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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第六章:『勇者』と『王女』」

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「冒険の書八十三:補給基地」

 安全と思われていた道中だが、時おり『闇の軍団(ダーク・レギオン)』の気配を感じることがあった。

 といって、ワシらが見張られているとか襲撃されるとか、そういう話ではない。

 奴らの名残なごりりや痕跡を発見したとか、そういう段階の話だ。


 情報源は、途中で立ち寄った村や街の住民たちだ。

 スリや強盗をらしめたワシらが腕利きの冒険者であると知ると、進んで魔族についての情報を教えてくれるようになったのだ。

 教えられた場所を探してみた結果見つかったのが、『闇の軍団(ダーク・レギオン)』の補給基地だ。


 基地そのものの大きさはさほどでもない。

 駐留兵もいないし、壁や堀のたぐいもない。

 せいぜい水や食料を溜め込むためのツボがあったり、地下に食料庫があったり、雨風をしのげる屋根がある程度。

 ひとつの基地で養える魔族の数も、せいぜい数十匹程度。


 だが、基地の数がそこそこあるとなると、話は変わってくる。

 ワシらが発見しただけでも十個。

 ワシらの目の届かないところまで考えると、百個ぐらいはあるのではないか。

 

「『闇の軍団』め、どうやら本気の侵攻計画を立てていたようだな」


 十個目の補給基地を潰しながら、ワシはつぶやいた。


「パラサーティアを陥落させたら、一気に王都まで殴り込むつもりだったのだ。道中で補給基地に立ち寄り補給しながら一気に、というわけだ」


「道中の村や街で略奪する気はなかったということですか?」


それも含め(・ ・ ・ ・ ・)ということだ」


 首を傾げるリリーナに、ワシは答えた。


「たしかに戦時の補給は『現地での略奪や徴収』が基本だ。それが魔族なら、選択肢は『略奪』しかないと言っていいだろう。だがリリーナよ、パラサーティアで見ただろう? それらは決して、五万を超える大軍団を養えるほどのものではないはずだ」


「補助的な補給基地を作っておく必要があったというわけですか。なるほど、魔族にもなかなかの知恵者がいるようですわね」


 敵の腕前を認めたくは無いですが……と、忌々し気にリリーナ。 


「ワシらはまだまだ、『闇の軍団』について知らんことが多すぎるようだな」


「ええ、まったくですわね」


「でもさでもさっ、聞いてふたりともっ」


 重い表情で視線を交わすワシらに気を使ってだろう、ルルカが話しかけてきた。

 手をパタパタさせて、努めて明るい口調で。


「そのたくらみに気づけたのは偉くないかな? 補給基地だって潰しておけば使えないしさ、次があったとしても事前に気づきやすくなるしさ。なんやかや、けっこう前向きな話だったりしない? このことを王様に報告したら、きっとすんごい褒めてもらえるよ? また勲章とか貰えちゃったりして? とかいって、別にわたしはそうゆーのが欲しいわけじゃないんだけどさ。きっとまた、心臓が口から飛び出ちゃいそうなほど緊張して……冷や汗が止まらなくなって……ううっ?」


 その時のことを想像してだろう、ルルカは勝手に沈み、青い顔で胸を押さえた。

 

「うううぅ……っ。ディアナちゃん、手を握ってくれる? わたし、今から怖くなってきた……っ」


「さすがに気が早すぎるだろ。なんとかの皮算用かわざんようがどうとかいうレベルじゃないぞ」


 ワシがツッコむと、皆が一斉に笑い声を上げた。

 実にルルカらしい気遣いと、実にルルカらしいオチで、リリーナの顔にも笑みが戻った。

 

「わかったわかった。ほら、これでいいだろ?」


「わあ、ディアナちゃんの小さなお手々、助かるうぅぅ~。寿命が千年のびるうぅぅ~」


 涙を流してありがたがるルルカと、やれやれとため息をつくワシ。


「さて皆さん、聞いていただけますか?」


 パンと手を叩くと、リリーナは言った。


「パラサーティアから始まった旅も、もうすぐ一か月。次のリメイユが、王都ハイドリアとの間にある最後の宿場町です」


 振り返ってみれば、練習と『闇の軍団』の補給基地潰しばかりの旅だったが……そうか、もうちょっとで終わりなのか。

 リリーナや、ララナ・ニャーナたちとの旅も……ん?


「なんだ……これは?」


 胸にズキリと痛みが走ったが、その理由がわからない。

 体の不調のサイン……というわけでもなさそうだし、ううむ……。


 悩むワシはさて置き、リリーナは続けた。


「そこでです。これまでの旅の慰労会いろうかいも兼ねて、ちょっとお高めの宿に泊まりませんか? リメイユは王国でも有数の観光地ですし。温泉もあり、食事も美味しいことで有名ですし」


「賛成! 賛成!」


 リリーナの提案に真っ先に賛成したのは、当然ながらチェルチだ。


「美味い飯食って温泉入って寝て、美味い飯食って温泉入って寝て、そんなの最っっっ高じゃないか! やったあぁ~っ!」


 ひたすら欲望を叫ぶチェルチを見て、皆が笑う。

 一方ルルカは……。


「う、う~ん。いいとは思うけどでも、お高い宿かああ~……。パラサーティアで貰った報奨金があるから払えなくはないんだけど、持病の貧乏性が……あ痛たたたた……っ?」


 これまでさんざん苦労してきたルルカらしく、胃の辺りを押さえて苦しんでいる。


「あら、大丈夫ですよルルカさん。皆さんをねぎらうのですから、当然お代はこちら持ちですわ」


「わあ、ホント? リリーナさんしゅごいぃ……さすがは王女さまあぁ……」


 感動のあまり半泣きになった貧乏性ルルカは、リリーナに手を合わせ、拝むようにしている。

 

「なるほどなあ、お高い宿かあ……」

 

 ふたりも喜んでいるし、ワシだって粗末な宿よりはお高い宿の方がいい。

 しかしなあ……さすがにそこまでしてもらうのは……。


「リリーナ、本当に大丈夫か? ここまでだってさんざん出してもらったのに……」


「大丈夫か? じゃありません。わたくしが出したいんですよ。だからここは、出させてください。ディアナさんたちとの最後の(・ ・ ・)思い出( ・ ・ ・)を作りたいんです」


 そう言うと、リリーナは目を細めた。

 口元を緩め、無理やり笑みを形作った。


 どこかはかなげでどこか寂しげなそれは、最近リリーナが浮かべるようになった表情で――そしてなぜだろう、ワシはまたズキリと胸を痛めた。

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