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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

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「冒険の書百二十二:ヴァネッサは頭を抱えた」

 ~~~ヴァネッサ視点~~~




 ディアナが『魔薬まやく』の存在をぎつけ、マルダーが生徒の飲み物に『魔薬』をドバッと混ぜているその時、ヴァネッサは勇者学院の屋上にいた。

 目の前にはマルダーの話していたチビで禿頭の商人がいて、ヴァネッサに対してひざまずいていた。


「ヴァネッサ様、お初にお目にかかります。我が名はタンドール。『闇の軍団(ダーク・レギオン)』西方方面軍の総まとめとしてハイドラ王都の治安を攪乱かくらんを指揮しており……」


 新たに指揮下に入った魔族を、ヴァネッサはジロリ値踏みするように見つめた。


「長ったらしい名乗りはいいわ。要はハイドラ王都専属の特殊部隊長というわけね? それで、わたしに特別な報告っていうのは何? 勇者学院の生徒たちに魔薬を蔓延させるまでは聞いたけど、最終的にどうするつもりなの? ただの攪乱かくらん行為ってわけじゃないんでしょう?」


「はい、人族の(・ ・ ・)工作員( ・ ・ ・)を作るのが狙いです」


 タンドールの狙いに、ヴァネッサは「へえ」と感心の声を上げた。


「なるほどね。魔薬の常習性を利用して、それなくしては生きられない状態に追い込んで、なんでも言うことを聞く傀儡かいらいを作ろうってわけね。なかなかやるじゃない」


 人魔決戦後、生き残りの魔族の中には魔薬を求めるあまり精神の崩壊した者が山ほどいる。

 高位魔族ですら狂うほどの強力な常習性を持つ薬をある種の『首輪』として扱うことにより、人族の『いぬ』を、『潜伏工作員』を作る。

 タンドールの作戦は、実に理にかなっている。


「狙いが勇者学院(ここ)っていうのがまたいいわね。将来有望な勇者候補であるからこそ、堕とせた時のわたしたちの利益もまた大きいわ」


「お褒めにあずかり、光栄です」


 タンドールはニタリと笑うと、うやうやしく頭を下げた。


「始めたのはここ半年といったところですが、すでに一部の生徒、一部の教師に常習性を示す兆候が表れています。本日の入れ替え戦でも服用している者が多数おり、堕ちる者が出るのも間近かと……」


「いいじゃない、いいじゃない」


「もしこの計画が上手くいったあかつきには、どうかヴァネッサ様より『あのお方』へよろしくお伝えいただけると……」


 出世願望を覗かせたタンドールが、ちらり上目遣いでヴァネッサを見る。


「いいわ、任せておきなさい」


 出世願望を持つ者を醜いとか意地汚いと思う者もいるが、ヴァネッサは逆だった。

 自身が中間管理職として過剰労働を強いられているせいもあって有能な部下はいくらでも欲しいし、出世欲の強い者は自身の能力以上の何かを持っているパターンが多いからだ。


 それに正直、助かるなとも思っていた。

 自分の部下が功績を上げれば、それはすなわち上司である自分の功績にも繋がるから。

 ベルキアからここまで続いていた失敗を小なりとはいえ挽回できるというのもあって、ヴァネッサはホッと安堵の息を吐いた――だが、安堵したからこそ湧いてくる不安もあり……。


「それはいいんだけど、ちょっと気になる奴らがいるのよね……」


 ボソリとつぶやくと、ヴァネッサは観客席を見下ろした。

 入れ替え戦の個人競技が終わった観客席では、午後の団体戦を前にして多くの子どもたちが家族と一緒に弁当を食べている。


 その中の一角、ひと際にぎやかな集団の中にディアナたちがいるのだ。

 ディアナ・ルルカ・チェルチの『聖樹のたまゆら』と、リゼリーナ・ララナ・ニャーナの『黄金のセキレイ』が、キャイキャイと騒いでいるのだ。


「行方を常に気にして離れすぎないようにしてたから、再会することになっても驚きはしないけど……まさかこんなところでとはね……」

 

「気になる奴らというのは、リゼリーナ王女殿下のことですか?」


「違うわ。エルフのチビっ娘たちよ」


「あのような年端としはのいかぬ子どもらが気になると? かの『黒蜘蛛ヴァネッサ』様が?」


「気になる、なんてもんじゃないわ。あのラーズを倒した連中よ」


「かの魔戦将軍を!? ということは先ごろ行われたパラサーティアでの戦いの……あんな子どもが!?」


 さすがに驚きだったのだろう、タンドールが驚愕に目を見開いた。


「そうよ。あんたもせいぜい気を付けることね。今は力を弱めているとはいえ、強さも勘の鋭さも普通じゃないから」


「はっ、承知しました。ヴァネッサ様のご忠告、痛み入ります」

  

 そうは言いつつも、タンドールの目はディアナをじっとりと追っていた。

 血のように赤く染まったそれは、『小さな脅威』を見る目ではなく『美味そうな獲物』を見る目であり、ある種族の特徴を表している。


「……あんたって、もしかして『人喰い(マンイーター)』? 人ばかり喰う悪食種族かよ。あっちゃあ〜」


 ヴァネッサは頭を抱えた。


 他の食い物が十分にあってもあえて人ばかりを殺して喰う『人喰い(マンイーター)』に、絶好の獲物を前におあずけしろと言っても難しいだろう。


 ましてや相手はラーズを倒した子どもたちだ。

 うまく事が運べばさらに『あのお方』の覚えが良くなるかも、などと考えてもおかしくはないだろう。

 

 だが、ヴァネッサは上司だ。

 力量的にも遥かにタンドールより強い。

 多少脅せば言うことを聞いてくれるかも……?


「言っとくけど、おかしなこと考えるんじゃないわよ? 下手なちょっかいかけたら、やられるのはあんたの方だからね?」


「もちろんでございます。このタンドール、ヴァネッサ様の命令とあらば、耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ覚悟でこざいます」


「けっこうギリギリってことじゃないの」


 やっぱりダメかもしれない。

 ヴァネッサはため息をついた。


「ああ〜、余計なこと言うんじゃなかった。てかホントにやめてよね。『魔薬』関連の作戦の功績、けっこう期待してるんだから」


 タンドールに釘を刺しつつ、もし最悪な展開になったらどうしよう、などと悩んでいた。

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