因幡から丹波へ
さて、話の続きである。因幡を誰に任せるか。邑美郡は引き続いて鳥取城代の井伊直親に任せる。石高は五千石になるだろう。井伊谷の代わりである。それくらいは用意しなければ一族郎党が路頭に迷うことになってしまう。
本多正信は俺の傍付きだ。色々と相談に乗ってもらいたい。ただ、俺に近くなる代わりに領地は与えられない。残る八東郡と岩井郡、法美郡と智頭郡南部は直轄地としておこうかな。
ただ、岩井郡と法美郡は敵地と接していないから開墾を進めていこう。八東郡と智頭郡南部は敵国と接しているので砦を築くべきか。であれば、何処に築くか。それも含めて本多正重と遠藤俊通に任せてみるか。
また、井伊直親に行ってもらいたいことは湊の発展だ。何故か俺が治める領地は日本海沿いになることが多いのだ。だが、それならそれで構わない。海運は荷が沢山運べるのだ。
農作物を育て、銭回りを良くして富国強兵と成す。言うは簡単だが行うのが難しい。海沿いは作物の栽培に向かない。それだけで使える土地が減ってしまうのだ。
やはり内陸を攻め取らなければならないだろうな。となると、丹波の地を狙うほかないだろう。どの道、内藤宗勝と約束してしまったのだ。その約定通りに丹波は攻める。
だが、まずは領内の安定が優先である。問題は将軍である足利義輝をどうやって黙らせるかだ。
ここのところ、三好を攻めろとひっきりなしに文が届く。悪いが、今はまだ攻めることはできない。ただ、約束は約束だ。
攻めるとしても松永のご機嫌を伺いながらである。松永だけは敵に回したくない相手だ。あーあ、もっと俺が強ければな。
今はまだ三十万石にも満たないのだ。三国以上も治めているというのにだ。朝倉が治めている越前よりも石高は少ない。
三好を攻めるのは六角、畠山、北畠、朝倉、浅井の誰かが盟主を務めて声を上げた場合にしよう。公方にもそう伝えるのだ。
だが、上に挙げた五家の中で、当てになるのはどれだけあるだろうか。六角はお家騒動中だし畠山も北畠も三好にコテンパンにのされてしまっている。朝倉は頑として動かない。残るは浅井だけだ。浅井は六角の領地を狙っている。うん、動きそうもないな。
それから鉄砲も量産しなければならない。どんどん改良して性能を上げたいのだが、どうすれば良いのだろうか。
俺が知ってるのは弾を丸ではなく楕円を半分にした流線形にし、回転を加えることで真っ直ぐに飛ばせるということくらいだ。ライフリングだな。この頃には欧州では発明されていたが、実用化まではしていないはずだ。
火薬を入れて弾を込めて放って掃除して、という手順は簡略化できないだろう。なので、いかに早く済ませるかが肝だ。あとは弾の命中率を上げる方法を模索するとしよう。
となると、鉄も沢山要るな。今、この若狭には鉄砲鍛冶だけではない。刀鍛冶や甲冑師なども多数集まってきている。一大拠点となりつつあるのだ。やはり小浜の湊があるのが大きいか。
となると、街道の整備も進めなくては。若狭から因幡の鳥取まですぐに後詰めに行ける道を作らねばならんのだ。領地が広がると良いことばかりではない。
領地の広がり方に問題があるのだ。東西に伸びるように拡張したものだから、両端までの移動距離がかかってしまうのである。しかし、だからと言って理想通りに領地は広げられない。我等より弱者からしか領地は奪えないのだ。
いや、待てよ。確か早合という技術があったはず。えーと、弾と一発分の火薬を紙か何かで一緒に保管し、火縄銃の装填時間を短縮する技だったと記憶している。これを遠藤秀清に研究させよう。
「御屋形様、少し宜しゅうございますかな?」
「如何した。与四郎、弥八郎」
黒川与四郎と本多正信が俺に話しかけてくる。これは良い気分転換になるだろう。良い話を持ってきてくれた、という前提が崩れていなければの話だが。
「三好修理大夫が病にかかっているとの噂が蔓延っておりまする」
そう言ったのは与四郎である。どうやら三好長慶が病に伏しているようだ。このままということもあり得る。あまり考えたくはないことだがな。
「ふむ。修理大夫が病とな。弟と息子を亡くし、気が弱ったかな。病は気からとも言うし」
弟の十河一存と三好実休、それから息子の三好義興を立て続けに亡くしているのだ。気持ちは分からなくはない。もう、誰が味方で誰が敵なのか分からなくなっているだろう。
「このままだと三好は崩れるな」
「某もそう考えまする」
そう述べる正信。これは三好が崩れたら畿内は荒れるぞ。そして公方が騒ぎ出す。ああ、嫌だ嫌だ。考えるだけで嫌になってしまう。俺はその場に寝転んだ。
三好長慶も毛利と同様に孫を擁立すればよかったのだ。せっかく忘れ形見の孫が居るというのに。他所から養子を取って跡を継がせるなど、荒らしてくれと言ってるようなものだ。
「御屋形様、しゃんとなさいませ」
「弥八郎。三好修理がこのまま崩れたら如何すべきであろうか」
「さて。御屋形様は如何お考えで?」
質問を質問で返す正信。どうやら試されているようだ。
では、これを上手く丹波攻めに活用できないものだろうか。いや、難しいな。使いようがない。やはり力で押すしか攻略法は無いのだろうか。いや、やはり松永に近付くべきだろう。
「これを機に松永と近付くのは愚策であろうか」
「あまり良いとは思いませぬな。巷の噂では松永弾正が唆し、裏で三好を操っていると」
「大事なのはその真偽がどうあれ、市井がその噂を信じているところか」
「左様にございまする。なので、表立って繋がるのはお勧めしませぬ」
表立って、ということは裏で繋がれというのが正信の真意だろうか。それであれば既に松永長頼(内藤宗勝)と繋がっている。そこから打開があるというのだろうか。
「それであれば既に内藤蓬雲軒とは繋がっておる。丹波分割の密約も結んであるぞ」
「ほう。それはそれは」
俺は本多正信に内藤宗勝との交渉の経緯を全て話した。俺の狙いとしては赤井と籾井の丹波の両鬼を内藤に押し付けるところにある。
「それであれば攻め込む時期を共にせねばなりませんな。そしてこちらが少し遅れて攻め込むのです。目を内藤殿に向けさせなければ」
「成る程。与四郎、草の者は丹波に?」
「勿論にございまする」
それから俺は本多正信、黒川与四郎と丹波攻略のためのあれこれを相談し合った。今持っている情報を全て曝け出し、地図に駒を置いて綿密に話し合ったのだ。
そして、いつの間にか夜は明けていたのであった。そろそろ本腰を入れて丹波を切り取りに向かう日が来るのかもしれない。
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