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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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久しぶりのコンビで遺跡探索

ライトが新しい情報収集機を手に入れて一週間が過ぎた。


先日の模擬戦でライトが情報収集機を使用し、そのデータを解析したイデアがアレコレと設定の助言を行い、それを使いこなせるように訓練を行っていた。


<だいぶ使いこなせるようになってきましたね>

<まだ集中しすぎると頭痛がしてくるけどね。最初の時と比べたらだいぶましだよ>

イデアと情報収集機を通して、仮想訓練を行っていたライトが軽く頭痛のする頭を押さえながらそういう。

<その辺りは流石、唐澤重工と言ったところでしょうか。以前の機器に比べて飛躍的に性能がアップしています。この機器を扱える常人は居ないでしょう>

<常人か・・・ボクは普通の人間だと思ってるんだけどな~>

<ライトは隔世遺伝者ですからね。一般的な人々とは一線を画す能力を持っています>

<そうかな・・・まあ、あれよりはましだと思うけど>

そういい、ライトが視線を向けた先には、汗だくで空中を歩くシドがいた。


<あれってどうなってるの?>

<シドは生体シールドの発生訓練中です。使いこなせれば防護服のエネルギーシールドが無い状態でもS200の扱いが可能になるでしょう。今はまだ自分の体重を支える程度でしかありませんが、ゆくゆくは空中に体を固定して射撃が出来る様になります>

<ふーん>


シドは自分の足元にシド自身が発生させた生体シールドを張り、空気と反応させて足場を発生させる訓練を行っていた。

これが出来る様になれば、足場が不安定、もしくは無い場所でも高機動戦闘が可能になるのである。

今はイデアにこの車庫を歩いて10周出来る様になれと言われ、訓練を行っている。


ライトが最近ようやく見慣れてきたな~と思っていると、シドの体勢が崩れ床に着地する。


「だーーーー!無理だろこんなの!ちょっと強く踏み出したら途端に足場が不安定になる!」


いや、普通は無理な事既にやってるから、とライトは思いながらシドに声をかける。


「まあまあ、最初の頃よりは上手くいってるんじゃない?」

<そうです、訓練始めの時は2歩で転げ落ちましたからね。それから考えると今は4周まで歩けるようになりました。十分な進歩と言えます>

「そうはいってもさ~・・・防護服を着てる状態でやったらダメなのか?」

<DMDを着用した状態であれば、もっと簡単に行えるようになるでしょう。今のシドでも発生させた足場を蹴って空中移動が出来る様になっていますので。しかし、この技術は生身で行える様になるに越したことはありません。常時、防護服を着用している訳にはいきませんから>

「イデアはシドさんをどうしたいの?」

ライトはイデアが考えるシドの最終地点が良く分からなかった。

<とりあえずはダゴラ都市一のハンターにはなってもらいたいですね>

「・・・・」

ライトは目標の高さに無言になる。ダゴラ都市は他所の都市に比べて平和だと言われているが、大規模遺跡の近くにある都市であり、実力の高いワーカー達がひしめき合っている状態なのだ。その都市でNo,1程度にはなれというイデアはなかなか無茶な事を言っている様に思える。

「シドさん、頑張ってね」

ライトはそういい、シドに合掌する。

<ライトも他人ごとではありませんよ?シドが成長していけば、それに伴いライトの訓練にも力を入れていきますので>

シドさん大変だな~と思っていたライトにお鉢が回って来る。

「え?ボクも?・・・ボクには空中を歩くなんてできないよ?」

<それはそうです。ライトにはシドの様にシールドを発生させるための器官がありませんので。そこは装備で補います。しかし、シーカーとしての実力はもちろん、戦闘能力も底上げが必要です。せめて、このモンスターくらいは2人で討伐できる程度には向上させましょう>

イデアはそういい、ミナギ方面防衛拠点で発生した大型モンスターの襲来の映像をライトに見せる。

そこには高さ20mはあるであろうモンスターが映し出されていた。

その映像を見てライトの顔が引きつる。

「これ、2人で討伐するモンスターじゃないでしょ?」

<ダゴラ都市には少ないでしょう。しかし、北方や東方には単身で討伐できるワーカーは存在します>

それはワーカー界のトップクラスなんじゃとライトは思う。

<現在の人類最前線ではあのレベルのモンスターが通常エンカウントするようですので、討伐出来なければ活動場所の選択肢が狭まってしまいます。そうなればワーカーとして大成したとは言えません>

「まあ、そうなんだろうけどね」

イデアの目標はかなり遠いようだ。シドも一山いくらのワーカーで終わるつもりは無いようで、イデアの立てた目標に到達できるように努力を重ねている。

自分もシドの隣に立つのであれば少々の事で不満は言ってられない。

「ボクの情報処理能力ってまだ伸びしろあるのかな?」

ライトは自分の能力に若干の不安を抱いていた。

<私が見る限りでは、ライトの情報処理能力は著しく上昇しています。このまま訓練と実戦を重ねていけば、さらに上昇するでしょう。遺跡の調査が進み、私のアップデートが可能になればライトの状態も正確に把握できるようになるでしょう>

この大陸のどこかに、イデアが生産された設備やアップデートが可能な施設が存在すると思われる為、そこにたどり着けばさらにサポート能力が向上するであろうことを伝える。

そこにシドが車庫10周を終わらせ、ライト達の元に歩いてくる。

「あーしんど、で?なんの話してたんだ?」

シドにはイデアの念話は届いておらず、集中していた為にライトの声もほとんど聞こえていなかった。

「ん?遺跡の奥に行けばイデアのアップデートが出来る施設があるかもって話」

「ああ、そんなことも言ってたな。ファーレン遺跡にあるのか?」

<わかりません。しかし、ファーレン遺跡のマップが私のデータに存在していた為、その可能性は高いです>

「なるほどな。明日は遺跡に行くんだ。ライトの肩慣らしと一緒にその辺りを探してみようか」

「そうだね、ボクもそろそろ活動してランクも上げたいし」

「よし、とりあえずの目標も決まったし、そろそろ寝ようぜ。もうそろそろ日を跨ぐ時間だからな」

<そうですね、ライトは回復薬の服用を忘れない様に>

「わかった」


明日は久しぶりの遺跡探索に出る。体長を万全な状態にし、遺跡に行くため二人は就寝の準備にかかった。



翌日、シドとライトは遺跡の中層にまでやって来ていた。

「ライト、左から来てるヤツは任せるぞ」

シドは右前方から向かってくるモンスターを睨みながらライトにそういう。

「わかった。問題ないよ」

ライトも左側から近づいてくるモンスターの影は捕捉しており、対応する為に銃を構える。

シドがモンスターに向かって駆け出し、ライトはそれに付いていきながら自分に割り振られたモンスター達を攻撃していく。

シドの持つ2丁のS200から吐き出された弾丸は、サイズの小中に関わらずモンスターの急所を正確に破壊し、ライトも両手に持つMKライフルを使用して短時間でモンスターを撃破した。


「これくらいなら余裕だな」

シドはそう言いながらS200をホルスターに仕舞う。

「ボクの方は中型には効きが悪いね。数発撃ち込まないと倒せないか・・・ボクもPN弾頭対応の銃がほしくなるな~」

ライトのG-MK330は通常弾頭とSH弾頭のみに対応しており、貫通力が必要なモンスターの討伐には複数回弾丸を当てなければならない状況が発生していた。


「今回の探索で稼げたら買えばいいんじゃないか?」

「でもさ、今買おうとするとまだシブサワさんがいるじゃない?そうなると唐澤重工製の銃が出てくると思うんだよね。たぶんボクには扱えないと思う・・・」

ライトは前にシドのA60を試し打ちした時の事を思い出していた。

「ガンスさんに相談すればいいだろ。なにも全部シブサワさんから買う必要ないんだからな」

ライトはシドの恰好を見て、全身ほぼ唐澤製の人間に言われてもな~と考える。

シドもその視線に気づき

「なんだ?言いたいことがありそうだな」

と詰め寄る。

「いや、説得力無いな~と思って」

ライトは変に誤魔化さず、素直にそういった。シドも自覚があったらしく渋顔でそっぽを向く。

<二人共、探索中ですのであまり気を抜かない様お願いします>

<はいよ><うん、ごめん>

イデアに注意され、二人は再度集中し遺跡の中を回っていく。

しばらく歩いていると、ライトは一つのビルに違和感を感じた。

<ねえイデア、あの右側にある4つ目のビルなんだけど・・・何か迷彩かかってない?>

ライトは視界に、対光学迷彩用のフィルターを掛けており、指摘したビルからノイズの様な物が出ている事に気づく。

<迷彩とは少し違いますね。外観を辺りに合わせて変更する機能が生きている様です>

<なんでそんな機能があるんだ?>

<それは機能としては周りの建物から逸脱していますが、外観上気づかれないようにする為のカモフラージュですね。機密性の高い建物だったのか、それとも企業経営陣の趣味だったのかは分かりかねます>

<なら、何か貴重な遺物がある可能性があるってことか?>

<可能性はあります。探索する価値はあるかと>

<なら行ってみようか。隠し通路とかならボクが見つけられるだろうし>

ライトがそういい、シドも拒否する理由は無くビルの中の探索を決定する。


ビルの中は外観と同じように荒廃しており、長い年月の間放置されていたことが良く分かる風景だった。

<なんか、外と変わらねーな>

<そうだね、でも、早速見つけたよ>

ライトは情報収集機で扉の様な物を発見していた。その扉は、受付カウンターのような物の奥側にあり、せり出た石柱の様なデザインの壁に表示されていた。

<ここだね>

<ほーん、でもコレ端末も何もないけど開けられるのか?>

<ちょっと調べてみるよ>

ライトは背中の機器からサーチと操作を行える端末を取り外し、扉がある部分に当て調べ始める。

シドはその様子を見守りながらも、辺りの警戒を行っていた。すると、こちらに向かってくるモンスターの気配を感じ取り、ライトに伝える。

<ライト、こっちにモンスターが近づいてくる。大体10分くらいにはこの辺りに来るぞ。間に合いそうか?>

<・・・・・わからない。この扉自体に開閉ギミックが無いみたいなんだ。別の場所で開けるみたいだから、その場所を探さないと>

<・・・なるほど、5分探して見つからなかったら隠れるか戦うか決めるか>

<わかった>

ライトは部屋の中を見渡し、どこかに違和感が無いかを探し始める。一番怪しいのはカウンターの中なのだが、ざっと調べただけでは何の反応もなかった。

とりあえずカウンターの奥側を目視で調べたり、迷彩が掛かっていないか調べてみたが何も無いようだ。

他に装置の様な物も見当たらない。別の部屋から遠隔で操作するタイプなのかと考えていると、シドが言っていたモンスターが近づいてくるのがライトの方でも検知できた。

<時間切れだね、どうする?>

<相手はコッチに気づいた様子はない。隠れるぞ>

シドはそう判断し、2階に上る階段へ移動する。ここなら相手に気づかれても即対応できると考えた。

しばらく身を隠していると、モンスターがビルの前まで到着し、中に入って来る。

シドとライトは気配を殺し、モンスターの動向を監視する。

<コッチに気づいてはいないね>

<動きから見て機械系モンスターみたいだが・・・なんだろうな?>

そのモンスターは、先程ライトが調べていた扉の前まで移動していき、暫くじっとしていた。

すると、扉が開き中に入って行く。

<なんだ?>

<わからない。でも、あの扉の中に入って行ったね・・・>

扉が閉まり、辺りに気配が無くなると、シド達はもう一度扉の前まで行く。

<間違いなく開いたよな?>

<うん、あのモンスターは光学迷彩を使用してたね・・・それでこの中に入って行ったと・・・どうやって開けたんだろう?>

シド達が考えていると

<ライト、情報収集機で何か信号をキャッチしていませんか?>

イデアがそうライトに聞いてくる。

<・・・・あ、これさっきのモンスターのヤツかな?>

<おそらく、この扉を開ける為の信号でしょう。その信号の後に、別の場所から扉に対して信号が送られているはずです。その発信場所はわかりますか?>

情報収集機は先程のモンスターが出したであろう信号をキャッチしており、その信号に合わせて扉を開く為の信号が発信されているのが見つかった。

信号の内容は複雑に暗号化されており、専用のツールが無ければ解読は難しそうだったが、発信元の場所自体は簡単に特定できた。

<これがそうかな、隣の建物の地下みたいだね。行ってみようか>

ライトはシドにそういい、二人で隣の建物を調べに行く。

ライトは1階を虱潰しに探そうとしたが、シドがまったを掛け空間把握の近距離精度を上げていく。

すると、地下に繋がる通路を発見した。

<見つけたぞ。でもなぜか1階からじゃなくて2階からの縦穴で繋がってるな>

<なんでそんなところに地下に繋がる道があるの?>

<・・・・・これって、旧文明の非合法組織の建物だったりしないか?>

<可能性はありますね。もしくは秘匿性の高い政府施設であった可能性もあります>

<とにかく行ってみようか>

シド達は2階に移動し、直ぐに地下へと続く通路を発見する。

シドの空間把握にはモンスターらしき気配は感じられず、その通路を通り地下へと降りていった。

<この通路・・・ボクの情報収集機では見つけられなかったね>

<非常に高い防諜処置が施されている様です。旧文明製の探知機でも発見は困難であったかと>

<じゃーなんで俺にはわかったんだ?>

<シドは軍人向けに強化されていますからね。一般的な把握能力とは異なりますので>

<なるほどね>


シドを先頭に2人は地下へと降りていき、扉の前にたどり着く。

<ライト、出番だ>

<分かった>

この扉には開閉装置が取り付けられており、ライトのハッキングで開けることが出来そうだった。

IFG-EX80の性能は高く、1分ほどでハッキングが終わり、扉のロックが外れた。

<開いたよ>

ライトはそういい、扉を開け中に入って行く。シドもライトに続き中に入ると、そこは制御室の様な場所だった。

<やっぱりここであの扉の操作をしてたみたいだね>

<そうらしいな。危険もなさそうだし、休憩してから色々調べねーか?>

シドはライトにそう提案し、軽食を取ろうとする。

<そうだね、ボクもおなか減ったし>

シド達はバックパックの中からレーションを取り出し、頬張り始める。

少しの休憩の後、ライトは制御室の装置にコードを差し込み中のシステムを調べ始めた。

<ライト、このシステムは後で回収しましょう。ワーカーオフィスに提出すれば報酬が期待できます>

<なるほど、わかった。でも・・・容量大きいよ?持ってるメモリで大丈夫かな?>

<回収できるだけで良いと思います。続きを要求されればまた取りにくれば良いかと>

<そうだね・・・・よし、とりあえずあの扉の開け方は分かったよ>

<お!ならあの中に入れるんだな>

<うん、でも、開けてから1分程で閉まるみたいだから扉の所に行って操作する必要があるね。帰り道も同じようにこのシステムにアクセスしないとダメだから、システムの回収はあの扉の奥を調べた後になるかな>

ライトはそういい、装置に接続されていたコードを外す。

<よし、あの扉の向こう側に行ってみるか>


そういい、シド達は元居たビルに戻っていく。


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