表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第八章:エルフヘイムへ!」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/216

「冒険の書百八十一:焚き火②」

回想シーン終了。

「焚き火①」の続きから始まります。

 日が落ちて暗くなった、夜の川沿い。

 焚き火で猿どもの死体を焼いているワシに、デクランが話しかけてきた。

 話の内容は、デクランがいかにワシの強さに感心しているか、いかにワシの人柄を評価しているか。

 マリアベルとルシアンの問題児ふたりを手懐てなずけた手並みの見事さについても、手放しで褒め称えてきた。


「ああ~……あれは大変だったのう~……」


 デクランからの評価はともかくとして、ワシはしみじみとつぶやいた。

 思い出すのはつい先ほど、猿どもを退治した後のことだ。

 互いの戦い方についていがみ合っていたふたりを、ワシは力と経験でもってさとしたのだ。


 どこが弱点か、どうすれば強くなれるか、それを集団戦にどう活かすか。

 ワシの言葉に最初は強く反発していたふたりだったが、最終的には納得してくれた。


「ふたりともクセが強いくせに打たれ弱くて、非常~に難儀したものだわい」


「まあまあ、そのあと見事にフォローしていたじゃないですか。ディアナさんのおかげでおふたりは自らの弱点と向き合う覚悟を決め、さらに……」


 デクランの視線の先では、マリアベルとルシアンが激しく言い争っている。


「はあ~⁉ わらわこそが師匠(・ ・)の一番弟子だし! おまえよりも先に実力を認められて、最強の邪眼使いに育ててやるとまで言ってくれたのだからな! 一番は妾だから! おまえは二番だから!」


「何を言ってるんだ。師匠(・ ・)はね、より有望な弟子である僕への教導戦闘に多めに時間をきたかったから、君如きとのそれをてっとり早く処理したにすぎないんだよ。その後のお言葉も、ある種のリップサービスなんだ。君をあんまりがっかりさせないようにね。つまり、一番弟子はどう考えても僕のほう。そんなこともわからないのかい?」


「はあ~⁉ おまえ言ったな⁉ おまえ言ったな⁉ 師匠にけちょんけちょんにされて石化しておったくせに! なんだったらそのままショック死しそうだったくせに! 大の男が情けない! 最後までシャンとしていた妾とは雲泥うんでいの差だったわ!」


「おっと、ずいぶん都合のいい脳みそをお持ちのようだね? 僕の記憶では、君はジタバタ子どもみたいに泣きわめいていたはずなんだが? 未来の勇者たらんとするSクラス生徒にはふさわしくない振る舞いだったと思うんだが、どうだい?」


「な、泣いてなんかないもん!」


「僕だって、ショック死しそうになんかなってない!」


「「……ふん!」」 


 実に低レベな争いをするふたりを見て、デクランはくすりと笑った。


「おふたりとも、初対面とは思えないほどのなつきようじゃないですか。『邪眼』と『光の騎士』、Sクラス生徒の中でも問題児筆頭のふたりから共に『師匠』と呼ばれるなんて、普通はあり得ませんよ」

 

 あのふたり、やはり問題児筆頭だったか。 

 おのれリゼリーナめ『少々難あり』などと適当なことを言ってごまかしおって……などという恨み言はさて置きだ。


 ふたりが『師匠』呼びしてくれるようになるまでワシに懐いたのは事実だ。

 それがおそらく、今までふたりを担当した勇者学院の教師の誰ひとりとして出来なかった難行だろうというのも、想像に難くない。


 ワシの強さと人柄がそれらを成さしめたのだろうとデクランは言うが、それだけではないとワシは思う。

 一番大事だったのはたぶん――知識と経験。


「ふん……たまたまよ。たまたまふたりに足りないものがわかって、たまたまそれらを埋める知識と経験があったというだけのことだ」


 話しながらワシは、人魔決戦で経験した出会いと別れを思い出していた。

 

「……ワシは今まで、戦場でな。多くの兵士の生き死にを見てきたよ。何十何百、あるいはそれ以上のな。中には優秀な奴もいたし、そうでない奴もたくさんおったよ。なあ、戦場で最も死亡率が高かったのはどんな兵士かわかるか?」


「それはもちろん、弱い兵士では……?」


「数の上ではな、もちろんそうなる。だが、『率』でいえば意外なことに『突出した個』を持った兵士だったのだ」


「突出した個? 人より秀でているのになぜ……?」


 思ってもいなかったのだろう言葉に驚き、目を見開くデクラン。


「秀でているだけならいいのだ。だがな、人より力が強い、人より足が速い、人より魔術に長ける。それらは多くの場合、チームワークを乱す元となるのだ。そんな奴のペースに皆が合わせることはできぬからな、一方的に距離が開くのだ。そして、そんな奴らに限って『我こそが魔王を倒さん』と意気込み、突き進むのだ。その結果として孤立して討ち取られたり、あるいは敵の集中攻撃の的になって圧殺されたりするのだ。そういった者たちはな、なんとも悔しそうな顔で死んでいくのだ。『誰より強い自分がどうしてこんなところで』、『自分の実力はこんなもんじゃないのにどうして』。晴れぬ疑問を抱えたまま、戦場の習いもわからぬまま、無念そうに死んでいくのだ」


『無敵の盾』エイギス。

『毒殺』のハイネ。

『念動力』のイーバ。

『音速』のハルパー。

 当代一の使い手だったが故に孤立して、あるいは敵の集中攻撃の的になって死んだ彼らの瞳を、どろりと深い沼のような瞳の色を、ワシは今も忘れることができない。


「例えばアレスは『人類最強の個』だった。だがな、そんなアレスであってもひとりでは魔王軍に勝てなかった。当たり前の話だがな、個では衆に勝てんのだ。魔王城に直接乗り込んでの魔王討伐というのはな、勇者パーティという同格の仲間たちがいてこそ起こすことのできた奇跡だったのだ」


「……だから、あのふたりに教導戦闘を?」


「うむ」


 デクランの問いにうなずくと、ワシはまだ言い争っているふたりを見やった。


「『邪眼』に『光の剣』。どちらも当代最強となり得る『突出したスキルと武器』だ。そして、だからこそふたりは孤立している。性格的な問題もあって、他人と上手くやれないというのもあるがな。このままいけば早晩敵の罠に陥り、あるいは集中攻撃の的となって命を落とすだろう。強いが故に、死んでいくだろう」


 そんな光景は見たくない。

 あんな瞳は、もう二度と。

 だからこそ――

  

「……なるほど」


 デクランはしみじみとうなずいた後……。


「しかし……ディアナさんはずいぶんと長生きなのですね? エルフ族の年齢は見た目ではわからぬと言いますが、人魔決戦の時から生きていらっしゃったのですか?」


「ごほんえほんおっほーん!」


 またしても語り過ぎた(・ ・ ・ ・ ・)ことに気づいたワシは、咳ばらいをしてごまかした。


「と……いう話を聞いたのだっ! ええと……ワシの父と母からなっ! 仲のいい人らが亡くなったということで、耳にタコができるほど聞かされたのだっ! おかげで自ら経験したことのように語る癖ができてしまってな! あ、ちなみにワシってば記憶の一部を失っておるからなっ! 父母がどうゆー人かとかは知らんからっ! 聞かれても困るからなっ!」

 

「別にそこまでは聞いてないのですが……」


「そ、そうだったなっ! ワシとしたことがせんでもいい心配をしてしまったわ! わっはははは!」


 これ以上は苦しくなる一方だろうと考えたワシは、あえて大きな声を出した。


「さあーて、マリアベルにルシアン! この師匠が戦場の習いについて教えてやるからな! ありがたく傾聴するがいい!」 


 未だ言い争いを続けるふたりと合流すべく、走るようにその場を逃げ去った。

★評価をつけてくださるとありがたし!

ご感想も作者の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ