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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第八章:エルフヘイムへ!」

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「冒険の書百七十八:教導戦闘②」

 さて、教導戦闘の続き。

 その後もワシがマリアベルの『邪眼』をすべてかわし、丁寧に理論だててスキルを解体した結果――


「もういいっ、殺せっ。わらわを殺せえぇぇぇ~っ」


 半べそをかいたマリアベルが、草原の上に寝転がって手足をジタバタさせ出した。 


「いやいやまあまあ、そう悲観するでない」


「悲観もするわ! だって、『邪眼』をすべて躱されて、そのつど首だのお腹だのに手刀を押し付けられて! ご丁寧に弱点を解説されたあげくっ、哀れみの目まで向けられたのだぞっ⁉ これを悲観しないで何を悲観するというのだっ!」


「そんな目を向けた覚えはないのだが……」


「覚えはなくても向けてるの! 妾はそう感じるんだもん!」


「う、うう~む……」


 哀れみの目を向けた覚えはないが、スキル『邪眼』を丸裸にしたのはたしかだ。

 先に挙げた『ある程度以上の厚みのある遮へい物を貫き通すことができない』と『連続して放つことができない』というふたつの弱点。

 そこへさらに『待機時間を稼ぐすべがない』と『効果を自分で決めることができない』というふたつを加えた。

 

「ちなみに『連続して放つことができない』から『待機時間を凌ぐすべが必要』なのだが、おまえにはそれがないのだ。その貧弱な体では逃げきれんだろうし、武術なども使えんときてる。ならば他に方策を考えんと……」


「わかっておるわ! おかげさまで十分すぎるほどにわかっておるわ!」


「あと『効果を自分で決めることができない』というのが意外に問題なのだ。『邪眼』の及ぼす効果としては『即死・石化・混乱・狂戦士化バーサーク・睡眠・麻痺・猛毒』の七つがある。このうち『即死』は問題ない。『石化』を解呪できる僧侶などなかなかいないからこれも問題ない。しかし残りの五つは神聖術でなんとかできる上、睡眠に関しては殴って起こせばすぐに戦闘に復帰できる。つまり他のパーティメンバーが計算できない要素が加わるということであり、状況によってはかえって戦場に混乱を引き起こす可能性も……」


「わかっておると言っておろうが! 死体蹴りして楽しむ趣味でもあるのかバカ! バカエルフ! うわーん!」


 マリアベルは髪をかきむしるようにして怒りを叫ぶと、その場に突っ伏して泣き出してしまった。


「うむむ……これはいったいどうしたものか……」


「あ~あ、やっぱりやっちゃったか……」


 マリアベルに対しての接し方を悩んでいるワシのところへ、ルルカがやって来た。

 たははと苦笑いをして、こうなるのを想定していたかの様子だが……。


「なんだルルカ、この事態を想定しておったのか?」


「ん~……なんとなくだけどね。わたし自身ができない子だから、挫折する人の気持ちがよくわかるというか……。えっとさ、前世とか言ってるから勘違いしがちなんだけど、マリアベルちゃんはまだ子どもなんだよ。なのに優秀な子どもたちばかりの勇者学院でSクラスにまで上り詰めたの。それを支えたのが『邪眼』で、もちろんだけどすんごい自信があったわけ。自分の中の柱というかさ……ディアナちゃんがよく言う背骨みたいな……それをもし、会って間もない相手に粉々にされちゃったらどうなると思う?」


「……なにくそと踏ん張り、よりスキルの完成度を上げようとする?」


「う~ん前向きっ。可愛いのにカッコよくて素敵……じゃなくてっ」


 自分で自分にツッコミを入れると、ルルカはため息をついた。


「それはディアナちゃんだからできることなんだよ。まるっきり戦闘狂の発想なんだよ」


「戦闘狂……まあ自覚がないではないが……」


「でしょ? あのね、そんな目にあったら普通の子はくじけちゃうの。こんな風にしょぼんとして泣いちゃうの」


「でもおまえは、立派に克服したではないか」


 ワシと出会った頃のルルカもたいがいだったはずだ。

 あがり症で呪文をドモる癖があるから、戦闘前に重ね掛けておく必要があったほどではないか。


「頼みの綱の神聖術を使いこなすためにあれこれと努力して、その結果……」


「わたしの場合は崖っぷちだったからね。ディアナちゃんに呆れられて捨てられないようにって死に物狂いだったからできたの。マリアベルちゃんはわたしより若い上に、わたしにとってのディアナちゃんがいないんだよ」


「なるほど……」


 言われてみれば、マリアベルはまだ子どもだ。

 前世がどうだと偉ぶってはいるが、わずか十二、三の小娘にすぎない。


 そんな娘が一足飛び二足飛びに勇者学院で成り上がるのに、嫉妬や嫌がらせがなかったわけもない。

 こんな見た目と振る舞いだから、友だちなどもおらん寂しい子どもだったのではないだろうか。

 そんなマリアベルが自身のり所としている『邪眼』をこれ見よがしに解体するのは、たしかに褒められたやり方ではなかったのかも……。


「そうだな……考えてみればやりすぎだ。ワシとしたことが、勇者学院でソーニャやジーンを教えたことで自信に乗りすぎていたのかもしれん」


 ソーニャやジーンにはソーニャやジーンなりの事情が、マリアベルにはマリアベルなりの事情があるということを失念していた。


「あ、だがもちろん、解体してそれで終わりではないのだぞ? 現状、数あるスキルの中で『邪眼』が最強の一角であるのは間違いない。的確な補強さえできれば、誰もマリアベルに勝てる者はいなくなる。だからこそあえて、一番最初に一番辛い目に遭わせたわけで……」


「それを先に言おうよおぉぉ~っ!」


 目をバッテンの形にしたルルカが、ワシの腰にすがりついてきた。


「そういうことをあらかじめ言っとかないから、マリアベルちゃんがひたすらショックを受けちゃったんじゃん! フォローする気があるんだったら話は違ったんだよ! もおぉ~!」


「いやでも教導戦闘とはそういうものだし……」


「普通の人はやったことないからわかんないんだよおぉ~!」


「お、おうそうだったか。そいつは気づかんかったわい」


 自分の最大のミスに気づいたワシは、改めてマリアベルに声をかけた。


「すまなかったのう、マリアベルよ。おまえをただただ傷つける気はなかったのだ。おまえのスキルが素晴らしいからこそ初めに問題点を教え、それを補強することで最強になれると説明したかったのだ。その上で、ワシが手助けをしてやろうと思ったのだ」


「……ぐすっ、本当か?」


 上体を起こしたマリアベルは、涙を拭いながらワシにチラリと目を向けた。


「本当に……妾は最強になれるのか?」


「もちろん、一朝一夕というわけにはいかんがな。弱点があってこの強さなのだから、弱点がなくなれば勝てる者は誰もいなくなるという道理だ」


「……わかった、信じる。ディアナを、信じる」


 マリアベルはコクリとうなずくと、ワシの服の裾を掴んだ。

 それ自体は幼い子どもが大人にすがるような、可愛らしいしぐさだったが……。


「があぁぁぁぁ~ん!」


 隣にいたルルカが、頭を抱えてわめき出した。

 まるで近くに雷でも落ちたかのような驚きようだが……。


「なんだルルカ。いったいどうした?」


「わ、わたしってばまた余計なことを……っ? ライバルを増やす愚かな行為をしてしまった……っ? いやいやでもでも、人としてあれを見過ごすわけには……っ?」


 ぐにゃぐにゃと身をよじりながら呻くルルカの、言っている意味はやっぱりさっぱりわからないが……。


「ともかく、ひとりの問題が浮き彫りになり、前進できそうなのはいいことだな。あとはもうひとり……」


 ワシはチラリ、馬車からこちらに向かって歩いて来るルシアンに目をやった。


「『邪眼』の次は伝説の『光の剣』の使い手か。なんともたぎる展開だわい」


 ニヤリ、口の端を歪めて笑った。

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