シド 大判振る舞い
ガンスは目の前に並べられた4つの銃器、いや、兵器の説明を行っていく。
一つ目は久我テック製 大型ガトリングキャノン GRKー185
MKライフルの技術をふんだんに盛り込み、連射性能も追及した銃器で、特殊徹甲弾を使用しSH弾頭とPN弾頭の両方の特性を併せ持つため、装甲・非装甲型モンスター関係なく効果的にダメージを与える事ができる。
ガトリング式の為、投射量は非常に多く、大量のモンスターを撃滅する場合にも活躍する事が出来る。
しかし、特殊徹甲弾を大量に使用する為、弾薬費用が掛かるのがネック。
2つ目はドゥエルグ・ガンスミス製 大型複合銃 NLXー2500Z
シドのサブウェポンであるPST-バレルを製造している企業であるドゥエルグ・ガンスミスが作った複合銃。
通常のMKライフル対応弾頭全てに対応出来、ハンター5の様に複数の銃口がある為、その連射力も申し分ない。
徹甲弾から榴弾にも対応しており、幅広い場面での活躍が期待できる。
対応弾種が多い為、弾薬のストックスペースを広く取る必要がある。
3つ目はエアーフロント製 小型ミサイル バスターシリーズ ハイドラプター
自走兵器や誘導兵器を専門に手掛けている企業で、簡易AIに定評がある企業。
その為誘導兵器が優秀であり、ジャミングや欺瞞装置などに騙されることが少なくターゲットを正確に撃破する事が出来る。
特に大型モンスターには有効な攻撃で、最前線では好まれる傾向が強い。
車載用のミサイルは情報収集機と連結させる事で、使用者が自分で飛翔するターゲットを誘導する事が出来る。
ライトが扱うのであれば百発百中でモンスターの弱点部位に叩きこむことが出来るであろうとの事。
ミサイルの為、発射口をターゲットに向ける必要が無く。可動域を気にする必要が無い。
しかし、小型とは言えミサイルの為、弾薬単価は他と比べて圧倒的に高い。
その上、専用の拡張弾薬庫を取り付ける必要がある為、その施工費も掛かる。
4つ目はお馴染みの唐澤重工製 大型リニアレールガン ELシューター 01
高性能小型ジェネレーターから生成させるエネルギーを使用し、専用弾を撃ち出す長射程兵器である。
専用弾は、ジェネレーターから送り込まれるエネルギーを溜め込む性質を持つ素材を超硬金属で覆う構造になっており、爆薬での爆発ではなく、コーティングしてある超硬金属が衝突による崩壊・もしくは設定されたポイントまで到達し崩壊させると、溜め込んだエネルギーが一気に暴走し辺りを蹂躙する。
弾丸はエネルギーが発生させた磁界の中を高速回転しながら自走し飛翔する為、発射の際の反動が無く非常に直進性が高い。
最大射程が10km有り、有効射程距離が6kmと遠距離からの狙撃が可能であり、非常に弾速が早く有効射程に到達するまでのタイムラグは1.2秒である。しかし、兵器の性質上連射が効かず完全なジャイアントキリング用の兵器となる。
その巨体に見合う重量を有し、専用のガンアームを取り付ける必要がある上、発射の際には余剰エネルギーが拡散し、周辺が非常に高温になるというデメリットも存在する。
撃つ場合は銃をエネルギーシールドで包み込み、熱が周りに拡散しない様気を配る必要があるようだ。
全部の銃器の説明が終わる。
すると、ライトが小声でガンスに話しかけた。
「最後のリニアレールガンは過剰スペックじゃないですか?どうして紹介したんです?」
「あいつ(シブサワの事)がおるのに紹介せん訳にいかんやろ。なんでも一押しらしいで?」
ライトとガンスがコソコソと話していると、
「いかがでしょうか?弊社の自信作でございます」
シブサワが笑顔で話しかけてくる。
それを受けライトは少し困った顔をしながら答えた。
「ええっと・・・・性能は素晴らしいと思いますが・・・・・ちょっと過剰スペックかな~~・・・・なんて・・・」
あははと苦笑いをしながら返答するライト、だがシブサワは諦めない。
「確かにただのモンスターを討伐するなら必要無いかもしれませんね。しかし、お二人も何時かは東方や北方へ移られると思います。あの地域にはこのレベルの兵器でなければ太刀打ちできないモンスターも存在しますので、これを機にお一ついかがでしょうか?」
そんな夕食に一品追加しては?みたいに言わないで欲しい。
ライトはガンスにシブサワの言葉の真偽を確認した。
「・・・・まあ、おらへん訳やないぞ。つってもそんなモンが出てくるんは前線くらいまで行かんとおらんと思うが・・・・・」
ガンスの言葉を受け、やはりライトは断ろうとシブサワに向き直る。
しかし、ライトが何かを言う前にシブサワが先手を打ってきた。
「シド様は大変ご興味が御有りの様ですが?」
その言葉にライトはシドの方を振り向く。
そこには非常にワクワクと目を輝かせ、ELシューター 01を見るシドの姿があった。
この見た目と性能に、シドの中の男の子が刺激されてしまったらしい。
「ちょっとシドさん。この兵器はいくら何でも過剰だよ」
ライトはシドにそう言う。
「でもさ、俺らもう直ぐミナギ都市に行くじゃないか。そこで戦うには必要なんじゃないかな?」
無駄にキリっとした顔でライトにそう言ってくるシド。
「ガンスさんが言ってるでしょ?これを使うモンスターは前線クラスまで行かないと出てこないって」
「・・・・・・いや、なんか要るような気がする!」
シドは拳を握り力説した。
必要かどうかではなく、単に欲しいだけの様だが・・・・
「これを積んだらバランスが悪くなるよ。連射も効かないみたいだし」
「それでしたら、弊社のメカニックにお任せください。完璧なバランスで取り付けさせて頂きますよ」
ライトの言葉にシブサワがそう言う。
確かに、唐澤重工なら完璧に仕上げてくれるだろう。
しかし、問題はそこではない。この辺りや、ミナギ都市レベルであればライトのハンター5専用弾でも十分過ぎる威力があるのだ。
これ以上の兵器は、今は必要ないと思われる。
<ライト、資金に余裕があるのですから購入してもいいと思います>
<イデア?><イデア!(嬉しそう)>
<今までの事を考えてください。既存の装備で対応が難しいモンスターに多数遭遇しています。少し過剰武装な方が安全マージンを取るという意味では良いと判断します>
<うん!そうだな!安全は大事だ!>
イデアの言葉にここぞとばかりに乗っかるシド。
「う~ん・・・・でもお高いんでしょう?」
「お値段ですが 「大丈夫俺が払う!」
シブサワの言葉を遮りシドはもう買うつもりでいるようだ。
「シドさんシャラップ」
ライトにギン!と睨まれシドはしおしおと萎んでいった。
「それで?」
ライトはシブサワに再度値段を聞く。
「ガンス様を通しますので若干の変動はあると思いますが、施工費と合わせて7億前後かと」
高い。
今まで買ったどの装備よりもべらぼうに。
だが、先日見たシドの資産からすると余裕で買えてしまう。
シドに視線を向けると目で買える!と訴えかけて来た。
「まだだよシドさん」
ライトはそう釘を刺し、ガンスに他の銃の値段を聞いていく。
それぞれ
大型ガトリングキャノン GRKー185 4500万コール
大型複合銃 NLXー2500Z 8700万コール
小型ミサイル バスターシリーズ ハイドラプター 1憶8900万コール
ライトはかなりの高額に眉間にしわを寄せて考え込んだ。
ある程度の値段は覚悟していたが、やはり高い。
シドの趣味(ELシューター 01)を含めたら9億を超えてくる可能性もある。
「う~ん・・・・」
どうしようかと真剣に悩むライトだったが、シドはライトの肩を叩き自分の意見を提示した。
「車にNLX-2500Z 2機とハイドラプター1機、シューター01を1機付けて、俺のバイクにGRK-185を2機つけたらバランス良くないか?」
「・・・・・・シドさん本気?」
「シド、お前戦争にでも行く気なんか?」
「ミナギ都市でもそこまで武装してる荒野車走ってないで?前線にでも行くんか?」
3人から凄い目で見られながらもシドは怯まない。
だって欲しいから。買えるし。
「いや、俺達って結構トラブルに巻き込まれるんですよ。荒野を移動してる時に襲撃を受ける可能性も有るんじゃないかと思っててですね。ガッツリ武装してれば襲われる可能性も下がりますし、襲われても安全に迎撃できると思うんです」
ライトはこういう時はスラスラ言葉が出るなとシドをジト目で見る。
「ちなみに装備される荒野車はどの種類をお考えでしょうか?」
シブサワはターゲットをシドに変更したらしい、ライトにではなくシドに確認して来た。
「ライト」
シドはライトに車とバイクのデータを送る様に指示を出す。ライトはしぶしぶシブサワにデータを送信した。
送られてきたデータを確認したシブサワは、少し考えながら返答する。
「ふむ・・・・・・デザートイーグル T6ですか・・・・なるほど。車体と足回りの補強は必要ですね。弾薬庫を確保するとなると、車体の拡張を行った方が良いでしょうね。ELシューター01以外の武装の取り付け工事も弊社が請け負って良いのでしたら非常にコンパクトに纏められますよ?」
シブサワは車体の改造まで進めてくる。
ライトは本当に必要な武装なのかと不安になってくるが、シドがキッパリと告げる。
「ガンスさんと相談して見積もりをくれ」
「承知しました。2日程頂ければ作成できると思います。それまでお待ちいただけますか?」
「ああ、待ってるぞ」
シドは言い笑顔でそうシブサワに伝え、ガンスにもよろしくと頼む。
「・・・・・ホンマにええんか?凄い金額になるで?」
「はい、ざっと計算しても大丈夫だと思います」
「・・・・・ほうか・・・・」
ガンスは即答する資金力に呆然とする。
この短期間でどれほどの稼いだというのか?
だが、客が大丈夫だというのだからそれに応えるのが商売人である。この後シブサワと見積作成の為に話し合いを行おうと頭の中で計算を始めた。
「・・・・まあ、目途がついてよかったな・・・・それで、自分らミナギ都市に行くってどういうことなん?依頼?」
ミスカはシドがミナギ都市に向かうと言っていたことを質問して来た。
「ええ、まあ。この都市でちょっと問題が起こりまして・・・・」
ライトは少し言いにくそうに話す。しかし、別に自分達に非がある話では無いと思い、先日の襲撃事件と自分達がダゴラ都市を離れなければならなくなった経緯を説明した。
「・・・・・なんじゃそりゃ?」
「それでなんであんたらが他都市に活動場所移さなあかんの?」
話を聞いたガンスは呆れ、ミスカは少し怒っている様だ。
「中央崇拝者からのテロを警戒してですね。都市幹部が絡んでいると分かって喜多野マテリアルも動いている様です」
「テロに他の人が巻き込まれるのは嫌ですからね・・・・」
2人は、ミナギ都市に移動することは不服ではあるが納得はしているとミスカ達に伝えた。
「そういう理由やったらしゃーないか・・・」
「・・・・・・・」
ガンスは納得したように頷くが、ミスカは顔を顰めたまま何も言わない。
「まあ、そういう訳なんで俺たちはこの都市を離れる準備に入らないといけないんです。見積もりの方、よろしくお願いします」
シドはガンスに再度お願いする。
「ああ、わかった」
「私の方も直ぐに作成いたします」
シブサワも協力してくれるようだ。
「はい、それでは、また来ますんで」
シドはそういうとライトと共に宿に帰って行く。
ミスカ達視点
シブサワは本社に連絡を取り、メカニックの派遣と施工の見積もりを依頼しELシューター01の値段をガンスと交渉していた。
「兵器の値段はこれでいいとして・・・・施工の方ですが、この事件を弊社の宣伝に使用させていただけるのであれば、施工費は弊社で負担させて頂こうと思います」
「そら~シドに確認してくれ・・・・・・しかし、ブルーキャッスルと中央崇拝者相手に2人で戦うとはな・・・・・」
「ホンマにあの子らは・・・厄介な連中に目~つけられたもんやで・・・・」
「喜多野マテリアルが動いているのですからテロを起こす余裕があるとは思えません。しかし、万が一と言う事もありますからね。ワーカーオフィスの指示も間違いではありません」
「そうなんやけどな・・・・」
3人は、あの2人から聞いた話を思い出す。
ダゴラ都市所属のワーカーギルド、ブルーキャッスルと中央崇拝者が手を組み、2人を襲撃したらしい。
しかも、事件の裏で手を引いていたのは都市幹部であるという事実。
他都市では考えられない事件であった。
ここまで都市幹部が腐るというのは前例がない。喜多野マテリアルはその威信を賭けて対応を行うだろう。
「見せしめを兼ねて過激に対処するやろな・・・・」
「そうでしょうね。この件に関わっていた者達は確実に地獄を見るでしょう」
この件が他の6大企業に伝われば喜多野マテリアルの統治能力に疑いが掛かることは間違いない。今の所敵対企業は存在しないが、統制会議でヤリ玉に上げられることは間違いなかった。
「これはこのエリアが荒れるかも知れませんよ?」
「やめーや。不吉な事言わんといてくれ。ウチ等はこれからやねんぞ」
「でもな、その可能性は考えとかなアカンぞ。下手に行動したら巻き添え食うかもしれへんからな」
「しかし、チャンスでもあります。このエリアで中央崇拝者狩りが本格化すれば、装備の需要も大きく高まりますので」
シブサワの言う事も間違いではない。
企業の敵である中央崇拝者を狩りださんと喜多野マテリアルから号令がかかれば、他都市のワーカー達も動き始める可能性が高い。
そうなれば武器弾薬や防護服などの需要は大きく上がるだろう。
喜多野マテリアルからの依頼となれば、報酬も莫大なものとなる。その報酬を当て込んで装備を一新しようとする者たちも大勢いるだろう。
「・・・・お前のトコの装備がそう売れるか?」
ガンスは唐澤重工の商品の使い辛さを知っている為、そう簡単に特需に入り込めるか?と考えたようだ。
「その需要に滑り込むためにシド様達の活躍を宣伝に使いたいと言う訳ですよ」
シブサワは笑顔でそうガンスに答えた。
唐澤重工の装備で固めたワーカー2人が中央崇拝者達を殲滅したという触れ込みは、中央崇拝者狩りに参加しようというワーカー達に刺さる可能性は大きい。
シブサワは特大の商機に全力で対応しようと頭を回転させている様だ。
「・・・ほうか、あんまあくどい事すんなよ?」
「ええ、それはもちろんです」
営業マンらしい笑顔を浮かべ、これからの対応を考えるシブサワだった。
シドは素手だったんだけですけどね
まあ、シブサワは知らなくでも関係なく宣伝するでしょうけど
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