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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

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「冒険の書百十八:しかしコーラス、微動だにせず」

 ~~~コーラス視点~~~




 訓練場に降り立ったコーラスは、ゆっくりと首を巡らせた。


 周囲には、他クラスの生徒と審判がいる。

 突如降り立ったコーラスを、皆が驚きの目で見つめている。


「……こいつ今、観客席から跳んで来なかったか?」


「そんなわけないでしょ。どんだけ距離あると思ってんのよ」


「ふん、影が薄いせいで、歩いて来たのに気がつかなかったんだろ」


 驚きは、やがて侮りへと変わっていく。


「というかそいつさ、Fクラスでもお荷物扱いされてた奴じゃなかったっけ?」


「そうそう、人形みたいでさ。無感情で無表情で、いかにも友だちいなそーな奴」


「Fクラスもさすがに人材不足なんだろ。一回戦と二回戦は取ったけどさすがにいつまでもは続かねえから、いったん捨て駒を挟んだんだ」


「「「わお、かわいそーwww」」」


 お荷物、無感情で無表情で友だちいなそう、捨て駒、かわいそう。 

 他クラスの生徒たちは、いかにも楽し気にコーラスのことをバカにしてくる。


「……」


 だからといって、コーラスの心に波風は立たなかった。

 いつもどおりのことだ。いつもどおりの日常だ。

 勇者学院に入学して以来、彼女の周囲にはいつもこんな空気があった。

 だから別に、傷ついたりはしなかった。

 

「てかさ、おまえらすごいじゃん。Fクラスの大躍進だって、みんな噂してるぜ~」


「でもちょ~っと、疑わしいよね~」


「マジでヤバい薬でもやってんじゃねーの?」


「「「怖~いwww」」」


 悪意ある嘲笑が、体にまとわりついてくる。

 空気自体が粘度を増しでもしたかのように、ねっとりと絡みついてくる。

 だがやっぱり、気にしたりはしなかった。


「……」


 コーラスが一切抵抗しないのをいいことに、生徒たちはますます調子に乗ってくる。

 Fクラスの快進撃に嫉妬してだろう、小突こづいてくる者まで出てくる始末。

 

「ちょっとあなたたち。いいかげんに……っ!」


 見るに見かねたセイラが観客席から声を上げかけた、その瞬間。


 ――ドオオオォォォン!


 凄まじい音が辺りに響いた。

 地面が揺れ、空気が震えた。

 生徒たちはその場にうずくまり、頭を抱え込んだ。


「な、なんだいったい!?」


「……何が起こった?」


「爆発? 地震?」


「――おでだ」


 生徒たちの疑問に答えたのは、ひとりの生徒だ。

 坊主頭の男子、Aクラス所属のゴライア。

 人族であるのにも関わらずオーク並みの巨体を誇る彼が、拳で標的(・ ・)を殴ったのだ。

 三回戦の競技である『一発デカいの決めてやれ! 俺史上最強のワンショット!』用の標的を。


 標的は、生徒たちの一撃の威力を測定するための角柱だ。

 判定対象は魔術ではなく、物理攻撃のみ。

 有効攻撃部位として指定されているところに三重に丸が描かれ、柱の上部にはメーターが設置されている。

 ゼロから百まであるメーターの目盛りは、ちょうど九十五を差していた。


「ゴライアが殴ったのか? っておいおい、見ろよあの数値」


「九十五だって……しかも素手で? 計測ミスじゃなくて?」


「もし正しかったとしたら、歴代最高タイだぞ?」


 数年前にSクラスの生徒が叩き出した数値に並んだぞと観客が騒ぐ中、しかしゴライアは喜ぶでもなく、ただただ怒りに打ち震えているようだった。

 

「お、おめたち。い、いいかげんに、しろ。さっきから、よう。どうでもいいこと、ぴーちく、ぱーちく。ち、力比べならお、おでが一番。おでの筋肉が最強で、最高なんだ。他はどうでもいいでねえが」


「「「…………んん?」」」


 ゴライアの言葉に、生徒たちは一斉に首を傾げる。


「そら見ろ、この大胸筋も前腕二頭筋も、美しいべよお~」


「「「ああ~……そういうこと?」」」


 生徒たちは、ポンと一斉に手を打った。


「要はあれか、自分の筋肉オンステージを邪魔されて怒ってる感じ? そんな女なんかどうでもいいから俺を見ろってキレてんのか?」


「正気か? ボールを取ってきたうちのぺスでももうちょい慎みがあるわ」


「おいやめろ、あんまり刺激すんなって」


 生徒たちの不安は、現実のものとなった。


「広背筋を見ろ、大殿筋を見ろ。ほらおめえたち、逃げてねえで見ろ。おでを見ろおぉぉぉぉぉぉ!」


 制服を破り捨てたかと思うと、狂ったかのようにポージングを決め出すゴライア。

 あまりにも勢いよく決めまくるので、ゴライアの周辺だけおかしな風が起こるほどだ。

 

「うわ、やべーやべー」


「ほら~、暴れ出しちゃったよ。誰か止めろよ」


「うお、こっち来るぞ。逃げろ、逃げろ」


 気持ち悪がって逃げる生徒たち。

 逃げるな見ろと、追うゴライア。

 訓練場は、狂気と混沌に包まれた。


「ゴライアくん、ゴライアくん、落ち着いて」


「とりあえず服を着て、ね? あとで先生が見てあげるから」


「ダメだ、まったく聞いていない……」


 教師たちがなんとかしようと訓練場に下りて来たが、レベル五十三の『格闘僧モンク』の本気の暴走が危なすぎて、なかなか止めに入れずにいる。


 しかし、コーラスだけは別だった。

 迫ってくるゴライアに気づいていながら、なおも微動だにせずに立っていた。


「おい君、危ないぞ! 早く逃げろ!」


「くそっ、恐怖で硬直してるのかっ? このままじゃ……っ」


「コーラスさん!」


 セイラも含めた教師たちが口々に叫ぶ中、いよいよゴライアが至近距離に迫る。


「おめのせいで、みなの注意が逸れたのだ! 代わりにおめが、おでを、おでをおでをおでを見ろおぉぉぉぉぉぉーっ!」


 フロントダブルバイセップスから突き出された拳が、コーラスの顔面に迫る。


 それでもコーラスは逃げなかった。

 大人の頭ほどもあるだろうゴライアの巨大な拳を片手で(・ ・ ・)受け止め( ・ ・ ・ ・)、ビクともしなかった。

 

 代わりに、こうつぶやいた。


「今、ボク、攻撃された?」


 煽りなどではなく、心底不思議そうな声で。

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