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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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会談までの暇つぶし

シドとライトの2人はセントラルが用意した食事を堪能した後、寝室へ案内される。


そこは食事を取った場所と似たような作りで、タタミの上に寝具が敷かれていた。

今まで寝具と言えばベットだったライトは少し戸惑ったようにシドに話しかける。

「なんだか、床に寝るのって不思議だよね」

ライトはそう言うが、スラムのバラックで生きて来たシドにとってはそれほど珍しい物でもない。

「そうか?地面に寝転ぶより寝心地は良さそうだぞ?」

「・・・・あ、そうですか・・・」

「畳は床張りの部屋と異なり弾力がある。布団を直敷きしても寝心地が悪くなることは無い。一度試してみると良い。問題があれば変更する」

セントラルがその様に言い、ライトは仕方が無いかと納得する。

「わかりました。ありがとうございます」

「うむ、今日は大変な一日だっただろうからな。ゆっくり休むと言い」

セントラルはそういうと姿を消す。

(大変だったのは9割が貴女のせいだったと思うんだけどな)

ライトは心の中だけでそう呟き苦笑いを浮かべる。

「おし、今日は大人しく寝ようぜ。明日の事は明日考えよう」

シドは特に気にすることなく布団の中に潜り込んでいく。

「・・・・そうだね」

シドの壊れた防護服の事や、今後の方針など話し合う事は山積みなのだが、疲れていることに変わりはない。

ライトもシドに続いて布団の上に横になる。

「あ、結構寝心地良い?」

思っていた様な硬さなどは無く、不必要に沈み込む訳でもない。

心地いい弾力を布団は返してくる。

「そうだな~・・・んじゃ、おやすみ」

本日の激闘で負傷を負ったシドは、速やかに眠りに落ちていく。

「おやすみ」

ライトも直ぐ様に押し押せてきた睡魔に逆らうことなく眠りに落ちていった。




翌日2人は目を覚ますと、用意されていた朝食を頂き今後の予定を話し合った。


セントラルと喜多野マテリアル、ワーカーオフィスとの会談を終らせミナギ都市へ移動しなければならない。

しかし、ワーカーオフィスは直ぐに動けるとしても喜多野マテリアルがそう簡単に動けるとも思えない。そうなれば2人は何時まで此処に滞在することになるのか見当がつかなかった。

「此処にいるのはいいけど、待ってるだけってのもな~」

「そうだよね。せめて鍛錬だけはやっておきたいけど・・・」

「そういう事ならバーチャルシステムを使用してはどうか?」

2人が話し合っているとセントラルが会話に入ってくる。

「バーチャルシステム?」

「4D空間を生成し、その中で訓練や遊戯を行うシステムだ。現実にも劣らないレベルで再現できるため、鍛錬にも使えるようになっている」

「それってシミュレーターみたいな感じかな?」

「現代のシミュレーターがどのレベルか情報が無いため比較できない。一度体験してみるのが良いのではないか?」

セントラルにそういわれ、2人は体験してみる事にする。


そこで案内されたのは、何もないだだっ広い白い空間だった。

「それで、どの様な場面を再現すればいい?」

セントラルはそう言ってくるが、シド達はどの様な場面が再生できるのかを知らない。

「う~ん。戦闘訓練を行うのに適した場面?が出来たらお願いします」

「承知した。警備員の訓練プログラムを実施する」

セントラルがそう言うと、辺りの状況が一変した。

白一色であった部屋に風景が変わり、ビルの一室の様な場所に変更されたのだ。

「では、状況を説明する。ある施設がテロリストに占拠された。君たちはテロリストを殲滅し人質の解放を行ってくれ」

セントラルから説明を受け、シドとライトは状況を把握する。

「・・・内容は分かったけどさ。警備員ってテロにも対応するのか?」

「普通は治安維持部隊だよね?警備と治安維持、両方行ってたのかな?」

<2人共、考察はそこまでにして集中してください>

イデアがそう言うと、シドとライトの恰好がいつもの戦闘用装備へと変更される。

「「?!」」

<私がデータを提供しました。これでいつも通りに戦えます>

イデアがセントラルにシド達のデータを教えたらしい、着心地から武装の重量まで完璧に再現されていた。

「はは、こりゃいいな!」

「・・・すごいね。養成所のシミュレーターとは別次元だよ」

シドはS200を引き抜き感触を確かめる。手に返ってくるグリップの感触や重量感は本物と全く変わらなかった。

ライトも情報収集機を使用し、ハンター5の調子を確かめてみるが、違和感は一切感じられない。

「装備の点検は終わったか?では、訓練を開始する」

セントラルがそういうと、シドとライトは複数の敵性反応を感知した。

相手は4足の機械系モンスターの様だ。

シドが前に出てライトが後ろに付き、迫ってくるモンスターの方へ駆けだす。

部屋を飛び出し、通路を曲がると見た目は大きめのクラブキャノンの様なモンスターがこちらに向かってきていた。

シドは両手のS200を構え、PN弾頭をモンスターに撃ち放つ。

本物のクラブキャノンより高速で動いていたモンスターだったが、シドの銃撃からは逃げられず銃弾をくらう。しかし、その装甲は硬くPN弾頭の直撃にも耐えてしまう。2発ほど打ち込めば無力化できると踏んでいたシドは目を見開き驚くことになった。

<ライト!コイツ等硬いぞ!>

<わかった!>

背後からシドを援護する為に付いてきていたライトはSH弾頭に切り替え迫ってくるモンスターに向かって銃撃を行った。

ライトは念入りに破壊してやろうと4発のSH弾頭をモンスターに直撃させ、そのボディーを大きくゆがめることに成功する。しかし、完全な破壊には至らない。その場から動くことは出来ないようだが背負った銃身を動かし2人に向けて弾丸を放ってくる。

飛んで来る弾丸を見据えながらシドは生体シールドを発生させ、その弾丸の弾道を逸らしライトが凹ませたポイントへ正確にPN弾頭を撃ち込みモンスターを完全に破壊する。

<SHでダメージを与えてPNで貫通を狙うのが効率良さそうだな>

<そうだね、ハンター5なら2発ずつ同じ場所に撃ち込む必要があるかも>

<2人共、唯の機械系モンスターと同じように考えない様に。攻撃力、防御力、俊敏性、全てにおいて非常に高い性能を有しています。複数を同時に相手にするのは危険です>

2人はイデアのアドバイスを受けながら順調に迫ってくるモンスターを破壊していく。


しかし、何時まで経ってもモンスターの波が収まることは無かった。

<これ何時まで続くんだ?!>

<処理しきれないよ!>

最初は少数の襲撃だったが、時間が経つ毎にその数を増やしていき、今ではシド達の処理能力を超える数にまで膨れ上がっていた。

1体を撃破する事には慣れて来ても無尽蔵に湧いて出てくるモンスターにはいい加減辟易してくる。

2人は幾つもマガジンを交換しながらモンスターを撃破し建物内を駆け回る。

リアルに再現されているとセントラルが言った様に、弾薬の数も制限されている様で養成所にあったシミュレーターの様に無限に撃てるわけでは無い。

弾切れになればそこからは徒手空拳で戦うことになる。

<2人共、セントラルが最初に言っていた条件を思い出してください>

<なに?!>

<なんだっけ?!>

シドとライトはモンスターの迎撃に精いっぱいの様で、セントラルが最初に宣言した内容を思い出す余裕を失ってしまっていた。

<これはテロリストの殲滅と人質の救出が目的です。幾らモンスターを討伐しても終わりません。目的を完遂してください>

イデアの言葉にライトはこの施設内にもう一度サーチを掛ける。

現在地から4階上の階にテロリストと思わしきマークと人質と思われるマークが表示された。

<シドさん!4つ上の階が目的地だ!>

<分かった!>

シドは迫りくるモンスターの群れを蹴散らし階段に向かって突き進む。

長い直線の通路に差し掛かり、その奥には上の階に続く階段があるのが分かる。しかし、その通路は機械系モンスターによって埋め尽くされており、このまま進んだところで押しつぶされる事は目に見えていた。

<ライト!専用弾!>

<分かった!!>

後ろから迫ってくるモンスターを銃撃していたライトと場所をスイッチし、シドは追ってくるモンスターを銃撃し、ライトは通路の奥目掛けてハンター5専用弾を撃ち放った。

前方から迫ってくるモンスターを吹き飛ばしながら飛翔していく専用弾は、階段がある壁にまで到達し爆発する。

爆風と青い炎をまき散らし、周囲のモンスターを吹き飛ばした。


<行くぞ!>

シドは専用弾の爆風が収まるのを待たず、シールドを展開しながら階段まで駆け寄って行く。

ライトもシドに続き一気に階段を駆け上がっていった。


専用弾の爆風により2階の周辺にモンスターの気配はない。

ここでまごつけばまたモンスターの群れが押し寄せてくるのは間違いない。このまま一気に4階まで駆け上がり、テロリストを殲滅するのが最も確実だろうと判断し、シドは上の階を目指して駆け上がって行く。


1階にモンスターを集中させすぎたのか、3階へ上がってもモンスターの数は少ない。少数で襲い掛かってくるモンスターを撃破しながらさらに階段を駆け上がって行く。


4階にたどり着き、テロリストと人質がいると思わしき部屋にたどり着き、シドは扉をけ破った。

扉が内側へ吹き飛び、数人のテロリストに当たり、一緒に吹き飛ばされる。

シドとライトは部屋へ雪崩れ込み、突入前からマーキングしていたテロリストに向けて銃撃を行う。7人居たテロリストだが、シド達の攻撃を躱した者が4名。

その者たちは散開しシド達へ反撃を行ってくる。

シドは電光石火を発動させ、弾丸を避けながらテロリストに突撃し、ライトはシールドで弾丸を弾きながら人質の保護に走る。


シドの銃撃でテロリストを人質から引き離す事に成功するが、テロリストの身体能力が高くシドの弾丸を躱しながら反撃を行ってくる。

シドはさらに宙を蹴り、不規則に動きながらS200を連射していった。


ライトはテロリストと人質の間に立ち、シールドで包み込む。

飛んで来る弾丸は被弾経始で弾き飛ばし、シドの放った弾丸を避けようとするテロリストに向けて弾丸の雨を撃ち放つ。

狙い通りに飛んでいった弾丸は2名のテロリストに命中しキル判定を叩きだす。

後2人。


相手は二手に分かれ、シドとライトの両方に突っ込んでくる。


ライトは両手のハンター5を使って全周囲から包み込むようにテロリストを攻撃した。



シドの方に向かって来たのは恐らくテロリストのリーダーという設定だろう。

シドは突っ込んでくるリーダーを迎え撃ち、S200で撃ち返す。

敵の放つ銃弾を紙一重で避けながらシドは距離を詰め、銃撃するが全て紙一重で躱される結果となる。

身体能力だけならシドと変わらない物を持っている様だ。


シドはS200をホルダーに納め、双刀を抜き放ち接近戦を仕掛ける。

対する相手は手に付けられたガントレットでの格闘戦で応戦するようだ。

シドの振るう刀をガントレットで受け流し、滑るように距離を詰めシドを殴りつけようと拳を振るう。

シドは顔面に向かって放たれた拳を躱し前進。右手に持った刀の柄で敵の鳩尾を殴り動きを止めると左手の刀を首目掛けて振り下ろす。

テロリストはガントレットで首を守る為両腕を上げるが、シドは構わず刀を振り切る。

金属音が鳴り響き、テロリストのガントレット毎腕を切り落とした。


しかし、首を落とすには至らずまだキル判定は出ていない。

シドはテロリストを蹴り飛ばし、刀を鞘に納めると再度S200を引き抜き狙いを定め引き金を引く。


データによって再現されたテロリストは、シドの放つ銃弾を全身に受け粉々に粉砕され辺りに散らばることになった。


このエリアの全ての敵性反応の消滅を確認したシドは、息を吐きながら銃を降ろす。


「ふ~~・・・・」

「終わったかな?」

<はい、レベル1訓練内容は終了しました>


イデアの宣言で、1回目のバーチャル訓練が終了したことを悟った2人は構えを解き、深く息をつくのであった。


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