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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【企画進行中】  作者: 呑竜
「第七章:弱者の戦い方」

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「冒険の書百十五:ソーニャ、煽る」

 ~~~ソーニャ視点~~~




 入れ替え戦二回戦。

 訓練場に降りたあたしを待っていたのは、対戦相手であるAクラスのヘルミナ・フォン・リーリバウムだった。

 子爵家の三女だとかで、豪華な改造制服(金持ちだけに許される特権)と金髪の縦巻きロールがうざったいお嬢様だ。

 ジョブはあたしと同じ『魔術師ウィザード』で、レベルはあたしより三十も多い五十五。


 恵まれた家系に才能、貧乏人を見下す傲慢な性格。

 Fクラスの傍を通り過ぎるたびに大声で『無能』だの『底辺』だの『獣』だのとバカにしてくるし、たまの交流授業ではひたすら自分の魔力を自慢してくる。

 周囲への気遣いなく魔術を放つし、結果的に当たっても適当に謝るだけ。ケガや後遺症で面倒なことになりそうなら、お金で解決。こいつに泣かされた奴は数知れない。

 ホントにホントに、ムカつく女だ。


 そんな相手と『やれるもんならやってみな! タイマン魔法対決!』で戦えるのは、ある意味最高の幸運といえるだろう。


 だって、この競技はこの上なく単純な仕組みだから。

 魔術師同士が至近距離から魔術を撃ち合い、相手の防御を突破して倒した方の勝ち。

 それを一位と最下位が決まるまで繰り返すトーナメント方式。

 初戦でこいつを叩きのめしてしまえば、その後も一気に崩れるかもしれない。

 なんだったら欠場か、最下位まで落とせるかもしれない。


 ああそうだ。

 あたしはお行儀のいい女じゃない。

 リゼリーナの姫さまみたいな博愛精神や、ルルカさまみたいな優しさも持ち合わせていない。

 だからこそ、思うんだ。

 憎い奴を前にした時は、素直にさ。


「女神さま、最っ高に嫌いな奴をぶちのめす最っ高なシチュエーションを作ってくださって、ホントにありがとうございます」


 戦いが終わった後のみんなの反応を想像したあたしが、ニヤニヤ笑いながらつぶやいていると……。


「あらあら……こんな場面で笑みを浮かべるなんて、恐怖のあまり気が触れてしまったのかしら? お可哀想に」


 扇子せんすで自らの顔を仰ぎながら、ヘルミナが煽ってくる。 


「同じ舞台に立つことで、初めて格の違いを感じたのでしょうか。ではしかたありませんね、このわたくしが改めて教えて差し上げましょう。AクラスとFクラス、それは人と獣ほどに差のあるものなのですよ」


「そのAクラスのマカイン先輩は、Fクラスの子どもにあっさり負けたはずだけどね。もう忘れちゃったの? その歳でボケてるの先輩? あらあら、お可哀想に(・ ・ ・ ・ ・)


「こ、この小娘っ、庶民の分際でなんたる失礼な口のきき方を……っ!?」


 蝶よ花よと育てられたせいで、真っ向から他人にバカにされた経験がないのだろう、ヘルミナは顔を真っ赤にして怒り出した。

 魔法の発動体である扇子(使い勝手から考えても、普通はあたしみたいな長杖を媒体にする。しょせん金持ちの道楽だ)をへし折らんばかりの勢いだけど……。


「な、な、な~んてねっ。淑女はこの程度の侮辱で取り乱したりしないものなのですよ。残念でしたわねあてが外れて。一回戦と同じように姑息な騙し討ちがしたかったのでしょうけど、そうはいきませんわよ、庶民」


 ぎりぎりのところであたしの思惑に気づいたのだろう、ヘルミナは全力で平静を取り繕った。

 小鼻をぴくぴくさせて、笑えるぐらい必死に見えるけども。

 

「……あらそう、な~んだ残念。効いてるように見えたけどなあ~」


 冗談めかして言ったけど、残念なのはホントだった。

 だって、ジーンの時みたいに開幕と同時に速攻で畳み掛けることができれば、それが一番簡単なんだもん。

 

 まあでも、相手を怒らせて一度は平静を失わせた時点で当初の目的は達成できたかな。

 ここから精神を立て直して冷静に戦うなんてのは難しいだろうし。


 ――とにかく相手を怒らせろ。冷静さを失った魔術師ほどもろい者はないからの。

 

 だっけな、ホントにディアナさまの言うとおりだと思う。

 高度な精神性を保ちつつ強力な術を制御することが求められる魔術師にとって、怒りは大敵。

 狙いを外したり呪文をとちったりはもちろん、下手したら暴発で自分を傷つけることだってあるもんね。


 ん~でも、そう考えるともうひと押しかな~。

 勝利をより確実なものにするためにはもう一歩、ヘルミナの心に土足で踏み込んでやりたいところ。

 となると、やっぱりあれ(・ ・)か。


「そういや先輩、リゼリーナ王女殿下のライバルなんだっけ?」


 姫さまの名前を出すと、ヘルミナはピクリと耳を動かした。


「そ、そうですけど? 急にどうしましたの? あ、庶民のあなたにもやっとわかったのかしら? このわたくしが王族に匹敵する存在であるということを」


 急に髪を整えたりして、ドヤ顔して。

 おーおー、これはなかなかの食いつきだわ。


 笑いを嚙み殺しつつ、あたしは言った。

 いかにもあなたを尊敬してます風に。


「そうそうそれだよ。いやあ~、すごいよな先輩は。この間の合宿の時、王女殿下が顔出してくれたんだけどさあ~」


「り、リゼリーナがFクラスの合宿にっ? 顔を出したですってっ?」


 信じられないという顔でヘルミナ。


「そこで色々教わったのよ。入れ替え戦の戦い方とか、高レベルな人の立ち回りとか。そん時魔術師についても聞いたんだ。そしたら例を出してくれてさ、その例がヘルミナ先輩だったってわけ」


「わ、わたくしをっ? リゼリーナが例に出してっ? あぁ……やはりわたくしこそ選ばれたライバル……! そ、そそそそれでリゼリーナはわたくしのことを何とっ?」


 頬を紅潮させて身を乗り出して、完全に舞い上がってるヘルミナ。

 あ~、やっぱりな。

 この人、ライバルとか言ってるけど、ただの姫様ファンじゃん。


 だったらやっぱり、ここはひとつ――


「鼻持ちならない金持ちお嬢さまで、魔術師の才能はゼロ。なんで学院にいるのか意味わからない、だってさ」


「な――?」


 絶望と衝撃で真っ白になるヘルミナ。


「な~んて、ウソだよ♪ ごめんねごめんね~♪ いやあ~、先輩ってば最っ高っ、からかいやすすぎて面白すぎっ♪ でもま~さ~か、この程度で崩れたりしないよね~♪ マカイン先輩みたいに崩れたりしないよね~♪」


 歌うようなあたしの喋りを聞いて、改めてバカにされたことに気づいたのだろう、ヘルミナはもうプンプンだ。

 目を吊り上げてあたしを睨みつけると、扇子をまっすぐに向けてきた。

 殺意と共に。


「――お死になさい」


 そして、このタイミングで開始の鐘が鳴り――

 ヘルミナは朗々(ろうろう)たる声で呪文を詠唱――

 

「『烈々(れつれつ)たる風の王よ! 切り裂き荒ぶる風のぬしよ! いにしえの契約に従い、万象ばんしょうことごとくをぎ払え! 猛威暴風テンペスト』」


 風の王との契約による暴風の魔術はしかし――発動しなかった。

 扇子の先に集まった魔力と共に、パリンと粉々に砕け散った。


「な……っ!? 発動しないですって……!?」


 驚きに見開かれたヘルミナの瞳に映るのは、ドヤ顔のあたしとあたしの長杖。


「いったいなんの干渉ですの……? 妨害アイテムの持ち込みはルール違反のはずではなくて……?」


「妨害アイテム? ま、そう疑いたくもなるよね。自信満々の魔術が吹き散らされたら。でもざ~んねん。これはれっきとした事実で、れっきとしたあたしの実力。――『対抗呪文(カウンタースペル)』よ」

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