ダーマとの合流
ライト視点
ライトはT6のスピードを上げシド達との合流を急ぐ。
後ろからはまだ敵の車が追ってきており、銃撃がやむ様子は無い。
この状態で合流してもシドは問題ないだろうがダーマは大丈夫だろうか?と考えていると、イデアから念話が送られてくる。
<ライト、こちらに向かって来た敵は殲滅しました。これから合流に向かいます>
<わかった>
<それから、シドは敵と交戦中です。ダーマだけを回収し、直ぐに都市から脱出するようにとシドから指示が出ています>
<・・・・・・・シドさんは置いていくの?>
<バイクを適当な場所に置き、位置情報を送っておけば問題ありません>
<なるほど、わかった!>
ライトはT6を走らせながらダーマの位置を探る。
その間も後ろから銃撃やロケット弾が飛んできており、ライトはついついミサイルの発射指令を出してしまいそうになる。
(ああああもう!!うっとおしい!!!)
飛んで来る弾丸を弾き、ロケット弾を避け複合銃で反撃する。もう4台くらいは破壊したような気がするが、まだ追いかけてくる敵に腹が立ってくる。
「ラルフさん!あいつらロケット撃ってくるんですけど!ボクもミサイル撃っていいですか?!」
「やめてください!それをやってしまえば都市から敵対行動と見られてしまいます!」
「だから向こうは撃ってくるんですって!!!!」
「犯罪組織でしょ!?同じ土俵に立ってしまいますよ?!」
「もう立ってるでしょ!!」
ここはもう戦場だというのにラルフの煮え切らない態度にもライトはイラつく。
たぶんキクチならGOサインを出していただろうなと思いながらダーマとの合流に全力尽くした。
(なんでスラム組織がこんな高性能な荒野車にのってるんだ?!これならワーカーとして活動したらいいじゃないか!!)
アンダースネイクが乗っている車はドルファンドからの横流し品だ。
あまり目立ってしまえば他企業(アースネットが主)の突き上げを食らう為、使用は最低限にと言われていたのだが、エミルの確保に失敗すればスラム毎焼き払うと言われ、彼らは全力出撃に打って出たのだ。
ここまで目立ってしまえば、たとえエミルを確保できたとしても証拠隠滅で殲滅されることは間違いない。
しかし、彼らはそんな事も考えられないくらい追い込まれていた。
ライトなら走りながらでも車の情報を特定し、弱点部位に弾丸を集めることくらい出来るのだが、組織内で妙な改造が行われている為、弱点部位の特定が難しく、車種もバラバラの為狙いが定まらない。
それに、ハンター5での誘導攻撃は十分な練度になって来たが、車装兵器での誘導攻撃はミサイル以外ではやったことが無く、市街戦でぶっつけ本番と言う訳にはいかない。
その為、タイヤを破壊し機動力を奪う戦法を取っていたのだが、相手もまんざらバカでは無いらしく、こちらの狙いがタイヤだと分かると車のシールドをタイヤに集中させ容易に破壊させてくれなくなった。
(クッソ!!!腹立たしい!!!)
ライトのイライラは最高潮に達する。
その時、玉藻組のホームの方から走ってくる人の反応を検知。精密スキャンを走らせると、背格好からダーマであることが分かった。
ライトはすぐに自分の速度とダーマの速度。合流ルートと距離を計算し合流までの時間を算出する。
合流まで後42秒。
ライトはダーマに通信を飛ばし、合流のタイミングを合わせようとする。
ダーマが通信にでるとライトは用件だけを伝える。
「ダーマさん!あと37秒後に合流出来ます!車の後部扉から飛び乗ってください!」
『はぁはぁはぁ!わかった!』
ダーマから了解を貰い、計算した時間通りに合流できるようT6を走らせる。
ダーマ視点
シドに言われライトと合流する為に道をひた走る。
逃げる為に駆けだした直後、絶対的な死の予感が過ったがシドが守ってくれたお陰で何とか命を繋いでいた。
俺が走っている今も、後方の街中では轟音と建物が崩壊する音が鳴り響き、どれほどの戦闘が行われているのか恐ろしくて後ろを振り返ることが出来ない。
エミルを守る為ならなんでもする覚悟を決めたダーマだったが、まさかここまでの大事に発展するとは夢にも思わなかった。
全力で道を駆け抜け、もう直ぐライトが言っていた合流のタイミングかと思っていると、前方の角からあいつらが乗っていた荒野車が横滑りしながら現れる。
あの車に乗りエミルと合流すれば、後はこの都市から脱出するだけだと少し安堵すると、あの車の後方から恐らく敵の物と思われる車が数台出現した。
(めっちゃ追われてんじゃねーーか!!!)
予想外の展開に足を止めそうになるも、ここで止まった所でどうにもならんと割り切り、ライトの運転する車に向かってラストスパートを掛ける。
スラムバレットの荒野車はそのままこちらに向かって来ており、どうやって乗るのかを考えながら走る。
(ライトは後部扉から乗れって言っていたが・・・)
後150m程に距離が詰まると、荒野車が急に反転し高速バックでコチラに向かいながら後部扉を開いて来る。
(このまま飛び乗れってことかよ!!!!)
ダーマはライトが要求する高難易度アクションに頬が引くつくが、ここでミスれば命は無い。
覚悟を決め、タイミングを合わせて荒野車に飛び込んだ。
後部の荷台に飛び乗ったダーマは受け身に失敗し、床に激突する。
痛みを堪えながら上半身を起こそうとすると、ダーマが飛び込む寸前まではバックしていた車が前進に切り替わり、急加速した反動でダーマは後ろへと転がって行く。
いつの間にか閉っていた後部扉に後頭部を打ち付け、目から星が飛び散らかるが、ここで気絶するわけにはいかないと歯を食いしばり、シドから渡された回復薬を頬張るのだった。
ライト視点
ダーマが車に乗った(スラムバレット感覚)事を確認したライトは直ぐに後部扉を閉め、バックから前進へと切り替える。
前方にはこちらに向かってくる敵の姿が見える。
威力の高い複合銃で鶴瓶撃ちにされ、装甲はベコベコになっているのが見て取れるが、このまま正面から突撃するのはよろしくない。
ライトはここまで来たら何をやっても一緒だと開き直り、ミサイルの使用に踏み切る。
前方4台の敵車両にロックオンし、計8発のミサイルを発射した。
ライトが思い描く軌道を突っ走るミサイルは、最初は地面スレスレを飛び、足元を狙っていると見せかけて命中寸前に上昇。敵車両のフロントガラスに突っ込んだ。
敵はライトのフェイントに引っかかり、足回りにシールドを展開していた為急な軌道変更にシールド操作がついて行かず、無防備な状態でミサイルを食らうことになった。
フロントガラスを突き破ったミサイルは車内でその威力を開放。
爆炎を上げながら車体を粉砕し、乗員全てを吹き飛ばした。
「あああああああ!!ミサイル~~~~~!!!!」
ラルフはライトが行った攻撃に絶叫を上げるが、ストレスマックスのライトはいつになく怒声を上げた。
「やかましい!!!黙ってろ!!!!」
ライトはT6の速度を落とすことなく爆炎の中へ突っ込んでいく。
爆散した敵車両の破片やパーツがT6のシールドに衝突し、派手に跳ね飛ばしながら爆炎を突っ切る。
流石は唐澤重工の魔改造を施された新生T6。パワーと頑丈さはピカイチであった。
追ってきていた敵車両は全て破壊し、後はイデアと合流するのみとなる。
<ライト、もうすぐ合流出来ますが、敵性強化外装が追ってきています>
<強化外装?>
<はい、ドルファンドが開発した機体です。迎撃も可能ですが、少し張り切り過ぎてエネルギー残量が60%を切りました。このまま都市を脱出し、ドンガに対象を受け渡した後に反撃に移るのが得策と考えます>
<わかった>
「ダーマさん!一度後部扉を開けます!!何かに捕まってください!」
ライトはダーマにそういうと、バイクのロックを外し後部扉を開く。
十分な広さまで開くと、無人のバイクが勢いよく車外へ飛び出していった。




