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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
107/217

拠点襲撃 ライトVSブルーキャッスル

ワーカーオフィスからの依頼である、ワーカー強化訓練が終わり、シドとライトは自分達の拠点に帰って来た。

T6を車庫に留め、先ずは食事だと2階のリビングに上がっていく。

1ヶ月も留守にしていた為、少しは掃除も必要かと考えていたが、自動掃除機が綺麗にしてくれており、このままでも十分快適に過ごせるだろう。

「まずは飯だな」

シドは直ぐに防護服を脱ぎ、ラフな私服に着替え食事の準備を行う為にキッチンに向かっていく。

ライトは防護服を着こんだまま椅子に座り、背もたれに身を預けてグデっと脱力する。

ライトも余裕で熟していたように見えるが、他者の面倒を見たり新しい技術を試してみたりと気が張っていた為、疲れは溜まっている様だ。

放っておけばこのまま寝てしまいそうである。そんなライトにキッチンからシドが声を掛けた。

「ライト~、飯が出来る前に風呂場の確認しといてくれ。要望通りに出来上がってたら風呂の準備も頼む。それと、さっさと防護服脱いでこいよ」

「は~い、わかった~~」

椅子からのっそりと起き上がったライトは先に風呂場の確認をしに向か合っていく。

(今日はステーキにするか)

シドは牛肉の塊をとりだし、厚さをだいたい4cmの厚み打切り出した後、塩をもみ込みしばらく置いた後ウィスキーに付け込んでいく。

<酒などどうするのかと思いましたが、料理に使うのですね>

<ああ、この前こうすると肉が柔らかくなるって動画で見てな。やってみたかったんだ>

<シドさ~ん、お風呂場問題無いと思うよ。軽く洗ってお湯ためるね~>

<おう、頼んだ>

シドは肉を酒が柔らかくするまでの間に副菜でも作るかと冷蔵庫を開け、中を物色していると

<二人共!退避!!>

イデアの鋭い声が聞こえ、シドはこの建物目掛けて高速で飛んで来る物体を感知した。

その方向に目を向けると、壁を突き破って何かが部屋の中に飛び込んでくる。シドはそれが何かを確認する前にキッチンの窓を突き破り外に脱出する。

シドが外に飛び出ると同時に、部屋の中で爆発が巻き起こり、高温の炎が窓から噴き出してきた。

その炎は一瞬で拠点を包み込み、内部を蹂躙し、外壁を焦がしていく。


地面に降り立ったシドは、自分達の拠点が炎に包まれている様子を呆然と見上げるのだった。



ライト視点


イデアの警告を受けたライトは、直ぐに窓から飛び出し炎からの被害から逃れる。

拠点に撃ち込まれたのはナパーム弾の一種の様で、爆発での衝撃波で破壊するよりも、燃焼で対象を攻撃する兵器の様だ。弾薬等は専用の保管庫に入れてあるため、これくらいの熱なら引火・暴発はしないだろうが、自分達がコツコツ集めた日用品などは全滅だろう。

これは他者の襲撃と見て間違いない。

幸いライトはまだ防護服を着用し、銃も背中のホルダーに収めたままだった。しかし、シドは銃も防護服も外していたはずだ。

流石のシドもあの一瞬で装備を整えられたとは思えない。

<シドさん!>

<・・・・・・>

念話で呼びかけるがシドからの返答はない。

ライトは情報収集機で辺りの情報を集めると、シドの反応は拠点の外にあった。どうやら無事に外に脱出できたようである。

それでも念話に反応しないシドも心配だが、この状況で複数の者たちがこちらに向かって来ている。

その動き方や配置から防衛隊や災害対策員と言う事はなさそうだ。

まだ襲撃は終わっていないと考えたライトは急いでシドと合流しようとする。


建物を迂回すると、呆然と拠点を見上げているシドの姿が目に入る。

「シドさん!」

ライトは叫ぶが、シドの耳には入っていない様だ。こうしている間にも敵と思われるマーカーは迫ってきており、ライトはハンター5を装備し訓練終了時にシドからもらったKARASAWA A60をエネルギーシールドで保持し戦闘準備を終わらせる。

情報収集機から送られてくるデータでは、南から5人、西から35人の襲撃者が向かって来ていた。

動きから見て5人の方がこういう襲撃に慣れている様に見受けられる。こちらの様子を伺うように、慎重に、だが素早くこちらに向かって来ていた。

<シド!襲撃です!直ぐに戦闘態勢を!>

イデアもシドに呼びかけるが、シドは反応しなかった。

<イデア!ボクは・・・!!!>

ライトはイデアに言葉を伝えようとするが、西から向かって来ていた襲撃者から銃撃を受ける。

そのすべてをエネルギーシールドで逸らし、ハンター5で反撃を行うが、襲撃者は建物の影に隠れ避けられてしまう。


防壁内、それも市街地でいきなり奇襲を仕掛けられるとは思っておらず、ライトにも焦りが浮かび、いつもの様に戦う事が出来ていない。

近所にはそれほど多くの一般人は住んでいないが、それでも0では無い。安全と思われていた防壁内で爆発音が鳴り響いたと思ったら、今度は銃撃音が鳴り始めた為、近くの住人はパニックを起こす。

ライトはその混乱に煽られてしまい、どう行動するべきかを迷う。

逃げるべきか?迎撃するべきか?

ライトが悩んでいる間にも事態は進行し、シドにも少数側の襲撃者が襲い掛かった。

棒立ちになっていたシドは、その銃弾を真面に食らい、血をまき散らしながら地面に倒れる。


「シドさん!!!」

その姿を見たライトはさらに混乱を深める。

訓練でも遺跡での探索でも、これほど無防備に攻撃を受けるシドを見た事が無かった。慌ててフォローに入ろうとしたライトにシドから念話が届く。

<ライト、お前は向こうの襲撃者をやれ・・・・・一人も生かして帰すな>

その声を聴いたライトの頭は、沸騰寸前だった温度が一気に零下まで下がった様な気がした。

その声には深い怒りの感情が込められており、その意思は自分に向けられたモノでは無いと分かっていても身がすくんでしまった。

<頼んだぞ>

<・・・・わかった>

ライトはリーダーの指示を全うする為、意識を完全に殲滅に切り替える。

この様な状況になっても未だ姿を現さない防衛隊や治安維持部隊はあてには出来ない。住民の被害は最小限にしながら敵を殲滅する事を第一として思考を加速させていく。


彼らの狙いは自分達と言う事が分かっているのだから、他の一般人に銃が向けられることは無いだろう。


なら・・・・簡単だな。

(いや、一人くらいは生かしておいた方がいいね)

なぜこのような事をしたのかを聞き出すには皆殺しは都合が悪いと判断。プランを変更。相手の練度を考慮し戦術を組み立てる。

誰一人逃さない為に。


すると、建物の影から数人の男が姿を現し、ライトに銃を向け大声で話そうとする。


「私はブルー「うるさいよ」」

ライトはその男を唯一の生存者とすることに決め、両手両足を撃ち抜く。

ハンター5の銃口がやや下を向いている事に油断したのだろう。しかし、なんの遮蔽物もない通路で、今のライトには銃口の向きなど関係ない。

発生させたエネルギーシールドで弾道を曲げ、男の両肘と両膝から先を吹き飛ばした。

「が!!!!」

男は驚愕の声を上げ、仲間も動揺を見せる。ライトにとってまさに撃ってください言わんばかりの態度だった。

全力で地面を蹴り、エネルギーシールドの反発も利用しながら襲撃者達に向かって突貫する。

高速で移動しながら、ライトは正確に襲撃者の頭を撃ち抜いていき、首無しの死体を量産した。

(まだ増援がくるのか・・・)

ライトは道路を走りながら、逃げる一般人と襲撃者を正確に区別し、一人一人正確に撃ち殺していく。

少し前までは自分で走りながら曲射で正確に狙う事は出来なかったが、この1ヶ月の訓練で2人までなら全力で走りながらでも狙える様になっていた。

しかし、今回は遺跡では無く、市街戦だ。万が一にでも一般人を撃ってしまう訳にないかない。

ライトは慎重にターゲットを選別し、丁寧に殺していく事を選択した。


ライトにとって直線的な射線が通ってなかろうと関係ない。

射程距離に入りさえすれば問題なく弾丸を当てることが出来る。シールドを瞬時に発生させ、銃口から撃ち出された弾丸を誘導し、ターゲットまで届ければ良いだけだ。

訓練に参加していた人達の様に動き回るわけでもない為、的当てとほとんど変わらない。

敵の射線が通らないルートを選択し、次々に撃ち殺していく。

最初の35人を始末し、増援部隊と戦っているとライトに通信が入る。

コードを調べてみるが知らない相手だ。

一応通信を繋いでみると、相手はカズマだった。

『抵抗を止めろ!お前の仲間は我々の仲間が抑えている!!』

ライトはシドの動きも確認していた。

恐らく襲撃者が運んでいるのだろう、南の方へ移動しているのは知っていた。しかし、シドのあの様子なら負けて運ばれているとは思っていない。

おそらくわざと捕まったのだろうと考えていた。

「抵抗?負けてるのはそっちでしょ。寝言は寝ていいなよ」

カズマと会話をしながらも、ライトは銃撃の手を止めない。この間にも襲撃者の数は減っていく。

『お前こんな事をしてただで済むと思ってるのか?!』

「攻撃してきたのはそっちでしょ。正当防衛だよ」

『第三のゴミに正当な権利などない!何度言えば分かる!!』

「ボクはワーカーだ。ワーカーオフィスからちゃんと権利の説明は受けたよ。お前だって養成所で習っただろ?」

『あれは人に適応されるルールだ!人モドキが権利を主張するなど烏滸がましいぞ!!!』

「もういいよ、お前等には全滅してもらう」

ライトはカズマの戯言は聞き飽きたと通信を切ろうとするが、カズマの言葉で考えを変える。

『こちらには都市幹部が付いているんだぞ!!!今すぐ戦闘を止めなければお前は終わりだ!!!』

その言葉を聞きライトは攻撃の手を止め、立ち止まる。

そしてカズマからさらに情報を引き出そうと会話を続けた。

「都市幹部が支援してる?バカも休み休み言いなよ」

ライトが動きと攻撃が止まった為、隠れていた襲撃者達がジワジワと距離を縮めてくる。その様子をライトは感知しながらカズマを煽り、さらに情報を聞きだそうとした。

『バカなものか!!都市幹部の7割がお前たちの駆除に賛成した!!何をやったのか知らんが今すぐに降伏しろ!そうすれば命だけは助かる様嘆願書を出してやってもいい!』

「へ~、その人たちの名前は?」

『そこまで教えてやる義理は無い!だが俺達の装備も弾薬も彼らの協力があって準備されたものだ!お前の仲間を確保しているのも彼らの紹介で集められた者たちだ!』

「シドさんを攫った奴等って何者?傭兵か何か?」

『そこまでは聞いていない。だが、かなり腕が立つ連中だと聞いている』

「そうか・・・・可哀そうに、お悔やみ申し上げます」

『・・・・気でも触れたか?』

「情報ありがとう。もういいよ」

ライトは通信を切り、射程に入っていた襲撃者全員に攻撃を再開する。

今の通信の間、射程に入った人数は13人。

後は離れた場所に3人居るらしい、おそらくそこにカズマはいるのだろう。会話の間、ライトは13人を狙える様にシールドを配置、後は引き金を引くだけで彼らを打ち取ることが出来る状態を作り上げていた。

動く相手には難しくても、自分も止まって、相手もユックリ動いている程度なら4人以上を狙うこと等、今のライトなら造作もない。

両手のハンター5から大量の弾丸を発射し、13人それぞれに向けて弾丸を運んでいく。ライトの誘導にしたがって飛翔した弾丸は正確にターゲットに命中し、その命を粉みじんに粉砕した。

ライトの視界に表示されている生体反応が次々と消滅していく。


数秒後、ライトの周囲に存在したマークは全て消え失せ、あとはカズマ達であろうマークのみとなる。



カズマ視点


『情報ありがとう。もういいよ』

「おい待て!!まだ話は終わってない!!!!」

「・・・通信が切れたわ・・・・再接続も拒まれてる」

「クソ!!!」

カズマ達は少し離れた場所にあるビルの屋上に陣取り、部隊にライトの位置情報を送る役目を担っていた。

通信妨害装置を使い、シドやライトが援軍を要請できない様にしていた。特定の信号以外を妨害し自分達だけ通信が出来る環境を作り、2人を確実に仕留める様指示を受けていた。

「おいカズマ、アイツ一体何者だ?ギルドの攻撃隊が手も足も出なかったぞ?」

仲間の言葉にカズマは歯を食いしばりギリギリと鳴らす。

「俺達とんでもない相手を襲撃してるんじゃないのか?ギルマスは仲間の弔いだとか言ってたけど、明らかにスラムのゴロツキが相手とは思えねーぞ」

「・・・・・・スラムのゴミなのは変わりない・・・」

「バカ言ってんなよ!!スラムの相互組織程度なら十分に殲滅できる程の戦力があったはずだ!!最大規模の組織でもある程度は戦るくらいのな!!!だが結果を見ろよ!攻撃に加わった70人のほとんどがやられてるだろうが!!」

「そうよ、本来なら第一攻撃隊がやられた時に撤退するべきだったのに・・・・」

「防壁内で銃撃戦を起こしたんだ。それにたった2人のワーカー崩れに負けたとなれば、もうブルーキャッスルはギルドとして終わりだ。引く訳には行かない」

「もう負けてるだろ!!!それに相手の戦力はワーカー崩れじゃねーよ!都市職員は運で成り上がっただけの奴等だって言ってたけどそうは思えねー!お前なにか知ってて隠してるんじゃないだろうな!!!」

「・・・・・・・・・」

カズマはライトと会話する事によって、少しでもライトの集中を削ろうとしたのだ。しかし、ライトは会話を行いながらも凄まじい勢いで味方のメンバーを撃破していった。

たまらずに都市幹部の情報を出してしまったが、それで漸くライトも諦めたかと思われたが、どうも様子がおかしい。

都市幹部から狙われていると知っても諦めている感じが一切なかった。

「今から俺達だけでも撤退して「ダメだ!!」」

仲間の言葉遮り、カズマは大声で喚く。

「ここで引いても終わりだ!!!何が何でもアイツはここで殺す!!!」

「どうやって?!もう20人も残ってないんだぞ!!!現実的に不可能なんだよ!!!」

「そんな弱腰でどう「ねえ!!!!」」

シーカーとして索敵と仲間のフォローをしていた少女が声を上げる。

「仲間が皆いなくなってる!!!!」

「は?」「なに?!」

「アイツ等・・・・逃げたのか・・・・」

「違う!!生体反応が消えてる!!全滅したの!!!!」

バカな・・・とカズマは呆然とした。ライトと通信が切れてからまだそれほど時間は立っていない。それなのに、これほどの短時間で全滅するなど考えられなかった。

「!!!・・・・あいつこっちに向かって来てる!!凄い速さよ!!!」

彼女がそういうと、もう一人のメンバーは屋上の出入り口目掛けて駆けだした。

「俺は逃げる!!!」

「私も行く!!!」

「あ、待て!!!」

もう一人の背を追いかけ、シーカー少女も扉に向かって駆け出し、カズマは二人を止めようと手を伸ばす。

しかし、カズマの制止を無視し、彼らはこの屋上から退避しようと扉に手を伸ばした。


すると、後方から飛んできた弾丸が扉に向かって伸ばしていた手を吹き飛ばし、扉に衝突。壁と扉を歪ませてしまう。

目の前の仲間の手が撃ち抜かれた事に驚いた少女は硬直し立ち止まるが、彼女の左足にも銃弾がめり込み千切れ飛んでいった。


「ウガアアアアアアアアアア!!!」「アアアアアアアァァァァァァァァァ!!!」

支給された防護服など、何の意味もなさず体の一部を削り取られ、その激痛に二人はのたうち回った。


カズマは弾丸が飛んできた方向をゆっくり振り向くと、両手のハンター5と宙に浮かぶKARASAWA A60をこちらに向けたライトが空中に立っていた。


うーん、主人公のシドよりライトの方がカッコいい気がしてきました。

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― 新着の感想 ―
さいこー!!! 対ヒトでしかも対組織でしかも容赦なく殺めてくの、本当に面白い。これ期待してました! この作品本当好きです! 読みたかった好きがいっぱい詰まってる! もうここでしか摂取できてない好きが…
ゴンダバヤシに素早く連絡取ってBCの討伐依頼を出してもらわないとBCの拠点を襲撃するのは不味そうな気もするが、シドの装備は拠点の中。ゴンダバヤシ案件にちょっかいかけてくるってことはキクチも女上司も襲撃…
キクチの胃が爆発する案件発生ですね 前に攻撃されない限りは敵対行動するなと言ってましたが相手がフルスロットルできたので意味ない助言でしたねぇ・・・
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