40_煩わしいものほど捨てにくい
第40話です。
今回はビョルン視点の、バトル回でございます。
皆様のおかげで40話まで続けることができました。読んでくださる方々、評価や温かいお言葉をかけてくださる方々、本当にありがとうございます。引き続き2人の旅を見守っていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
「……クソ!」
取りこぼした小さな掌。絶対に離してはならなかったのに、取りこぼしてしまった。
彼女が飲み込まれた湖の水面には、巨大なナマズが咆哮を上げて蓄電している。あれを放たれてしまえば、まず水の中にいる生物は助からないだろう。
「同族の魔女、ルナを頼む」
「えぇっ!?ちょっと、どこに行くの!?」
「問題の根本解決だ」
まずはあの雷撃を食い止めなければならない。雷撃の為に口元の触手から大気中の魔力を吸収していると見える。
「『風よ、切り裂け』」
風の剣を作り出して、二本の長い触手を切り落とす。痛みからか巨大ナマズは更にけたたましく吠えて地面を揺らす。
「……?」
身体の芯から、熱の塊のようなエネルギーが湧き上がってくるのを感じた。それは、数時間前にルナが作ってくれた携帯食の、素朴な米とソルトフィッシュの力だと判断する。
『こうした方が美味しいし、効率的でしょう?』
ルナが笑いながら差し出したそれは、冷えていたはずなのに何故か暖かく感じた。
普段、乾燥した携帯食で満足していた。にも関わらずあの「米の塊」は、生きるための根源的なエネルギーを与えてくれたのだ。
「……煩わしい」
あぁ、そうだ。煩わしい。誰かとの繋がりなんて、仲間なんて、煩わしいだけだ。ましてあの女はビジネスパートナー、互いの利益で外部から強制的に結ばれただけの関係だ。
なにを戸惑う、なぜ心を乱される。
仲間としての情など、もう二度と抱え込まないと誓ったものが、少しずつ蓄積されていることを感じていた。
苛立ちはコントロールを鈍らせる。今はただ目的達成のために最前の方法を取るべきだ。
「あいつ、雷がダメなら地面を割るつもりよ!」
「させるか」
シンシアの叫びを聞いて、次の手に移行する。
究極の風と土の融合魔法を生成するために、すべての魔力をかき集めた。
「『風よ、土よ、我が声に応えん』」
指先一本一本の魔力に神経を集中させ、空気中の魔力を編んで風を呼び起こす。そしてその風で地面の岩を持ち上げ、それらを一つ一つ丁寧に制御して、頭上に巨大な竜巻を作り上げた。
「エルフのお兄さん、お姉さんは助けたよ!」
「よくやった」
召喚士が呼び出した水の巨人が、湖の中からルナを掬いあげていた。彼女の召喚術は相当のものだ。ルナを任せても問題はあるまい。
「全員、距離を取れ!」
叫ぶと同時に右手を空に突き上げた。全身から膨大な魔力が噴き出し、竜巻の威力が増す。渦の間から稲妻が光、バチバチと摩擦で大きな音を立てる。
「己以上の電撃を浴びても、まだ息をしていられるか?」
モンスターごときが人語を解せるわけがない。だが、独り言でも言っていなければ、膨大な魔力放出で意識が飛びそうだった。
魔力に伴い体力が激しく削られていくのを感じる。これは、風魔法と土魔法を、エルフ族の膨大な魔力とささやかな体力を代償に強引に融合させる古代の秘術だった。
これを使うのは、何年ぶりか。
『お前の魔法はすごいな』
そう言ったのは、いったい誰だったか。
思い出す必要もない、些末な記憶の断片だ。今はただ、この場を乗り切ることだけに集中しろ。
「『爆ぜろ』」
魔法で作り出した竜巻は、湖全体を縦に断ち切るようにキングナマズの頭上を貫いた。まるで彗星が落ちたかのような激しい光が周囲を包む。竜巻が通過した場所の湖水は、熱と圧力で一瞬にして蒸発し、巨大な白煙が最下層を覆い尽くした。
ドッシャァァン!!
強大な風圧と雷撃を同時に受けたキングナマズは、その巨体を内側から弾けるように破壊され、そのまま湖底に沈黙した。動かなくなった獲物を目の前に、動けるものはその場には誰もいなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回も引き続きよろしくお願いいたします
画面下より☆の評価、感想、レビュー、リアクションなど、ポチっとお気軽にいただけると嬉しいです!いつもしてくださる方、本当にありがとうございます。励みになります。
※次回更新は2月8日18時です




