「冒険の書百十一:一番手」
リゼリーナからAクラスの情報を持ち帰り最終調整としたところで、いよいよ個人競技が始まった。
各クラスの担任と生徒は観客席へ、各競技の出場者は訓練場へ。
ワシはひとまず、観客席から競技の行方を眺めることとなった。
入れ替え戦は、二段階に分かれて行われる。
後半に控えているのが『団体競技』、最初に行われるのが『個人競技』だ。
『個人競技』はAクラスからFクラスの子どもたちが、いくつもの競技で戦う。
競技自体は三十数個ほどあり、その中でよりよい成績を残した者にポイントが与えられる。成績がよければよいほどポイントが多くなる。
一番手が結果を残し、二番手三番手で一気にポイント差をつけて戦いを有利に進めていくのがセオリーで、初戦から三戦目までに自然と各クラスのエース級が集まることになる。
「あの……どうして一番手がディアナさまではなくジーンなんですか?」
セイラの疑問はもっともだ。
「たしかにディアナさまに頼りすぎはよくないと思いますけど、初戦ぐらいは……」
どうしても勝たなければならない戦いなのに、もどかしい気持ちが顔に出ている。
「焦るな焦るな。それにな、ワシが出ないのは何ももったいぶっているわけではないぞ。確実に勝ちにいった結果がこれなのだ」
思ってもみなかったのだろうワシの言葉に、セイラはぱちくりと瞬きする。
「確実に勝ちに……もしかして、競技内容が関係してます? 初戦の競技は『いつから斬られていないと錯覚していた? ファーストアタッカー!』。相手より早く初撃を叩き込んだほうが勝ちのスピード勝負だからクラスの中でもスピードのある、かつ小柄な選手を選んだということですか?」
「もちろんそれもある。だが、一番は精神性だな。ジーンはノリがよく、ムードメーカーになる資質も持っている。いかにも一番手に向いた性格だ。だが、それだけでもないのだ」
ワシはチラリと訓練場に目を向けた。
ジーンは「おいっちにーさんしー」と準備運動をしている。
その表情にはやる気が溢れ、楽しそうに口元を緩めている。
「見ておれ。すぐにわかる。あやつがいかに一番手に向いた性格かということがな」
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