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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第四章:新たな災難」

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「冒険の書四十九:チェルチ、奇襲に成功せり?②」

 ~~~チェルチ視点~~~




 これはさすがに死んだ。

 と思ったあたいだけど、同時にここで諦めるわけにはいかないな、とも思ってた。


 だって、こいつらって馬車隊の人たちを狙ってるわけだし。

 今はあたいに狙いが向いてるけど、それが終わったらたぶんまた馬車隊の人らが狙われる番だし。


「せっかく助けにきたのに、ここで犬死いぬじにしてたまるか。コボルドだけに……って、上手いこと言ってる場合じゃないなっ」


 あたいは歯を食い縛ると、生き残る方法を探した。


 大鎌を出して戦うか?

 いや、この人数相手に肉弾戦じゃ勝ち目がない。


 空中から魔弾マジック・ミサイルをぶっぱなす?

 いや、連中には弓使いや魔術師もいる。

 結局数の暴力で撃ち落とされる。

 

 もっと他の、誰も思いつかないようなすんごい奇策が必要だ。


「何かないか何かないか…………あ」


 キョロキョロしてるうちに、足に例の赤いコボルドがぶつかった。

 コボルドたちの君主……つまり一番偉い犬か……ん?


「これだあぁぁぁぁあー!」


 あたいは快哉かいさいを叫ぶと、すぐに芝居(・ ・)に移った。


「うっ、急に目まいが……? さっき頭を打ったダメージが遅れてきたのか……?」


 ふらふらあ~……と揺れてから、パタリとその場に崩れ落ちた。

 

「……なんだこいつ、死んだフリかワン?」


「そんなことしても無駄だワン。我らコボルド族は執念深いことで有名だワン」


「どこへ逃げようとも、この鼻で見つけ出してやるワン」


 口々に恐ろしいことを言ってくるコボルドたちはともかくとして、あたいは『魂魄支配(ソウル・ドミネイト)』を使った。

 相手の心と体を支配するとっておきの技で体を霊子アストラル・ボディに変換、コボルド君主の中にするりと入り込んだ。


「ぬお、急にメスが消えたワン?」


「ど、どこへ隠れたんだワン?」


「バカな……匂いまで消えたワン?」


 コボルドたちはキョロキョロ辺りを見渡したけど、君主の中にいるあたいには気づかない。

 霊子になった以上、匂いだってしなくて当然。


「ふうう~、ひどい目に遭ったぜ」


 そんな中であたいは――君主になったあたいはむくりと立ち上がった。


「「「なっ……!?」」」


 君主が突然立ち上がったことで、コボルドたちはさらに混乱した。


「君主、生きてたのかワン?」


「反応ないし、てっきり死んだものかと……ワン」


「はっはっは、ひどいな。人を勝手に殺すなよ」


「むむむ……君主、なんだか様子がおかしいワン?」


「そういえば、喋り方が変だワン?」


 ありゃ?

 コボルドたちが不審そうな目を向けてくる。


「……あ、そっか。そうだった」


 こいつらには独特のなまりがあるんだった。

 語尾にワンをつけない奴は同族認定されないんだった。


「ワン、ワン……と、こんな感じかな。えっと、強烈な頭突きをかまされたせいで調子が悪いんだワン」


「おお、元に戻ったワン」


「君主、本当によかったんだワン」


 素直なコボルドたちはあたいの嘘にあっさり騙され、大歓声。

 尻尾をぶんぶん振って喜びを示してる。


 ふっふっふ……チョロいチョロい。

 しょせんはワンコロだな。


「しかし、さっきのメスはどこに行ったんだワン?」


「君主の恨み、草の根分けても探し出すワン」


「まあまあ、もういいだろうそれは……だワン」


 普通の魔族は『魂魄支配』なんて知らないはずだけど、これだけの数のコボルドがいるなら、中には偶然知ってる奴がいるかもしれない。

 面倒なことになる前にと、あたいはみんなの注意を他にらした。


「あたいが……俺さまが無事だったのだからそれでいいワン。今すべきはどうでもいい犯人探しなどではなく……」


「馬車の連中を襲うんだワンね?」


「さすがは君主、任務に忠実だワン」


「俺に『さま』をつけるの、カッコいいワン。ヒュウ~だワン」


 自分の呼び方が「俺」なのか「私」なので「」なのかさっぱりわからないので適当だったけど、いい風に勘違いしてくれて助かった。


「その任務に関してだが、大事なことを忘れていたワン」


「大事なこと……ワン?」


「そうだ、ラーズさまはこう言っていたのだワン」


 君主の記憶によると、直属の上司である『魔戦将軍ラーズ』はパラサーティアへの補給路を断つように言っていたみたいだけど……。


「ある程度成果を出したら、戻るように言われてたのだワン」


「戻る? どこへだワン?」


「成果はあまり出てない気がするワンが……」


 盛んに首を傾げるコボルドたち。

 ま、たしかに。

 コボルドたちが初めて襲撃したのがこの馬車隊なので、実際成果は上がってないんだけどな。


「うるさいワン、戻ると言ったら戻るのだワン。俺さまたちの故郷の森に帰るのだワン」


「は、はいいいい! だワン!」


「君主さま怖いんだワーン!?」


 君主の命令は絶対! なコボルド族らしく、あたいの命令に逆らう者は誰もいなかった。

 命令は即座に群れ全体に広がり、コボルドたちは一斉に帰り支度を始めた。


 ちょうどそこへ――ディアナの奇襲が決まった。


「き、奇襲だワン!? ものすごい強いエルフのメスが突っ込んで来るんだワン!?」


「まったく止められないワン!? 君主さま、逃げるんだワーン!!」


 腕のひと振りで一匹を殴り殺し、足のひと振りで一匹を蹴り殺す。

 鬼神みたいな暴れぶりだ。


 ルルカやリリーナ、ゴランたちも頑張ってはいたが、ハッキリいって格が違う。


 帰り支度をしていたコボルドたちは一気にやる気を失って、戦線はあっさりと崩壊した。


「ふう……ここまできたら、あたいの仕事は終わりだな」


「あれ? 君主さま、どうして倒れてるんだワン?」


「みんな! 君主さまを運ぶんだワン!」


 あたいが抜けた(・ ・ ・)ことによって再び気絶状態になった君主の周りに、コボルドたちが慌てて集まって来る。

 空に飛んで逃げるあたいに注意を払う奴が何匹かいたけど、「あんなところにさっきのメス……って、それどころじゃないワン! 逃げるんだワーン!」という感じで、君主を護りつつみんなで逃げようという流れになったみたいだ。


「やれやれ、危なかったぜ」


 窮地きゅうちを切り抜けたあたいが、空をふよふよ浮いていると……。


「おう、よくやったなチェルチ」


 コボルドたちの返り血で真っ赤に染まったディアナが、いい笑顔を向けてきた。

 頬を染め、拳をぶんぶん振り回し、いかにも「戦闘楽しいのう♪ もっと派手に戦いたいのう♪」という感じ。

誘惑する悪魔(サキュバス)』であるあたいすら嫉妬するような、極上の笑顔を浮かべやがって……。


「こいつ……あたいがどんな目に遭ったかも知らず……っ」


 急にむかっ腹が立ったあたいは、ちょっと意地悪してやることにした。

 

「よくやったな、じゃないワン」


「なんだ、どうした急に。というか、語尾がおかしくないか?」


「ふうーんだ、自分の胸に聞いてみやがれだワン」


 べえーっと舌を出して、何が起こったのか説明しないで。

 聞かれるたびにそっぽを向く、子供みたいな意地悪を楽しんだ。


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