遺跡防衛任務と高ランクハンター
短いです
もう1話2話更新します
シドは防衛拠点に帰還して、丸一日の休養許可を取った。
遺跡の中で座って寝るだけでは疲れが取れきらなかったのだろう、休暇になった一日を寝て過ごすことになった。
翌日シドは、受付にて新しい仕事の説明を受ける。
バイクを失った為、遊撃任務に着くことが出来なくなったのであった。
「57番、今日はトラックに乗って、新たに発見された遺跡の防衛にあたってもらう」
「防衛ですか。モンスターの襲撃はどの程度起こっていますか?」
「巡回依頼の時よりは多いようだな。ワーカーや昇降機の設置作業員等、人の数も多くなっているのでしかたない」
「わかりました。出発時間はどうなってます?」
「9:00に出発、その後現地で1泊してもらい。10時に到着予定のトラックに乗って帰還してもらう」
「了解しました」
シドは自らが発見した遺跡に戻り防衛に参加することとなった。
トラックに乗り、遺跡に移動する最中にもモンスターは襲ってくる。シドは他のワーカー達と共にモンスターを駆除しながら荒野を進んでいった。
トラックが遺跡に到着すると、そこでは既に遺跡内に降りていく昇降機を取り付ける工事が行われていた。
<なかなか仕事が早いな>
<未発見の遺跡ですからね、そこから生み出される利益は莫大なものとなるでしょう。都市としても本気で取り組んでいるようですね>
「57番、お前の持ち場は東側だ。すぐに配置に着け」
「わかりました」
シドは割り当てられた持ち場に移動する。
そこは簡易的な防壁が建設され、モンスターの襲撃を防げるようになっていた。
「これ、たった一日で作ったのか・・・」
<簡易な防壁ですが、この辺りのモンスターに対抗するには十分な強度を持つと思われます>
シドは防壁の上に上り、辺りを見渡す。防壁の向こう側にはワーカー達に討伐されたモンスター達の死体が転がっており、スカベンジャー達が回収作業を行っていた。
「来たか57番、お前は外部から向かってくるモンスターの迎撃を任せる。広範囲索敵機を使用しているから、モンスターが近づいてきたらすぐにわかるだろう。作業をしているスカベンジャー達も直ぐに撤退を始めるはずだから、戦闘に支障はないはずだ」
「了解しました」
散発的なモンスターの襲撃を退ける程度で大きな問題は起こっていない。こちらに向かっていたモンスターは粗方片づけたのか、今はただ荒野を眺めるだけの時間が過ぎていった。
そろそろ、昼の時間か?と思い、バックパックからレーションを取り出し頬張る。昔食べていた激安レーションとは比べ物にならない品質で、保存性や栄養素のみでは無く味にも配慮されており、今シドが食べているのはステーキ味のレーションだった。
<これ、味も触感もステーキに近いんだよな~。美味美味>
<良かったですね。非常に吸収率が高く、排泄に気を取られないのは非常に優秀と言えるでしょう>
そうして、シドがモグモグと食事をしていると、他のワーカーが話しかけてくる。
「おい、君」
「?」
「君もここに配属されたのか?ずいぶん若い見た目だが、義体者なのか?」
彼は20台後半くらいの年齢のワーカーだった。
「義体?いえ生身ですけど」
義体とは、所謂サイボーグの事である。完全に機械と分かる見た目のものもあれば、人と変わらない見た目のものもあり、どちらも非常に高価であった。毒物や窒息といった危険からは完全に切り離されパワードスーツやナノマシン等に頼らずとも強靭な身体能力を得られる為、全身を義体化するワーカーも存在する。
しかし、ボディーのメンテナンス代に非常に高い費用が掛かり、余程稼げるワーカーでなければ手が出せないものだった。
「そうなのか?これは失礼したな。俺はヤシロという、ハンターだ。ランクは45」
「45ですか!高ランクハンターと話をしたのは初めてです。俺はシドと言います。今のランクは11ですね」
「俺くらいなら北部や東部には山ほどいるよ。それにしても、ランク11でここに配属されたのか?それはかなり評価されたんだな」
「ええっと、壁越えできた時の事情で、アレコレやらされてる感じですね」
「壁越え。君は第三区画出身なのか。しかも自力で壁を越えたと・・・」
「はい、まあ」
ヤシロはシドが自力で壁を越えて来た事に驚く、年の頃は15前後であろう少年が、防壁の外でランク10以上に到達するなど聞いた事が無かったからだ。それに言葉を濁したが、彼は恐らくランク調整依頼の最中なのだろう。ワーカーオフィスから実力相応のランクになるまで解放されない、ともすれば非常に厄介な依頼であった。
それを発行されるシドに興味をもった。
「それはすごいな。シドはワーカーギルドと言うものは知っているか?」
「ワーカー達の相互組織ですよね?」
「まあ、そうだな。少数で活動する者たちも多いが、ギルドに所属し集団で行動することで、さらに大きな仕事を行うことが出来るようになる。この遺跡の発掘や、防衛にも俺たちのギルド、天覇が関わってるようにな」
「なるほど」
「興味は無いか?上手くすれば安全に稼げるようになるぞ」
「あ~、いや。俺にも相棒が居ますんで。暫くは二人でやっていこうかと」
「そうなのか。ここに来てるのか?」
「いえ、今養成所で訓練を受けてます。たぶんだけど、半年くらいで卒業できると思ってます」
「ほー。確かウチの若手も送られてたな。なかなか自信過剰なヤツらだったから揉めてないといいんだがな・・」
「天覇からも、新人が養成所に送られるんですか?」
「まあな、合格ラインまでは鍛えられただろうって段階でライセンスを取るために養成所に送られるんだ」
「なるほど、効率的ですね」
<ライトも訓練後に養成所に入りましたからね。あの選択は間違いなかったと言えるでしょう>
<そうだな。アイツ元気でやってるかな>
<ランク10になる為の訓練施設です。もしかすると訓練内容が物足らず、勘が鈍っているかもしれませんね>
<そうなったら再訓練だな。また追っかけ回してやるさ>
<お手柔らかに>
<いや、思いっきりやるぞ。加減すると、アイツが遺跡で死んじまう なんて事になったらいやだからな>
<それはそうですね>
脳内でイデアと会話をしていると、もう一人ワーカーがこちらに近寄って来た。
「ヤシロ、こんなところで何やってるの?探したじゃないか」
それは、ヤシロと同じくらいの年齢の女性のワーカーだった。
「おう、悪い。すぐ行く・・・そんじゃ、シド またな」
「あ、はい。また」
ヤシロはそういい、女性のワーカーと共に持ち場へと移動していった。
<なんか、雰囲気のある人だったな>
<そうですね、シドもあんな感じになれるように頑張りましょう>
<色々経験を積んでいくか。まずはこのランク調整依頼を終わらせないとな>
シドは、また荒野に視線を戻す、まだモンスターの襲撃は無い。早く遺跡内で探索できるようにならないものかと考え、モンスターの襲撃に備えるのだった。
「ねえ、さっき話してた子って誰なの?」
ヤシロを迎えにきた女性ワーカーがヤシロに問う。
「ん?いやなに、ずいぶん若いワーカーだったから珍しくてな。最近自力で壁越えしたらしいぞ」
「へ~、自力でか。それは有望だね、ウチに誘ったの?」
彼女もシドが自力で壁越えを果たしたことに驚く。
「ああ、でも相棒が居るらしくてな。しばらくは二人で活動するらしい。ま、何かのタイミングで一緒に仕事をする機会もあるんじゃないか?」
「・・・結構評価してるんだね」
「まあな、おそらくだが、ランク調整依頼を発行されてるんだと思う。あの年でな。・・・それにずいぶん珍しい装備だったから気になったんだよ」
「KARASAWA A60か。あれ、使ってる人いるんだね。初めて見たよ」
シドが唐澤重工製、傑作の失敗作として有名な銃を腰につけていたのを彼女も気づいていた。
「俺もだ・・・レオナ、アイツの事調べてもらってもいいか?」
「いいけど・・・そんなに気になるの?」
「ああなるね。ウチの養殖どもとは違う匂いがした」
「あーカズマ達か。確かに完全な叩き上げって感じだったもんね。わかったよ、軽く調べてみる」
「たのんだぞ」
そうして二人は自分達の持ち場へ帰っていくのであった。
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