表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
215/217

ミナギ都市 再び

「戻って来たな~、ミナギ都市」


フロントガラス越しに見えるミナギ都市の防壁を眺めながら、そう呟くシド。

「そうだね」

その呟きに返しながら門へと向かって車を走らせるライト。


巨大ワームを討伐した後、現場処理の任務を請け負った部隊が到着するまで現場保持をしていた3人。

到着した部隊に、ライトとラルフはワームの死骸と戦闘データの引き渡しを行った。

最後の一撃を放ったイデアの事を隠蔽するかどうかで少し悩みはしたのだが、都市から脱出する際にイデアも戦闘に参加している事もあって隠蔽するメリットが無いと言う事になり、全てのデータを提出する。


ワームが出てきた穴の警戒をしていたシドの方にも部隊が到着し、簡単な引継ぎをした後合流。

そのままミナギ都市までやって来たのだ。


外から見た感じではそこまでの変化は感じられない。

しかし、重厚な門を潜り、街並みを見れば以前とは全く異なる姿が有った。


「グッチャグチャだな」

「そうだね~・・・・被害も考えず暴れたもんね」


門を潜った先はシドがゲンハとやり合ったエリアでもあり、乱雑に立てられていた建造物の殆どが倒壊してしまっている。

主要な道路の瓦礫はある程度片付けられており、通行には問題無いがここに住んでいた者達が元の生活を取り戻すには相当な時間が必要だろう。

まあ、元の生活に戻ることが必ずしも幸せであるとは限らないが。


瓦礫に挟まれた道路を走り抜け、第2防壁へとたどり着いたシド達。

門の前まで来るとスピーカーから声が流れてくる。


『ワーカーだな。ライセンスの提示してくれ』

シドとライトはワーカーライセンスを端末へと翳し、ラルフはワーカーオフィスの社員証を翳した。


『チーム スラムバレットか・・・・確認が取れた。ワーカーオフィスに来るよう伝言を頼まれている』

「わかった。直ぐに向かうよ」

『よろしく頼む』


短いやり取りを終えると、門が開く。

そこから見える風景は、外の惨状とは打って変わり綺麗に整えられた街並みが広がっていた。




キクチ視点


「ふ~・・・・・・都市外への流出はあのヘビ一体だけで済んだようだな

・・・・・」

地下に開けられていた穴へ到達した調査部隊からの報告では、横穴の様なものは無く、曲がりくねってはいるものの一本道であるとの事だ。

ワームが飛び出した穴から突入した部隊からの報告も同じものであり、四方八方に穴が掘られている訳では無いと思われる。


これならば穴の調査に何週間も取られることは無さそうだ。

スラムバレットの2人がこっちに向かっていると聞いた時は、もっと大きな騒動になるのでは?と考えたが、一先ず穏便に収まったと考えるキクチ。


本来なら危険なナノマシンを内包した変異モンスターが都市外へ流出した時点で大問題なのだ。

だが、あのモンスターが狙ったのはスラムバレットの2人組+2。

ラルフの精神的負荷を除けば被害は無いに等しい。モンスターも無事に討伐され、残留ナノマシンの浄化も行われている。外部流出の問題はこれにてクローズで良いだろう。


都市地下構造のクリアリングも順調だ。

早ければ明日にも全エリアのチェックが終わり、ミナギ都市再建へと取り掛かる事が出来るだろう。

その辺りはキクチは関与しない。引き続き都市管理企業として活動することになっているアースネットとケミックス・アロイが考えればいい事だ。


そうツラツラと考えていると、スラムバレットの荒野車が第2防壁を超えたとの連絡が入る。

担当者にスラムバレットが現れれば、ワーカーオフィスに来るように伝えてほしいと言ってあり、この報告はゴンダバヤシにも報告されているはずだ。

シドとライトに関しては問題ない。

あの2人からすればいつものワーカー活動の延長線でしかないだろうから。

問題はラルフだ。

対モンスターデビュー戦で大型モンスターと当たった事は彼に強いストレスを与えたことは間違いない。通信でやり取りした際には憤懣やるかたない、といった表情であった。

しかし、スラムバレットと行動を共にするという事はこのような事態にも対応していかなければならない事は明白だ。

今回の事は刺激が強かっただろうが、今後の事を考えれば丁度いいのでは無いだろうか。


(それでも、いきなり命の危機に会わせてしまった埋め合わせは必要だろうな・・・・)

怒り顔で乗り込んでくるラルフを思い浮かべ、キクチは苦笑いを浮かべる。


「キクチ統括代行。第5区画地下構造のクリアリングが終了しました。引き続き第4区画のクリアリングを行います」

「わかった。第2区画はどうなっている?」

「地下構造の補強は順次行っています。モンスターが開けた横穴の確保はそのまま、モンスターの捜索は最小限に構造の補強を優先しています」

「そのまま続けるように。補強が終わり次第、地上を警戒している部隊を第2区画に投入。クリアリングが終了後第3区画に向かわせるように」

「了解したいしました」

第2区画での変異モンスターとの遭遇報告は無い。

外へ逃げ出したワームが全て食らってしまったと考えるのが妥当だろう。目につく栄養素を食らえるだけ食らい、地下防壁を突破できる手段を得た直後に逃げ出したと考えるのが妥当か。


今回はスラムバレットに感謝するしかない。

普通のワーカーが遭遇していたら軒並み食われてしまっていただろうから。

最後はイデアのボディーに搭載されているエネルギー兵器の一撃によって仕留められたようだが、あのレベルのエネルギー兵器と言えばこの辺りでは防壁に搭載されている兵器しかない。

そもそも移動しながら撃つような兵器ではない為、高速で動くモンスターに対してそこまで有効な兵器ではないのだ。

最悪の場合は、T6に搭載されているELシューター01で消滅させるしか手は無かったかもしれない。

アイツラがダゴラ都市を出発する際は、過剰兵装だと叫んだ事が懐かしいが、今考えれば保険として積んでて良かった唐澤砲、である。

この都市にも導入を進めてみるべきか?

等と考えていると、

「統括代行。スラムバレットが到着したとの事です」

職員がスラムバレットの到着を知らせてくる。

「・・・ああ、わかった。4番会議室に通してくれ」

そう職員に告げ、キクチは通信端末を操作するのであった。




スラムバレット視点


第2防壁を通りワーカーオフィスへと到着した3人と1体。

受付に話をすると、ある会議室へと通されることになった。


調度品が整えられ、テーブルから椅子まで高級品であることが見て取れる。

職員に勧められた椅子に腰かけると、職員が目の前に飲み物を置き、一礼をして部屋から出て行った。


「なんか豪勢な部屋だな」

シドは供された飲み物を飲みながらそう呟く。

キョロキョロと部屋を見渡すシドに対して、このオフィスで働いていたラルフが説明を行った。

「この会議室は重要人物を応対する為の部屋です。都市管理企業の案件や、高ランクワーカーとの対談を行う為の部屋ですね」

ラルフも椅子に腰を落ち着け、飲み物を口にしながらそう言った。

「へ~・・・キクチさん。ボク達の事をちゃんと評価してくれてるんですね」

カップを持ちながらそう言うライトを見ながらラルフは思う。

(それはそうでしょう。ここまで活躍したワーカーチームを通常の会議室に通していたら私が文句を付けますよ)

ラルフもこの一連の騒動でのスラムバレットの活躍は類を見ない事は認めている。

都市管理企業の大罪を暴き、ターゲットとなっている少女を護衛し都市を脱出。その後も追っ手である防衛隊を振り切り・・・?いや、返り討ちにし生還を果たしたのだ。

その後もドルファンドの罪の証拠を喜多野マテリアルに提出し、ミナギ都市で発生するバイオハザードの前兆を示した。


彼らの行動が無ければ、ドルファンドの大罪が表に出る出ないは別として、この大陸に大きな災いが降りかかっていただろう。

本来、未曽有の大災害に発展したであろう問題を、まだ小規模で抑えることが出来たのはこの2人の勇気ある・・・・とは大分違うが、その行動の結果に他ならない。

これは喜多野マテリアルにエージェント待遇で迎えられても可笑しくない功績だ。


しかし、この2人はその対応を喜ぶことはしないだろう。

そんな事はこの2か月未満での付き合いで想像がついた。この2人はあくまで自由に活動させた方が良いのは間違いない。

その事はゴンダバヤシも気づいており、組織の枠組みの中に組み込んでしまうより自由度の高いワーカーとして活動させ、その行動を監視させるためにキクチやラルフをこの2人に着けたのだと理解している。

それはエリア管理企業の取締役としては正しい判断だろう。


その判断にラルフ自身が巻き込まれていなければ、もろ手を挙げて賛同していたに違いない。

しかし、ラルフはこの2人の傍に配置されてしまった。この決定に異を唱える機会はもう巡って来ない。ゴンダバヤシに文句を付けるなど出来るはずもない。ならば、直属の上司となっているキクチに思いっ切りぶちまけてやるのだ、と頭の中でこれから言う事を整理していった。


(早く来いキクチ。私の苦労を聞かせてやる・・・・・)

ラルフはキクチがこの1ヶ月どれほどの試練を掻い潜って来たのかは理解している。


都市が消滅する。


この可能性を内包した任務を受け、訪れたことも無い都市でワーカーオフィスの統括代行として指揮を執る。これはいくらゴンダバヤシの指示があるとはいえ、そう簡単に行えることではない。

そのプレッシャーを受けたままキクチはその仕事をやり遂げた。

モンスターの一体は都市外部に逃がしてしまったが、その問題も彼のひも付きであるスラムバレットが解決してしまったのだ。大した問題には成り得ない。

だがしかし。

それが自分の命を窮地に陥れたとあれば文句の一つも言わなければ気が済まない。


表面上はすました顔をしながら今か今かとキクチが姿を現す瞬間を待つラルフ。




そして扉が開き、


「都市から流出したモンスターの討伐。ご苦労だったな3人共」


護衛とキクチを引き連れたゴンダバヤシが姿を現したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
都市の運営に関わる重大な件だしそりゃ重役が来ますよね
長かったミナギ都市編も佳境 今回の主役はラルフとキクチとゴンダバヤシな気がする ラルフとキクチの苦労自慢は内容被るし、頻繁に同じ文章何度も見てるし、伏線にもなってないから、そろそろ別の展開が
まあ、キクチさんだけじゃないよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ