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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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3人のテスト 遺跡での強盗行為

それから数日、ライト達は養成所に退学手続きを取り、キクチの言う手はずでランク1のライセンスを取得。

もう一度遺物を取りに行く為の準備を整え、再度ファーレン遺跡にやってきていた。

今日、車でファーレン遺跡にまでは一緒に着ていたシドだが、今日は別行動をとることになる。

ライト達の3人は、言わばランク10に値するかどうかの試験として、遺跡探索に来ているのだ。シドがいては意味が無くなると言われ、シドは別の依頼を受けさせられているのだった。


「さて、今日はシドさん抜きでの遺跡探索だ。装備の更新も終わってるから大丈夫だと思うけど、細心の注意を払って探索しよう」

ライトはそういい、タカヤとユキと一緒に遺跡の中へ入って行く。

正式にワーカー登録を行ったため、常時討伐依頼は全員が受けている。しかし、何が起きるか分からない今のファーレン遺跡で所かまわず戦闘を行う気になれなかった3人は、基本的に戦闘はせず遺物捜索を行う予定だった。


3人はビルが行った様な移動方法を取り、極力障害物で身を隠しながら進んでいく。あらかじめ遺物のありそうな場所をイデアから教えられていたライトは、自分の網膜に映し出される地図を確認しながら遺跡の中を進んでいった。

「止まって」

ライトが短くそう二人に指示を出し、索敵範囲を広げていく。

「右側前方、見た事ないモンスターがいる」

そういい、ライトはユキに索敵データを共有した。内容を確認したユキはタカヤにも情報を共有する。

「ん~、ウェポンウルフか?」

タカヤがそういい、ユキもそう思ったのだろう、無言で頷いている。

「たぶんね。まだ気づかれてないけど、相手は本来浅層の奥地に出没するはずのモンスターだ。人間が走って逃げ切れるスピードじゃないから、見つかったら戦闘開始だね」

ウェポンウルフは、ラクーンと同じように背中から銃器が生えており、こちらを見つければ執拗に追いかけてくるモンスターとして知られていた。浅層から中層にかけて出現するモンスターだが、ラクーンと違い非常に機動力が高く、表面の所々に金属での補強が見られるため、しっかり狙わなければダメージを与えるのが難しいモンスターだった。

「このまま進んだら相手の索敵範囲に入るかな?」

ユキがそうライトに聞いてくる。

「一応進行方向はズレてるし、風下はこっち側だから大丈夫だと思う。それでも、アイツの行動から目を離さない様に進もう」

ライトはそういい、再び前進していく。初めて遭遇するモンスターの影に緊張しながら3人は慎重に歩を進めていくと、目的の建物が見えてきた。

まずは周囲の安全確保が重要だが、この辺りでモンスターを発見しても銃撃するのはマズイ。先程のウェポンウルフの聴覚なら、聞きつけてこちらに向かってこないとは言い切れないからだ。

パラパラと見えるラクーンの反応にどうするべきかと考えるライトだったがウェポンウルフの反応が索敵範囲外に消えていった。

「移動したのかな?」

ユキがそう不思議そうに聞いてくる。

「今の動き方なら、たぶん他の獲物を見つけたんだと思うよ。よし、今のうちにこの辺りのラクーンを始末してしまおう」

ライトは二人を見つめそう提案する。タカヤとユキも否は無く、即座にラクーン殲滅に動き出した。


10分も掛からない間に周辺のラクーンを討伐し、元の建物にまで全員が戻って来る。タカヤとユキも既にラクーン程度なら緊張せずシッカリ討伐できる様になったようだ。

「よし、入ろう」

まずライトは先頭に立って適当な建物の中に入って行く。

基本的に建物の上部は探索され尽くしているのが当たり前で、遺物を見つけるなら地下への隠し通路などを見つけるのが一般的だった。

今日は情報収集機を新調したユキに探してもらう。

ユキはライトの様に神経伝達式では無く、手動式の情報収集機を購入したため、機器に手を当て細かく調整を弄りながら隠し通路を探っていく。一つ一つの部屋を捜索し、隠し扉などが無いかを調べていく。

どうやらこの建物にそういった類のものは存在せず、外れの様だった。

気を取り直し、次の建物の中に入っては同じことを繰り返していく。


4つ目の建物に入り、部屋を調べていくと、ユキの情報収集機が地下通路へ入る入口らしき反応を捉えた。

「あった!」

初めて自力で隠し扉を発見できたことに少し声が弾むユキ。

「お!マジか!」

タカヤも同じように喜ぶ。

「うん、ボクにも同じ反応が返ってきてる。お手柄だねユキ」

ライトもそうユキに笑いかける。

「じゃー、開けてみるね」

ユキはそういい、情報取集機から端末を伸ばし、扉の解錠を試みた。

え~っと、う~んと、あれ?など声を出しながら機器をゴソゴソと弄るユキ、その後ろでライトとタカヤはモンスターや他のワーカーがやってこないか警戒していた。

「なあ、開けられると思うか?」

タカヤがコソっとライトに質問する。

「大丈夫だと思うよ。ユキも情報収集機の操作成績は優秀だったし、あとは場数を踏めばなんとでもなるよ」

ライトはその様にタカヤに返す。

「ライトは何処で場数を踏んだんだ?」

タカヤはそうライトに返してくる。

「あ~・・・・」

ライトは言いよどんだ。養成所から謹慎を言い渡され、シドと訓練をする様になった時に、イデアに協力を頼み仮想での扉やトラップの解除方法の訓練を積んでいたのだった。流石にタカヤ達にイデアの事は話せない。よって、少しシドのせいにすることにした。

「以前、シドさんと一緒に・・・・」

「なるほど、あの人訓練となったら鬼だからな」

心の中でゴメン、シドさんと謝りながらライトは警戒を続ける。そうしてしばらくの間待っていると

「開いた!」

とユキの声が聞こえ、そちらを見る。すると床から取手の様な物が飛び出してきており、それを掴んで持ち上げて開けるタイプの扉の様だった。

「よし、ちょっと下がってろ」

タカヤがそういい、ユキを後ろに下げ扉の取っ手を上に引き上げる。かなりの重量があったようだが、タカヤは最後まで開けきり扉を後ろに倒す。

そこには階段ではなく、縦穴が開いており側面に梯子が取り付けてあった。

「よし、私が最初に降りてみるよ。ライトは周囲の警戒を継続して」

「分かった」

ユキはライトに周囲の事を任せ、梯子で下に降りていく。しばらくすると穴の中からユキの「大丈夫!」という声が聞こえてきた。

まずはタカヤが先に降り、その後からライトが続く。梯子を下り切り辺りを見回すと、疎らに遺物が残された棚が複数あった。

「う~ん、少ないね」

「そうだな・・・誰かに先を越されたのか?」

ユキとタカヤが残念そうにそういった。

「たぶん違うよ。恐らく、旧文明時代に持ち出されて、ここにあるのはその残りと言ったところじゃないかな?」

ライトはそういい、遺物を一つ手に取ってみる。丸型のケースで保存状態は良さそうだった。ケースはまだ生きているのか簡易ロックが掛かっている。ライトはロックを外し、開けてみると中にはカプセルがギッシリと入っていた。

ライトは情報収集機で遺物の検索を掛けると、それは旧文明製の回復薬であることが分かる。旧文明製の回復薬は非常に高値で取引されていて、特に製薬会社や身体拡張処置を行う施設などが高額で買い取っていく。回復薬のランクもあるようだが、最低でも200万コールは硬い、それが10本ほど残っているようだった。他にもユキが見ている棚やタカヤが漁っている引き出しなどにも遺物が残されている様だった。

「よし、持てるだけバックパックに詰め込んで帰ろう」

ライトはそういい、自分のバックパックに回復薬を詰め込んでいく。全部いれてもまだまだ余裕がある為、他の棚へ移動し、そこにあるものを手当たり次第に詰め込んでいった。

全員が運べるだけの遺物を詰め込むと、部屋の中はガランとなる。

「一回で全部運べる量だったね」

「そうだね、まあ、今までが異常だったんだろうけど」

シドと探索した時は、部屋の中に運びきれない量の遺物が残っていた。それは本来であれば稀なことであるとライトも分かっていた。

「おし、帰ろうぜ。これだけありゃー問題ないだろうからな」

タカヤもそういい、自分のバックパックをゆする。

「よし、帰りも油断せずに行こう」


ライト達は地下室から脱出し、車のある方向へと歩き始める。


帰り道の中ほどまで来た時に、ユキとライトがほぼ同時に人の反応を捉えた。

ライト達は瓦礫に身を隠し、反応があった方向に照準を合わせて情報を集める。

そこには、9人で2人を囲む様に人がおり、ライトの情報収集機からは銃撃戦を行っている情報も上がってくる。

「これ・・・ワーカー同士の戦いみたいだね」

「そうだね・・・これって多分襲われてるんだと思う・・・」

ユキは2人の方が襲われていると判断したようだった。

「で?どうするんだ?」

タカヤがどうするのかを聞いてくる。ライト達としては放っておいてもいい話だ。正直ワーカー同士のイザコザに首を突っ込みたくはない。しかし、自分達が行動するエリアの付近で襲撃があったのならば、自分達が次のターゲットになる可能性もある。

「すこし、様子を見に行こう」

ライトはそう二人に提案し、二人も頷き行動を開始する。シドとの訓練で瓦礫の山を素早く静かに移動する訓練は嫌と言うほど積んできた。3人は迅速に移動し、戦闘の様子を肉眼で確認できる所まで移動し、万が一戦闘に巻き込まれた時は有利に立てる建物の2階に陣取った。



戦場の様子を見ると、完全に囲まれ瓦礫の中から反撃する二人の女性ワーカーと、それを取り囲むワーカー達が撃ちあっていた。


襲われているワーカー視点


「おい!そろそろ降伏しろ!今なら身ぐるみ剝ぐだけで命までは勘弁してやるよ!!」

包囲している方の男のワーカーが二人に叫んで声をかける。しかし、自分達は諦めることなく反撃を続けた。

「チッ、おい!」

男が指示を出すと、もう一人が榴弾砲をこちらが隠れている瓦礫に向かって撃ち込んだ。それに気づいて瓦礫から逃げ出したが、榴弾の爆発に吹き飛ばされ、アズミが開けた場所に落下する。

私は運よく瓦礫の近くに落ち、素早く身を隠すことができたが、アズミの方は銃を手放してしまい、反撃することも出来なくなった。

すぐさま他の男たちが彼女を人質に取り、私の方に降伏を呼びかける。

「おら!もう諦めろ!こうなった以上オメーラに勝ち目はねー!!」

人質に取ったアズミを盾にし、頭に銃を突きつけながらもう一人が隠れている瓦礫に近づいていく。

他の男たちも徐々に包囲網を縮めていき、逃げることも難しい状況に陥っていった。

「銃を捨ててさっさと出てこい!この女のドタマぶち抜いてほしいのか?!」

イラつきながら男はさらに投降を促す。

「どうして私たちを襲ったの!こっちが手を出した訳でもないのに!」

アズミはどこかを痛めたのか顔を歪めながら男たちを批判する。

「あん?そりゃ~、俺達は普通に遺跡探索に来たんだがよ、ちょっと前にガキが遺物を大量に持ち帰ったって噂を聞いてな。それでファーレン遺跡まで来たってのに、どこを探してもみつかりゃしね~。手ぶらで帰る訳にも行かねーからお前らの装備を頂こうと思ったわけだ」

男たちは完全な強盗行為に及んでいる様だった。

「そんな行為が許されると・・・!」

アズミが反論しようとすると、後ろを陣取っていた一人が彼女の後頭部を銃で強打し、衝撃でうつ伏せに倒れてしまう。

「許されるんだよ、ここは荒野だからな。平和なダゴラ都市のワーカーはホントに抜けてやがる」

そういい、男は彼女の頭に照準を合わせ、銃を撃とうとした。これ以上待っていても事態は好転しないと判断し、銃を投げ出し両手を上げながら出ていく。

「降伏するわ。だからもうこれ以上は攻撃しないで」

そういい、彼女は男たちを睨みつける。

「そうか、なら装備を全部こちらに渡して貰おうか」

そういわれ、背負っていたバックパックと予備のマガジン、パワードスーツのエネルギーパックを取り外し男たちの方に放り投げる。

「パワードスーツもだ」

男たちは更に要求を重ねる。

「流石に無理よ、裸で遺跡から帰れっていうの?」

悔しさに顔を歪めそう反論する。

「そうだ、裸で帰れ。敗者ってのはそういうもんだ。連れて帰って欲しかったらそう言いな。後で全員相手してもらうがな」

そういい、男たちはゲラゲラと笑い始める。

怒りと悔しさで顔を赤くしながらも、パワードスーツに手を掛ける。ここで従わなければ友人は確実に死んでしまう。

倒れた友人に目を向けると、向こうも悔しさに顔を歪めていた。

「おら!さっさと脱げ・・・」

そう言うや否や、男の頭が吹き飛ばされる。間髪入れずに2人3人と頭を撃ち抜かれ絶命していく男たち。

今がチャンスとアズミまで駆けより、覆いかぶさる様にかばった。エネルギーパックが無いとはいえ、まだパワードスーツの方が彼女が着ている防護服より防御力は高い。運が良ければ生き残れる。


いきなり仲間を殺された男たちは大混乱に陥るが、攻撃が止むことはなかった。パニックを起こし、辺り一面に銃弾をばら撒くものや、せめて彼女達を道連れにと、彼女たちに向けて発砲する者、隠れる場所を探して右往左往する者がいたが、瞬く間に全滅させられる。


銃声が止み、辺りが静かになると、少し離れた建物の2階から人が飛び降りてこちらに向かってくるのが見える。

先程の銃撃戦で数発の弾丸を撃ち込まれたようで、背中辺りに痛みが走る。激痛と出血で意識が朦朧としてきて意識を失う。



ライト側視点



ライトは男たちの頭を正確に吹き飛ばし、他に潜んでいないかを確認した後、2階から飛び降りる。

最初はユキが我慢できずに飛び出そうとしたが、自分がやった方が正確で速いとライトが男たちに銃撃を行ったのだった。


飛び降りた自分にタカヤとユキも付いてきたようで、3人で女性ワーカー達に駆け寄る。

確認した所、2人共息は有る様だった。しかし、一人は無防備な頭を殴打され、一人は銃撃を受けている。気を失っている相手に回復薬を飲ませる方法を3人は知らなかった(自分達は散々飲まされてきたが)。

「ここにこのまま留まるのはマズイ。かなり派手に銃声を立てたからモンスターが集まって来る可能性が有る」

ライトはそういい、一人を担ぎ上げ、もう一人をタカヤに任せる。

「ユキ、先導をお願い。出来るだけ早く車に戻りたい」

「わかった」

ユキはそう返事を返し、車までの道を急ぐ。

ライトとタカヤは二人を背負い、ユキに続いて駆けていった。


緊急事態ということで、道中にいたラクーンは避けず速攻で討伐していき、車まで帰って来る。

そこには既に依頼を終わらせたのであろうシドが待っており、ライトとタカヤが背負った二人のワーカーを見て眉を寄せる。

「なんだ?そいつら」

「ゴメン、説明は後でするから、とりあえず治療したい」

ライトがそういい、シドは車の荷台の扉を開け、二人を簡易ベットに寝かせる。

「それで、二人の状況は?」

「一人は頭を殴られて、一人は背中と脇腹を撃たれてる」

ライトは端的に状況を説明する。シドはそれに頷き、回復薬と水をラックから取り出してくる。

「じゃ~、まずは頭の方からだな」

そういい、頭から血を流している方の女性の上半身を起こさせ、口に回復薬と水を少量入れ、手で口と鼻を抑える。

すると少し苦しそうにした後、喉が動き嚥下出来た様だった。

「こうやったら人って無意識に飲み込むんだよ。そっちの人はパワードスーツは脱がせた方がいいな」

そういい、シドはパワードスーツを脱がせに掛かる。

「おいおい、男がやっていいのか?」

少し戸惑いながらタカヤがそうシドに言うが

「死ぬよりましだろ。それにこういう場合インナー着てるもんだろ?普通」

シドは特に気にせずパワードスーツの上半身をはぎ取った。背中を見ると、弾丸がめり込んでいるのが見える。

「う~ん、手で取るのもな・・・おいライト、ラジオペンチ取ってくれ」

ライトはそう言われ、驚きながら声を上げる。

「え?医療用のピンセットとか無いの?!」

「ない」

シドが端的に返答し、仕方なく工具箱に入っているラジオペンチをシドに渡し、この後医療セットを購入しようと心に誓った。

シドは延々と弾の摘出を行い、ユキに止血用の布を巻かせ、彼女にも同じように回復薬を飲ませた。

「おし、こんなもんだろ。これ以上はここでは何もできんな。早く都市に連れて帰った方がいいだろう」

そういい、シドは運転席に座り、車を発進させる。この二人が幸いだったのは、この車が優秀な車体安全装置のおかげで揺れが非常に少ない事だろう。

ライト達3人は二人が目を覚ますまで、じっとその様子を伺っていたのだった。


当方、気絶している人に薬を飲ませる方法など知りません。

よってシドが行った行為は適当に考えました。


正しい方法をご存じの方は教えてください


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― 新着の感想 ―
気絶しているときの飲食は気管の方に行ってしまうので無理ですね。 口内で溶かす。 患部への直接塗布。 静脈注射。 のいずれかじゃないですか。
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