38_ラスボスがいないダンジョンなんて、ダンジョンじゃない
第38話です。
今回から更新頻度を1日2回、12時と18時に変更いたします。変更に伴い、1話のボリュームを軽くしたのでお手隙の際に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
最下層に踏み入れると、水の流れが太くなり川のようになっていた。そしてその水辺には変わらずシグナル・ホタルたちが静かに明滅を繰り返していた。しかし大きな洞窟の天井は所々隙間が空いており、そこから傾き始めた陽の光がカーテンのように差し込んでいる。
「ここがダンジョンの最下層ですか。なんだか、そんな風には見えませんね」
「このダンジョンは冒険者よりも俺達のように錬金術師や商人が多く出入りする。それほど豊かな生態系があるということだ」
「なるほど」
明るい陽の光に照らされた洞窟には青緑色のコケが生えていて、露が光に反射してキラキラと光る。水の中には先程よりも大きな魚たちが生き生きと泳いでいた。
「着いたぞ。ここがダンジョンの最果て、『水鏡の湖』だ」
湖のほとりに一歩踏み出した瞬間、シグナル・ホタルたちが、まるで警報のように一斉に、そしてけたたましく赤く点滅する。それは即ち、危険を知らせているということだ。
「みてください、ホタルたちが…!」
「下がれ。来るぞ」
ビョルンは水面の一点を見つめる。
「えっ、来るってなにが?」
一瞬の沈黙。直後、静寂を打ち破る地鳴りのような轟音が水底から響き渡った。
ザパーーッッ!
湖とは思えない、津波のような高い波が、冷たい水しぶきを上げながら天井の岩を突き破る勢いで襲いかかってくる。
「な、なんじゃありゃーっっ!!」
波が引いた後、そこに鎮座していたのは、巨大な影。その姿は、水面を濁った黄色と黒のまだら模様で覆い、重々しく、二対の長く太いひげを垂らしていた。
「奴がこのダンジョンのヌシか」
「ぬ、ヌシって、なんでそんなのがいるんですか!?」
何を言っているんだ、という顔でビョルンさんは私を見下ろす。
「ここはダンジョンだぞ。最奥には必ず、希少な素材や宝を護るボスモンスターがいるに決まっているだろう」
「聞いてませんよ、その話!そういうのは、事前に言ってください!」
慌てて『鑑定グラス』でヌシを覗く。ホタルの赤い点滅光が、ヌシの分厚い皮膚に反射していた。
『オミナス・ナマズ D級モンスター』
特徴: 分厚い皮膚に覆われ、並大抵の攻撃は通じない。長い髭から電撃を放ち、獲物を麻痺させてから捕食する。その電撃は岩をも砕く。
「ビョルンさん、あのヌシは電撃を使うそうです!地面が濡れているからまずいです、感電しちゃいますよ!」
「騒ぐな」
ビョルンさんは即座に風の斬撃を放つ。鋭利な風の刃がナマズの胴体を走るが、分厚い皮が邪魔をして、大きな音を立てただけでダメージは全く入っていない。ナマズはビョルンさんの攻撃を無視し、口元を青白い光で満たしていく。放電のためのパワーを蓄積しているのは、RPG脳でなくてもすぐに理解できた。
まずい、まずいまずい!このままじゃ『水鏡の結晶』を探すどころか、黒焦げにされてしまう!
「二人とも、伏せて!」
誰かが叫ぶと同時に、ヌシは周囲に電撃を撒き散らしながら咆哮をあげた。
ズガーンッ!
雷鳴が轟き、青白い稲妻が周囲の岩盤に直撃する。凄まじい衝撃波と焦げ付く臭いが部屋中に広がり、地面が大きく揺れた。しかし私やビョルンさんには一切ダメージがない。
「な、なに!?」
私は反射的に顔を上げた。
「この間ぶりねぇ、ルナちゃん」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回も引き続きよろしくお願いいたします
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※次回更新は2月6日18時です




