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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
50/217

他都市のワーカー達の末路

とうとう50話です。

これからもよろしくお願いします。


誤字報告も大変助かってます。

「ん~~・・・」

都市に帰る道中で、気絶している女性の一人が意識を回復させる。

頭を殴打された様だが、骨が折れていた訳でもない為、高性能な回復薬ですぐに回復出来た様だった。

「あの、大丈夫ですか?」

ここは驚かせない為に同じ女性が対応した方が良いだろうと、ユキに任せライトとタカヤは少し離れて様子を見守った。

「・・・・!!!!」

女性は少し視線を動かし、自分の状況を把握したのか、勢いよく身を起こす。

「あなた誰!」

そう言いながらユキから身を遠ざけ、周りを警戒するように見回す。

「私はダゴラ都市所属のワーカーで、ユキって言います。遺跡で襲撃を受けていたのを見かけて救助しました。今はこの車で都市に向かっています」

ユキは自己紹介と彼女達の状況を端的に説明する。

「ミリー!」

すると彼女は、隣で寝ている女性に気づき声をかけ起こそうとする。

「あ!待ってください!その人は銃撃を受けていて気絶しています。弾丸は摘出して回復薬を飲ませましたが、まだ安静にしていた方がいいかと・・・」

ユキはもう一人の女性の状況を説明する。彼女は友人であろう女性の背中に血止めの布が巻かれている事に気づき、少しずつ冷静になってきたようだった。

自分の周りにはユキしかおらず、少し離れた所にライトとタカヤが見守っているのに気づき、漸く自分達が助けられたのだと理解できた様だった。

「・・・・ごめんなさい。そしてありがとう、助けてくれて。私はアズミ、同じダゴラ都市所属のワーカーよ」

ようやく落ち着いて自己紹介をしてくれ、その場に安堵の空気が流れる。

「それと彼女はミリー。私の友人で同じワーカーをやってるの」

アズミはもう一人の紹介も行う。

「はい、ありがとうございます。向こうの右側にいるのがライト、左側がタカヤで、運転しているのがシドさんって言います。今は一緒に行動しています」

ユキもこちらのメンバーを紹介し、ライトとタカヤも頭を下げ挨拶をする。

「そうなの・・・でもすごいのね。あいつ等を一掃出来るなんて、私たちは抵抗する事しかできなかったのに・・・」

「ああ、それは向こうが油断してた上に、こちらが不意打ちしたからですね。真正面からやり合ったらもっと時間が掛かったと思います」

ユキの代わりにライトがそう答える。

「そうなんだ、でも本当にありがとう。都市に着いたらお礼も渡すし、治療費も払うわ」

「それは後でシドさんに言ってください。回復薬をくれたのはあの人なので」

ライトはそういい、運転席の方を見る。

「わかった。後で挨拶させてもらうわ」

アズミはそういい、頭を下げてくる。

「それで、アイツ等って何だったんですか?なんか、強盗みたいな事いってましたけど」

ライトが襲撃者の事を質問する。

「ハウンドドックって名前で活動してるチームみたいね、最近ダゴラ都市に来たよそ者よ。何日か前から遺跡でうろついてるのを見かけたから・・・・でも、襲ってくるなんて・・・」

南部でもファーレン遺跡以外の遺跡群があり、そこで活動しているワーカーは大勢いる。彼らの活動している遺跡はファーレン遺跡ほど大きくはなく、遺物の取り合いなどが頻繁に行われていたのだった。その中の一部がファーレン遺跡に活動場所を移してきており、彼女たちはその者たちの襲撃を受けたというわけだった。

「なるほど・・・モンスターの分布が変わっただけじゃなく、強盗紛いまで出没するようになったって事か・・・遺跡探索もやりにくくなるね」

ライトがそういい、考え込む。

「あいつ等はあなた達4人で倒したの?」

アズミがそうライトに質問する。

「いや、ライトだけで片付けたんだよ」

ライトの代わりにタカヤが答え、ユキが頷いて同意する。

「え?!・・・不意打ちとは言え10人近くいなかった?」

「ええ、全員で9人でした」

アズミがライト一人で撃退したと聞き驚く。

「君、凄いのね。結構若く見えるけど、もしかして義体者?」

「いえ、生身の人間ですよ。正確な年齢はしらないですけど」

ライトも義体者かと誤解される。スラムで生きている者で自分の年齢を正確に把握している者は稀だった。

「そ・・そうなんだ・・・」

明らかに自分より年下の少年が9人のワーカーを撃退したことに驚きを隠せないアズミ、なら他の2人も同じような実力なのかと視線を送る。

「あ、私たちはライトほど強くはありませんよ?遺跡に行ったのも今日で3回目ですし」

ユキがアズミの視線に気づきそう返す。すると運転席から

「おーーい、もうすぐワーカーオフィスに着くぞ」

と、シドから声が掛かった。

ライトが「わかった」と答え、降りる準備を始める。


ワーカーオフィスの駐車場に車を止め、ミリーを運び出す準備を始めていると、彼女の意識も戻ったようだった。

「あ、ミリー。気が付いた?」

アズミがミリーに声をかけ、起き上がるのを手伝う。

「・・・え?アズミ?・・・えっと・・・ここは?」

ミリーは不思議そうに車の中を見回し、アズミにそう尋ねる。

「彼女達が助けてくれたのよ」

アズミはそういい、ユキ達を紹介する。

「ありがとう、本当にもう駄目だと思ったから・・・」

ミリーは安堵に表情を緩ませ、3人にお礼を述べてくる。

すると、後部の扉が開けられ、荷台にシドが入って来る。

「お、二人共意識が戻ったんだな。良かった良かった。動けます?まだ痛みが残ってたりとかは?」

シドがそう二人に質問し、アズミは顔を横に振り、ミリーは少し体を動かし問題無いと返事を返してくる。

「なら、一緒にオフィスに入りましょうか。その襲撃者って奴等の報告もいるだろうし。ライト、何かあいつらの事が分かるものってあるのか?」

シドがライトにそう聞き、ライトは「うん」と肯定した。

「リーダーっぽいヤツのライセンスを拾ってきたよ」

ライトは彼女らを救助する際に、襲撃者のライセンスを抜き取って持って帰ってきたようだった。

「よし、じゃー遺物の提出と一緒に報告と行こうか」


全員が車から降り、ワーカーオフィスに入っていく。

「ミリーさん、本当に体は大丈夫ですか?」

ユキがミリーの体調を気遣う。

「え?うん、大丈夫だよ。動かしても特に痛みもないし」

ミリーはそう笑顔でユキに答える。

「そうですか。でも、パワードスーツを貫通して背中に弾丸がめり込んでましたんで、しばらくは無理しないでくださいね?」

ユキはミリーの言葉に安心したようだが、傷を直に見た為、しばらくは安静にした方がいいと伝える。

「え?貫通?」

ミリーはそういい、一応着込んだスーツの背中部分を手で確かめると、確かに弾丸が開けたであろう穴が開いていた。

「はい、シドさんが弾丸を摘出して回復薬を飲ませたんです。回復してよかったですね」

そう、ニコニコしながらユキは言った。

ミリーとアズミは顔を見合わせる。弾丸がめり込んだ体をこの短時間で修復する回復薬は大変高価だ。そんなものを他人に使う者がいるとは考えなかった。

そしてこの後、その費用の事を考えすこし気が重くなる。襲撃の際、装備を全て失ったも同然の二人は口座に残った資金の残高を思い出し、なんとか払えるかと頭を捻る。

シド達は荷物を担ぎ、買い取りカウンターに向かい、アズミとミリーは今日の事を報告する為総合受付に向かった。


「ようシド、それとお前らも、首尾よく遺物を集められたみたいだな」

シド達を応対したのはやはりキクチ。昨日の模擬戦後から元気がなく、今日も疲れた様子だった。

「キクチ・・・なんだか疲れた様子だな」

お前らのせいだ!と言ってやりたいが、別にシド達が悪い事をしていると言う訳ではない為何も言えない。

キクチはあの後、オフィスに戻り、ライト達3人のライセンス切り替えの手続きやら報告書やら会議やらでほとんど寝ていなかった。

「ああ、気にすんな。よし、まずは遺物の鑑定だ」

キクチはそういい、シド達から遺物を受け取る。どれが誰のか分かるようにタグをつけ、奥の部屋に運んでいった。


「そういや、シドさんの方はどうだったの?」

ライトはシドの活動が気になり質問してみる。

「ん?中層まで行ってモンスターの調査と遺物の発掘だな。どっちも特に問題無く終わったんだけどな、俺もあの二人みたいに変なのに絡まれてさ。まあまあ大変だったな」

シドはワーカーオフィスから浅層から中層にかけてのモンスター分布調査を依頼されていた。本来であればランク30以上のワーカー達に出される仕事なのだが、その辺りのランクはミナギ方面で発見された遺跡の調査に出払ってしまい、適切なランクのワーカーがいなかったのである。

そこでキクチは今のファーレン遺跡の中層でも十分に活動できるであろうシドに依頼を出し、ついでにシドのランクも上げてしまおうと画策したのだった。

「へ~、シドさんもか・・・あの遺跡も治安が悪くなったって事かな・・・」

「まあ、元をあまり知らねーからな。モンスターとは別にワーカーにも注意する必要があるのは間違いないな。でも遺物は結構いいのが手に入ったぞ」

「へーそうなんだ。ボク達でも行ける?」

「ん~、ライトの装備なら丈夫だろうけど、タカヤとユキは厳しいな。機械系のモンスターが多い印象だし、光学迷彩を使ってくるモンスターも居たからな。タカヤとユキの装備じゃちと厳しいだろう。打撃力と迷彩に対応した装備を整えてしっかり習熟訓練をやらないとな」

「そっか・・・やっぱり中層はまだ厳しいんだね・・・」

タカヤとユキは少し気落ちするが、シドやライトと比べて自分達の能力が追い付いていない事は重々承知だった。そして、今後も追いつけないであろうことも。

しかし、同じワーカーとして活動していくのだ。いずれは一緒の仕事をする事もあるだろう。その時に二人にガッカリされないように今後も訓練と実戦で鍛えていこうと考える。


「鑑定と査定が終わったぞ」

奥の部屋からキクチが戻ってきてそういう。シド達それぞれの前に端末を置き、そこに表示されている金額でいいかを確認する。

全員がOKを出し、決済を行った後でライト達のライセンス変更許可が書かれた用紙を渡していく。

「これとライセンスを持って総合受付に行け。そうすればランク10のライセンスが発行される。シドは俺と一緒に会議室だ」

キクチはそういい、エレベーターに向かおうとする。

「あ、すいません。これを渡しておきます」

ライトがそういい、今日アズミ達を襲っていたワーカーのライセンスを取り出し、キクチに渡す。

「これは、今日遺跡で女性二人のワーカーを襲撃した人のライセンスです。調査を行うのであれば参考になるかと思って」

「・・・・ああ、助かる」

キクチは渋顔でライトにお礼をいい、ライセンスを受け取った。

「それではボク達はこれで。シドさんフードコートで待ってるから」

ライトはそういい、タカヤ達と共にフードコートに向かって行く。

「じゃ、行くぞ」

キクチはシドに端的にいい、エレベーターに乗り込んでいく。シドもキクチに続き上の階に上がって行った。


ライト視点


ライト達はシドと別れ、ライセンスの更新を終わらせワーカーオフィスのフードコートに座る。

適当に軽食と飲み物を頼み、今日の事を振り返っていた。

「今日はなかなかの収穫だったね。あ、これ、旧文明の回復薬。ユキとタカヤも必要かなって思って」

ライトはそういい、今日見つけた回復薬をいくつか売らずに取っておいたようだ。そのうちの2つをタカヤとユキに渡す。

「ん?いいのか?これって結構売ると高いだろ?」

タカヤがそうライトに聞いてくる。

「うん、今の遺跡は前と比べてかなり危険みたいだからね。ボクの分もあるから受け取ってよ」

ライトはずいっと回復薬を二人の方へ動かし、受け取らせた。

「・・・ありがとう。またいつか恩は返すから」

ユキはそういい、回復薬を受け取る。その様子を見たタカヤも同じように回復薬に手を伸ばした。

「はは、まあ、ボク達が困ってたらその時は力を貸してよ」

ライトはそう笑顔で返す。

「俺達もランク10のワーカーか~。なんか、養成所に行った時の予定からだいぶズレたけど、感慨深いな」

「そうだね。これで一人前のワーカーとして活動できるって事だもんね」

ユキとタカヤも嬉しそうに自分のライセンスを眺める。

「これからだよ。これからは二人で活動するの?」

ライトがタカヤとユキにこれからの事を質問する。

「うん、そのつもり。無理せずにコツコツやって行こうかなって」

「そうだな、いずれは中層でも通用する装備を買って、遺跡の奥を目指したい」

ユキとタカヤは二人で活動する予定の様だ。二人の装備は十分に浅層で通用する物になっているし、これからもやっていけるだろう。

「ワーカーコードは渡しておくから、何かあったら連絡してよ」

ライトは自分のワーカーコードを二人に送る。

「・・・・その情報収集機、いいな~。手で操作しなくても考えるだけで色々できるんでしょ?」

ユキはライトが持つ情報収集機を羨ましがる。

「そうだね、慣れるまでは手動の方が良いって思ったけど、慣れると色々出来ることが増えるからコッチの方が楽かな」

「まだあのランクの機器が買えるほど稼いでないだろ。今日の稼ぎで今後の生活基盤を整えないとな」

「そうだね、ランク10なら拠点を借りられるんだよね?宿とどっちがいいかな?」

ユキはまず住居の用意を先に考えているよっだった。

「ダゴラ都市で活動するなら宿より拠点を借りた方がいいよ。二人分の宿泊費より、拠点を借りた方が安く上がるし、嵩張る物も買いだめできるだろうし、私物も置いておけるしね。ワーカーオフィスで紹介してもらえるみたいだよ」

「その辺りは養成所で習ったよな。シドさんと話したら賃貸物件を紹介してもらうか」


そう3人で話していると、アズミとミリーがこちらに歩いてくるのに気が付いた。

ライトが二人の方を向き、声をかける。

「アズミさん、ミリーさん。報告は終わりましたか?」

アズミ達もライト達を探していたようで、隣のテーブルに座って来る。

「ええ、こっちの報告は終わったわ。やっぱり他都市から移動してきたワーカーチームだったみたいね。他にも何チームかがファーレン遺跡に活動場所を移してるみたい」

アズミは今のファーレン遺跡に他都市のワーカーチームが移ってきている事をライト達に伝える。

「ちょっと前まではダゴラ都市のワーカーギルド達がファーレン遺跡に潜ってたから、そこまでイザコザは無かったんだけど・・・今はミナギ方面で新しく発見された遺跡の調査にほとんど出払ってて、こっちの遺跡には来てないみたいなのよ」

ミリーも情報をライト達に伝える。


シドが地下で発見した遺跡が思いのほか広く、他都市に権利を取られない様に、ダゴラ都市からワーカーギルド総出での調査が依頼されており、高ランクワーカー達のほとんどは新しい遺跡の調査に駆り出されファーレン遺跡に向かうのはその調査依頼からあぶれたワーカー達であった。


「なるほど・・・それならしばらくの間、ファーレン遺跡は荒れますね・・・」

ライトが口元に手を持っていきそう呟く。

「他にも襲撃されたワーカー達っていないんですか?」

ユキがそうアズミ達に聞く。

「ちらほら居るみたいね。他の都市って遺跡の数が少なかったり、規模が小さかったりで結構殺伐としてるみたいでね。遺物の運搬中に襲われるって事も多いみたい。だから対人戦に慣れてるワーカー達が多いのよ。このワーカーオフィスでも注意喚起と他都市のワーカー達に警告を出すみたいよ」

「それでも、遺跡や荒野での犯罪って、基本都市に大きな損害が出ない限り野放しだから、あなた達も気を付けた方がいいわね・・・・まあ、助けてもらった私たちが言うのもなんだけど・・・」

ミリーがそう、苦笑いでいう。

「あ、そうだ。私たちの救護料なんだけど、300万コールでどう?

アズミがそういい、現金をテーブルの上に置く。

「え?いや、要らないですよ。使ったのは弾薬数発と回復薬が6粒くらいですし・・・」

ライトはそう遠慮しようとするが

「ダメよ、助けてもらった上に治療までして貰ったんだから。せめてこれくらいは受け取って貰わないと」

アズミはそういい、ライトに現金を押し付ける。

ライトは、手に持たされた現金を眺め、少し考えてから受け取ることにした。

「・・・・わかりました。では遠慮なく」

ライトが金を受け取り、満足そうにうなずくアズミとミリー。

するとタカヤが声を潜めて

「なあ、後ろのテーブル。他都市から移って来たワーカーチームの事話してるみたいだぜ」

タカヤの言葉に、5人は聞き耳を立てる。


『おい、あいつらが全滅したって本当か?』

『いや、2・3人は生きて帰って来たらしいが・・・ワーカーを続けられるかどうかわからねーらしいぞ』

『ハウンドドッグの連中も半数が遺跡から戻ってないみたいだ』

『古参のワーカー達が今、東の方で活動してるからってイキリ出した連中がどうなろうと知ったこっちゃねが・・・バウンサーがほぼ全滅でハウンドドックも半減って何が起こってるんだ?』

『ハウンドドックは浅層、バウンサーは中層で探索してたんだろ?関連性あるのか?』

『わからねー、でもバウンサーの生き残りがガキにやられたって言ってるらしいぞ』

『・・・・なんで中層にガキがいるんだよ。そいつ義体者じゃねーのか?そんなヤツに喧嘩売ったら返り討ちにされるのも当然だろ?』

『だろうな、見た目はガキのくせにバケモンみたいな奴だったらしいぞ。ハンドガン2丁と双剣で30人以上殺したらしい』

『・・・・とんでもねーヤツだな。俺達も気を付けた方がいいか?』

『相手を刺激しなきゃ大丈夫だろう。でも、注意するに越した事ねーな』


少し離れたワーカー達が他都市からの移動組がかなりの被害を出したという噂を話し合っていた。

アズミはハウンドドックの件は自分達を襲ったメンバーに違いないと考えたが、バウンサーの方は心当たりがない。

聞いた話では、ダゴラ都市から少し中央よりの都市で、スラム街での用心棒から行商人の護衛などを専門としたワーカーチームだったが、最近遺跡探索にも手を出し始めたと聞いていた。

それがなぜファーレン遺跡に目を向けたのかは分からないが、戦闘能力は高く、遺跡でのモンスター退治で稼いでいるようだった。

(そのバウンサーが全滅するなんて・・・多分ワーカー同士の戦闘だと思うけど、そんな戦闘に特化したワーカーチームなんていたかしら?)

養成所を卒業して数年、今は浅層と中層を行き来して探索しているアズミとミリーの知識には、該当するワーカーチームは存在しなかった。

ライト達が何か知っているかと聞こうと思い顔を上げると、3人の目からハイライトが消え、遠くの方を見ていた。

「今度はワーカー30人か~」

「出来そうだよな~・・・」

「うん、驚きはするけど疑わないよね」

ライト・タカヤ・ユキは心当たりがある様だった。

「君たち、バウンサーをやったヤツに心当たりがあるの?」

ミリーはライト達に聞いてみる。

「あ、はい。恐らく・・・というか、シドさんだと思います」

ライトはそういい、タカヤとユキも無言で肯定する。

「え?シドって、あ あの車を運転してた子よね?」

「君たちと大して変わらない年齢だったでしょ?」

アズミとミリーは疑わずにはいられなかった。彼らの言うシドさんとは、自分達を運んだ車の持ち主で、ライト達と変わらない年齢の少年だった。とてもワーカーチームを殲滅出来るような力を持っている様には見えなかった。

「そうですね。ハンドガンと双剣を持ってるワーカーって、シドさん以外いないと思いますし・・」

「多分外見で舐められたんだろうな。遺物を寄越せって言われてプッツンしたんだろう」

「まあ、そうだよね。背もライトと同じくらいだし、ワーカーとしたら小柄な方だもん。ガラの悪いワーカーから見たらカモに見えてもおかしくないかな・・・」

タカヤは結構大柄で力も強そうに見える。ライトは最近背が伸び始め成長が著しいが、シドはどちらかと言えば小柄な体格だった。しかし、中身はゴリッゴリの身体拡張者で高額パワードスーツ着用者も真っ青の身体能力を持つ。

シドが遺物を背負って遺跡を歩いていれば、知らない者からするとカモがネギを背負って歩いているように見えても仕方ない。しかし、美味そうだと噛みつけば一気に化け物と化す地雷の様な存在になっていたのである。


するとライトにシドからメッセージが届く、

『長引きそうだから先にメシ食っといてくれ』

そう端的なメッセージを読んだライトは、その事をタカヤとユキに伝え、ツマミではなくちゃんとした食事を注文することにした。

アズミとミリーは彼らに興味を抱き、もう少し話を聞いてみようと一緒に食事を取っていいかと聞いてみる。

3人からは否は出ず、シドが帰って来るまでフードコートで食事を取ることにしたのだった。


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