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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

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「冒険の書百三十六:再会」

 夕陽の沈む頃に、戦勝報告会は始まった。

 会場は、国王が執務を執り行う謁見の間だ。


 勇者学院の体育館ほどもある謁見の間には、各所に近衛が配置されていた。

 あらゆる敵に対応できるようにだろう、剣をいた騎士と、杖を携えた魔術師が二人一組で。

 それぞれが練度も高く落ち着きもあって、さすがは近衛といったところか。


 玉座へと続く赤いカーペットの両側には、ずらりと臣下が並んでいた。

 海千山千うみせんやませんの大臣たちの放つ怪しい気配はまた独特のもので、ルルカなどは遠くにいる段階からびくびくしていた。


 万が一のないよう武装を解除されたワシら四人とパラグイン辺境伯は赤いカーペットの上を歩くと、無人の玉座の手前でひざまずき、国王夫妻の到着を待つことになった。


「……ディアナ殿。緊張しているか?」


 自慢の八の字ヒゲを綺麗に整えた辺境伯が、チラと横目でワシを見た。

 この手の舞台にも慣れているのだろう余裕たっぷりで、どんな仕立て屋に作らせたのだという極彩色の上衣を身に着けている。


「しかたあるまい。こちとら山育ちの武人だ。礼儀作法など知らぬのだから」


 苦虫を嚙みつぶしたようなワシの言葉に、辺境伯が懐かしそうな顔をする。


「はっはっは、そういえばパラサーティアでも似たようなやり取りをしたな。あの時はたしかディアナ殿が……」


 対『闇の軍団(ダーク・レギオン)』の防衛戦を敷くにあたって、ワシの辺境伯への言葉遣いが不敬だと騒ぎになった。

 辺境伯の部下が暴走し、一時は一触即発の状態になったのだが……。


「あの時は辺境伯殿が場を納めてくれたが、今日はさすがに国王陛下が相手だからな……」


 不敬罪で死刑となったら全力で逃げるつもりだが、その場合、残したルルカたちに害が及ぶかもしれんからなあ……。


「いざという時のことも考えておかねばならんか」


 脱出経路はもちろん、どうやって近衛たちを殺さず無力化しようと考えていると……。


「やめろやめろ。物騒な目をするでない」


 ワシの目つきから何を考えているか察したのだろう、辺境伯が慌てて止めてきた。


「安心せい。国王陛下は先王に似て気さくな方だ。ディアナ殿がどのような態度をとろうが、それを周りの者が不快に思おうが、一切問題にしない器の大きい方なのだ」


「ん~、そんなもんかのう~」


 ワシと辺境伯が話をしていると、傍らにいた大臣が急に声を張り上げた。


「――我らが主君、国王陛下と王妃陛下のご入場である! 皆の者、おもてを下げい!」


 演奏隊がラッパを鳴らすのに合わせ、国王夫妻が入場。

 本来なら大臣が声をかけるまで皆はうつむいていなければならぬのだろうが……。


「よいよい。一同、面を上げよ」

 

 玉座に座った国王アーガス・ロキ・デア・ハイドラが、気楽な様子で声を発した。

 ワシに目を止めると、いかにもウキウキした様子で話しかけてきた。


今宵こよいは戦勝報告会、祝いの場だ。かたっ苦しいのは無しにしようではないか。それより早く、パラサーティアでのいきさつを聞かせてくれ。敵は魔族か? 強かったか?」


 燃えるような赤髪にチャラついた笑顔、片足を組んで玉座に腰掛ける型破りさは、まさしくアレスの系譜だ。

 四十半ばという年齢にしてまったく落ち着きがないあたりも、アレスが歳をとったらそうなるだろうという予想通り。

 ついでに言うなら大臣たちが困っておどおどしているのも、賢そうな王妃が隣でクスクスと笑っているのも、ワシが想像したアレスの政務風景そのものだ。


「……っ」


 一瞬ワシは、五十年前に戻った気分になった。

 アレスがいて、傍らにはルベリアがいて、魔族の重囲を抜け出したワシが報告に上がるといったような。

 もしかたらあり得たかもしれない、もう一つの未来を想像した。


「……ふん、都合のいい妄想だな」


 ワシは小さくかぶりを振った。

 現実問題、アレスはすでに死んでいる。

 ワシは姿形を変えて生きているが、会えることはないのだ。もう二度と。


 だが、おかげで緊張は解けた。

 アレスの子どもとその妻を前にして、むしろ普段よりも口が回った。


「ではお話しましょう。ワシらが対したのは五万を超す敵軍。その大将は竜人間(ドラゴニュート)のラーズ。人魔決戦でも大暴れした古強者ふるつわもので、得物は海神の加護の与えられた三叉矛……」


 大きな戦の無くなった世を生きている者たちだからだろう、国王夫妻はもちろん謁見の間に居合わせた臣下や近衛たちも、興味深げにワシの話を聞いている。 

 肉を打つ感触などを生々しく表現したからだろう、ラーズの喉に蹴りを叩き込んだ話をした時などは、ゴクリと生唾を呑む者もいたほどだ。


 勇者学院での争乱については、場所が身近だからだろう、皆の食いつきがさらに強くなった。

 自分の子どもが通っている親もいたのだろう、最小限の被害で納めた話をした時には、ほっと安堵の声が漏れたほどだ。


 ワシが話し終えると、万雷の拍手が打ち鳴らされた。

 パラサーティア防衛戦と勇者学院争乱を解決した手腕を高く評価され、ワシは一塊の黄金と、王国銀翼勲章を授与された。

 ルルカ・チェルチ・コーラスもそれぞれに評価され、黄金と勲章を授与されたが、ワシのが一番、勲章としての価値の高いものだったらしい。


 ほどなくして、戦勝報告会は閉会。

 ワシらと辺境伯は、立食形式のパーティに招かれた。

 パーティということでけっきょくドレス(真っ赤でひらひらしたの)を着させられたワシとしては一刻も早く帰りたかったのだが、リゼリーナとの約束があるのでそうもいかない。

 貴族の娘たちや武官文官のお偉方を相手に再びパラサーティア防衛戦と勇者学院争乱の話をさせられ、ダンスの相手を求められ、疲れきったところでリゼリーナに呼び出された。


 向かった先は、パーティ会場から離れたところにあるテラス。

 ほの明るい月夜の下、ひとりの女が待っていた――

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