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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
109/217

シド 怒りの大暴れ

イザワが引き金を引いた瞬間、シドは頭を下げて弾丸を回避する。


イデアに預けていた体の制御を返してもらい、シドは渾身の力を体中に込める。

両手両足の拘束を引き千切り、一番近くにいたイザワを殴った。

シドはイザワを盛大に吹き飛ばすつもりで殴ったのだが、イザワの体の強度が足りず、シドの拳は腹部にめり込み体を貫通してしまった。

「ごぇ・・・・」

潰れたカエルのような声を出すイザワを、シドは腕を振るい振り飛ばす。

シドを完全に拘束していると思っていた中央崇拝者達は、拘束を引き千切りイザワを攻撃したシドに驚愕する。


シドは椅子から立ち上がり、彼らを見回しながら、溜めに溜めた怒りを爆発させる。


もうこれ以上我慢する必要は無い。


シドはこのアジトにいる全てを蹂躙する為に全力で駆けだした。



【少し時間が遡る】


どうしてこんな事になってるんだ?


今日ワーカーオフィスから受けたワーカー強化訓練が終了し、ライトと二人で久しぶりに拠点に帰って来た。

後は飯を食って、改装した回復成分が含まれた風呂に入って寝るだけだったはずだ。


それなのに。


今、俺たちの拠点が燃えている。


初めて手に入れた俺たちの城だ。


命がけで遺跡に潜り、必死に稼いだ金で購入した俺の家。


それが燃えている。


「シドさん!」


ライトの声が遠くで鳴っている。


<シド!襲撃です!直ぐに戦闘態勢を!>


イデアが何か言っているが理解できない。


どうしてこんな事になってるんだ?襲撃?


これは誰かからの攻撃なのか?いったい誰が?


あまりの事に混乱し、纏まらない思考が漸く現状を理解しかけた時、シドの体に弾丸が撃ち込まれる。


防御態勢を取らず真面に食らった弾丸が皮膚を貫き、筋肉まで到達する。痛覚が攻撃を受けたことを知らせ、シドの意識は急速に状況を認識した。


拠点に襲撃を受けた。


誰かが俺達に攻撃を仕掛けて来ている。


地面に倒れながら索敵を行い、無数の存在が襲い掛かってきている事を認識した。


「シドさん!!!」

ライトがこちらに向かってくるのが分かる。

シドは、煮えたぎるような怒りが腹の中で渦巻いている事を感じながらライトに指示を出す。


<ライト、お前は向こうの襲撃者をやれ・・・・・一人も生かして帰すな>


皆殺しにしてやる


シドの心が黒く染まっていくのがハッキリと分かった。

俺に向かってきて来ているのは5人。コイツ等を殺してもこの怒りが収まるとは思えない・・・・・一体どうしてくれようか・・・・

<シド、襲撃者はシドを確保しようとしている様です。恐らく他に複数仲間がいるかと>

イデアの推察でシドは今すぐ暴れるのを止める。

このまま捕まって、アイツ等のアジトまで案内してもらおう。

どういった理由で俺達を襲って来たのか聞き出す。

そして、その代償を支払ってもらう。

<イデア、俺の神経を操作して状況に合わせて動かすことは出来るか?>

<可能ではあります。しかし、どういった意味が?>

<このままアイツ等のアジトまで案内してもらう。このままだと、俺は感情に任せて暴れてしまいそうだ。アイツ等を殲滅できる状況になるまでイデアに任せたい>

<・・・・・承知しました。危険と判断したら 即座に逃亡しますよ>

<・・・わかった。頼む>

<わかりました。実行します>


シドはイデアに体の全権を預け、襲撃者に捕まりアジトまで搬送された。

手足を拘束され、頭に袋を被されても抵抗せず奴等のアジトに無事潜入することに成功する。


固い椅子の様な物に座らされ、拘束具で体を固定される。襲撃者が何か話したかと思うと、いきなり頭に衝撃が走った。


(!!)

鈍い痛みが走り、顔を顰めようとするがイデアに制御を渡している為、それすらもままならない。

目の前が真っ赤になるほどの怒りに、イデアの制御を振り払って暴れ出しそうになる。

<シド、ライトの戦闘が終わったようです。今コチラに向かっています>

<・・・・・わかった・・・・>

頭の袋が取り払われ、頭だけでなく執拗に全身を殴打されているらしく、痛みが体を走り抜ける。

暴行が一旦収まると気絶したフリをしているのを起こす為か、水を掛けられた。

イデアはシドの体を操作し、意識がもうろうとしている様に見せかけた。顔を上げて視界に移ったのは20人の男たちと、前に俺から遺物を取り上げたワーカーオフィス出張所の元職員、イザワの姿があった。

イデアの演技でイザワとやり取りする中で、顔面を蹴られ、いいようにやられる。


襲撃者は中央崇拝者の様で、自分たちの事を王都解放戦線と名乗っているらしい。

シドとしてはこの辺りの情報はどうでもいい。なぜ自分達を襲ったのかということだが、彼らはイデアを探していた様だ。

ラクーンに殺されたワーカー崩れが持っていた旧文明の身体拡張ユニット。それは彼らが極秘で運搬している所、何かのトラブルで彼ら自身が運ぶことが出来ず、あのワーカー崩れ達に依頼したのだろう。

しかし、その依頼は失敗し彼らは全滅、その装備を剥ぎ取りスクラップ屋に持ち込んだシドが、遺物を返却された後、起動させてしまったというのが顛末である。

しかし、彼らはシドが起動させたという事には気づいていない。

ユニットは選ばれしものでなければ使用できないと言っている通り、隔世遺伝者しか使用することは出来ない。

シドはその隔世遺伝者だった訳だが、彼らは正確な適応者条件までは知らないようだ。

もうシドと契約し、リンクしてしまっているイデアを探し回る彼らは滑稽だが、そんなことはどうでもいい。

自分勝手な思想を掲げ、俺が今まで積み上げた物をゴミの様に吹き飛ばすというなら、俺もお前たちに遠慮はしない。

完全にすり潰し、この世から消し去ってやる。

シドの中で怒りが憎悪に切り替わり始め、如何に効率的にコイツラを殺すかと方法を考える。

すでにこの施設のマップはイデアが調べてくれた。

敵の配置も全て把握し、一人も逃がさない為にはどうしたら良いのかを模索する。

自分の左足に撃ち込まれた弾丸もどこ吹く風だ。どうせこれくらいなら直ぐに弾丸は分解され、傷は修復される。

この痛みも、コイツ等に熨斗を付けて返してやればいい。


<シド、もうすぐライトが到着します。行動を起こしても逃げられることはありません>

<そうか、ライトにはなんて伝えた?>

<この施設の脱出口を全て知らせ、その場所から出てくる者は全て撃破する様に伝えてあります>

<よし、後は暴れるだけだな>

イデアからシドに体の制御が返還される。


イザワがシドの頭に銃口を押し付け、最後の言葉を投げかけてくる。

「私に不敬を働いたことをあの世で悔いるがいい」

そういい、イザワは引き金を引く。

シドは頭を下げ弾丸を回避、全身に力を籠め拘束を破壊すると、渾身の力でイザワの腹を殴る。

腹部にめり込んだ拳は内臓を破壊し、脊椎を粉砕しながら背中から飛び出る。

全く警戒していなかったイザワは情けない声を上げ、驚愕に表情を歪ませる。


シドはそんなイザワに頓着せず、腕に張り付いたゴミを払う様に腕を振りイザワを払い落とした。

「な!!貴様!!」

「イザワ様!!!」

中央崇拝者はシドが自由になったことと、イザワが攻撃を受けたことに驚愕するが、シドはその隙を突き一気に殲滅行動に出る。

先ほどシドを尋問していた男に駆け寄り、足の付け根に手刀を撃ち込んだ。人外の膂力を持つシドの手刀は、男の大腿を切断し吹き飛ばす。

男は足を失い崩れ落ちようとするが、シドはその場で回転し、裏拳で男の頭を殴りぬく。

全く反応できずに裏拳を食らった男の頭部は弾け飛び、血、骨、肉をまき散らす。他の男たちは混乱しながらもシドに攻撃する為銃を構えようとするが、シドが許すはずもなく次々と急所を破壊され絶命する。

シドは生体シールドを拳と足に纏い、さまざまな形状に変化させながら効率的に殺害していく。

ものの数秒で倉庫の中の者たちは物言わぬ死体と化し、シドはこの施設に存在する全ての人間を始末する為に動き出した。




ライト視点


ライトはイデアから送られてくる信号を頼りに荒野を駆け、中央崇拝者のアジトに到着した。

岩場の中に巧妙に隠されていたアジトの入り口を見つけ、中に入ろうとするとイデアから外に出てくる人間を狩って欲しいと指示を受ける。

この周辺にあるアジトの出入口も送られてきており、そこから出てくるであろう者たちを討伐する為、ライトは空へ駆けあがる。


(う~ん、一応キクチさんに知らせた方がいいかな・・・)

ライトはキクチに通信を繋げ、中央崇拝者のアジトの場所も併せて送信する。

『ライト!今どこにいる!』

「今送ったポイントです。中央崇拝者のアジトみたいですね」

『!・・・・・ここにシドも居るのか?』

「はい、今中で大暴れの最中みたいですよ?」

『クソが!!!直ぐに向かう!!中の奴らを逃がすなよ!最悪全滅させても構わん!!!』

「はい、そのつもりです。ではまた」

『ああ、気を付けろよ』

通信が切れ、ライトは出入口があるポイントを集中的に警戒し、出てくる全ての人間を攻撃する為に集中する。

(ホームを襲われたんだ。誰一人逃がさない)

拠点を襲撃されたことに怒っているのはシドだけではない。

ライトも腹に据えかねる怒りをメラメラと燃やし、誰一人逃がすまいと索敵を行っていく。




シド視点


中央崇拝者のアジトを徘徊しながら接敵する全ての者たちを粉砕しながらシドは進んでいく。


「なんなんだアイツは!!!」

「無駄口を叩くな!!企業の犬に正義の鉄槌を!!!」

「当たらないぞ!フォローを・・・ごへ!!」


彼らが着用している防護服ごと中身を切り裂いていくシド。

貫き、叩き潰し、蹴り砕く。

飛んで来る弾丸など障害にも成り得ないと突き進み、接敵する相手を瞬殺しながら施設の中を駆け回った。

<シド、動きが荒くなっています。注意してください>

怒りのままに暴れまわるシドに、イデアが注意を促す。

<・・・悪い。気を付ける>

先ほどまで、感情を叩きつけるように戦っていたシドは、イデアの忠告を受け訓練と同じように丁寧に敵を屠っていく。

極力音を立てず、空気と敵の意識の隙間に滑り込み、一撃で急所を破壊するが、シドの膂力が強すぎて人の形をとどめている方が少ない。

シドは電光石火も使用し、加速度的に敵の殲滅スピードを上げる。

<敵が撤退を始めている様です>

「チッ」

<ライトの方は?>

シドは舌打ちを打ち、逃亡した者を任せたライトの様子をイデアに質問する。

<問題ありません。順調に討伐しています。もうすぐワーカーオフィスの要請を受けたワーカー達も到着するようです>

<ん?他のワーカーも来るのか?>

<はい、ライトがキクチに現在地を教えた様です>

<なるほどな、わかった>

シドはイデアと会話しながらも、まだ人の気配がある方へ駆け抜けていく。一番人の気配が多い場所に向けて疾走すると、大きな金属製の扉が見えてきた。

シドは走る勢いを落とさず、扉に飛び蹴りを繰り出した。

轟音と共に扉が歪み、扉を支えていた壁に無数のひび割れが発生する。

<硬いな・・・・>

<なにか重要な施設の様ですね>

シドは両拳にシールドを纏わせ、扉を乱打する。

分厚い金属の扉でも、シドの連撃には耐えられなかった様でベコベコに凹みながら奥に吹っ飛んでいった。


扉の中に入ると、通路の両側に強化ガラスで覆われた部屋が複数あり、中には複数の人間が囚われていた。

その者たちは老若男女関係なく無差別に放り込まれている様で、動く気力もないのか下を向いて座り込んでいる者や、床に倒れている者が多い。

少数の者たちはシドに視線を向けているが、その視線は一様に怯えており、お互いに身を寄せ合って震えていた。

<・・・・・なんだここ?>

<何かの実験室の様ですね。実験体の保管庫といった所でしょう>

(クソが!!)

シドはこの胸糞悪い部屋を破壊して中の者たちを解放しようかと考えたが、今この場から彼らが逃走しようとすると戦闘に巻き込む可能性が高い。それに施設の外に脱出しても、逃亡者を狩っているであろうライトがいる。

アイツに中央崇拝者と彼ら被実験者を見分けろと言っても無理があるだろう。

都合よくキクチが招集したワーカー達がこちらに向かって来ているのだから、彼らに丸投げする方が良いとシドは判断した。


シドはそのまま通路を進み、奥の部屋にたどり着く。

シドの感覚器はこの中で慌ただしく動く複数の人間が居る事を感知し、扉を思い切り蹴り開ける。

シドの蹴りで吹き飛んだ扉は、部屋の奥で作業していた数人に衝突し押しつぶす。

その光景を目にした者たちは固まり動きを止めた。恐らく研究データや貴重な機材を運び出そうとしていたのだろう。研究者と思わしき様相の者たちは様々な荷物を手に持ち、カートに詰め込もうとしていた様だった。


「クソ!ここまで入り込まれたか!!!お前達は直ぐに脱出しろ!!ここは私が対処する!!」

一人だけ戦闘員と思われるマスクをつけた男が大声を上げ、研究者に撤退指示を出す。その声に、他の者達は手にしていた荷物を放り投げ、大慌てで別の扉から飛び出していった。


男は銃を構え、シドに向かって撃ち放って来る。

シドは時間を圧縮し、飛んで来る弾丸を躱しながら男に向かって突き進み、腹部に拳を叩きつけようとする。

男はシドの動きを認識できる様で、体を捻り回避、シドの頭に肘鉄を落としてきた。

シドはガードを上げ男の肘とシドに右腕が衝突。およそ人体からは鳴り得ない甲高い音が響き、シドの力と拮抗した。

シドはそれでも動きを止めずに攻撃を繰り出すも、男に全て捌かれてしまう。


このままでは届き得ないと判断したシドは一度距離を取り、相手を観察した。


<なんだコイツ?すげー硬いぞ>

<義体者ですね。おそらく全身をサイボーグ化しています>

<そうか・・・・初めて見たな>

男は全身をサイバネティックパーツで構成した義体者の様で、シドの動きにも対応してきた。

<シド、注意してください。サイボーグの場合、人体ではあり得ない可動範囲を持たせている場合があります。普通の格闘戦と同じように考えない様に>

<わかった>

シドはもう一度距離を詰めようと姿勢を低くすると、男はなんの前触れもなく目の前に現れ拳を叩きつけようとする。

シドは頭を傾け、紙一重で回避、カウンターを叩き込もうとするが手のひらでいなされ隙が出来た脇腹に膝蹴りをねじ込んでくる。

(ぐっ!)

流石機械の体と言うべきか、シドの耐久力を貫通してダメージを与えてくる。

(でも、オートマタよりは弱いな)

あの真面に食らえば吹き飛ばされる出力を誇るオートマタと比べればどうと言う事は無い。

シドはそう考え果敢に攻め立てる。

しかし、男の対人格闘能力は高く、シドの攻撃は全ていなされ、僅かな隙をついて的確に攻撃を放り込んでくる。

本来なら当たるはずの攻撃も、サイボーグならではの可動域を駆使され避けられてしまう。

(クソ!するする避けやがって!!!)

<シド、攻撃が上半身に偏り過ぎです。全身に攻撃を散らし隙を作ってください>

<わかった!>

シドは左下からのパンチで男の顔面を狙い回避を誘う。シドの思惑通り、男はスウェーバックでシドの拳を回避した。シドは男の伸びた左脇腹目掛けて蹴りを放つが、男は左腕を畳みそこに右手を添えてシドの蹴りを耐えようとする。

それを見たシドは蹴り脚を畳み、透かした後一回転してさらに勢いをつけ、前に出ていた男の左ひざにローキックを叩き込む。

「なっ!」

サイバネティックパーツで構成された男の体でも、鋼鉄の扉をひん曲げるシドの蹴りには耐えられなかったらしく、膝関節を破壊されガクリと体勢を崩す。

シドは体の回転を止めず、さらに加速して右拳のアッパーカットを崩れ落ちる男の顎下に叩き込んだ。

「オルァーーー!!!」

渾身の力で拳を突き上げ、男を天井に向けて突き上げる。

男の体は大きな金属音を上げながら吹き飛び、その勢いのまま天井に突き刺さった。


「はあはあはあ・・・ふーーーー・・・・」

<お疲れ様です>

<あいつ、死んだか?>

<それは分かりません。サイボーグの耐久力は生身の者達とは一線を画します。引きずり降ろして止めを刺すのが確実かと>

<そうだな・・・・>


シドは男を見上げる。

男は気絶しているのか肩まで天井にめり込んだ状態で脱力し、天井からぶら下がっていた。

(なんか・・・昔見せてもらったコミックで見た事あるなこの光景)

散々暴れて怒りも落ち着いてきたのか、どうでもいい事がシドの頭に浮かぶ。

<はやく止めを刺してしまいましょう。目を覚ますとややこしい事になりかねません>

<おっと、そうだな>

シドは飛び上がり、男の足を掴む。そのまま反動をつけて天井から抜こうとするが、強固に突き刺さっているのか抜けなかった。

「あれ?」

<天井に足を突いて引っ張るしかなさそうですね>

<・・・しゃーないな>

シドは天上に足を突き、男の体を思いっきり引っ張る。

「・・・・フン!」

バキィ!っという音と共に、男の頭が天井から抜け勢い良く地面に叩きつけられる。

シドは地面に降り立ち、転がったサイボーグに近づいて行く。

何時再起動したのかは分からないが、男は意識が回復しているらしく、動作不良を起こした体を必死に起こそうとしていた。

男のマスクが外れ、マスク下にあった機械の顔がシドの方へ向けられる。

「・・・ガガ・・・・お・・・・ガ・・・オ・・・マエ・・・・・・・ガザガ・・・・・なニもの・・・・・」

シドは男の声を無視し、拳を握りしめ振り上げる。

「・・・ザザ・・・ま・・・!」

イデアのサーチのお陰で判明したエネルギー源目掛けて、シドは渾身の力で拳を振り下ろす。

鳩尾部分に突き刺さった拳は、サイボーグの胴体を貫通し地面にまで到達。施設全体が揺れたのではと思える程の衝撃が走り、床に大きなひび割れを発生させた。

エネルギー源である小型ジェネレーターを破壊された男は不規則に痙攣すると、力尽きたように動かなくなった。

<これで無力化できました。頭部を持ち帰りましょう>

<ん?頭持って帰るのか?>

<はい、人型のサイボーグは頭部に思考領域と記憶媒体を搭載しています。ワーカーオフィスに提出すれば彼らの活動内容が判明するでしょう>

<なるほどな>

シドは男の頭を掴み、首元に手刀を叩き込んだ。

刃の形に発生させたエネルギーシールドが首に食い込み、簡単に切断することが出来た。

<戦闘中もその技術を使えばもっと簡単に倒せたと思いますが?>

<・・・・・・>

サイボーグの頭を持ちながら、シドはイデアに突っ込みを入れられ少し狼狽えた。

本格的な格闘戦はキョウグチ地下街遺跡で遭遇したオートマタのみ。その対策としてエネルギーシールドを操作し徒手空拳でも多彩な攻撃が出来る様訓練を行ってきたのだが、その事がスッカリ頭から抜け落ちていたシドであった。

<最初の方は出来ていたと言うのに・・・・・もっと自然に行える様に訓練の強度を上げなければなりませんね>

イデアの言葉にシドはガックリと項垂れる。

<早く脱出しましょう。外ではライトと他のワーカー達の掃討戦が始まろうとしているとライトから連絡が入りました。囚われている人たちの事を伝えなければなりません>

<そうだな、急ごう>

気を取り直し、シドは施設から脱出する為駆けだしたのだった。


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― 新着の感想 ―
やはり徹底的に一人残らず殺す爽快さはこの小説に必要不可欠です。 ここを中途半端にすると魅力半減します。
やっちゃえバーサーカー!
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