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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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連絡来たる

ゴルバチョフ視点


「ふ~・・・・・なんとか無事に帰還できそうだな」

あれ程のモンスターに囲まれて無事とはこれ如何に。チームのトラックにはオートマタが開けた大穴が開いており、修理に時間が掛かるのは明白だった。

しかし、メンバーは全員無事であり、あとは金と時間さえあればまた活動する事に支障はない。

「この度は弊社の社員の我儘でお手数をお掛けしまして、誠に申し訳ありませんでした」

あの博士と呼ばれている男と一緒に同行していた男がゴルバチョフに頭を下げてくる。

「いや、いいさ。そう言う契約だったしな。報酬も相応な値段だった。最後の大群は俺達の不手際だっただろうよ」

この者達を遺跡に連れて行き、そして無事にミナギ都市まで送り届ける。

それが今回受けた依頼内容だった。

危険な任務ではあったが相応の報酬も提示されており、ゴルバチョフの方から不満を言うことは無い。

あの博士の意味不明な執着には閉口させられたが。

「そう言って頂ければ幸いです。あのオートマタにも相応の値段を付けさせていただきますので」

この男はミナギ都市よりさらに東にある都市に本社を構える企業の営業マンだ。

ワーカー達なら一度は名を聞いたことがあるだろう企業であり、最近従業員との訴訟問題が発生していると噂に聞いた。

「おう、頼むぜ。俺達を助けてくれたワーカーチームにも納得してもらえる金額を付けてくれよ」

「おお、あの2人組のチームですね?少数であの大群を蹴散らすとはさぞ有名な方々なのでしょうか?」

「いや、名前自体は聞いたことないな。確か・・・・・・・スラムバレットとかっていうチームだ。ダゴラ都市から最近ミナギ都市に移って来たらしい」

「・・・・・ほほ~。ダゴラ都市から・・・・たった2人のチームですか」

「ああ、かなり若い2人組だった。まだ20歳にもなってねーだろうって容姿だったな」

「・・・・・・・・なるほど。それは楽しみですね」

この男はこういう所がある。

優秀なのだろうが、人との会話の中で情報を集め、1人で完結し納得してしまう所があるようだ。

まあ、俺達としてはしっかり報酬を払ってくれればなんでもいい。

あれだけの腕を持つチームに護衛させてんだ。ショボい金額を提示して殺し合いになるのは絶対避けたいところだからな。


もうすぐミナギ都市へ着く。

それまでにハッキリとして金額を決めておきたいところだ。




スラムバレット視点


シドはバイクで宙を駆け、上からモンスターの襲撃を警戒していた。

シドからは既にミナギ都市が見え、後30分もしないうちに都市へと到着するだろう。

<シドさん。そろそろ都市の警戒網に引っかかるだろうから降りてきた方がいいよ>

ライトから連絡を受け、シドはT6の傍へ降りていく。

車の後部扉が開き、シドはその中に飛び込みラックにバイクを止めナビシートに座った。

「あのオートマタいくらになるかな?」

「さ~、ゴルバチョフさん達と分けるからキョウグチの時よりは安くなると思うけどね。企業の懐具合に期待って感じかな」

そう話し合いながら都市に向かって走っていると、シドの情報端末が着信を知らせてきた。

通信を繋げると、相手はあのドンガであった。

『は~い、シドちゃん。久しぶりね』

「お久しぶりですドリーさん」

『それで?どうしたの?シドちゃんが私に用事だなんて』

「えっとですね、ドリーさん・・・ダーマって人に心当たりあります?」

シドは万が一ダーマの言うドンガがシド達の知るドンガと人違いであった場合の確認を取った。

『・・・・・ええ、知ってるわ。まさかシドちゃんの口からお兄ちゃんの名前が出るなんてね』

「良かった、合ってたんですね。それでですね、ダーマはダゴラ都市に移住する積りだったんですけど、運び屋にすっぽかされて立往生してるんです。本人はもう一度金を稼ぎなおすって言ってるんですけど、時間もかかるし赤ん坊の事もあるんでドリーさんに迎えに来てもらえないか連絡を取ってみようと思ったんです」

『・・・・・なるほどね。なんとなくだけど事情は理解したわ。それで、赤ん坊って何のことなの?』

「なんでも仲間の子供らしいです。親は2人共死んでしまったみたいで、ダーマが後を託されたって言ってましたけど」

『・・・はぁ~~・・・・あのバカ兄貴は・・・・こういう話は自分で言って来いってのよ・・・・・』

通信機の向こう側でドンガは大きなため息を付き、小声でダーマに文句を言う。

『わかったわ。明日の朝出発する。ここからなら4日もあれば到着するでしょう』

「結構早く着くんですね。何処にいるんです?」

『あなた達が発見した地下シェルターよ。キクチさんに呼び出されてね。もっとのんびりする積りだったのにやんなっちゃうわ~』

「あ、そうなんですね」

『ダゴラ都市3大ギルド揃い踏みよ。私はヤシロ達のフォローに付けられたんだけど、あまり意味も無さそうだし。私はそっちに向かうわ』

「わかりました・・・・あの、キクチは元気にしてます?」

『キクチさん?ええ、元気よ。今仕事もそこそこに休暇気分を満喫しているわ』

「そうですか、良かったです」

『それじゃーね。4日後にまた会いましょ』


そうしてドンガとの通信が切れる。後4日待てばドンガが都市に到着し、無理に金を稼がなくてもダゴラ都市に移動できるだろう。この情報はダーマに知らせてやらなければなるまい。

「ドンガさん来れるって?」

隣で運転していたライトが聞いて来る。

「ああ、4日くらいで来れるってさ。しかし、早いよな?俺達夜通し走って3日かからなかったか?」

「あれは初日の夜から2日目にかけて無茶苦茶に逃げ回ったからだよ」

「・・・・そうだったな」




ミナギ都市へ到着し、第2防壁を超えワーカーオフィスへ到着する。

ゴルバチョフは企業とのオートマタの値段交渉が終わっていないらしく、しばらく待っていてくれと連絡を受けた。

この後クラブ88へイデアとエミルの様子を見に行くとはいえ、スナックで毎回飯を食うのもどうかと思いオフィスに備え付けられたフードコートで食事をしながら待つことにした。


大量の料理を完食し、食後のお茶を頂いていると、ラルフがこちらへと歩いて来る。

「シド様、ライト様。ゴルバチョフ様から会談の準備が出来たと連絡が入りました。第3会議室へお越しください」

「わかりました」

そう返事をし、席を立つシドとライト。

ラルフに連れられ、第3会議室に着くと、そこにはゴルバショフと唐澤重工の営業マン、シブサワが座っていた。

シド達が入室して来た事を見て取ったシブサワは立ち上がり、腰を曲げて綺麗なお辞儀をする。

「お久しぶりです。シド様、ライト様」

「あ、お久しぶりです」

「こちらこそ、お久しぶりです」

まさかこの場にシブサワが居るとは思わず呆気にとられる2人。

「この度は危ないところを助けて頂き誠に感謝申し上げます。後程正式にご挨拶させて頂きます」

相変わらずの営業スマイルである。

胡散臭い所はあるが、営業マンとしては優秀な男であった。

「なんだ、お前等知り合いだったのか」

シブサワとスラムバレットの2人に接点があった事をしったゴルバチョフは少し驚きながら声を上げた。

「はい、弊社の製品をご愛用頂いております」

シブサワの言葉にゴルバチョフはさらに驚きの表情を浮かべる。唐澤重工のキワモノ製品を愛用しているワーカー等ほとんどいないからだ。

「積もる話はあるでしょうが、まずは報酬のお話を片付けてからにいたしましょう」

ラルフが脱線しそうになっている話を本筋に戻す。

「そうだな。まずはかけてくれよ。立ったまま話すことじゃねーからな」

そう言われ、2人はゴルバチョフの正面の椅子に腰かける。

シブサワの登場に意識を持って行かれていたが、改めてゴルバチョフの顔を見る。

ざっくばらんに切られた髪に角ばった凄みのある顔だ。

眉は太く、眼光も鋭い。危険度の高いミナギ都市で活動するワーカーチームを率いている者の風格がにじみ出ていた。

体も大きく、あのサイズのパワードアーマーに相応しい体格をしており、一般人が道端で出会えば間違いなく道を譲るであろう容姿だった。

「それで、救援に関してはワーカーオフィスを通して支払うのは通例通りだ。後は護衛依頼の報酬と、暴れたオートマタを取り押さえてくれた分の報酬だな。まずは護衛依頼の報酬だが、2000万コール支払う。これで問題ないだろうか?」

護衛と言っても何もせずに一緒に帰って来ただけだ。その割にはかなりの金額に思える。

「こっちとしては文句は無いけど。ずいぶん高いな」

「俺達の仲間の命の値段と考えてくれ。帰路でモンスターの襲撃が無かった分安くしてあるくらいだ」

「相場としても少し高いくらいでしょうか?スラムバレットのお二人のランクを考えれば妥当かと思います」

ラルフの助言もあり、シドは納得の表情を見せる。

「それで、オートマタの値段だが。唐澤重工が提示した金額の半分を渡す」

ゴルバチョフがそう言うと、話をシブサワが引き継いだ。

「我が社はあのオートマタに25億の値段を提示いたします。多少破損していますが、シド様が非常に綺麗に討伐してくださいましたので価値としてはそこまで落ちる物では無いと思いますので」

「我々としては問題ない。スラムバレットの方はどうだ?」

「俺達もその金額でいいです」

シドは自分のポカで500万コールの損失を出した直後に大口の報酬が入りご満悦だ。

金には困っていないが、口座残高は減るより増える方が良い。

「承知しました。双方に12億5000万コールずつお振込みさせていただきます」

シブサワは端末を操作し振り込みを行う。

ゴルバチョフとシドは自分の端末で確認を取り、振り込まれている事を確認した。

「おし!これで今日の仕事は終わりだな!」

ゴルバチョフはそういい席を立つとドカドカと扉に向かい豪快に開け放つ。

そしていつの間にか待機していた仲間たちに向かって大声で言い放った。

「報酬も入った!!飲みに行くぞテメーら!!!」

「「「「「おおおおーーー!!!!」」」」」

大勢の部下を引き連れ豪快に去って行くゴルバチョフ。あれが大人のワーカーというものなのだろうか?

「すげーな」

「すごいね」

<真似をする必要はありませんけどね>


2人が呆気に取られていると、シブサワがススっとシド達に近づいて来る。

「お二人とも、改めてご挨拶申し上げます」

そういい、丁寧に頭を下げてくるシブサワ。

2人も釣られて頭を下げて挨拶を返す。

「「どうも」」

「この後お時間は御ありですか?よろしければ紹介したい者が居るのです」

にこやかに告げるシブサワ。用事と言ってもクラブ88が開店するにはもう少し時間がある。

「この後用事はありますけど、少しなら大丈夫です」

「ありがとうございます。ラルフ様、倉庫へ向かいたいと思いますが、構いませんか?」

「ええ、ご随意に。私は罪人の取り調べに参加しますので、これにて」

ラルフはお辞儀をし、会議室を出て行く。

「それでは、こちらに」

シブサワの背中を追い、シドとライトは会議室を出て行くのであった。


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― 新着の感想 ―
このあとマッドな人達との邂逅ですかね~?
あの研究者唐澤重工の所属だったのか、道理って感じがしますねぇ
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