デザートイーグル T6 魔改造
ガンスから車載用兵器の見積もりが届いてから1週間。
シド達は改造の準備が整ったとの連絡を受け、自由市にまで車とバイクに乗りやってきていた。
<・・・・・シドさん。ホントにいいの?>
<何がだ?>
<だってさ・・・・・10億越えだよ?10億越え・・・・>
今回の装備の値段、ガンスから届いた見積もりは12億。巨額購入の為かなり割り引いてもらい、中央崇拝者との事件を唐澤重工の宣伝に使用しても良いと許可を出すことによって、施工費は唐澤重工持ちとなった。
今までとは文字通り桁違いの買い物である。
ライトは今でも心臓が波打つのを感じていた。
<おう!当然だ!!金ってのは必要な所にぶち込まないとな!>
ライトは必要とは思えない装備があるんだけど・・・と思ったが口にはしない。
<無駄遣いと言う訳ではありません。今回の改修で2人の戦力は飛躍的に上昇するでしょう>
<だよな!なら問題ない!>
シドは強力な武装が増えると言う事で非常にご機嫌だった。
2人がミスカ達の所までやってくると、ミスカ達のトレーラーの横にさらに大きい車が止まっており、その前にミスカとシブサワが立っていた。
「どうも、ミスカさん。それとシブサワさんも、今日はよろしくお願いします」
「おはよ、2人とも」
「はい、この度も弊社の商品をご購入頂き、誠にありがとうございます。宣伝の件も合わせてお礼申し上げます」
ミスカとシブサワはシドに挨拶を返し、2人を大型車の方へ案内する。
「これは唐澤重工所属のメンテナンストレーラーです。ある程度の大きさまでの車両や強化外装などのメンテナンスやカスタマイズが可能になっております」
シブサワは巨大トレーラーの説明を行う。
「「おお~・・・」」
改めてみるとかなりの大きさだ。T6くらいならスッポリ入ってしまう。この中で車体の強化と兵器の取り付けを行うらしい。
「それでは、本日施工を担当する担当者チームの責任者を紹介します」
シブサワはそう言うと、一人の男を紹介してきた。
「始めまして、私が唐澤重工 改修部隊チームリーダーのアズマと申します。お見知りおきを」
アズマは一礼を行うと、シドに名刺を渡してくる。
シドはそれを受け取り、挨拶を返した。
「ワーカーのシドです。今日はよろしくお願いします」
「はい、事前に送らせてもらった改修案でよろしいですね?」
「はい、あれで進めて下さい」
唐澤重工から送られて来た改修案は、T6の足回りの強化・弾薬庫増設に合わせた車体の拡張工事とジェネレーターの調整・新型装甲板と兵装の取り付け。
この3点を行う。
バイクの方は補助アームを取り付け大型ガトリングキャノン GRKー185と弾薬ケースの取り付けを行うだけの為、大幅な改造は必要ない。
車とバイクをトレーラーの中に入れ、アズマが合図を出すと唐澤重工のメカニック達がワラワラと群がって行った。
バイクの方は簡単な改造な為、短時間で終わったが、T6の方はかなり大がかりの様だ。
あれよあれよという間に、外装が剥され骨組みだけになる。工業用ドローンが飛んできて取り外した外装を運んでいき、代わりのモノが運ばれてくる。
このまま取り付けるのか?と思われたが、メカニック達は車体のプラットフォームに手を加えているらしく。様々な部品が取り外されては別のモノに取り換えられていく。
最終的には車の動力であるジェネレーターまで取り外された。
ジェレネーターは大型の装置に接続されると、メカニック達はカバーを取り外し、中の部品を取り換えていく。
「なあ、あれって調整って範囲で収まるのか?」
「どう見ても改造だよね?」
数分で作業が終わり、足回りが交換されたプラットフォームに再度取り付けられ、カバーを取り付けていく。
その様子を見学していたシドとライトは、
「あそこまでやったらもう別の車じゃ無いか?」
「ボクもそう思う」
足回りだけになっていた車体も、改造前から全く別物になっていたのだ。
「御心配には及びません。安全性・耐久性・メンテナンス性全てにおいて保証いたします」
隣にいたシブサワはそう言うが、今後のメンテナンスをどうしたらよいのか?と2人は考える。あの状態で購入した富士モータースに持ち込んでもメンテナンスは不可能なのでは?
「今後のメンテナンスは弊社の支社等に持ち込んでいただくか、車両メンテナンス工場に持ち込んでいただければ問題ありません。スペックシートとパーツリストも後でお渡しいたします」
「唐澤重工って車も作ってましたっけ?」
ライトがシブサワにそう質問した。
「いえ、リリース自体はしていませんが、整備改造許可は取っておりますし、世間的に出回っている車は大体一度ばらして研究している為、本職達と遜色ない知識と技術を有していますよ」
シブサワはそう営業スマイルを湛えたまま答える。
そうなのだろうな、と2人は思う。
そうでなければあそこまでバラバラにして組み上げる事は出来ないだろうし、心臓部のジェネレーターまで弄れるとは思えない。
T6の構造を完全に把握しているのだろう。全く淀み無く作業が進んでいく。
そうこう話している間にも外側のカバーが取り付けられ、外装も取り付けられていく。出来上がった車は以前よりも2周り程大きくなっており、ダゴラ都市の市街を走るのもギリギリの大きさだろうと思われた。
「シドさん・・・これやり過ぎじゃない?」
「・・・・・・大丈夫だろう・・・」
ライトは単純な感想をシドに述べる。返すシドもここまで大きくなるとは思っていなかった様だ。
「装甲パネルも最新式に変更いたしました。ジェネレーターの出力も向上させていますのでエネルギーシールドの防御力も飛躍的に向上しています。その辺の装甲車など裸足で逃げ出す程の頑丈さに仕上がっていますよ」
シブサワはそう答える。
「ここまでやる必要あるんですか?」
ライトは率直な疑問を投げる。
「はい、ELシューター01を使用するにはジェネレーターの出力上昇とエネルギーシールドの向上は必須でした。それに、この度は小型とは言えミサイルを搭載しますからね。頑強さを上げておかなければ攻撃を受けた際、弾薬庫に被弾してしまえば誘爆の危険があります。これくらいの補強は必要と試算されていますよ。
T6に搭載されているジェネレーターは優秀ですからね。本来なら専用のジェネレーターを個別で搭載するのですが、今回は小規模の改造で十分対応できましたので、スペースにも余裕があります」
その割にはジェネレーターの部品もかなり変更していたような?と思ったが、突っ込んでも自分達に出来ることは無いと口を閉じる。
完全に車体の改造が終わり、次は兵器の搭載に入る。
まずは大型複合銃 NLXー2500Z 2門を両サイドに、そして小型ミサイル ハイドラプターの発射口を上に向けて後部に取り付けられていく。
弾薬庫は天井の部分に取り付けられているのか、天井部にガチンっと嵌めるだけでこれらの装着は終了する。
最後にシド一押しの浪漫砲が運ばれてくる。
ケースの中に入っているのを見たがかなりの巨体だ。
荷台前部の上に運ばれ、これも又ガチンっと装着し、兵装の装着は完了。確認の為か、メカニック達がそれぞれの兵器を動かして稼働確認を行っていた。
「なんか、取り付けはあっさり終わったな」
「そうだね。もっとボルト締めとか溶接して取り付けると思ってたけど」
「カバーから外装まで弊社で作成しましたからね。簡単に取り付け取り外しが可能で、弾薬・エネルギー供給ラインも一纏めにしてあります。その上で射撃反動を吸収する構造になっておりますので、ビス止めや溶接で施工するより遥かに安定性が向上しておりますよ」
シブサワの説明を聞き、流石は名だたる技術変態集団、唐澤重工だと2人は考える。
「でも、この短期間で良くこれだけのパーツを作成しましたよね?突貫作業だったんじゃ・・・・」
「いえ、弊社に在庫がありましたので」
「「・・・・・」」
どうしてコレだけ多様な兵器を接続できる外装が在庫として保管されているのだろうか?と2人は思う。
おそらく開発部が面白半分で作成し、売れずに倉庫で埃を被っていたのだろう。
メカニック達はこれ幸いにと倉庫から引っ張り出してきたに違いない。
本当に何故唐澤重工が潰れないのか不思議である。
「おし、改造はこれで終わりだ。後は実射しての動作確認だな」
作業を終わらせたアズマがこちらに来てそう言う。
「ありがとうございます。それでは、荒野へ向かいましょうか」
シブサワはシド達に向かいそう言う。
「そうだな」
「実際に撃ってみないとね」
2人も合意すると、一緒に改造を見学していたミスカが声を掛けてくる。
「ウチはこれから商談があるから行かれへんねん。2人でシッカリ確認してってや」
「そうなんですね」
「今日はありがとうございます」
「ええよ、また戻ってきて問題なかったら決済よろしくな」
これ程の巨額取引だというのに、ミスカとガンスは後払いをOKしてくれたのだ。普通は前払いか然るべき機関が間に入った契約を行うものなのだが、二人は自分達を信用してくれているらしい。これからミナギ都市に移動しても、機会があればミスカ達から装備を購入しようと考えるシドとライトだった。
2人は車とバイクに乗り込み、トレーラーから出庫していく。
車のサイズは大きくなったが、運転には支障がない様だ。シドのバイクも今までより重量が重くなっているが、シドの怪力と体幹の前では誤差に過ぎない。
2人は唐澤重工のトレーラーを引き連れ荒野へと走り出したのだった。
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