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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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逃走劇の一発

ライト視点


イデアが発生させたシールドの上を走り、第1防壁を飛び越えたライト達。

防壁を越える前に出来る限り防衛兵器に損害を与え、都市から脱出する事ができたのだが、流石は危険地域に存在するミナギ都市の防衛機構だ。

多少叩き壊されたところで問題は無いとばかりにT6目掛けて攻撃を仕掛けてくる。


ライトは飛んで来る大型の弾丸の弾道を感知し、一番弾幕が薄い場所に車体を滑り込ませながらシールドで的確に防いでいく。

車体そのものを吹き飛ばしてしまうような大型兵器を使用してこない所を見ると、ドルファンドはエミルの確保を諦めていないと見える。

だが、ドルファンドの私兵だけでなく、ワーカー達が賞金目当てにスラムバレットの討伐に乗り出せばどうなるか分からない。

ぞろぞろと現れない内にセントラルが管理するあの地下シェルターに逃げ込めるかどうかがこの作戦のカギになる。

ライトは弾丸の雨を往なしながら地下シェルターに向かってT6を走らせた。


そろそろ弾丸系の攻撃射程外に出ると言う所で、遂に都市からミサイルでの攻撃が開始された。

このまま逃がす位ならエミル毎吹き飛ばしてしまえと言う事なのだろうか?

高速で飛来するミサイル攻撃に、ライトもミサイルでの迎撃を選択。

ハイドラプターを発射し、飛んで来るミサイルに次々命中させていく。

小型ミサイルの爆発とは比較にならない程の破壊が宙で開放され、その衝撃はこちらまで届いて車を揺らした。




ラルフは運よく携帯していたワーカーオフィス用の端末を開き、現在の状況を本部に報告していく。

スラム街での違法戦闘、スラムバレットの正当防衛、ドルファンドが犯したとされる大罪。

そして、今も攻撃を受け続けていると言う状況。


先程までビビリ散らかしていたラルフだったが、このままシートにしがみ付いていても自体は好転しない事は分かり切っている。

己の全能力と人脈を使いし、イデアが回収したというドルファンドの犯罪の証拠と共に作成した資料をばら撒いていく。

この襲撃から逃げ切り、安全な場所に腰を落ち着けた後でドルファンドに反撃出来るように。


銃撃から爆撃に変わり、その衝撃で車体が激しく揺さぶられる中、ラルフは猛スピードで資料を作成していた。


(こんな所で終わって溜まるか!!!!私はもっと大きなステージに立つんだ!!!)

今この瞬間の命はライトが繋ぎとめてくれている。

シドはまだ防壁の中でドルファンドの切り札?の様な者と戦闘中との事だ。

ならその後の戦いの為に全力で準備を行っていた。

「・・・・・さ・・!・・・・・・・る・・さん!!」


今手元にある情報を纏め終わり、ワーカーオフィスの重役全員と、自分と繋がりの深いワーカー達に片っ端から送信する。

今手元にある通信機器ではそれほど遠くに飛ばせる訳では無いが、通信強度の高い施設に接続できれば一斉に情報が飛び回る様に設定も終わった。

後はこの車ごとこの端末が破壊されない事を祈るのみである。

「ラルフさん!!!」

すると、ライトが自分を呼んでいる事に気付き顔を上げた。

「は・・はい!!」

「申し訳ないですけど、後部に移ってください!!その方が安全です!」

「わかりました!」

激しく揺れる車内で立ち上がることが出来ず、ラルフは床を這いながら後部の荷台へと移って行く。

そこには設置されているベンチに腰掛け、その上に走っているラックを掴み、体を支えているダーマの姿があった。

這う這うの体でダーマの横に座り、同じように体を支える。


慣性制御が効いているとは思えない程揺れる車内で、このまま逃げ切れるのかと考えるラルフ。


すると、目の前にイデアと名乗ったオートマタが近づいてきた。

「ダゴラ都市から向かって来ているワーカーにダーマとエミルを引き渡します。予定にはありませんでしたが、ラルフも向こうの車に移動して頂きます」

そのオートマタは車の揺れなど知らんとばかりに目の前でふよふよと浮いている。

蛇行し、跳ね回っている社内で全くの振動を感じさせないとは、どの様な技術で作られたオートマタなのか?と疑問が浮かんで来るが、今考える事ではないと頭の中から疑問を追いやった。

「わかりました!!でもどうやって移動を?!」

ワーカーであるダーマなら出来るのかもしれないが、自分には走っている車から車へ飛び移る技術も度胸も無い。

「私が運びます。安心してください」

安心できる要素などない。だが、他に道が無い。

「よろしくお願いします!」

もうやけくそになりながらそう叫ぶラルフ。


外ではミサイル攻撃が激化しており、都市から飛び出した強化外装が複数こちらに向かって飛んできている。

その他にも地上部隊がこちらに向かって来ており、このままちんたら逃げていたら追いつかれてしまう。

ライトはハンター5のマガジンを満タンな物へと交換し、専用弾を数発取り出すとシールドで保持する。

(この戦闘が終わったらシールドで持つことを前提とした銃も買おう)


ライトは窓から飛び出し車上へと上がると、蛇行運転をやめてT6のスピードを速める。

此方に向かって飛んで来るミサイルを捕捉し、複合銃とハンター5、小型ミサイルで迎撃を開始した。

高速で飛んで来るミサイルを有効射程ギリギリで狙い撃ち、一発のミスも無く迎撃する。


こちらにまで及ぶ爆発の余波をシールドで受け流しながら、ライトは真っすぐにT6を走らせる。

ミサイル攻撃が止むと、ドルファンドの強化外装達がこちらを射程に収め攻撃を開始した。スラスターで加速した強化外装はT6の脚よりも早く、このままでは取り付かれてしまうだろう。

ライトも全火力で反撃し、追い払おうとするが相手も諦める様子は無く、地上部隊もどんどんと距離を縮めてくる。

(・・・・・・これはしかたないか・・・・・人に向かって撃ちたくなかったけど)

ライトの後方。

ELシューター01が青い光を放ち始め、バチバチと放電を開始する。

(こっちも命懸けなんだから、しょうがないよね)

ライトはT6の最後尾にまで移動し、シールドで体を固定すると、車体を一気に反転させバック走を始めた。

情報収集機から齎されるデータから、敵に最も被害を与えるだろう思われるポイントに向かってELシューター01が撃ち込まれた。

数体の強化外装を木っ端みじんに粉砕し設定されたポイントに到達した弾丸は、内部にため込まれたエネルギーを開放。

巨大なエネルギー界を発生させ、周囲の物を吸い込み始める。

こちらに向かっていた地上部隊もエネルギー界に囚われた多くの私兵達が吸い込まれて行くのを目にし、ライトは顔を顰める。


(・・・・・・やっぱり、気持ちのいい物じゃないな)

殺らなければ殺られるとはいえ、モンスターを討伐する為の兵器を人に向けて撃たなければならい状況に追い込んできたドルファンドに対して、さらに怒りを滾らせ車内へ戻るライトだった。


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