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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
192/217

ギールの絶望

『全防衛隊に通達。作戦は中止。今すぐに反転し都市へ帰還せよ。繰り返す・・・』

この様に防衛隊の指揮車からは、防衛隊全ての隊員に撤退命令が出された。その事に動揺したのはドルファンドの私兵達である。

彼らは企業から「スラムバレットに攫われた重要人物の救出。もしそれが不可能であった場合はスラムバレット毎必ず殲滅せよ」との命令を受けていた。

今防衛隊に引かれては任務失敗は確実だった。

頼みの新型強化外装部隊も全滅し、地上部隊にも大きな被害が出ている。

前方からやって来た荒野車にターゲットと思わしき者達が移され、スラムバレットの荒野車は彼らを守りながら逃げて行く。


スラムバレットが乗っている見た事が無い荒野車は・・・・いや、もう戦車と言っていい攻撃力と防御力を兼ね備えた車は、撃破する事は難しい。

防衛隊の高機動部隊も近寄ることが出来ず、遠回りをして先に逃げる荒野車を狙うしか方法が無かった。

その荒野車にも高ランクのワーカーが乗っている様で、思う様に取り付けないでいる。

このタイミングで防衛隊が撤退すれば、自分達だけで任務を遂行する事は不可能だった。


抗議は当然行ったが防衛隊からは、

『対象は都市から離れて行っている。都市自体に被害が出る可能性は無いと判断し、我々は撤退する』

との返答があり、止める間もなく防衛隊は撤退を始めてしまった。

「隊長!どうするんですか?!」

「防衛隊が居なくなっては任務続行は不可能です!」

私兵団の指揮車に乗っている部下たちが次々に指示を求めてくる。

「・・・任務は続行だ」

「そんな!」

「無理です!殺されにいく様なものです!!」

「ここで撤退しても粛清は免れん!全火力を前方の荒野車に向けて・・・!!」

攻撃の指示を出そうとすると、車に衝撃が走り車体が傾く。

「な!!なんだ!!!」

「攻撃を受けました!後輪が1つ切り取られています!」

「バカな!!!」

走る荒野車の後輪を斬り飛ばす等そう簡単に出来る事ではない。しかし、現実にシステムは後輪の1つが脱落したとエラーを出しておりこれ以上の走行は不可能と判断していた。

「くそ!!!」

壁に拳を叩きつけた瞬間。車を覆っていたシールドとコックピットの強化ガラスが破られ、運転していた部下達に弾丸が叩き込まれる。


バランスの悪くなった車を何とか立て直していった運転手が居なくなり、指揮車は派手に横転。

ゴロゴロと転がり岩山に衝突して動きを止めたのだった。


ライト視点


シドが防衛隊の指揮車を制圧したのだろう。急に防衛隊が反転し戦線を離脱していく。

急に味方が撤退を始め、動揺するドルファンドの私兵達を銃撃していく。


攻撃の圧が緩み、もう終わりだなと思っているとシドから念話が届いた。

<ライト、そっちは無事か?>

<うん、なんとかね。シドさんは?>

<まあ、体は無事だな。防衛隊と私兵共の指揮車は片付けたからもうこれで終わりだろう>

<そっか、このまま合流?>

<・・・・そうだな。ちょっとバイクを置きたい>

<・・・?わかった>


統率者を失い、散り散りに逃げて行く私兵達。まだ向かって来るものは容赦なく撃ち抜いていき、漸く追って来るものはいなくなった。


すると、シドのバイクがこちらに向かって走ってきており、その後ろにはイデアの姿もある。

ライトは車の後部扉を開き1人と1体を車の中に招き入れた。


「ふい~、ただいま」

「おかえり。結構時間かかったね」

「ああ、滅茶苦茶しつこくてな。でもキッチリぶっ殺してきたぜ」

シドは車内にバイクを固定し、しゃがんで車輪や動力の辺りを探った。

「どうしたの?」

「ん~・・・なんか調子悪いみたいなんだよな。高速で走るとがたつくし、パワーも落ちてる様な気がする・・・」

「それは当然かと。このバイクは性能に見合わない強度の戦闘に駆り出されてきました。最近では全力疾走のオンパレードです。満足にメンテナンスもしていない状態で良く持ったと判断します」

「そうなのか?シールド使って車体に影響ないようにしてたんだけどな~」

「シールドを発生させても車体に負荷はかかります。ゲンハに体当たりしたのがトドメだったようですね」

ダゴラ都市を出てから、過酷な戦場を駆け回って来たバイクだ。

しかも本来の使用用途にない無茶な空中走行も行っている。ガタが来て当然と言えば当然だ。

「ええ~・・・気に入ってんのに・・・・」

「メンテしても強度的に直ぐにダメになります。買い替えを考える時期かと」

イデアにばっさり言われ、ガックリと肩を落とすシド。

「仕方ないね。それより今後の対応だよ。ドンガさん達も無事に逃げきれてるけど、地下シェルターに着くまでは安心できないよ。モンスターの事もあるし」

「・・・そうだな。まずは安全を確保してから考えるか」


シドはバイクの事は一旦置いておき、コックピットへ向かってナビシートに腰かける。

ライトもシートに座り地下シェルターに向けて車を走らせた。



ドンガ達視点


「危なかったわね・・・・」

「ホントにね~。後少し続いてたら予備のジェネレーターもお釈迦だったよ」

防衛隊が撤退し、追って来る私兵達も殲滅した後、ようやく落ち着ける状態になった。

「それで、ダーマっつったっけ?傷は大丈夫か?」

「・・・ああ、回復薬のお陰で血は止まっている」

ダーマは先程の戦闘で腕を撃たれ負傷していた。

撃たれた瞬間レオナが窓から出ていたダーマの体を引き戻すと、自力で回復薬を取り出し飲み込んでいた。

「それはよかったわ・・・・それで、アタシにはあんなに反対したのに、自分もワーカーになってるなんてね。連絡1つも寄越さずに!」

ドンガは腕を組みダーマを威圧する。

「・・・・・勤め先が潰れて金が必要になったんだ。それに、連絡を寄越さなかったのはお前もだろう」

ダーマにそう言われ、ドンガはフン!と鼻息を吹くと今回の説明をダーマに求める。

「エミルは俺が組んでいたワーカーの娘だ。目に特異な特徴があって、それが原因でドルファンドに目を付けられたらしい」

それからエミルをスラム組織から救出し、シド達に助けられた事や今日までに起こったことを説明していく。

「・・・・・人身売買ね。都市の管理企業が行っていたとなると大事になるよ。証拠はあるの?」

「イデアが持っていると言っていた。目的地に着けば渡すと聞いているが」

「あのオートマタね。あんなの何処で見つけてきたんだろ?」

「ダゴラ都市を出て行くときは居なかったよな?ならあの地下シェルターか?」

「ヤシロ。あのシェルターの事は探らないようにってキクチさんに言われてるでしょ?ヤバイ匂いがプンプンするんだから考えるのは禁止よ」

都市管理企業の人身売買、規格外の戦闘能力を持つオートマタ。

この2つのネタで話は尽きない。

だが、ダーマは今後の予定が最も重要だった。

「それで、何処に向かうんだ?ダゴラ都市に行くと思っていたんだが」

「ダゴラ都市に着くまでにあるシェルターよ。なんでもセキュリティは最上級らしいから」

「そんな場所に俺が入れるのか?懐に余裕はないんだが・・・」

ダーマは運び屋に騙されてスッカラカンである。この数日依頼を受けて稼ぎはしたが、それほど余裕があるわけではない。

「大丈夫よ。お金の事はアタシが何とでもするわ」

ドンガの頼もしい言葉に、兄としては情けなくなるがエミルの事を考えると背に腹は代えられない。

「・・・・助かる」

そういい、ドンガに頭を下げるダーマだった。


4人で話しているとライトから通信が入ってくる。

『ドンガさん、そちらの状況はどうなってますか?』

「問題無いわ。お兄ちゃんがちょっと怪我しちゃったけど軽傷よ。エミルちゃんも無事。このままあのシェルターに向かえばいいのね?」

『はい、このままダゴラ都市に行くよりそっちの方が良いと思います。シェルターにはキクチさんもいますよね?』

「ええ、彼もまだ居るわ。ミナギ都市での事を報告して対処してもらいましょう」

『わかりました。では、このまま最短で行きましょう』

「了解。じゃあね」

ドンガは通信を切り全員を見渡す。

「それじゃ、シェルターに向かいましょうか」

「そうね~、なんか、ワーカーになって久々に死の危険を直に感じた旅だったわ」

「そうだな。まさかここまで大事になるとは思わなかったぜ」

「あんた達を付けてくれたキクチさんに感謝ね。帰ったらお礼しないと」


そう言い合いながら、2台の車はセントラルが運営する地下シェルターへ向かっていくのだった。




ダゴラ都市

ドルファンド 代表室


「失敗しただと!!!!!」

室内でエミルの奪還作戦の結果を聞いたギール・ロペスは想像もしていなかった報告を聞き大声を上げる。

「どういうことだ?!アンダースネイクの総攻撃以外にも我が社の兵隊と防衛隊も出動させたのだぞ?!それでなぜ失敗に終わる?!」

都市首脳会議は第1防壁内にモンスターが出現したと報告を受け、一時中断。それぞれが自社に戻り問題解決の為に動く事になった。

ギールは帰社して直ぐ、重要実験体であるエミル確保の進捗状況を確認したが、進行中との連絡を受けて続報を待っていたのだ。しかし、次に届けられた報告は彼が求めていた物とは全く異なり、逃亡したスラムバレットのメンバーを追った私兵部隊と防衛隊が事実上の全滅に値する被害を出し撤退。

相手に損害を与えることなくダゴラ都市に向けて依然逃亡を行っているとの報告だった。

「何故そんなことになる?!強化外装を70機まで出撃許可を出していたはずだ!それだけの戦力があれば十分に捕獲!最悪でも殲滅は出来たはずだろう?!」

「そ・・・それが、強化外装はそのほとんどがスラムバレットが使用しているオートマタに撃破され、全て撃墜されたとの事です」

「1体のオートマタ如きに我が社の最新式強化外装が落とされたというのか!!!???」

イデアは戦闘用として開発されたオートマタではない。

しかしそれは旧文明基準、それも武蔵野皇国基準での話である。

現代の強化外装など敵ではない。

だが、旧文明のオートマタが個人の専用機としてワーカーに付き従っているなど想定外なのであった。

ギリギリと歯を鳴らしながら拳を握りしめるギール。

このままでは実験体は手に入らないどころか他都市に人身売買の話が流れる可能性が出て来た。

面倒なことになると考えるが、ギールはワーカーと言う存在に重要性を置く人間では無かった。根無し草のワーカーの言葉などどうとでもなると考えている節がある。

だが最後のピースとなる特異体質を持つと思われる者を発見し、手に入ると思っていた矢先にこの失態だ。

我慢できるわけが無かった。

「・・・・ならスラムバレットの1人しか仕留めることは出来なかったと言う訳か・・・・・!!!」

ギールはワーカー達の事を社会の歯車としか見ていない。

確かにいなくなられると困る存在だが、歯車でしかない。幾らでも変わりは存在し、歯車を回す側だと思っている自分と同列に考える事などあり得ない。

今回はただの跳ねっ返りに一杯食わされたくらいの認識だった。

しかし、

「いえ・・・・スラムバレットのリーダー、シドの討伐に当たっていたゲンハですが・・・・・」

報告に来ていた秘書は顔から汗を流しながら言いよどむ。

「なんだ・・・・!!ハッキリ言え!!!!!」

その様子に我慢が出来ず大声を上げるギール。

「・・・・・信号が消滅しました。恐らく・・・・死亡したものと思われます・・・・」

「・・・・・・は?」

ゲンハはドルファンドが技術の粋を結集して作った強化兵士だ。サイボーグ技術とバイオノイド技術の混合体で、驚異の身体能力と強靭な肉体を持ち、再生能力も高く肉体に負荷を掛ければ掛けるほど強靭化していく仕組みになっている。その性能は6大企業のイレギュラーにも匹敵すると自信を持っており、ランク50程度のワーカーに負けるはずがない。

「・・・ありえない・・・・・・・あれの製造に一体どれほどの資金を投じたと思っている???」

「・・・・・・・・」

「・・・・ふざけるな!!!!どうなったのか詳細な情報を調べてこい!!!!」

「わ・・・わかりました!!!!」

青い顔をして代表室を出て行く秘書。

その背中を見送り、椅子にドカリと腰を下ろすと、端末である人物に連絡を取る。


通信機から数コールすると、目的の人物が通信に出る。

『は~い、毎度どーも』

機械音で変声された声が通信端末から聞こえてくる。

「どういう事だ?」

『・・・なんの事でしょうか?』

「シドとかいうハンターの事だ!!!情報と全く違うだろう?!」

『そうですか~?料金分の情報はお渡ししましたが?』

「弊社の最新技術で強化した兵隊を倒せるほど強いとは聞いていない!!」

『オイラは戦闘とは無縁ですからね~。そこの判断はそっちでやってもらいたいのですが』

「ランク50のハンターが勝てる訳がないんだ!!!」

『ただのランク50ならそうなんでしょうね。でも、シド君はそうじゃないでしょ?それはお伝えしたと思うのですが』

「そんなことは一言も言っていなかっただろう!!!」

『言いましたよ?空走許可持ちだって』

「それがなんだというんだ?!」

「・・・・・・・・・・それ、本気で言ってます?ランク50で空走許可持ちって他に居ませんよ?」

「・・・・・・・・」

空走許可とは基本ランク60を超え、ワーカーオフィスから確かな信頼を得られなければ手に入らない許可だ。ランク50のシドが持っていること自体が異常なのだ。

『あ~、その様子じゃ調べませんでしたね?ちゃんと調べたら彼の異常性はハッキリわかったのに』

「・・・・・・・」

『・・・・・わかってないみたいですな~。サービスで教えてあげちゃいましょう』

通常の空走許可はワーカーオフィスが申請し、都市側からの許可を得て認可される。

その場合、申請者と許可を出した人物の名前が記録として残ることになるのだ。これはそのワーカーが問題を起こした場合に責任を取るとかそういう話では無い。ただ、その許可を出すにふさわしい人物だったかどうかを後で確認できる様になっているだけだ。

だが、シドの場合は少し異なっていた。

『彼の空走許可を出した人物って、名前載ってないんですよ』

「・・・・・・・・・」

『なら、誰が許可を出したのか?ライセンスとオフィスの登録内容が改ざんされている可能性は低い。1年前なら少なからず可能性があったけど、システム変更が行われた今は不可能に近いセキュリティが引かれている。となると、記録に残らないルートで許可が出されたという事ですよね~?』

都市にもワーカーオフィスにも通さずワーカーに空走許可を出せる存在。

それはワーカーオフィスと都市の上位存在であるエリア管理企業に他ならない。このエリアでは喜多野マテリアルと言うことになる。

それも、かなり上位の人物でなければ勝手にワーカーライセンスを書き換える事などできない。

最低でも部門長クラスが関わっているはずだ。


その事に漸く気付いたギールは震え始める。

「・・・・・・!!!」

『あ、わかりました?そう、彼は喜多野マテリアル 兵器開発部門長の許可を得ているんですよ。それ以降親しくしているようですよ~?』

煽るような言葉を投げてくる情報屋。

その言葉にギールは怒りの表情を浮かべて叫ぶ。

「なぜ黙っていた!!!金を受け取って情報を隠すのがお前のやり方か!!!!!!」

『怒鳴られてもな~。たった200万コールくらいで流す情報じゃないでしょ?』

「なんだと?!」

『喜多野マテリアルと繋がってるワーカーの情報だよ?あんた達の中で買ったのはトウドウだけだったね』

「・・・・・・・なに?」

『スラムバレットの情報を買おうとしたのはあんただけじゃない。他の2人もオイラの声を掛けてきたよ。ちなみに、あんたが200万、バーク・ドゥエルが500万、トウドウが1500万出したよ。それに、話を持ってくるのが一番遅かったのもアンタだ』

自分だけでなく、他の企業のトップもスラムバレットの情報を買っていた事に驚きを隠せないギール。

「・・・ワーカーの情報などオフィスに手を伸ばせば」

『ワーカーオフィスでも当たり障りのない情報しか表には出さないモノなんだよ。それにワーカーも何でもかんでもオフィスに報告してる訳じゃない。それ以外の情報ってのはオイラ達みたいな情報屋から仕入れるってのがセオリーな訳。先代から教わらなかったのか?』

確かにそんな話を聞いたことがある。

だが、ワーカーの事を唯の客・・・金蔓程度にしか考えていなかったギールは聞き流していた。

『・・・・まあドルファンドは上手くやってたよ。オイラもドルファンドが人身売買を行ってるって証拠は得られなかったんだからな。来世ではもうちょい工夫するこった』

「まだ私は終わってはいない!!!!」

『・・・・・はぁ~・・・お前さ、ホントに脳みそ入ってる?シド君は喜多野マテリアルの部門長と親しいって言ったよね?彼が逃げ切って部門長に連絡とったら終わりでしょうよ』

「・・・・・!!!!」

『もう手遅れだけどね~。手駒も失って彼らは遥か彼方だ。今から追っかけても追いつけないし、追いついたとしても返り討ちだ。喜多野マテリアルの調査を躱せるか?無理だろう?アンタが出来る事は一か八か、全てを捨てて逃げ出す事だけだろうね』


(バカな!!!!こんな事有っていいはずがない。この都市を足掛かりにもっと上を目指すはずだったのに。たった一つのミスで全てが無に帰すというのか?)

ギールは情報屋の不遜な話し方すら気に留める余裕がなくなっていた。

彼が言う通り、今のギールは詰んでいる。

もし逃げ出したとしても直ぐに見つけ出されてしまうだろう。人身売買の容疑が掛かってしまえば西方地域に逃げる事すら出来なくなる。

『じゃ、ご冥福をお祈りしておりまぁ~す』

ふざけたセリフを残し通信を切る情報屋。

今陥っている状況を正しく認識したギールは抑えきれなくなった激情を開放する。

「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!!!!」


机の上をなぎ倒し、高級な木材で設えられた机をひっくり返す。部屋に置いてあった調度品を壁に投げつけ手当たり次第に破壊していった。


散々暴れ散らし、肩を揺らしながら息を整える。

(姿を眩ませねば・・・何人かの側近を連れて身を隠す!!そしていつか再起を!!!!)

と考えていると、先ほど出て行った秘書が戻ってくる。

「失礼します!!」

ノックもせずに部屋に入って来た秘書に注意する余裕も失っているギールだったが、秘書から思わぬ言葉を聞かされた。

「防衛隊の防壁内責任者と部隊長が来ております。防壁内で暴れたモンスターについて話を伺いたいと」


こうしてギールは逃走の為の貴重な時間を失ったのであった。


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