の物を発見すれば非常に高価で取引される代物だが、一度起動すれば現人類を見境なく襲ってくる恐ろしい殺戮者と化す。

<やべーのが出てきたな?>

<オートマタだね・・・機械系の中でもかなり厄介だよ。でも武器を所持してないみたいだね>

<シド、この部分に4発PN弾頭を撃ち込んでください。それで無力化できます>

イデアはシドの視界にターゲットマークを表示させる。

それはオートマタの鳩尾辺りを狙えと指示していた。

<わかった>

シドは時間操作を発動させ、棚から飛び出しオートマタの鳩尾にPN弾頭を撃ち込む。S200から撃ち出された弾丸は狙い違わずオートマタに着弾したが、その強固な外装はPN弾頭を3発防ぎ、最後の1発でようやく内部に貫通、動力源を傷つけられたオートマタは機能を停止し、前のめりに崩れ落ちる。

「ファーレン遺跡でオートマタって出てくるのか?」

「聞いたことないね」

<オフィスの情報にもありません>

「やっぱ頑丈だったな、コイツのPN弾3発まで弾きやがったぞ」

「キャノンウォーカーとどっちが固いかな?」

「それはキャノンウォーカーの方が固いけどな、サイズが全く違うだろ。オートマタと同じサイズだったら1発で裏側まで貫通するぞ」

<戦闘用ではなかったようですね。もし戦闘用であったなら今のシドとライトでは苦戦したでしょう>

「とりあえず持って帰るか?」

<オフィスに提出するのは体のパーツのみにしてください。頭には記憶領域がまだ生きていますので少し調べてみたいと思います>

イデアがそういい、シドに頭部のパーツを取り外させる。それをバックパックにしまい込み、体の方は肩に担いで持ち上げた。

「よし、とりあえず帰ろう」

「そうだね」


シド達は今日の探索を終え、都市に戻っていく。扉の開閉システムはライトがコピーし、用意していた記憶媒体に保存してワーカーオフィスに持ち込むことにした。


はい、今回でてきた場所はDVD試写室みたいな場所です。

ライトが閲覧した映像は、まあ、そういう事ですね。


あまり直接的な表現はどうかと思いましてほとんど書きませんでした。



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