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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

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「冒険の書九十:マギステル・ウルガ」

人を造るのは(ホミネム・クレアーレ)神の御業である・オプス・デイ・エスト人は人を造って(ホモ・ホミネム・クレ)はならない(アーレ・ノン・デベト)


 人工生命を創造し生命の本質に迫ることを究極目標とする『錬金術師アルケミスト』は、多くの宗教にとって禁忌の存在とされており、時に住む国すら制限される。

 そういったものに比較的寛容な『豊穣と慈愛の女神セレアスティール』を国教とするハイドラ王国は、錬金術師が住むことのできる数少ない国のひとつだ。


 そのためだろう、人魔決戦のおり、ウルガはハイドラ王国のために命懸けで戦った。

 多くの『ゴーレム』を率いて自ら前線に立つ他、錬金術によって生み出したアイテムを兵士に配布して戦況を有利に進めた、人魔決戦の勝利の立役者のひとりだ。


 もちろん愛国心なんかのためではない。

 あいつにとって『安心できる研究環境の確保』が、命を懸けるに足るものだったというだけだ。

 

 本来の奴は、倫理観にいちじるしく欠けた男だった。

 敵・味方問わず死体を回収し、解剖し、自らの研究に役立てていた。

 そのため、『マギステル・ウルガの作ったアイテムには死者の体の一部が使われている』などという噂が流れ、絶対に手につけようとしない者もいた。


 噂が真実だったかどうかはわからない。 

 だがたしかに優秀で、同時に――危険な男でもあったのだ。


「……ウルガが生きているだと? 当時で三十を超えたぐらいだったはずだから……今は八十歳半ば? 人族だから死にかけのジジイのはずだが、そいつがまだ現役で研究を続けていると?」 


 半信半疑で乗り込んだ、勇者学院の研究棟の地下。

 暗く冷たい工房に、そいつはいた。


 背の高い男だ。

 年齢相応に肉づきは悪いが、骨格がガッシリしているのでひ弱な印象はない。

 着衣は何十年着ているのかもわからないボロボロの白衣で、素足にサンダル。

 頭頂部が薄い白髪頭には、頭に巻くタイプの拡大鏡を装着している。


 ワシが工房に足を踏み入れた瞬間、ウルガはギョロ目をこちらに振り向けた。

 

「なんだあ~? 小娘、俺の工房になんの用だあ~?」


「げえっ!? ウルガっ!?」


 ワシは思わず後ずさった。

 あのウルガが本当に生きていて、しかも当時の印象そのままにジジイになっていたのが衝撃的すぎて、驚きの声まで上げてしまった。


「なんだあ? てめえ……いきなり人を呼び捨てにしやがって無礼な奴だな」


 いきなり呼び捨てにされたことに腹を立てているのだろう、ウルガは威圧するようにワシをにらみつけてきた。


「あんまり生意気なこと言ってっと、錬金術の材料にしちまうぞ~……っと、なんだてめえ、エルフか? しかも女のガキ?」

 

 ワシがエルフの、しかも小娘だと気づいたウルガはニヤリ不気味な笑みを浮かべた。


「いいなあいいなあ、こいつは極上だ。髪、目、皮膚に爪に骨に内臓、血の一滴にいたるまで捨てる所のない最高の素材が自ら転がり込んできやがるとは、ツイてるぜえ~」


「触るな触るな」


 驚きから立ち直ったワシは、伸びてきたウルガの手をパシリと叩いた。


「痛っ……? てめえエルフのくせになんちゅう力してんだ……?」


「うるさいわ、セリフだけで牢にぶち込まれそうな発言をしおって」


 よほど痛かったのだろう、ウルガはワシの平手打ちを警戒し、距離をとっている。

 

「改めて名乗らせてもらおう。ワシの名はディアナ・ステラ。今日はおまえに依頼にきたのだ」


「はあ~? 依頼だあぁ~?」


「ワシは現在、『精髄』が焼き切れ魔力を感知できないようになっている。ウルガよ、おまえにはそいつを治療してもらいたいのだ」


「『精髄』が焼き切れただと? いったいどんな使い方をしたらそうなるんだよ……」


 驚きと呆れの入り混じったような表情を浮かべるウルガだが、『ワシが依頼者で、自分のほうが有利な立場にある』ことに気づくと、コロリと態度を変えた。


「ま、治せねえとは言わねえよ」


 余裕たっぷりの表情でワシを見下ろすと、親指と人差し指で輪っかを作った。


「だが、治療にはそれなりの金がかかる」


「金か……いくら出せばいい?」


「ん~……そうだなあ~。金貨にして千か二千か……いや、そうじゃねえな。金じゃあねえ」


 ウルガはワシの脇腹にペタペタと触れると……。


体で払って(・ ・ ・ ・ ・)もらう( ・ ・ ・)ほうが面白そうだ」


「だ、だだダメだよそんなの!」


 この言葉にキレたのがルルカだ。

 戦杖メイスを上段に振りかぶると、いきなり『聖なる一撃(ホーリー・スマッシュ)』で強化を始めた。


「ディアナちゃんの貞操を狙うなんて恐ろしいことを! それこそ神をも恐れぬ行為だよ! セレアスティールさまも激オコだよ!」


「待て待てディアナ、たぶんこいつの言ってるのはそっち(・ ・ ・)じゃない。あとベルトラも、アンデッドを召喚しようとするのやめろ。こいつは素材(・ ・)としてのワシの体に興味があるのだろう」


「ま、そういうこった。さあ~、どうするお嬢ちゃん? てめえの体、どこまで(・ ・ ・ ・)くれる?」


「ん~……どこまでと言ってもなあ~……。髪や爪、皮膚や肉や血液ぐらいならいいが、骨や内臓となるとさすがに厳しいしな……」


「そ、それだったらわたしは髪の毛が欲しいかも?」


「うん、おまえは黙ってろルルカ」


「わたしは血液を! 血液をぜひ飲ませていただいて……って痛いっ!?」


「……ベルトラ、殴るぞ?」


「ああっ、殴ってから言うバイオレンスさも最高っ!」


 例によって例のごとくわけのわからないことを言い出したルルカとベルトラにツッコんでいると……。


「ま、マギステル・ウルガ。ディアナは、姫様の、大切な、友人。雑な、扱い、許されない」


「てことなのにゃ。『体の一部を要求』するのはやめてほしいにゃ」


 ララナとニャーナのふたりが『リゼリーナの近衛』という自らの身分を明かし、助け舟を出してくれた。

 

「第三王女殿下のご友人ねえ……ちっ、そう言われちゃしょうがねえか」


 ハイドラ王国に多大な恩のあるウルガとしては、王女殿下の友人に無茶は言えないというところなのだろう。ウルガは舌打ちしつつもワシの体の一部を要求するのを諦めてくれた。


「わかったよ。だが、きっちり依頼料はいただくからな。大マケにマケて金貨五十枚と……そうだ、ついでに」


 ワシ・ルルカ・チェルチの顔を等分に見渡すと、ウルガは言った。


「てめえら、俺の娘の友だちになってくれや」


 その外見からはあまりにも意外な、ひと言を。

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