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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
212/217

イデア参戦

キクチ視点


地下構造のクリアリングのペースが上がっている。

カウンターナノマシンを散布し、モンスターの弱体化が成功しているのだろう。発見率も格段に下がり、発見した際も容易に討伐出来るようになったようだ。

散布前ではワーカーや防衛隊に少なくない被害が発生していたが、今では軽度の負傷を負った者はいても死亡したという報告は無くなっている。

この調子で作業が進めば、後2・3日で全エリアの駆除が完了できるだろう。


今では1番地区と6番~8番地区の上層下層の制圧が終わっており、徐々に範囲を狭めて駆除を進めていた。

『キクチ。駆除の進捗状況は?』

この段階まで来るとそこまで細かく指示を出す必要もなくなり、ただ報告を受けるだけになっていたキクチにゴンダバヤシから通信が入る。

「はい、順調です。カウンターナノマシンの効果でモンスターの弱体化に成功している様で被害報告もほとんど上がってきません。崩落のあった2番地区と同じように地下構造体にダメージを受けいつ崩れるか分からない3番地区の作業を後回しにしているのが気がかりですが・・・・」

『それは仕方がないだろう。第2防壁内でのクリアリングも先ほど終了した。もう都市毎吹き飛ばす様なことにはならんだろう』

「そう思います・・・・ですが、あの大型モンスターの行方が分かっていないのが気がかりですが・・・」

『他で暴れたという報告もないからな。あの巨体でどこに隠れているんだか・・・・2番地区の地下でジッとしてると思うか?』

ゴンダバヤシもあの巨大蛇が死んでいるとは考えていないらしい。

「わかりません。しかし、あのサイズのモンスターと地下で戦闘を行うのは非常に危険です。後2時間ほどでスラムバレットが到着しますので彼らに調査・討伐を任せようかと」

キクチはもう直ぐ到着するはずのシドとライトに巨大蛇の調査を任せようと考えていた。

最悪あの2人なら構造体が崩落しても死ぬことはなさそうだと考えている。

ライトは強力なシールドを展開できるシールドスーツを着用しているし、シドはその体があまりにも頑丈にできている。ただの瓦礫で死ぬようなことにはなるまい。

ちなみにラルフには自分の補佐とあの2人への指示役を頼もうと考えていた。

『なるほどな・・・・地下で暴れすぎて全面崩落。なんて事にはならねーよな?』

「ははは、それは流石に・・・・・無いと思いますが・・・・」

ゴンダバヤシの言葉を完全に否定する事が出来なかったキクチ。

流石にそんな事にはしないだろうとは思うが、今までの事を考えると少々不安になる。


「・・・・・ドルファンドの方はどうなっていますか?余罪の洗い出しを行っていると聞いていましたが」

『ああ、トウドウが陣頭指揮を執って行っている。今回の人身売買には関わっていなくとも、他の犯罪行為に手を染めていた者が居るようだ。罪の重さには違いがあるが課長以上は軒並みブタ箱行だ。途中で呼び出されたバークと一緒に処理をしているが、2人共青くなったり赤くなったりで倒れないかが心配だな』

「それほどですか?」

『ああ、間違いなくドルファンドは解体だ。トウドウもバークも余罪が無い社員の受け入れすら拒否の構えだな。真面目に働いていた連中は可哀そうだが、他都市で再出発するしか生きていく方法はねーだろうな』

「・・・・技術の接収はどうするんです?」

『ウチで吸い上げるしかないな。こんな危ねーナノマシンを作る技術をおいそれと他所には流せん』

(まあそうだろうな・・・)

セントラルからは使い物にはならないと言われた技術だ。

しかし、放置も出来ない。下手に他企業に、特に中央崇拝者等の手に渡れば目も当てられないことになる。

『こっちの状況はそんなとこ・・・(ビービービー!!!)』

ゴンダバヤシとの会話を遮り、キクチの通信端末が緊急通信を知らせる。

「失礼します」

ゴンダバヤシに断わりディスプレイを見ると、先ほど通信を切ったラルフからだった。キクチは眉間に皺を寄せ、通信を繋げる。

「どうし・・・『キクチーーー!!!ミナギ都市からモンスターが流出していますよ!!!!』」

キクチの言葉を聞く余裕もないと言いう様にラルフが声を上げる。

ディスプレイには何も映っておらず、サウンドオンリーの通信だった。そしてラルフの放った内容にキクチとゴンダバヤシは目を剥く。

「なんだと?!どういうことだ?!」

『どういう事なのか私の方が聞きたいです!地下から巨大なワームというか何というか形容し難いモンスターが飛び出して来たんですよ!!防壁を突き破って逃げたんですか?!』

(・・・バカな!!)

その様な報告は無い。

地上に出て来たモンスターは数は少ないがある程度の報告は有った。そのほとんどは討伐されており、唯一生死の確認が取れていないのは大型に分類されるであろう蛇型のモンスターだけだ。


確かに強力なモンスターだろうが、外周部を覆っているぶ厚い壁を越えられる力は無かったはずだ。

ミナギ都市では層構造上、地上部分だけではなく地下の外周部や床部分にも強固な材質が使用されている。地下を掘削して移動するモンスターも荒野には出現する為、奴らの侵入を防ぐための防備は施されているはずだ。

第2防壁内への侵入を許した際、アースネットに外部への流出する可能性を問い合わせたが『今回のモンスターが力づくで外周壁を突破することは難しい』との見解を受け取っている。

一体どうやってあの頑丈は防壁を通り抜けたというのか・・・・・

「地上の防壁を超えた報告は無い・・・・・考えられるとしたら地下だが・・・・・」

『このモンスターはある程度体のサイズを変更できるようです!コチラで確認した時は中型から大型へ変化しました!口や体表の触手の様な物から溶解・・・うおわあああ!!!!』

端末からラルフの悲鳴が聞こえ、爆発音なども聞こえ・・・ザザザとノイズが走る。

「おい!大丈夫なのか?!おい!!!」

クリアリングが終わった地区から外周部へ繋がる穴の報告などない。と言う事はそのモンスターはまだ調査が完了していない地区から外へ流出したという事だ。

早く穴を塞がなければ逃げ出していくモンスターが続出することになる。

今は少しでも情報が欲しい。


『・・・・・・・・・・ダ・・・・・ぶです!!』

「モンスターに弱体化の兆候はないのか?」

『これで弱体化してるとは思えません!カウンターナノマシンの存在に反応し逃亡したのでは?というのがコチラの予想です!』


カウンターナノマシンの存在を敏感に察知しこの都市から脱出したと・・・

変異ナノマシンに脳を乗っ取られたモンスターの行動とは思えない。ワームの様だという言葉から、恐らくはあの巨大蛇が進化したモンスターなのだろう。

やはり殺し切れていなかったか・・・・

「倒せそうか?」

『倒して貰わなければ困りますよ!!!!』

それはそうだ。ここであの2人が負ければラルフも死ぬ。

「直ぐに処理部隊を送る。討伐した場合は、他のモンスターを近づけないようにしてくれ」

『出来るだけ速くお願いします!』

叫ぶように言って後ラルフは通信を切る。

あまり余裕はなさそうだ。


『・・・・・・・・・ウチの部隊を送る。万が一に備えてな』

「よろしくお願いします。恐らく第2地区か第3地区の地下に穴があるのでしょう。アースネットに構造を支える補強資材を準備してもらい至急、作業員とワーカーを送りこみます」

『ああ、後はその穴内部の調査も必要になって来たな・・・・・』

「頭の痛い話です」

『スラムバレットに感謝だな。直ぐに指示を出す。お前も直ぐにかかってくれ』

「承知しました」


もう少しで事態の収束かと思われたが、まだまだキクチは休めないらしい。



スラムバレット視点


「うわーーーー!!!!」

見た目とは裏腹に地上では素早い動きを見せるモンスター。

その尻尾が振り回され、ラルフが運転するT6にあと少しで直撃する所だった。ライトが車体にシールドを張り巡らし、ラルフがハンドルを切ることによって間一髪で回避に成功する。


T6に搭載された複合銃が止めどなく弾丸を吐き出し、小型ミサイルが宙を飛翔していく。

ラルフは運転に必死で兵器の操作等している余裕などない。兵器は全てライトが遠隔で操作していた。

巨大ワームと形容したモンスターは、シドとライトが浴びせる攻撃に少しずつダメージを受けている様だが未だ絶命する兆しを見せていない。


体内にかなりの栄養素を蓄えている様で、ハンター5専用弾での爆発にも耐え、切り裂かれ吹き飛んだ外骨格の修復も高速で行われている様だ。

ミナギ都市管理企業の1つ、ドルファンドの私兵や防衛隊の一部をも撃退したシドとライトの猛攻にも耐え、頻りにT6を食らおうと追いかけてくる。


出来るだけ大きな獲物を食らおうとするのは生物の本能だろうか。

回りを飛び回るシドの事など気に留めず、ひたすらにラルフの操る車を追いかけてくる。

(もっと普通の初戦闘がよかった!!!)

半泣きで必死にアクセルを踏みハンドルを回すラルフだった。




<おお~~、ラルフやるな>

ワームをS200で滅多打ちにしながら感想を述べるシド。

刀で切断しても驚異的な再生力で修復してしまう為、シドが体表の外骨格を破壊し無防備になった場所にライトがミサイルを撃ち込んでいく。

難易度の高いコンビネイションだが、この程度なら慣れた物であった。


<危なっかしい処もあるけどね。さっきもシールド張らなかったらひっくり返ってたよ>

ライトはT6の車上から両手のハンター5を複合銃を撃ち、ミサイルを操作する。

ワームにダメージを与えながらライトはその反応を分析していた。


ワームが攻撃を嫌がる場所。他よりも修復が速い箇所等を観察し弱点を特定しようとしていた。

だが、それも難航している。

体表や触手から分泌されている溶解液の効果でダメージが一定にならない。その為、修復範囲や速度の法則性が掴み辛く弱点部位の特定が未だできていない。


とはいえ矢鱈無暗に吹き飛ばせばいいというものでもない。

このモンスターは変異ナノマシンでモンスター化した存在であることは間違いない。であれば、下手に傷つけ体内のナノマシンを流出させれば厄介なことになる。


今はミサイルでダメージを与えている為、着弾点のナノマシンは無力化できていると思うがシドが刀で削り殺すという倒し方は難しい。

自分達は焼却用の装備は持っておらず、最悪の場合はELシューター01による周辺と一緒に消し飛ばすしかなくなるからだ。

この兵器は高威力ではあるが、被害範囲が広くそう簡単に使用できる兵器ではない。今の距離だと自分達も巻き添えを食う事は間違いなかった。

弾薬も気軽に補給できるモノではなく単価も高い、ライトとしてはここぞという時にまで使用したくない兵器だ。


とは言えミサイルの残弾も心もとない。逃亡戦の時にかなり消費しそれ以降補給出来ていない事が地味に効いている。

(どうしよう・・・・)

このまま決定打が無いまま戦い続ける事も難しい。

<シドさん。頭だけ切り飛ばすって出来ない?>

<いや、あの太さだぞ?刀身の長さが足りないって>

<ビルも切ったでしょ?>

<ちゃんと構えて力を溜めないと瞬閃は放てないんだよ。デンベさんみたいにノーモーションから撃つのはまだ無理。それにこの刀自体で斬るのと衝撃波で斬るのとじゃ全然違うんだよ。集中して全力でやらないと>


どんなモンスターも頭さえ切り離しさえすれば活動を停止させられる。それはこのモンスターも同じだろう。

だがミサイルを命中させても頭部を完全に破壊する事は出来ず、ある程度負傷させられても直ぐに再生してしまう。

故にライトは完全に胴体から頭部を切り離してしまおうと考えたのだが。


<切り飛ばすのはお勧め出来ません。この個体内にも変異ナノマシンが大量に内包されているハズです。切り飛ばすより焼いてしまう方が後の処理が楽になるでしょう>

<どうするんだ?>

<ボク達高熱兵器なんか持ってないよ?>

イデアの進言はもっともであるが、シド達の装備に高熱を発する兵器はライトのハンター5専用弾か、小型ミサイルであるハイドラプターの2つしかない。ハンター5は高威力ではあるが連射は効かず、小型ミサイルに関しては弾切れ寸前であり、このワームを殺し来ることは難しい。

<仕方がありません。ラルフの実地訓練はここまでにして、私が攻撃します>


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