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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

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「冒険の書九十二:Fクラスの洗礼」

 さて、入学初日だ。

 勇者学院は八歳から十七歳までの子どもで構成されるが、目指すものがものだけに純粋に実力主義なシステムで、年齢ごとではなく実力ごとにクラス分けされている。

 下はFクラス、上はAクラス。

 極端な話、実力さえあれば八歳児のAクラス生徒などもあり得るというわけだ。

 

 んで、ワシらは一番下のFクラスへと配属された。

 なるべく上の子どもらと学んだほうが収穫はあるだろうし、個人的にはAクラスのほうが良かったのだが、それはさすがに贅沢か。

 なにせ入学したてで、満足に実力を示す暇もなかったしな。


 それに正直、Fクラスの方が都合がいい理由もある。

 それは――


「おいおいおいおい! てめえらが特例で入学したっていうズルっ子どもか!」


 ワシ・ルルカ・チェルチの三人がFクラスの扉を開けた瞬間、ズカズカと歩み寄ってくる奴がいた。

 オレンジ色の髪の毛を逆立てた小僧だ。 

 年の頃なら十歳ぐらいか、いかにも負けん気の強そうな、いい面構つらがまえをしている。


「ズル? ワシらが?」


 驚くワシに、小僧はガンガン突っかかってくる。


「そうだよ! てめえらだ!」


 小僧はワシらを順番に指差していく。


「顔だけはいいエルフのチビガキのてめえと!」


 まずはワシ。


「ギザ歯がちょっと怖いチビガキのてめえと!」


 次にチェルチ。


「いかにもトロそうなオバサンのてめえだ!」


「お、おおおオバサンはさすがにひどくないかなあ~!?」


 さすがに初めて言われたのだろう罵倒の言葉に、ルルカは「がぁぁぁん!」とばかりに頭を抱えてショックを受けている。


「トロいのは間違いないけど、わたしまだ十四歳だよ!? たしかにキミから見れば年上だと思うけど、普通はおねーさんていうところじゃ……っ」


 小僧はしかし、ルルカの必死の反論をすべて無視。

 ワシらに対して文句を重ねてきた。


「言っとくがなあ~! ここにいる俺たちはみんな辛い試験を突破して入学したんだ! それをてめえらみたいな金持ちのガキどもが、なんの苦労もなく入学して来やがって!」


「ああ~……なるほどな」


 ワシらの入学が決まったのは一昨日。

 制服などの準備が整ったのは昨日だ。

 試験も面接もなく、本気で苦労のくの字も存在しなかった。

 それを快く思わない者がいるのは、当然といえば当然か。


「言い訳したって無駄だからな! みんな知ってんだから! おまえらがどこぞの金持ちのガキどもで、金の力で裏口入学したんだって!」


 本当はリゼリーナの権力なのだが……まあ似たようなものではあるか。


 教室を見渡すと、皆も小僧同様の鋭い視線を向けてくる。

 ワシらのことが気に食わないのだろう、うんうんと小僧の言葉にうなずく者もいる。


「わかった、それで? ワシらはどうしたらいい?」


「え? どうしたらってそりゃ……」


「おまえらはワシらの入学が気に食わない。だがワシらにも、退けと言われても退けぬ事情がある。だからこう聞いておるのだ。『どうすればおまえたちは満足いくのだ?』と」


「や、その、どうすればってか……」


 勢いだけはいいが、具体的な案は何も考えていなかったのだろう、小僧は途端にしどろもどろになる。

 

「どうすればいい? さあ、言うがいい」


 グイとワシが顔を近づけると。


「ば……近っ、近いっておまえ……っ!」


 どうしたのだろう、小僧は動揺すると、顔を真っ赤にして後ろへ下がった。


「ちょっと、ジーン! そんな女にデレデレしてんじゃないの!」


 小僧――ジーンに対して呼びかけたのは、オレンジ色の髪を頭の脇でふたつの団子にした小娘だ。

 歳はジーンと同じくらいか。顔立ちもよく似ていて、負けん気の強そうなところもそっくり。

 ひょっとすると双子なのだろうか。


「ば……おまえ、誰がデレデレなんてしてるかよっ! ちょっと距離が近かったからびっくりしただけだよっ!」


「ああもうホントにバカ! これだから男は! ちょーっと可愛い女の子に言い寄られるとすーぐこれなんだから!」 


 別に言い寄ったつもりはないが。


「聞きなさい! あたしはソーニャ! ジーンとは残念だけど双子の関係よ!」


「残念……」


 地味にダメージを受けているジーンはともかく、ソーニャはワシをにらみつけてきた。


「そんでもって、このFクラスのリーダーよ! だからこれは、クラスの総意と考えて! あんたたちはねえ、自分たちの実力を証明する必要があるの! 具体的には、次の時間の『模擬戦闘訓練』であたしたちと勝負しなさい!」


 ソーニャは一方的にまくし立てると、「ふん!」と鼻息荒く腕組みした。

 

「なんとまあ好戦的な小娘よ。だがまあ……」


 ワシはニヤリと笑った。


「そうゆー奴は、嫌いじゃないぞ」


 子どもがジャレついてくる微笑ましさを存分に味わいながら、ワシはチラりと教室の後方に目をやった。


 そこにひとりの娘がいた。

 年の頃なら十一か二か。

 淡い緑色の髪が窓から吹き込む風にたなびき、陽光を浴びるたびに透き通るような輝きを放っている。

 短く刈り揃えられた髪型は、白く華奢な体つきと共にどこか少年のような印象を与える。 

 瞳は淡い翡翠のように美しいが、ここではないどこかを見ているようで、ぼうーっとしてつかみどころがない。


「ほう、これだけの騒ぎが起きていても微動だにせんか。なかなかの大物と見える」


 ウルガに聞いた人相の通りなら、あれが例の『娘』のはずだ。

 人魔決戦の功労者にして、おそらくは王国随一の錬金術師マギステル・ウルガ・ネレヴァス・カルドリス。

 その娘の名は――コーラス。

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