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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
174/217

メタルアント戦

ライトは吹き荒れる突風の中、床に体を押し付けやり過ごす。

吹き飛ばされていったシドの事は大丈夫だろうか?

シドであるならばこの突風が止めば体制を立て直し、シールドを利用して崖の上まで登って来ることは容易いはずだ。吹き荒れる突風にシェイクされ目を回していなければだが・・・・。

(まあ、超人的な頑丈さのシドさんなら大丈夫でしょ)

そう考え自分も飛ばされない様に懸命に床に張り付く。

吹き込んできた風が通路の奥の扉に跳ね返され、吹き返しが発生しめちゃくちゃに風が吹き荒れる中、先程討伐した生物の死骸が外に向かって飛ばされていく。

何体かはライトにぶつかりそうになり、ライトはさらにシールドを発生させ死骸を受け流して道連れになるのを防いでいく。

(・・・・今回はやけに長いな・・・・)

今までは20秒ほどで止んでいた突風だが、今回は1分たっても収まらない。

<ライト、少し厄介な事になりました>

<どうしたの?>

<飛ばされたシドがメタルアントの巣に突っ込みました>

<は?!>

メタルアントとは、ハイブリットタイプのモンスターで金属質な体を持ち強靭な顎と胴体部に多様な兵器を持つモンスターだ。

このモンスターの厄介な所は一度敵対したと認識したモノは人間だろうとモンスターだろうと追い掛け回し、相手を殺すか自分達が全滅するまで追って来る事にある。

エネルギー源が鉱物の為積極的に人に襲い掛かって来る事は無く、近づかなければそれほど害は無い。

しかし、誤って攻撃を仕掛けてしまうと後から後からゾロゾロと増援がやって来て消耗戦に発展する為、ワーカーからは要注意モンスターとして警戒されているモンスターである。

<既にメタルアントとの戦闘は始まっています。速やかにT6に戻り援護をお願いします>

「ああぁぁ~~~!!もう!!!」

イデアと話している間に突風が弱まり、ライトは通路を飛び出し車へと急いだ。



シド視点


「うああぁぁぁぁ~~~!!!」

連絡通路から飛び出したシドは谷底から噴き上げる突風に吹き飛ばされる。

温度自体はシールドで影響は無いが、凸凹な両岩壁によって複雑に流れる風に体を煽られてしまい、上下左右が分からなくなってしまった。

<シド、落ち着いて風を受け流してください>

イデアに言われ、時間圧縮を行い風の隙間に入り込もうとシールドを蹴る。

しかし、ここまで激しい風の渦を受け流したことは無く上手く行かない。それでもやらなければどこまで飛ばされるか分かったものでは無かった。

必死に体とシールドを動かし体制を立て直そうとする。

暫く奮闘していると、なんとなくコツが掴めてきてグルグルと回っていた体の回転を止めることが出来た。

(よし!もう少し壁の方へ・・・・)

シドはシールドを蹴り壁に取り付こうとする。

<そっちはダメです!>

「え?」

イデアから忠告を受けるも、シドがシールドを蹴った瞬間風の流れが変わり背後から押される様に勢いよく壁に向かって叩きつけれる。

シドは咄嗟に体を丸め全身にシールドを張り巡らせる。

シドの体は岩壁に勢いよく叩きつけられ、壁を貫き中の空洞へと入り込んでいく。シドが開けた穴から風が入り込み、シドは空洞の奥へ奥へと運ばれていった。


漸く風圧が緩みシドの体が落ち始める。シドは体勢を整え両脚で勢いを殺した。

入口から随分と奥まで運ばれてしまったな、と考えているとイデアから忠告がなされる。

<今すぐここから脱出してください>

<ん?わかった>

こういう場合、イデアからの忠告は素直に聞くに限る。飛ばされて来た道を戻ろうと足に力を入れた瞬間、後方から無数の存在がこちらに向かって来ているのがわかる。

相手をするのは面倒だと地面を蹴り、一気に穴倉の中を駆け抜けようとした。

しかし、少し進んだところの天井が崩れ落ち、空いた穴から銀色のアリが顔を出す。まだ頭しか見えていないが、その大きさはシドの頭を変わりない大きさだった。恐らく全量は1mを下らないだろう。

<メタルアントです。攻撃はせず一気に駆け抜けて下さい>

イデアの言葉に、パラパラと落ちてくる小石等は無視して下を走り抜ける。

穴倉はこんな所通ったか?と思うほど曲がりくねっており、感覚を鋭敏にしようと集中するとそこかしこにここと同じような穴倉が張り巡らされている事がわかった。

<要するに俺はアリの巣に入り込んだったことだな?>

<はい、ここはメタルアントの巣です。敵と認識されればどこまでも追いかけられるでしょう>

<・・・・・もう手遅れみたいだぞ>

シドには自分を包囲しようと動くメタルアントの動きが感じられる。このまま走っても恐らくは大量のメタルアントに囲まれてしまうだろう。

(全力で走るか)

シドは体内電気を使用し速度を上げ、穴倉を一気に駆け抜けて行く。この速度なら10秒もあれば外に出られるかと思ったのだが、ここは彼らの庭でありシドよりも正確に把握しているのだろう。巣に乱入した侵入者を逃がすまいと、既に通路にメタルアントが展開しており道が塞がれていた。

<やるぞ!>

<こうなっては仕方が有りませんね>

シドはS200を引き抜き、重なり合って道を塞いでいるメタルアントにSH弾を浴びせる。

鋼鉄の甲殻を持つメタルアントだったが、衝撃を増幅させて与えるSH弾に耐える事は出来なかったらしく。命中した部分をへしゃげさせて吹き飛んでいく。

仲間が吹き飛び、空いた隙間を他のメタルアントが塞ごうと動くが、シドは飛び蹴りを食らわし再度穴を開けて出口に向かって駆け抜けていった。


アリの移動力を持つメタルアントでもシドの速度に追いつくことは出来なかったが、他の通路のアリの動きを見ると恐らく外で待ち伏せされているだろうと言う事が分かる。

しかし、メタルアントの体に羽根は無かった。空中に飛び出せば追っては来れないだろうとシドは考える。

その後も通路の上下左右から穴を開けて湧き出てくるメタルアントを蹴散らし、漸くシドが開けた穴までたどり着いた。

走る勢いのまま外に飛び出し、シールドを蹴って崖上に登ろうと顔を上げると、そこには羽根も無いのに自分に飛び掛かって来る大量のメタルアントの姿があった。

「マジかよ!!!」

既に目の前まで迫っていたメタルアントは、金属で出来た両顎を広げシドに食らいつこうとしている。

シドは細かくシールドを展開し、雨の様に降って来るメタルアントを躱していく。

暫く避けていれば諦めるかと考えたが、少数で飛び掛かってもシドを捉えることは不可能と判断したのかその量は空を覆うほどに増え、シドが避ける隙間を埋めてきたのだ。

「俺一人にこの被害じゃ割に合わねーだろうがよ!!!」

先程までで既に数百体は谷底へと消えて行った。しかし、このアリ達は迷うことなくシドを殺す為に特攻を仕掛けてくる。

<シド、銃や刀では効率が悪いです。格闘技で弾き飛ばし上を目指してください>

<おう!>

両手のS200をホルスターに仕舞い。シドはメタルアントの壁と言っていい上に向かってシールドを蹴る。

何も確殺する必要は無い。シドの進む道から奴等を弾き出せばいいだけだ。

シドは両手にシールドを纏わせ、振って来るメタルアントに拳を叩き込んで行く。シドの拳はメタルアントの甲殻を砕き、吹き飛ばしシドが進む道を開いた。

開いた隙間に体をねじ込みさらに上へと駆け上がる。邪魔なアリは払いのけ、少しでも包囲の甘い箇所に向けて飛びあがる。

途中、すれ違い様に他のアリを足場に飛び掛かって来るアリは蹴り飛ばし、上から降って来るアリは払い落しながら崖上を目指す。


漸くメタルアントの雨を振り切り、大地と同じ高さまで上がって来れた。

しかし、そこでシドが目にしたのは崖上に聳え立つメタルアントの巣と、その表面に展開し胴体に搭載している兵器をシドに向けるメタルアントの姿だった。

「・・・クソ・・・」

<シド、下からも狙われています>

チラっと下を見ると、空中で体勢を変えこちらを狙っているアリ達が居た。

シドは再度S200を引き抜き両方に向けて照準を合わせる。

アリ達はマシンガンやライフル等の銃器を一斉に発射。シドもその攻撃に合わせて両手の引き金を引く。

圧縮された時間の中で、シドは横と上下からの弾丸の嵐を掻い潜りながら反撃を開始する。

<シド、下側は放置です。直ぐに射程外へ落ちていきます>

<了解!>

イデアのアドバイスを受け、シドは巣に群がっているメタルアントへの攻撃に集中する。

弾幕の弱い場所に滑り込み、避けきれない弾丸はシールドで弾きながらシドはメタルアントに銃弾を叩き込んで行く。S200から放たれるSH弾頭は1発でメタルアントを絶命させる威力があるが、どうにも数が多すぎる。2丁で毎秒48発の弾丸を放てるとはいえ、この猛攻の中で全発命中は無理がある。それに殺したメタルアントの死骸を押しのけ巣の中から新しいメタルアントがゾロゾロと顔をのぞかせているのだ。

こちらが攻撃を開始してから討伐した数より増援の数の方が多い様で、減るどころか数が増えてきている。

アリの巣を迂回してライトと合流するかと頭に浮かぶが、巣の最上段に陣取っていたアリ達から小型ミサイルが発射される。

<ミサイルまであんのかよ!!>

<弾幕の下に逃げ込んでください>

シドは一度硬度を下げアリの銃弾でミサイルを防ごうとする。

その思惑はある程度成功し7割のミサイルを防ぐことができた。しかし、アリの弾幕をすり抜けたミサイルがこちらに向かって飛んできており、避けようにも周りは弾丸の雨。それに避けた所で追い回される事は確実だ。

シドはミサイルを迎撃しようと引き金を引くが、これも数が多い上に先程まで撃ちまくっていたため弾が尽きる。

(クソ!こんな時に!!)

ツールボックスから拡張弾倉を射出し、S200から空の弾倉をパージすると両腕を振って新しい弾倉を装填する。

1秒にも満たない時間でリロードを行うが、このタイミングでのリロードは致命的だった。

ミサイルを迎撃するにはあまりに時間が足りない。

シドは防護服のシールドと生体シールドを全力で展開しミサイルと弾幕を防ぐ。

シールドに衝突したミサイルは、小型とは思えない威力を誇り、シールドを貫通し衝撃をシドに叩きつける。

「ぐうぅ!!!」

爆発の衝撃で亀裂の中に押し戻され、シールドを貫通した破片がシドのシドの頭に当たり血が飛び散る。

だが、そんな事に気を取られている余裕はない。ミサイルが命中したからと言って弾幕を止めてくる様子は無く、今もアリ達はシドを狙って撃ち続けてくる。

シドは一旦上に登る事は諦め、横方向に向かってシールドを蹴る。射線はシドを追って来るが、距離が開いたためシドのスピードについて来れずに遅れてくる。

この隙を逃すまいとシドは照準を付け再度引き金を引いた。

このままあの巣から離れられればと思ったが、進行方向にもメタルアントが現れ銃撃に加わって来る。

<クソ!どうすりゃいいんだ?!>

<あと少しです。もう少しでライトの射程距離に入ります>

<!!わかった!!>


シドはメタルアント達の弾幕を避け、弾き、ミサイルを搭載したメタルアントを優先的に排除していく。

何時まで経っても圧の減らない攻撃に、防護服のエネルギーが尽きかける。予備のエネルギーパックを取り出し、無くなりかけているパックと交換しながらも片手で応戦し続けた。

右手の銃が弾切れとなり、再度リロードを行おうとした時、遠方から複数のミサイルが飛来。

メタルアントの巣に突き刺さり根元から吹き飛ばしたのだった。


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