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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
203/217

ドルファンド幹部の処分

キクチ達が地下での対策を決定し、準備を進めている頃。

ゴンダバヤシは防衛隊が包囲しているドルファンド本社へと入り、人身売買に係わっていたと思われる職員や、彼らを材料に実験研究を行っていた研究員達を集め、取り調べを行っていた。


スラムバレットから提出されていた資料との照らし合わせや、喜多野マテリアルから連れてきてた調査員とトウドウの部下達が社内記録を調べ上げた結果との照合を行い、比較的速やかに罪人の洗い出しが終わって行く。


「・・・・人身売買に係わっていた者達の洗い出しは終了し、全て捕縛も完了しています。人体実験に関わった者達ですが、上位の数名のみが実験体の素性を認知しており、実際の研究者たちは犯罪者であると聞かされていたとの事です」

「・・・・それにしても、人数が多いとは思わなかったのか?」

「疑問に思った者達も居た様ですが、上からの圧力が強く、疑問を口にする事は出来なかった様です。強く質問を繰り返していた研究者もいた様ですが、その者達は解雇されております」

「その研究者に裏はとれるのか?」

「調査しましたが足取りはつかめていません・・・・恐らくは・・・・・・」

「・・・・・そうか。彼らの身辺も調査を行え。他に何か出てくるかもしれん」

「承知しました」


企業が支配している世界の為、その企業も多少後ろ暗いところがあるのが当たり前といえる。

大なり小なり皆同じことをやっているだろう。


綺麗事だけでは企業は回って行かない事は十分身に染みているが、ここまで自分勝手な理屈で社員を切り飛ばす企業は多くは無い。

ドルファンドはこの大陸の企業理念に根底から反していた。


ドルファンド内部の調査は終わり膿は出し切ったと思える。後は法に合わせて罪の重さを吟味して適切に処理をすればいい。

その判断は部下に任せてゴンダバヤシは幹部連中の捕縛に向かったデンベの到着を待っていた。

捕縛が成功したとの連絡は受けているが、ワーカー達を含めて15人もの人数がおり、捕縛の際にデンベが彼らが乗っていた車を破壊してしまっている為ここまで運んで来る事が難しい。

その為、車を一台派遣しこちらに運んでいる最中である。


「ゴンダバヤシ様、もう直ぐ到着いたします」

ゴンダバヤシの護衛についていた兵士から連絡を受け、彼は椅子から立ち上がる。

「わかった。移送用の車の手配は終わっているな?」

「はい、待機させております」

「よし、行くぞ」

そういうとゴンダバヤシは部屋を出て行く。

その表情は普段とは比べ物にならない程に険しく。抑えきれない怒りがにじみ出ていた。



ゴンダバヤシが駐車場に着くと、デンベ達はすでに到着しており捕らえた連中を並べて座らせていた。

ドルファンド幹部とワーカーチームは全員が手足を拘束されており、さらに声も出せないよう口枷も嵌められている。

ワーカーチームはさらに強固な拘束具で全身を拘束され、兵達に銃を向けられた状態で座らされていた。


「ワーカー達は全員が身体拡張を行っている様なので、拘束具を使用しています」

デンベが近寄ってきてワーカー達の状況を説明してくる。

「わかった。ワーカーは後回しだ。まずはアイツ等から片を付ける」

そういうとゴンダバヤシは、ギール達の前まで足を進め話始める。

「俺は喜多野マテリアル 取締役のゴンダバヤシだ。俺がここに居ることについてクドクド説明する必要も無いだろう。お前達の行っていたことは6大企業全てが禁じている大罪だ。お前等にはその罪を償って貰う」

ゴンダバヤシの登場で青くなっていた幹部達はその言葉を聞き、さらに顔色を土気色に染めてガタガタと震え始める。


ある者は生気が抜けきった表情で俯き、ある者は涙を流しながら顔を横に振っている者も居る。

その者達には頓着せず、ゴンダバヤシは最初から俯いたままのギールの前に立ち声を掛けた。

「ドルファンド代表 ギール・ロペス。人攫いの依頼と人身売買、違法な手段で手に入れた検体での人体実験。さらには不完全なナノマシンを使用した戦闘ノイドを使用し、都市内部での戦闘行為の結果、ナノマシン汚染を発生させた罪。全てが弁明の余地すらない重罪行為だ・・・・・・だというのにお前は責任を取るどころか、この危機を放置し逃亡を企てた。都市管理企業に名を連ねた企業の代表としてあるまじき行為・・・・・・何か言いたいことはあるか!」


ゴンダバヤシの言葉を聞き、デンベがギールの口枷を外す。

すると、なにやらブツブツと呟き始めるギール。

「・・・・・ぃ」

「・・・なんだと?」

辛うじて声が聞こえたのか、ゴンダバヤシの目がつり上がる。

「・・・何が悪い・・・・・・」

「・・・・・・・」

「私のしたことの何が悪い!!!!ただ生まれて何も生産せず死んでいくだけの連中に価値を与えてやったんだ!!!」

「・・・・てめぇ・・・・」

「スラムの連中や底辺のワーカーなど只死を待つだけの無価値な連中だ!!!その様な連中に私が金を払い価値を付けたんだ!!!何の価値も無い連中が技術の発展に寄与できたのだから感謝す・・・ゴフ!!」

ギールの言葉が終わるより早く、ゴンダバヤシがギールの頭を掴み地面に叩きつける。


「ふざけるな!!!そのただ生まれて死んでいくだけの者達に仕事を与え力を付けさせ!!都市を発展させ人類の生存圏を広げるのが管理企業の存在意義だ!!!」


ギールの頭を押さえつける力をさらに強め、ゴンダバヤシは声を張り上げる。


「そういうテメーは何をやって来た!!!!自分の管理エリアの管理も碌に行わず!!都市の発展を阻害して金儲けに邁進してきただけだろうが!!!・・・・・いいか!!俺達管理者ってのはな。どうしようもない問題が起こった時、首を切られるのが最後の仕事なんだよ。発生した問題のせいで被害を被った者達に、この首で勘弁してくれって言う為にな!!!その為に権力と権威ってモンがあるんだ!!お前みたいの様な不幸を撒き散らして責任も取らず逃げ出し、権力を振りかざすだけのヤツこそ無価値な人間だ!!」


ギールの頭をもう一度地面に押さえつけ、ゴンダバヤシは体を起こす。

「・・・・・・・・そんな無価値なテメーに朗報だ。受け入れ先が決まったぞ。テメー等は東方の花京院グループが引き取ってくれるそうだ」

その言葉を聞いたギールを含めた幹部達は大きく目を見開く。

「知っての通り、治療技術や回復薬の開発。生体培養や身体改造技術の最大手だ。テメー等みたいな雑な検体の扱い方などしない。丁寧に長く使って貰えるだろうぜ・・・・喜べよ、無価値なテメー等が技術の発展に寄与できるんだからな」


ゴンダバヤシのこの言葉は、この場にいる幹部達全員が治験に回される事を意味する。

直ぐに死ねる処刑などとは違い、わざと傷つけられ研究中の回復薬の効能を観察したり、完治が難しいウイルスや危険な細菌の治療実験等に使用されると言う事だ。

その苦痛は大きく、とても正気を保ったままでいられる訳も無い。

しかし、狂ってしまっては正確な反応データが得られない為、狂う事すら許されず延々と地獄の日々を過ごすことになるのだ。


この後自分がどうなるかを知ったギールはゴンダバヤシにありったけの罵詈雑言を吐き出そうと口を開こうとするが、顔を上げた瞬間、デンベが口を塞ぎ顎の骨を粉砕する。


「――――――!!!」

痛みで声にならない悲鳴を上げながら痛みにのたうち回るギール。

その様子を冷たい目でひと睨みした後、ゴンダバヤシは兵隊達に命令を下す。

「最低限の治療をして車に積み込め。個々の刑期は本社で決定され通達される・・・・・・せいぜい自分達のやったことを悔いて死ね」


ギールは顎が砕かれたまま再度口枷を嵌められ、水揚げされた魚の様に跳ねながら車の中に引きずり込まれていく。

他の幹部達も同じように別々の車に乗せられ花京院グループへの引き渡し場所まで運ばれていった。


「・・・・さて」

ドルファンドの幹部達が乗せられた車を見送り、ゴンダバヤシは地面に拘束されたままのワーカー達に振り返る。


「「「「「・・・!!!」」」」」

その視線を受けたワーカー達は一様に固まり、ブルブルと震え始める。

「んで?コイツ等はどこまで関わってたんだ?」

デンベへと顔を向け、彼らの事を問う。

「ここに来る途中尋問しましたが、人身売買には関わってはいない様です」

「ほう?」

ゴンダバヤシが再度ワーカー達に視線を向けると、全員がブンブンと首を縦に振る。

「ドルファンドとは救助契約を結んでおり、今回の行動はその契約に則って行動した様です。侵入は隠し通路を使用しており、逃走の際に防衛隊と戦闘も行っていますが、被害としては軽微な方かと」

「・・・・・・・なるほどな。戦闘ノイドが暴れた件に関しては?」

「その時彼らは遺跡へと潜っており、ミナギ都市には不在だった事も確認が取れています。本当にただ巻き込まれただけかと」

「・・・・・わかった。なら俺がアレコレ言う事は無い。ミナギ都市の判断に任せる」

ゴンダバヤシの言葉を聞き、一斉に脱力するワーカー達。中には目をまわし倒れてしまう者もいた。

「・・・・・今後もアースネットとケミックス・アロイにミナギ都市の管理を任せるのですか?」

「それはあいつらが今の問題をどう片付けるかだな。無論協力は惜しまんが、アイツ等がこの都市をどう見ているかを判断してから決める。最悪の場合はダゴラと同じようにウチの直轄都市にするしかない」

「承知しました」

「はぁ・・・・キクチが上手い事片付けてくれればいいんだがな」

「彼の方でも動きが有った様です。弊社にも協力の要請が来ております」

「俺の権限で可能な限り協力しろ。俺達も仕事の続きに取り掛かるぞ」

「はっ」


ドルファンド幹部達の処分は終わった。

後はこのドルファンドという企業をどう解体するかの問題がある。2社の都市管理企業に分担して分け与えるか、それとも喜多野マテリアルが吸収するのか。


その協議も本社との会議を開き決めなければならない。

ゴンダバヤシは、ドルファンド社内の調査を任せているトウドウに話を聞く為にまた会議室へと戻って行くのであった。


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― 新着の感想 ―
更新止まってかなしい
いやぁ~花京院の研究者としても良心の呵責なく存分に扱える実験体はありがたいだろうね!某SCPにおけるDクラス的なね!
花京院って名前からしてもう死亡フラグだわ
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