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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
132/217

旧文明AIとの邂逅

シドとライトが扉を潜ると、そこは2人が見た事も無い風景があった。


広々とした空間が広がり、所々に柱が立ち天井を支えている。床には絨毯の様なモノが敷かれ、彼方此方に観葉植物が植えられていた。

天上からは日の光であろうか?照明の明かりとは質の違う光が差し込み、気温は適温で管理されている様だ。

中央部には噴水が設置されており、そこから噴き出している水に光が当たりキラキラと輝いている。

完璧に管理が行き届いており、空気も浄化されている様で、チリ一つ落ちていない。

遺跡の修復機能が生きている区画でも、ここまで綺麗な状態が保たれた空間は見た事がなかった。


「・・・なんだここ?」

「・・・・・・超高級ホテルのロビー?みたいな感じ?」

シドは呆然と辺りを見回し、無意識に言葉を発した。

ライトも見た事も無いホテルのロビーを思い浮かべ、この風景に重ねる。


2人はこの遺跡とは思えない空間を歩き、中央の噴水の前まで歩いていく。

シドは噴き上げられた水が溜まった池に手を入れ、現実の物かどうかを確かめた。

「・・・・・・・冷たい。ちゃんと水だ」

「ホントに何なんだろココ?」

ライトも辺りを見回し、一体何のための施設なのかを考える。


すると、2人の隣に人の姿が現れる。


2人はそれを視認すると後ろに飛び退き、銃を構えた。

<なんだコイツ!>

<気配もなかったよ!!>

その人物は女性の姿をしており、ボディーラインに沿ったパワードスーツの様なモノを着用していた。

細身ではあるが、気配を感じさせずここまで近距離に現れたと言う事はかなりの手練れであろう。2人は精神を戦闘態勢に移行する。

<2人共落ち着いてください。あれはホログラムです>

<・・・・ホログラム?>

<映像?>

イデアはそういうが、その存在は映像とは思えない程精巧で、本当にそこに人が居る様に見える。

<・・・確かに、気配は感じないな。ホントに映像みたいだぞ>

<・・・ボクの情報収集機は人が居るって表示されてる>

<ライトの情報収集機の電波を解析されたようです。少し修正します>

すると、ライトの視界に映っていた人の反応が消える。本当にホログラムの様だ。


ホログラムと分かっても得体が知れないのは変わりない。2人は警戒を解かないまま、銃口を下ろす。

すると、目の前のホログラムが声を発した。

「!”#ΩεТЩ°ΓΘΘΛΔ¶ψθ〈ζЖΦΦ。ЦΠЮλω‰ФЙЙ」

しかし、何を言っているのか分からない。

<再生歴 中期の言語の様です。翻訳します>

「部外者の立ち入りは禁止されております。直ちに退出をお願いします」

このホログラムはシド達に出て行けと言っている様だ。

しかし、いきなり帰れと言われてはい分かりましたとはいかない。それに旧文明のAIとコミュニケーションが取れたとは聞いたことが無かった。

これはチャンスでは?とライトは考え、話しかけようとする。

<イデア、ボク達の言葉も向こうに通じる?>

<はい、私が変換して届けます>

「ええっと、その前に・・・・ここがどういった場所なのか教えてもらえますか?」

「・・・検討・・・・・・・・承認・・・・ここは、ダバイ帝国との戦争に備え建設されたシェルターです。現在は閉鎖されております」

ホログラムはその様に答え、この場所が旧文明のシェルターである事が分かる。

「・・・シェルターってなんだ?」

シェルターの事を知らないシドはそうホログラムに質問する。

「シェルターとは、緊急時に避難できる施設のことを指します。このシェルターは武蔵野皇国国民専用に建設されております。他国民の方の使用はお断りさせて頂いております」

<イデア、武蔵野皇国って知ってる?>

ライトは旧文明の国家の名前であろう名称を情報があるかイデアに質問する。

<はい、再生歴以前から存在していたであろうと言われている国家です。皇族制を採用し、皇族を国家の象徴と位置付けた政治体系で2000年を超える歴史を刻んだと言われています。最終的には複数の国家の政治的・経済的侵略を受けて滅ぼされたと記録されています>

<滅んだのにこんな施設が残ってるの?可笑しくない?>

<彼等は他国からの攻撃で皆殺しにされた訳ではありません。政治的に侵略され国家を乗っ取られたという表現が正しいかと。技術力に特化し、物理的な外圧や武力行使に対しては滅法強かったようですが、個人を尊重しすぎる民族性と政治に対する無関心さから、他国からの静かなる侵略を受けて国自体が他国に吸収されたと記録されています。当時の制度が複雑化し過ぎたため、侵略した側でも把握しきれなかった施設がまだ残っていたのでしょう>

<なるほどね。それで他の国の技術と融合していったって感じかな?>

<そんな昔の事はおいといてさ。この状況どうするんだ?このまま帰るのか?>

シドは古代の歴史に対して興味も無いのか、今この時の対応をどうするのかと聞いく。

<・・・シドの遺伝子情報を提出しても宜しいですか?>

<ん?別に構わないけど>

<しばらくお待ちください>


・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・遺伝情報の提出を確認・・・・・・類似人種と仮定・・・遺伝子適合率99.995%・・・・・・皇国民特有のゲノムの一部を確認・・・・・・再審査を開始します・・・・・・・・・・・・・・・・・・§ΘΠΣΦδ・・・・・・・・ふむ、皇国民かと言われれば違うと言えるし、本当に違うのかと言われれば判断に迷う・・・・これはまた微妙は結果だ」


ホログラムが急に人っぽい反応を返すようになった。

<おいイデア。何した?>

<シドの遺伝情報を提出しました。シドの身体的特徴は記録の中にある皇国民に類似する部分がありましたので、ダメ元で提出してみました>

<それでダメだったらどうしたのさ?>

<その時は大人しく帰るのが最適解かと>

3人が念話で内緒話をしていると、ホログラムが会話の中へ入ってくる。

<さて、お前たちはどうしてこの施設にやって来た?>

<<!!>>

何の前触れもなく念話の中に入り込んでくるホログラムに驚愕するシドとライト。

<シド、返答をお願いします>

イデアのみが冷静にシドに返答を促してくる。

「え・・・ええっと・・・・モンスターが出て来た穴を辿ってきたら此処へたどり着いた・・・・かな?」

「・・・バイタルでの虚偽反応は無し。嘘では無さそうだが・・・モンスターとはあの食用ワニの事か?」

「あれって食えるの?」「あれが食用?」

シドとライトはあの巨大ワニが食用と言われ動揺を禁じ得なかった。

「5周期ほど前に水槽から脱走した爬虫類の事ではないのか?かなり大きく育ちはしたが、解体しても結局は廃棄するのだからと放置していたのだが。水槽から脱出しても出て行ったり帰ってきたりと奇行を繰り返していた」

「・・ええっと・・・・・・・これどう言ったらいいんだ?」

「・・・そのまま言うしかないよ・・・」

どうもホログラム側とシド達現代人側との認識の隔たりが大きすぎるらしい。

「あのワニが地上に現れて暴れたんだ。それで俺達が退治して、出て来た穴の調査に来たって感じなんだけど・・・・・」

「なるほど、故に作業用ワーカー(作業マシン)を破壊してまでこの場所に来たと言う訳だな」

「そうなんです・・・それで・・・あんた・・きさま・・・・おたくはどういった存在で???」

シドはホログラムに対しなんと呼べばいいのか分からず混乱してくる。何とか丁寧な言葉で話そうとするがパニックになり言葉が怪しくなっていく。

「自分はこの施設の管理AIだ。南雲システムにより生み出され、この施設の管理を任されている。避難して来た国民達が不自由なく過ごせるようにな」

ホログラム?管理AI?はその様に述べるが、もう武蔵野皇国は滅んだあとだ、幾ら待てどもここに避難してくる人民はいない。

「・・・ええっと。武蔵野皇国は既に滅んだという事ですけども・・・・」

シドは素直にそうAIに伝える。

「滅んだ?・・・・・なるほど、それなら長期間ここが放置されている状況にも説明が付くが・・・・証拠となる物はあるか?」

AI自身も、あまりに人が来ない事は不審に思っていたらしい。

「イデア、何とかならないか?」

<私の方で所有するデータを転送しましょう>


・・・・・・・・・・


「ふむ・・・・・これは歴史データの様だが、お前は我々が存在した時代よりかなり後に製造されたのだな」

<はい、武蔵野皇国が消滅したと考えられている時代から、凡そ700年程後の時代に製造されました>

「なるほどな。それで、お前達は一体何者だ?700年も経ってこの施設を調べたところで特に面白い物がある訳でもあるまい」

「ええっと、俺達はイデアが製造された時代よりさらに後の人間です。俺達はそんな旧文明の遺物を発掘して金に換える職業についてて。この遺跡に在る物も現代では価値が高いと思ってます」

「ふむ、だがここの備品を持っていかれるのは承諾できない。資格の無いものに渡すわけにもいかない。このまま何もせずに去ると言うなら作業ワーカーを破壊した事には目を瞑ろう」

「でも、ここに繋がる穴の事は現代人の都市やワーカーオフィスに知られていますから、ボク達が帰っても他のワーカー達が大勢やってきますよ?それならこちらの責任者と交渉してお互いの利益になる話に持っていけば共存できると思うんですけど」

ライトがその様に提案してみる。

確かに、この2人がこのまま帰っても新たなワーカーが招集され探索が行われることは間違いない。危険な遺跡と判断されても、存在が明るみになっているのだから、いずれ攻略しようと攻めてくるのは確実だった。

「それならば迎撃するだけだが?」

「かなりの数が来ると思います。ボク達より強いワーカーは沢山いますから、孤立無援でずっと戦い続けるんですか?管理者ならこの施設がボロボロになるのは避けたいですよね?」

ライトはなんとか話し合いで解決できないかと説得する。コミュニケーションが取れるならその方が双方にとっていい結果になるだろうと考えたのだ。

「・・・・・・なるほど、一理あるか。では、お前たちの実力を見せてもらおう」

「ん?」

「え?」

管理AIの言葉で思わぬ方向に話が転がってしまった。

「お前たちの実力でこの時代の人間に交渉の価値があるかどうかを見極めさせてもらう。簡単に迎撃できるのならこの施設の負担にはならないだろうからな」

「いや!ちょ!」

「では、健闘を祈る」

管理AIはそういうと姿を消してしまう。


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― 新着の感想 ―
母国の状況を考えると笑えない設定だ。交渉出来て何より。
面白い!!
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