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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

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「冒険の書百二十:甘い香りの正体は」

 コーラスが見事に勝利を納め、入れ替え戦の個人競技三戦連続勝利となったFクラス。

 最高に盛り上がった子どもたちは観客席で抱き合い、または飛び跳ねて喜び合っている。

 長年最底辺クラスとしてバカにされしいたげられてきた反動もあってだろう、中には涙まで流して喜んでい者もいる。


「おいおい、まだ始まったばかりだぞ。気を引き締めていかねばすぐに足元をすくわれるぞ」


 危険を感じたワシが注意を促すが……。


「はあーい! わっかりましたディアナさま!」


「おいおまえら気をひきしめろよ!」


「あんたにだけは言われたくないわ!」


 などと行儀のよい返事は返してきても、そこは子ども。

 ウキウキワクワクと浮き足だった様子なのは隠せない。


「しかたない。大きなケガなどせんようにワシが直接指導してやるか」


 ハアとため息をついたワシは、子どもたちひとりひとりの補佐をすることにした。


 具体的な補佐の役割は――

 競技の始まる前に相手の特徴や弱点、こちらの作戦や注意事項を再確認させる。

 競技中は相手の隙を教えてやったり、万が一の場合の対処法などを伝える。

 競技後は戦いの総括そうかつだ。勝ったら褒め、負けたら慰め、そのつど次につながるような助言をする。さらにケガを負っていたら手当てもせねばならず、なんやかやと忙しい。


「やることが……やることが多いっ」

 

 相手が大人ではなく子どもなので気を使うことも多く、ワシはめちゃくちゃに疲れた。


 だが、効果自体はあったようだ。

 子どもたちはワシにいいとこを見せようと競技に集中し、それがよい結果へと結びついていく。


 もともとジーン、ソーニャ、コーラスの三人がAクラスのマカイン、ヘルミナ、ゴライアを圧倒したのも大きかったのだ。

 Fクラスのことを過大に評価した他のクラスが自滅していく。

 FクラスはFクラスで気が大きくなっており、余裕をもって戦うことができている。


「真に勝利を求めるならば相手を呑めとよくいうが、まさにそのとおりだな」


 もちろんすべての子どもたちが勝てているわけではないが、戦績はかなりよい。

 中盤~後半の要所にはチェルチ・ルルカ・ワシが三連続で控えているし、このままいけば上位クラス入りはもちろん、Aクラス入りだって夢ではない。

 まさに順風満帆、といったところなのだが……。


「……妙だな。何か嫌な予感がする」


「ディアナさま、どうしたんですか急に?」

 

 ワシの手伝いをしていたセイラが、キョトンと不思議そうな顔をした。


「あ、もしかして上手くいきすぎて怖いとかそういうことですか? わかりますわかりますっ、わたしもさっきからそうなんですよお~。今までの人生でここまで上手くいったことなかったから逆に怖くなっちゃってえ~」


「……それ、煽り風自慢にしか聞こえんからよそでは絶対言うなよ? っと、そうではない。そういうことではないのだ。上手くいきすぎてどうこうとかではなく、他に嫌な予感……嫌な臭いのようなものがするのだ。鼻に甘く香るような……それがものすご~っく不快な甘さでな……」


 とは言いつつ、その正体がわからない。

 遥か昔にどこかの戦場で嗅いだことのある臭いなのは間違いないのだが……。

 まあこう見えて、ワシも二百五十八歳だからな……。


「なあチェルチ。おまえならわからんか? この訓練場に漂う奇妙な香り、嗅いだことないか?」


 元とはいえ悪魔貴族であり、逃亡したとはいえ人魔決戦を知るチェルチなら、あるいはわかるだろうか。

 そう思って聞いてみると……。


「なんだよディアナ。おまえこんなのわかんないの? これはあれだよあれ、『魔薬まやく』」


「――っ!?」


 その瞬間、顔から血の気が引いた。

 背筋に寒気が、胃に痛みが走った。

 

「……そうだ。どうして忘れていたのだ? これはたしかにあの臭いだ」

 

 かつて幾度となくいだ臭いだ。

 他ならぬあの、人魔決戦で。


 窮地に追い込まれた魔族どもが服用した『魔薬』は甘く香り、服用者に悪夢を見せる。

 悪夢は恐怖と痛みを忘れさせ、精神が無意識に肉体にかけている制限を外させる。

 結果として、死すら恐れぬ狂戦士が誕生するというわけだ。


「ん~でも、普通の魔薬じゃねえな。あれより効果をマイルドにして、量も抑えてる感じ? ま、ガッツリやったらすぐわかるだろうから、当たり前だけどな」


 くんくんと鼻を動かし、チェルチは言う。


「だよなあ~。考えてみりゃ、ここって変な奴が多すぎるんだよ。すごい勢いで相手をバカにしたり、集団でイジメたりさ。自分らを評価する先生の前でもお構いなし。ご立派な勇者様になろうって学校に通ってる連中がさ、そんなことするか普通?」


「……一部の生徒に、魔薬が蔓延まんえんしているということか?」


「どうしてかはわかんねえけど、そう考えるのが普通だろうな」


 チェルチの答えを聞いて確信を深めたワシは、声を張り上げた。


「――ベルトラ!」


「……は! ここに!」


 ワシが呼びかけると、ベルトラが瞬時に現れた。

 遥か東方の国にいるというシノビのように、ワシの目の前でひざまずいている。


 これを見たチェルチは呆れたように。


「空間転移……じゃねえな。あんたそれ、『姿隠し』か? ずっと隠れてディアナのそばにいたのか?」 


「むろんだ。ディアナ様に不逞ふていやからが近づかんよう、常にお護りする役目があるからな。そのついでにディアナ様の匂いを嗅ぎ、お姿を見て興奮しているだけだ」


「あんたが不逞の輩だよ……」


 ハアとため息をつくチェルチはさて置きだ。

 ワシはさっそくベルトラに命令を下した。


「ベルトラよ、今の話は聞いておったな? おまえの部下を動員して、校内にある魔薬を探せ。効果が弱かろうと、元はあの魔薬だ。常習性がある上、副作用で廃人と化す危険性がある。絶対に捨て置くことはできん」

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