KARASAWA S200
なんかめっちゃ短くなりました。
今日はもう一話更新します。
シド達は新装備の試射の為、荒野にまで来ていた。辺りには岩が点在し的にも不自由しない、そんな場所にトラックを止め全員が下りてくる。
<まずは、比較的近距離での射撃を試してみましょう>
<そうだな>
イデアからの提案で200m程度の岩に照準を合わせる。初めて触る銃の為、最初は両手でしっかり構えて引き金を引く。
大口径から吐き出された弾丸は岩に向かって飛翔し、その大部分を抉り取ったのであった。
時間を圧縮し弾道を観察してみたがA60に比べて弾速はかなり上がっている。
「・・・・」
両手で保持した状態で撃ったため、銃身が跳ねあがる事はなかったが、非常に強い反動が返ってきていた。
<イデア、これ無理だろ。片手で撃つ銃じゃないぞ>
<かなり反動がありますね。これは訓練内容を見直す必要があります>
なぜかイデアはこの銃を使う方向で考えているようだ。
<いやいや。もうコーディネイトは終わったんだぞ?ここからまた鍛えなおしてもこれは扱えないだろ>
<大丈夫です。今の様に生身で使用するには長期の訓練が必要でしょうが、防護服のシールドを使い補助すれば比較的短時間で扱えるようになるでしょう。とりあえず、連射機能も試してみては?>
<・・・>
シドは別の岩を狙い連射してみた。
ただでさえ強い反動が連続的に発生し狙いがブレる。ほとんどが狙い通りには飛んでいかず、岩全体にまき散らされた。高威力の弾丸は瞬時に岩を削り取り、はたから見た者には岩が消し飛んだように見える。
「いかがですか?当社の自信作は?」
そうシブサワが笑顔で聞いてくる。確かに威力はすごい。連射性も申し分ない。だが反動も物凄い。
これまた、誰がこんなの使うんだよと言う評価に相応しいと思うシドだった。しかし
<使いこなせれば非常に強力な武器ですね>
やはりイデアの評価は高い。
「とりあえず、防護服との相性で考えたいと思います」
とりあえずシドは購入を保留にした。
「承知しました。防護服が届きましたらミスカさんを通してご連絡差し上げます」
「はい、お願いします」
防護服を着た状態でもう一度試射させてもらう事になり、シド達は自由市まで帰っていく。
「なあシド。あれ買う気なんか?」
ガンスはそう聞いてくる。
「う~ん、たぶん買う事になると思います」
「・・・シドがええんやったらかまへんけど。無理すんなよ?」
「はい。値段が分かったら教えてください」
「わかった。多分予算の4000万コールからちと足出ると思うで。一応、東方で活動してるヤツ向けの装備やからそれなりの金額になるやろからな」
「わかりました。シブサワさん、値段の方もガンスさんと話をしておいてください」
「承知しました。シド様の活躍のおかげで弊社のKARASAWA A60の購入の話が出てきましたからね。勉強させていただきます」
「ん?コレが売れたんですか?」
シドは腰に付けている自分のA60を指差す。
「はい、ダゴラ都市のワーカーギルドから問い合わせがあり。発注が入りました。詳しい話は出来ませんが、貴方が使用しているのを見て興味を持たれた方がいるようですね」
「・・・・へ~・・・」
<性能自体は非常に優秀ですからね。反動さえ押さえられるのなら色々な場面で活躍できる銃であることは間違いありません>
(まあ、俺がアレコレ考えることじゃねーな)
「今後共宜しくお願いいたします」
シブサワはそう深々と頭を下げる。
「はい、こちらこそ。また来ますんで」
シドはそういい、ミスカ達のトラックを後にし宿へ帰っていく。
シブサワ視点
「いやはや、まさかダゴラ都市の様な平和な地域にまさかKARASAWA A60を使いこなすワーカーがいると聞いたときは何の冗談かと思いましたが・・・無理を言って付いてきて正解でした」
シブサワはA60の販売実績を閲覧中、ダゴラ都市でミスカ達が販売した履歴を発見したのだった。
基本あの銃は購入されてもネタ扱いを受け、実戦で使用されることは殆どない。販売実績もリリースされてから5年、両手で数えられる程度の数しか販売されておらず社内でもかなり問題となった銃だったのだが、それなのに開発陣は新たにグレードアップ版を開発し営業に投げて来たのだ。
開発VS営業の殴り合いが発生したのは言うまでもない。これには経営陣も頭を抱えており、開発部門の予算カットも視野にいれて動いていたのだった。
しかし、作ったものは売らねばならない。ダゴラ都市にてA60を購入したワーカーの戦歴を調べると、まだ経歴は浅いがそこそこの活躍をみせており、A60を使いこなしている様だった。
一縷の望みを託し、シブサワはミスカ達とコンタクトを取りダゴラ都市へと向かう車に同乗したのだった。
途中、ミナギ方面防衛拠点にてモンスターの大規模襲撃というトラブルに見舞われたものの、無事にダゴラ都市にまでたどり着きシドとの商談に漕ぎつけたのだった。
「しかしな~。お前の所の開発陣 頭おかしいんか?ただでさえ反動が強すぎる言うて売れてへんのに、さらに強化した銃作ってどないすんねん」
ガンスの突っ込みはもっともだった。
「ええ、私たち営業サイドも頭を抱えましたよ。しかし、一つでも売れれば販売実績があると言えますからね。シド様には感謝の言葉もありません」
「・・・・お前それは詐欺っちゅ~もんやで・・・」
「ははははは!・・・しかし、あの銃を手で持って撃てる人間っているんですね~。弊社での射撃実験では、鉄の塊に溶接して撃っても溶接部分を引きちぎって吹っ飛んでいったんですけどね」
「・・・お前そんなモンを人にすすめるなよ・・・」
「そのおかげで防護服もセットで購入していただけそうですし。感謝に堪えません。もちろんお値段は勉強させて頂きますよ」
「ほんまにええ面の皮やわ・・・」
ガンスはシブサワと値段交渉を始める。こちらが紹介した手前、シドには少しでも安く購入できるよう交渉するのであった。
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