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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第八章:エルフヘイムへ!」

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「冒険の書百八十四:ヴァネッサは気づいた」

 ~~~ヴァネッサ視点~~~




 ハイドラ王都での作戦行動に失敗したヴァネッサは、命からがら王都を脱した。

 一か月をかけて『闇の軍団(ダーク・レギオン)』本部にたどり着き、事の子細を報告した直後――容赦なく降格、そして左遷された。


 作戦参謀から副作戦参謀へ。

 単独の業務ではなく、上役にじゅうしての業務へ。


 しかも、この上司がイヤ~な奴なのだ。

 ダークエルフ族の女で、名はカルラ。

 自らの美貌を武器にして男上司に取り入り出世してきたからだろう、実力でのし上がってきたヴァネッサを目の仇にしてくるのだ。

  

 やれ――

「ヴァネッサ、街でパンを買ってきなさい。苺ジャムのいっぱい乗った、甘~いやつよ。あ、お金はもちろんアンタ持ちでね」 


 やれ――

「ヴァネッサ、アタシの椅子が汚れてるじゃない。代わりにアンタが椅子になりなさい。あ、や〜めた。アンタみたいな不潔な種族の背になんか、間違えたって乗りたくないわ」


 やれ――

「ヴァネッサ、アンタの失敗をみんなの前で大声で説明なさい。は? 嫌がらせ? バカ言わないで。失敗をみんなで共有して、よりよい組織を目指すためよ」


 とにかく目を合わせるたびに嫌がらせをしてくる。


 これにヴァネッサはキレた。

 それはもうキレた。


 いっそ後ろから刺して殺してやろうか。

 どうせわたしのほうが強いのだし……などと思ったが、ギリギリのところで踏みとどまった。


 遵法精神、といったことではない。

 単純に、それでは釣り合わないと思ったのだ。


「ダメよ、ただ殺したのではつまらないわ。徐々に徐々に、真綿で首を絞めるようにして苦しめてやらないと……。そして、最後の瞬間の絶望の顔を肴に一杯やるの……キキ、キキキ……」


 あまりにイジメられすぎたせいで、ヴァネッサの復讐心は頂点に達しようとしていた。

 よりいい機会を探さないと、みんなの前で恥をかかせて絶望させてやらないと……などと考えているところに、突如としてそれ(・ ・)は訪れた。


「……見つけた」 


 突如として殺されまくる魔物たち――

 アンデッドにならないよう骨まで砕く念の入れよう――

 素手で暴れ回るエルフの小娘――

 

「そんなの……あいつ(・ ・ ・)以外にいないじゃない」


 ディアナがこちらに向かっていることに気がついたヴァネッサは、復讐の時が来たのだと心の底から喜んだ――が、表面上はそれとわからないように、カルラに話しかけた。


「しかしカルラ様。エルフヘイム攻略の作戦参謀様が、たかがエルフの小娘ひとりに手を焼いているなどと聞いたら、上層部はどう思うでしょうね?」


 ヴァネッサの言葉に、カルラは美麗な眉をぴくりと跳ね上げた。


「……なに言ってるの。たかがガセネタひとつで上層部が騒ぐと思うの?」


「ガセかどうかを判断するのは上層部ではないのですよ。わたしたちでもないし、カルラ様でもない。それを聞いた者たちなのですよ。もっと簡単に言うと、若く美しいカルラ様を恨み妬む者たち――」


「……っ」


 ヴァネッサの言葉の意味に気づいたのだろう、カルラはハッと息を呑んだ。


「あなたを嫌う者たちは、ここぞとばかりに吹聴して回るでしょうね。『あのカルラがたかが小娘ひとりに手を焼いているぞ』と、『多くの部下を失っておいてなお、指を咥えて見ているぞ』と。中にはもっとひどいことを言う者もいるかもしれませんね。『ダークエルフとエルフは敵だが、近縁種だ。情が移り殺せないのではないか』あるいは『カルラめ、実は人族側に寝返ったのではないか』と」


「あ、あ、アンタ……口の利き方に気をつけなさいよっ? アタシはアンタの上司、いつでも裁くことが出来るんだからね? なんなら不敬罪でこの場で……っ」


 ヴァネッサの煽るような言葉遣いに、カルラは顔を真っ赤にして怒り出した。

 腰に下げた薔薇の鞭(ローズウィップ)を手にすると、素早く振った。

 薔薇のようなトゲが無数についた鞭がヴァネッサの頬を掠め、わずかに血が出た。


 が、ヴァネッサはまったく動じなかった。

 痛みを感じたそぶりなどカケラも見せず、瞬きひとつしなかった。

 まるで何事もなかったかのように笑顔を浮かべると、腰を曲げて深々と頭を下げた。


「まあ、すいません。戦場育ちの粗忽者そこつものなので、口が悪くて……。でも、カルラ様を思う気持ちは本当でございますわ。これは、わたしの尊敬する上司に悪い噂が立ってはならないという気遣いなのです」


「しょ……しょうがないわね。ゆ、許してあげるわ」


 カルラは言葉を震わせると、そっぽを向いた。

 見れば、膝が微かに震えている。


「……っ」 

 

 その瞬間、ヴァネッサはニタアァァリと顔全体を歪めるようにして笑った。

 

 今、カルラは怯えたのだ。

 他ならぬ自分に。

 まったく鞭を恐れない、流血すらも気にしない自分を見て、初めて自覚したのだ。

 何を?

 かの人魔決戦で多くの敵将を討ち取った、暗殺部隊のエースとふたりきりであることを。


 下手に手を出してヴァネッサをキレさせてしまえば、何が起こるかわからない。

 そしてここは、本拠地を遠く離れた森の中だ、隠そうと思えばなんでも隠せる。 

 そう、たとえば上官の(・ ・)不審死( ・ ・ ・)ですらも……。


「すぐにコボルドたちを走らせて、哨戒部隊すべてに伝えなさい。『素手で暴れるエルフの娘を探し、見つけたら報告なさい。みんなで仲間の恨みを晴らすのよ』って。──ねえ、それでいいんでしょ?」


「はい、素晴らしいご判断です」


 口早に告げるカルラの後ろ頭を見ながら、もう一度ヴァネッサは、ニタアァァリと顔全体を歪めるようにして笑った。

 内心ではこう考えていた――バカね、これからが地獄の始まりよ――と。

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