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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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穴の中には?

マルオはバイクで大穴の中に入って行ったスラムバレットを見送った。

「彼らがスラムバレットですか・・・ブルーキャッスルと中央崇拝者の拠点を殲滅したという」

「・・・・何故彼らの事を?」

「あれだけ騒ぎになったのです。調べるのは当然でしょう。一般人に対しての情報開示はされていませんが、ワーカーギルドの多くは知っていますよ」

「まあ、そうだろうな」

「ええ、それ以前から彼らは有名でした。ランク10を超え直ぐにランク調整依頼を発行されたシド。ランク1のライセンスを取得して瞬く間にランク20を超えてきたライト。キョウグチ地下街遺跡で戦闘用オートマタの撃破。喜多野マテリアル 部門長との繋がりを得て、ワーカーオフィス主導の訓練所設営のひな形の提供。軽く上げるだけでこれだけの実績がある。それも1年でね」

マルオ、というよりゾシアはかなり綿密にスラムバレットの事を調べていた様だ。

「我々のギルドに勧誘の話も出ていた様ですが、あまりに自由奔放過ぎるとの事で見合わせていたのですよ。今回の依頼は彼らの実力を確認するのに非常に都合がいい。勧誘の是非に関わらず・・・ね」

マルオは穏やかな笑顔を浮かべながらそういう。しかし、その眼の奥には彼らを見極めんとする冷徹な光があった。

「・・・まあ、君たちの思惑はこの際どうでもいい。彼らが戻ってくるまで、しっかり頼むぞ」

「はい、それは勿論」

マルオはメンバーに指示を出し、周辺の監視と警護を始める。




シドはライトと共に巨大ワニが通って来た大穴の中を駆け抜けて行く。

凡そ3km程の距離を走ると、ライトは中継器を天井に撃ち込んで行き通信を確保していった。

穴が横穴に変わってから約10分ほど走る。

中継器はすでに5個目を撃ち込んだ頃、穴の様子が変わって来た。

床や天井が金属質になり、所々破壊の後が見られるが人工物であることが分かる。

通路となっている所に差し掛かると、天井の両端に埋め込まれていた照明が点灯し、ライトの肉眼でもハッキリと見通せるようになった。

「う~ん、これは遺跡だな」

「そうだね。しかもまだ生きてる遺跡だよね。明らかにボク達に反応したよ」

<防衛機構も生きている可能性があります。注意してください>

シドはバイクの速度を落とし、そのまま進み続ける。

「ライト、ナカザワさんに報告しといた方が良いぞ」

「そうだね・・・・・ナカザワさん応答願います」

ライトはナカザワから渡された通信機に呼びかける。すると、直ぐに通信は繋がりナカザワが応答してきた。

『こちらナカザワ。スラムバレット、穴の中の様子はどうだ?』

「凡そ15km程進んだと頃、明らかに人工物である通路にたどり着きました。今その通路を進んでいます。予め埋め込まれていた照明が点灯したのでエネルギーは供給され続けている様です」

『!!・・・・生きている遺跡か・・・わかった。本部への報告を入れ直ぐに追加の調査隊を送る。君たちはそのまま調査を続けてくれ。危険と判断したら直ぐに撤退するように』

「了解しました。何かわかりましたらまた連絡します」

『了解』

ライトは通信を切り、装置を仕舞う。

「このまま進んでいくぞ」

「うん、まあ、真っすぐだから迷う事はなさそうだね」

シドとライトはそれぞれの索敵方法で周囲を警戒し、トラップなどが無いか調べながら慎重に進んでいく。

すると、奥に元は隔壁であっただろう扉が見えてくる。


シドはその隔壁の近くにバイクを止め、全容を見渡した。

かなり大きな隔壁だった様だが、内側から破られており、かなり強力な力で破壊されていた。

「この中からあのワニは出てきたみたいだね」

「そうだな。内側に向かって曲がった鉄板もあるって事は出入りしてたって事か・・・・」

「そうらしいね。この通路はあの巨体で考えたら一方通行でしょ?一旦出てから方向転換しないと帰れないよね?あれがあの場所から出入りしてたって事?」

「そうなるよな~・・・・それか途中でバックで戻って来るか・・・か?」

「そんな事する意味ある?」

<モンスターの行動原理は個体により変化します。あまり考えすぎる必要はありません>

2人はそれもそうかと考え、これからのどうするかを考える。

ナカザワは調査を続けろと言っていたが、全くの未知の遺跡?にたった2人で足を踏み入れるのはどうかと思う。ここは普通の遺跡では無く、あの巨大ワニが巣にしていたのだ。何が出てきてもおかしくは無い。

「う~ん・・・・アイツの巣だから他のモンスターは全部食われて居なくなってるって考え方もあるか?」

「繁殖地だったら子ワニがぞろぞろ居るかもしれないよ?」

「そうだよな・・・・お前の情報収集機の反応は?」

「今の所モンスターの反応はないよ。シドさんは?」

「俺も特に感じないな」

2人の索敵には何の反応も無い。

中に入っていきなり襲われると言う事は無さそうだ。

「・・・・中に入ってみるか。ここで引き返しても何も分からないからな」

「そうだね。調査続行で」

ライトは情報収集機を通信機に接続し、破壊された隔壁の情報もナカザワへ送る。

隔壁の近くに中継器を撃ち込み、2人は中へ足を踏み入れた。


隔壁の奥に広がっていたのは、巨大なプールであり、今も複数の水路から水が流し込まれている。恐らく底の方から排水もされているのだろう。

プールからこの隔壁に続く場所は大きく歪んでおり、あの巨大ワニが通った後がはっきりと見て取れた。

辺りを見回すと、上に続く階段が設置されており、奥へと続く扉が見受けられる。

「なんなんだ?ここは・・・」

「実験室??・・・いや、飼育室かな?」

<この場所だけではわかりません。コントロール室でも発見出来ればはっきりするでしょう>

<そうだな、進むぞ>

<了解>

シドはバイクを走らせ、プールの上を飛び越えていく。

人が通れるサイズの扉がある踊り場にバイクを止め、ライトが扉の解錠に取り掛かった。

数秒で解錠が終わり、扉を開けて奥の様子を伺う。奥は暗く、ライトの肉眼では奥まで見通すことが出来なかった。

「この通路の広さならバイクでも移動できるけど・・・歩いた方が効率良さそうだな」

「そうだね。扉の開け閉めの度に乗り降りするのも面倒だし」

シドとライトはここからは徒歩で行くことに決め、バイクはシドが操作し後ろをついてくる様にユックリ動かした。

通路に差し掛かると、再度照明が点灯し奥まで目で見えるようになる。

「・・・・なんか、監視されてるみたいで気持ちわるいな」

<この施設のAIに我々が侵入したことは感知されているのは間違いありません>

<それって大丈夫なの?>

<わかりません。この施設のAIの質によると思います。ただの簡易AIであるならばただ人が居るから照明を付ける程度の判断を行っているだけでしょう。しかし、私の様な独自思考を有するAIであった場合、どの様な反応を示すか予想できません>

<慎重に進んでいくしか無いか・・・>

2人は索敵に神経を尖らせ、先へと進んでいく。


暫く通路を進むと、2人の索敵に引っかかる反応があった。

2人は銃を構え、奥へと進んで行き、少し大きめの扉にたどり着く。反応はその奥にあり、複数の反応が動き回っている様だ。

<・・・開けるよ>

<ああ、迎撃は任せろ>

ライトが扉の解錠に掛かり、シドはS200を構え、自分の背後からバイクに取り付けられたガトリングを扉に向け攻撃態勢を整える。

ライトは作業が終わったのか、扉から離れシドと同じようにハンター5と複合銃を構えた。

僅かな電子音が響き、扉が解放されていく。

奥は倉庫の様で、重量棚がズラリと並べられている。棚には様々な遺物でギッシリと埋められていた。

その光景に一瞬呆気にとられるが、棚の隙間から見えた動体を確認した瞬間、2人の警戒度はマックスまで引き上げられる。

<オートマタですね>

イデアがその姿をシルエットで表示する。

その姿はカーゴにロボットの上半身を取り付けた様な姿をしており、カーゴには荷物が積み込まれていた。

オートマタ達は棚から荷物を取り出すと、カーゴに乗せられていた荷物と交換していく。

雰囲気はただの作業ロボットの様だ。しかし、一体のオートマタがこちらに気付いたようだ。作業を止め、棚越しにシド達に頭部を向ける。

すると、全てのオートマタに情報が共有されたのだろう。この場で作業していた全てのオートマタが作業を中断し、2人に向かって来る。

一体のオートマタが姿を現すと、両方のアームを開き、中からエネルギーブレードを発生させ速度を上げてこちらに突っ込んできた。

シドは両手のS200からSH弾を撃ち出しカーゴの車輪と両腕の付け根を銃撃する。

正確に命中した弾丸はオートマタを損壊させるが、動作不良を引き起こし行動不能にするだけに止まり、完全に破壊する事は出来なかった。

<硬いぞ!ライト関節を狙え!>

<わかった!!>

戦闘が開始されたことによって、オートマタ達の動きも変わる。カーゴの車輪を高速で回転させ、重量棚の隙間を縫うようにこちらに向かって来る。

シドは直線的な射線に姿を現したモノ達を攻撃し、ライトはまだ射線が通っていないモノ達を曲射で狙い撃っていく。


数は多いが、ファーレン遺跡の三ツ星重工跡地やキョウグチ地下街遺跡で戦った戦闘用のオートマタとは違い動きも単調で装甲もアレほど固くは無い。

正確に関節部などの弱点を攻撃すれば無力化は可能だった。


探知できる範囲のオートマタを全て行動不能にし、1体1体止めを刺していく。


<・・・・これで終わりか?>

<このエリアにいるのは全て倒したよ・・・・でも、この遺物の量。凄い数だよ>

<・・・上からも降りてきてたからな・・・>

シドは視線を上に向けると、天井はかなり高く30m程はあろうかという高さだった。その天辺までギッシリと遺物が積み込まれており、運び出すとすればかなりの手間がかかることが予想できる。

<・・・えらいこっちゃ・・・・>

<これ報告したらキクチさん倒れないかな・・・?>

ライトは以前情報媒体が大量に置かれていた部屋の事をキクチに報告した時の事を思い出す。しかし、今回の遺物の量は前回の比ではない。ミナギ都市地下街遺跡と同じ状況になるのでは?と思われた。

だが、あの遺跡と違い、こちらはオートマタが出現する。戦闘用と比べたらかなり弱いが、外に出てくるモンスターと比べれば頑丈さはこちらの方が上だ。接近されれば非常に危険であった。

<どうする?進む?>

<ああ、この位なら問題無いからな>

<遠距離武器は無かったけど、かなり頑丈だよ?物量で来られたら対処も難しいと思うけど・・・>

<次はコイツで斬るから大丈夫>

シドはそういい、腰の双刀を叩いた。

確かに、あの刀の切れ味なら大丈夫かと思い、ライトは自分の場合はどうするかを考える。


<これでよし。進むぞ>

<わかった>

シドは入口の所に散乱したオートマタの残骸を除け、先へと進んで行く。

<そこを右に曲がって真っすぐ行けば扉があるみたい>

ライトは情報収集機で作成したマップをイデアを通してシドに送る。シドも視界に表示されたマップを見ながら棚の間を進んで行った。


先程通った物と同じ様な扉にたどり着き、ライトが解錠する。

開いた扉を潜ると、そこには遺跡とは思えない光景が広がっていた。


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― 新着の感想 ―
もはや遺跡ではなくちゃんと稼働してる施設ですね 見返りは大きいですがオートマタに巨大ワニみたいな生物兵器がいるかもしれないと思うとリスクも高い
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