表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

159/216

「冒険の書百五十八:三番勝負」

 四人掛けの打ち合わせスペースにルベリア、ルドヴィク、ワシ、リゼリーナの順で腰掛けると、ルベリアが最初から指示してあったのだろう、頼んでもいないのにメイドが紅茶とフルーツケーキを運んできた(またチェルチが騒ぎそうだが)。

 

「ありがとう、助かるわ」


 ルベリアの礼を聞いたメイドはものすごい勢いで頭を下げると、耳まで真っ赤になって帰っていく。

 柱の陰に隠れていたメイド仲間たちが羨ましそうな目でそれを迎え、皆できゃいきゃいと騒いでいる。


「……相変わらずですわね、お婆さまの人気は」

 

 呆れたようにリゼリーナがつぶやいているところから察するに、城のメイドたちは完全にルベリアのとりことなっているのだろう。


「……そうえいば、昔からこうだった気もするな」 

 

 若きの日のルベリアの人気はそれはもうすごかった。

 姿形の美しさはもちろんだが、下の者への気遣いや感謝を欠かさず示す姿勢が王族らしくないということで好感され、老若男女に広く慕われていた。

 

 時が経ち老いたとはいえその美しさは変わらず、また他人への気遣いや感謝も欠かすことがない。

 常に王城にあって世話をしているメイドたちが虜となってしまうのも、当然といえば当然の結果だろう。


「ディアナさん、今……昔から(・ ・ ・)とおっしゃいました?」


「ただの言葉足らずだ。『昔からこうだったのではないか?』という予想だ、予想」


 またもうっかり口を滑らせかけたワシは、慌てて発言を訂正した。


「なるほど……予想……」


 ごまかし方が下手だったせいだろうか、納得いかなげに言葉を濁すリゼリーナ。


 いかん、やはりルベリアを前にするとどうしても懐かしさが先立ってしまう。

 これ以上ボロを出さんうちに、早く話を進めないと。


 焦ったワシは、ニコニコ笑ってワシらの様子を眺めているルベリアに、急いで話を始めるよう水を向けた。


「それよりほれ、さっさと話を始めろ。バカ王子をリゼリーナと同じ要職につけた理由を」


「おまえ……僕だけでなくお婆さまにまでなんという口の利き方をっ!」


 遠慮のないワシの物言いに、ルドヴィクが血相を変えて立ち上がるが……。


「いいのですよルドヴィク。この方にはわたくしが特別にお願いしたのです。遠慮なく振る舞うようにと」


「し、しかしお婆さま……っ」


ルドヴィク(・ ・ ・ ・ ・)? わたくしの決め事に文句でもあるのかしら?」


 納得いかなげに渋るルドヴィクを、ルベリアは一瞥いちべつ

 語気をわずかに強めると……。


「ひっ……?」

 

 ルドヴィクはサッと顔色を青ざめさせた。

 よほど恐ろしかったのだろう、そのままストンと腰でも抜かしたかのように席に座った。


「おぉ~……調教が行き届いておるなぁ~……」


 さすが、他人には優しいが身内には厳しいルベリアだ。


 わがまま放題のバカ王子があっさりと沈黙。

 自分が怒られたわけでもないのに、リゼリーナまでもが顔色を青くしている。


「さ、それでは話を続けますわね」


 ルベリアはニッコリ笑って話を続けた。


「まず、なぜルドヴィクを教育庁の、しかも副長官という要職につけたかというと、それは『人を教えることこそが自らの成長に繋がる』と思ったからですわ。自らを中心とした視点しか持たなかったこの子に別の広い視点を持たせ、他者を使いまた他者と上手く交流する経験をさせることで、人としての階段を一段上がって欲しいと思ったのです」


 なるほど……たしかにこのバカ王子は自らが偉くなり好き放題することしか考えていなかったからな。そいつに下々へ目を向けることの大切さを教えてやろうというわけか。


「この子は国王(アーガス)の子どもたちの中でもずいぶんと出遅れていますからね。本人としても内心、忸怩じくじたるものがあって、それが他者への居丈高いたけだかな振る舞いとして現れていたのでしょう。そこでリゼリーナです。孫の中でもひと際優秀なこの子と競い合うことによって、切磋琢磨せっさたくまし成長する感覚を養って欲しいと思ったのです」


「んん~……そこでリゼリーナなのかあ~……?」


 ワシは首をひねった。


「これまでの人生負けっぱなしの男が女の、さらに妹に負けるようなことがあれば、もはや二度と立ち直れんと思うのだが……その辺は大丈夫なのか? もっとハッキリ言うと、ルドヴィクがリゼリーナに同じ分野で勝てるとは万が一にも思えん。下手をすると壊れてそのままになってしまうのでは?」 

 

 などと、ワシが気をつかってやる必要もないのだが……。


「遥か東の島国では『獅子は我が子を千尋せんじん谷に突き落とす』ということわざがあるそうですよ。這い上がってきた子どものみを育て、そうでない子どもは遥かな道を迂回してでも元の位置へと帰って来させる。その道のりもまた教育になるのだとか」


 まあドワーフにも似たようなことわざはあるが……。


「要は『死んでも勝て、負けたら自力で挽回ばんかいしろ』ということか?」


「はい、ちなみにその『自力で挽回』は『王族としての地位を一時剥奪して放逐。然るべき成果を残して帰還した時にのみ地位を回復する』というものになります」


「なっ……?」


 こいつ、今サラリと恐ろしいことを……っ。


「人のことは言えんが……なんとも物騒な発想をする太后様だの、おまえは」


 チラリと視線を向けると、事実上の最後通牒を突きつけられたに等しいルドヴィクは、ダラダラと脂汗を流している。

 

「お、お婆さま。僕はそんなの聞いていないんですが……っ」


「それはそうよ、初めて言ったもの」


 マジかこいつ。

 こんな大事なことを、何の前触れもなくいきなりこの場で?


「あなたに関しての苦情がね、最近ずいぶんと上がってきているの。国王アーガスがあなたを調査官に任命して地方を回らせ、見聞を広めさせようとしたのはわかっているでしょう? その結果、地方の役人からは非難の嵐でね。やれ賄賂を要求しただの、やれうちの娘にちょっかいをかけただの、王族にあるまじき醜聞の数々でね。王家わたくしたちとしても手を打たないわけにはいかないの」


 ……なるほど、あまりの苦情殺到ぶりに、王家としても動かざるを得なくなったと。

 中でもルベリアが一番怒っているというわけか。


「ねえ、わかってくれるわよね? ルドヴィク」


「ぐっ……? お、お婆さま、それはちょっとした行き違いで……意思疎通がうまくいかなかった結果誤解されたと言いますか……っ」


 痛いところを突かれたルドヴィクは必死に弁解を並べたてるが、すべてを聞き終えたルベリアはニッコリ笑ってひと言。


わかってく(・ ・ ・ ・ ・)れるわよね( ・ ・ ・ ・ ・)?」


 目だけが笑っていない、恐ろしい笑顔。


「………………はい」


 二の句も継げなくなったルドヴィクは、ガックリとうなだれた。

  

 これまでこいつのせいで浪費された王国の財産や臣下の苦労を思えば当然の差配さはいだが、身内をここまでバッサリ切り捨てるとはな……。

 いやまあ……一応逆転の目はあるのか?

 リゼリーナと競い合って勝つという、ものすごい薄い目が?


「さて、それでは『競い合う』の具体的な内容に移るわね。まず、ルドヴィクとリゼリーナには、これぞと思うSクラスの生徒を五人選んでもらいます。そして、その子たちに『三番勝負』をしてもらうの。勝負の内容は国のために活躍すること。ハイドラ王国の将来を担う勇者候補生として、より国へ貢献できた方を勝ちとします。そして、最初の勝負は『外交官の護衛』よ。道中の危険から外交官を護り、無事に現地に送り届けること。国家の威信のかかった外交が成功するよう『補助』すること。以上の二点の出来の良さで、まずは勝敗をつけたいと思っています」


「なるほど、いかにもSクラスの生徒らしい任務だな。ちなみに、向かう国の名は?」


 当然リゼリーナはワシらを選ぶだろうし、となると行き先が気になる。

 そう考え問いかけるワシに、なぜだろうルベリアは、今までで一番楽しそうな顔を向けてきた。


「ルドヴィクの選んだ子どもたちには獣人の国『カルノス連邦』へ。リゼリーナの選んだ子どもたちには森の王国『エルフへイム』へ。ふふふ、ディアナさん、あなたならわかるわよね? すべてのエルフたちの故郷よ」

★評価をつけてくださるとありがたし!

ご感想も作者の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アッこれ一方的な試練と見せかけてディアナに対する試練でもあるじゃん……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ