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異世界八険伝  作者: AW
第3章 激動のロンダルシア
62/92

61.共闘と協同

魔人カイゼルを討伐したリンネたちを訪れる男が2人――。

 魔人カイゼルを打倒したボクたち5人(リザさんを含む)は、ギルドの冒険者たちに先んじて転移魔法でフィーネに戻ってきた。


 迎えてくれたのはアイちゃんただ1人。

 ギルドマスターは、あからさまにボクたちを避けている様子だった。


 そうなんです。

 美少女には美少女なりのプライドがあるのです!



「アイちゃんも来るのだよ!」


 汚れてないですぅと寝言を言って逃げようとする末っ子のアイちゃんを捕まえ、ギルドの大浴場を借りきって、全員で元気一杯に洗いっこ。身体の汚れだけじゃなく、辛い出来事も洗い流すのです。



 (秘) (秘) (秘) (秘)(秘)

 (秘) (女子の楽園) (秘)

 (秘) (秘) (秘) (秘)(秘)


 おっとっと、リザさんもエルフ体型だ!

 確か16歳だったような気がするけど、胸はレンちゃん以下。序列第2位のミルフェちゃんにすら勝てないんだから、序列第1位のメルちゃんは遥か遠い存在だね。


 って、女の子が集まるといつも胸か髪の話題になるのは必然なのだろうか。

 ここにいる6人のうち2/3は異世界人……ということはだよ、全世界共通のガールズトークなんでしょうね。

 最近徐々に慣れてきたよ。話題に出してくるのは決まってアユナちゃんかレンちゃん。アイちゃんは無関心を貫いている。そこから推測するに、劣等感がそうさせているのかもしれない。



 お風呂から上がると、豪華な食事がボクたちを待っていた。

 ギルドの計らいで、来客室がささやかな祝勝パーティと化していた。今は午前11時だからブランチかな。


 色とりどりの野菜や果物、スープが並ぶ。みんな大興奮で踊るように食べていた。この人たちは食べ物系の《幻術魔法》に注意だね。

 どこから聞きつけてきたのか、ボクが大好きなハンバーグもある! これは、宿屋のアイリスさんがギルドマスターの娘だと言っているようなもので――。


 ちなみにこの世界、お米や麺類は無いみたい。やはり異世界には一攫千金の卵がたくさん落ちている。でも、優先順位を間違えてはいけない。今すべきは魔物から世界を救うことなのだから。



 そんなことを考えていると、ドアを高々とノックする音が聞こえてきた。


「リンネ様、お客様がお見えです。お通ししても?」


「はーい」


 誰だろう? ギルドマスター?




「お久しぶりです、リンネ様」


 え? 誰?

 20歳前後の茶髪のイケメン……どこかで会ったっけ?


「クピピィ!」


 えっ!? 魔族!!


「おっと! それはクピル……う~ん、予定が狂っちゃうけど仕方ないなぁ」



 突然、男の体が闇に包まれたかと思うと、2本の角を持つ魔人の姿に変わる!


「「魔人ウィズ!!」」


 にわかに緊張が高まる!

 メルちゃんとレンちゃんが素手ながら、魔人を囲むように移動する。アユナちゃん、君はなぜボクの後ろに移動するのよ――。

 まぁ、不審な動きをしたら即《時間停止クロノス》を使うけどね!


『待って! 敵意はないから!! 俺は普段、ホークという人間の身体で行動しているんだ――』


「え? あの、ホーク……さん?」


 ミルフェちゃんの護衛として剛剣のギベリンと戦い、北の大迷宮でPK貴族から助けてくれた、あのホークさん!?


「誰ですか?」

「あたしも知らない人!」

「私も、わっかんなーい」

「わたしも初対面です」

「知りませんね」


『――ちょっとあっちで泣いてくる』


「アイちゃんは初対面だけど、リザさん含めて全員知ってるでしょ! それはともかく、何しに来たの?」


『さすが俺たちのリンネ様だ、お優しい! おっと、怖い子が睨んでるから用件を言わねば――発狂爺様カイゼル討伐おめでとう!とお祝いを言いたくて来たんだ。これ、お土産。是非受け取ってくれ!』


 魔人ウィズは、とびきりの笑顔でボクに3冊の魔法書を差し出してきた。


 あまりにも高価な贈り物に、ボクたちの不信感は募る一方で――皆はボクとウィズのやり取りを油断なく見守っていた。


「ボクたちに協力する意志があるなら、カイゼル戦で手伝ってほしかった。あなたの真意がイマイチ伝わらないよ」


 そう言いつつ、テーブルに並べた魔法書を引き寄せ、がっちりと胸に抱く。


『それを言われると頭が痛すぎる! 俺にもできることとできないことがあるんだよ』


「何ができて、何をできないのか具体的に!」


『それ聞いちゃうか。今俺が表に出るとお互いのためにならないことはわかるよね?』


 私が魔人とつるんでいると思われる?

 ウィズは他の魔人に殺されちゃう?


「うん、わかるような気がする」


「理解が早くて助かる。まだ時期尚早なんだけど、勇者リンネの頼みならば隠さず言うよ。まず、できることは、情報集めとアイテム提供だ。できないことは、魔人や魔族との直接の戦い。ただし、時期が来れば当然手伝うさ。魔族と人間の共存共栄のために、共闘しよう!』



(リンネさん、上級魔法書をくれないということは、協力はするけど、わたしたちが強くなり過ぎるのは嫌だと言っているようなものです。こういった相手は最も警戒に値します。利用しようという意図が見え見えです)


(なるほど、そうかもね。でも、カイゼル戦でボクたちは力不足を痛感したわけだし、共闘もやむを得ないと思うの。引き続き警戒しながらだけど――)


(そうですね。裏切られる前に裏切るくらいの気持ちでいましょう)


 アイちゃん、怖い子……。


「わかった。じゃあ、あなたがボクたちに求めるモノは何? 今度はパンツ欲しいとか言わないでね?」


 魔法書をポンポン叩きながら、ウィズにジト目を送る。


『ははは! リンネ様は面白いな! 勇者グッズはいくつでも欲しいんだが、今、1番俺が求めるモノは――勇者リンネとの結婚だ』


 場に殺気が満ちる。

 一触即発の状況――。


『おっと、冗談に冗談を返しただけなのに! 悪かった、今のは真面目な冗談だ。真面目ついでに言うと、俺が求めるモノは魔人の討伐だ。発狂爺様(第3位)の死によって、情勢はこれから大きく動き出す――』



 ウィズは魔人の動向について語り出した。こんな情報、普通は手に入らないよね――。


序列第1位:不明(不明)不明

序列第2位:リーン(不明)デスモス地境防衛

序列第3位:空席

序列第4位:グスカ(吸血鬼)アルン王国制圧

序列第5位:ガルク(虎人族)不明

序列第6位:ギル(魚人族)南海の制圧

序列第7位:ウィズ(鬼人族)勇者と同盟

序列第8位:ザッハルト(大蛇)ティルス侵攻

序列第9位:空席

序列第10位:空席


 現在、序列第7位のウィズは6体の魔族を配下に加えており、しばらくは5位ガルクの情報収集に注力するそうだ。



『フリージア王国に新たな魔人が来るとしたらガルクだからな。奴も俺と同様に普段は人に変身して動いている節がある。勇者リンネにはザッハルトとグスカをお願いしたい』


「そんなこと言って、ボクたちを嵌める罠じゃないよね?」


『今は、信じてくれとしか言えないが――』





 長く続いた沈黙を、メルちゃんが破る。


「空席が埋まる可能性はありますか?」


エロ姐様(ヴェローナ)へそ毛ワニ男(ギャランドゥ)は生きているからな。だが、第3位が埋まらないのはわからんな』


「使えない男ですね」


『まぁ、自覚が無くはない。情報は集めておくよ。他にも欲しい情報があれば教えるぞ。俺に彼女はいるのかとか、どんな子がタイプかとか――』


「ボクたちが欲しいアイテムは、エリクサー、マジックポーション、上級魔法書なんだけど?」


『会話が噛み合わないな! だが、勇者リンネの下着セットと交換なら――』


「「『交渉決裂です!』」」


 否定はやっ!!

 ボクの下着セットは世界の平和より大切なのね。


『なるべく探してはみるが、俺のような()()()()傭兵業じゃ金が足りないんだよ。強盗してもいいなら楽なんだが?』


「それはダメ! じゃあ、ボクたちが魔人を倒す報酬ってことにしとくね。しっかり働いてね!」


『なんか夫婦みたいでいいな! かなり厳しいが、それでいこう!』


 共闘の交換条件が成立するや否や、魔人ウィズは退席した。



「殺意が湧いちゃいます」と、リザさん。

「かっこよかった! けど夫婦はダメ!!」と、アユナちゃん。

「鬼人族の魔人……彼は私より数倍強いです」と、メルちゃん。

「クピィちゃんはクピルって種族なんだね!」と、レンちゃん。

「彼は、常に警戒が必要な危険人物です!」と、アイちゃん。


 まぁ、反応はそれぞれですけど、あまり反対意見はないみたいで安心した――。



「魔法書なんだけど、どうしよっか?」


 ボクは、《異空間収納の腕輪(アイテムボックス)》から《召喚魔法/中級》を取り出し、4冊の魔法書をテーブルの上に並べる。


《闇魔法/下級》

《火魔法/下級》

《召喚魔法/下級》

《召喚魔法/中級》


「私は《精霊召喚》できるし、エルフにとって火も闇も禁忌だから全部いらな~い! リザ姐もだね~」


「うん、《精霊魔法》と干渉して、唱える前から寝てしまうわね」


「あたしは魔法に興味ないんだよねぇ。剣と共に生きていくからパス!」


「う~ん、ボクも《雷魔法》と《水魔法》があるからいらないかな。メルちゃんとアイちゃん、どうぞ!」


「それでは、私は《闇魔法/下級》を頂きますね」


「はい。メルさんは《闇魔法》と相性が良さそうです。あと、わたしの《情報収集ギャザリング》によると、《召喚魔法》はリンネさんによく合っていますね」


 召喚石を使えるからかな?

 魔法に相性があるなんて知らなかったよ。


「わかった。ボクが《召喚魔法/下級》と《召喚魔法/中級》を貰うね。じゃあ、アイちゃんは《火魔法/下級》ね!」


「まだご飯食べてなかった!!」


 アユナちゃんの一言で、誰かのお腹が壮大なファンファーレを奏でた――。




 ボクたちは食事を終えると、それぞれ魔法書の契約を行った。


《召喚魔法》を中級まで取得したボクの左手中指には、いつの間にか銀色に輝く指環が填まっている。


鑑定魔法リサーチ:召喚リング/中級。自分の魔力以下の召喚対象を2体まで収容可能》


 なるほど、宿屋代が節約できるってことかな!

 後で召喚してみたいね!!




 ★☆★




 またドアをコンコンとノックする音が聞こえてきた。ウィズが魔法書を買ってきたのかな?


「リンネ様、マスターがお話があるそうです。今はお時間宜しいでしょうか?」


 違った!

 今日は勘が冴えないなぁ。


「あ、はい! 大丈夫です!」




「失礼するよ。食後に悪いな」


「いえ、わざわざ来てもらってすみません」


 皆、恐縮しているみたい。

 こっちからお風呂後にでも報告しに行くべきだったね。


「この度の魔人討伐、心から感謝する!! 先程、派遣した冒険者が帰還し報告を受けた。亡くなった者の家族には十分報いるつもりだ。気に病むことは無い」


「力及ばず、すみませんでした。もし、討伐報酬などがあれば、亡くなった方々のご家族へあげてください」


「お前ならそう言うと思ったよ。それで、例の件なんだが――勇者リンネ、これに目を通してみてくれ」


 ギルドマスターの資料には、調べうる限りの奴隷の現状が纏められていた。

 昨日と今日で魔人討伐の準備だけでなく、ここまで調べあげたのか――。



『奴隷数調査結果(都市別)

◆フリージア王国:契約数149、未契約数50

 王都フリージア:契約数74、未契約数6

 ティルス:契約数21、未契約数20

 ランディール:契約数16、未契約数8

 ルーク:契約数15、未契約数4

 チロル:契約数13、未契約数4

 ヴェルデ:契約数6、未契約数6

 ノースリンク:契約数4、未契約数2

 フィーネ:契約数0、未契約数0


◆アルン王国:契約数236、未契約数56

 王都アルン:契約数108、未契約数25

 ニューアルン:契約数63、未契約数8

 ゴルディス:契約数32、未契約数6

 サーザ:契約数15、未契約数6

 ウェイホルン:契約数11、未契約数2

 ソフィテル:契約数4、未契約数6

 ソフィリス:契約数3、未契約数3

※ 契約数は、死亡報告のない者も含む

※ 未契約数は、現在奴隷商人が所有中

※ 南の新興国については情報なし――』



 多いのか少ないのかわからないけど、今の人口から考えると比率的には多いよね。

 でも、どうすれば奴隷制度を無くせるんだろう。


「どちらも見ての通り、王都とそれに次ぐ第2の都市に集中している。そこでだ。我々ギルドと協同してくれないか?」


「協同、ですか。具体的には、ボクたちは何をすべきでしょうか?」


「俺は王国に働きかけて法整備を行う。それと並行して現在契約中の奴隷の買取りと審査・保護・解放を行う。これは強権的にやるしかないからな。勇者リンネは、未契約の奴隷の買取りを優先してくれ。審査や保護はギルドが行う。その際、不法行為を行っている奴隷商人に対して実力行使が可能になるよう手筈も整えておく。最も、ほぼ全ての奴隷商人が不法行為に手を染めているだろうから、実質的には奴隷商人の潰滅を依頼することになる」


 そう言って、ギルドマスターはニヤリと笑った。


「特に、フリージア第2の都市ティルスには未契約奴隷が多く集まっている。ここには大手の奴隷商人が居るんだ。そいつを優先的に潰してもらいたい」


「ティルス……」


 ボクは先程の魔人ウィズから得た情報を伝えた。ギルドマスターは喫驚きっきょうしてしばらく眼を見開いていた。



「極東の町ルークには私が行きましょう」


 リザさんが真顔で突然提案してきた。


「リザさん、理由がありそうですね?」


「はい。ルークの東の森にあるエルフの村には何度か行ったことがあるので、周辺の地理には精通しています。というのは建前で、本音を言えば、エルフの村が心配なのです。フリージアにはエルフはもうそこにしか生存していませんから……」


「種族を守りたい気持ちはわかります! ボクも一緒に――」


「リンネちゃん! リンネちゃんはティルスに行かないとダメだよ! 魔人を止めなきゃ! ルークには私が行くよ。リザ姐と私なら大丈夫でしょ?』


「逆に、余計に心配ですが……」


「もう! メルちゃんほど強くないけど、私だって魔族に対抗できるくらい強くなったんだから!」


 ボクにべったりだったアユナちゃんが別行動をしようとしてる。なんか寂しいな。

 でも、それくらい重要なんだよね。理解してあげなきゃ。


「あたしはアユナちゃんに反対。召喚者の義務を放棄して……リンネちゃんを見捨ててエルフの村に籠るわけ?」


「レンちゃん!」


「違う違う違う! そんなつもりじゃない!

 わかってるもん。わかってるけど……もうエルフが居なくなっちゃうなんて耐えられない。リザ姐を送って、村が安全そうだったらすぐ戻るもん!」


「うんうん、ボクはわかるよ、大丈夫」


 ボクは泣いているアユナちゃんを優しく抱き締めてあげた。羽がふわふわしていて気持ちいい。


「リンネちゃんは甘やかしすぎだよ! アユナちゃんが1人で戻れる訳ないでしょ? 魔物に追い掛けられて、道に迷って、野生エルフになっちゃうんだ……あたしは心配性なんだからね!」


 いつの間にかレンちゃんがアユナちゃんに優しい。貧乳同盟でも組んでるのかな。


「なら、わたしが一緒に行きます。わたしがいれば道に迷うことはないし、もしアユナさんが野生エルフになったら、リンネさんに《念話テレパシー》で知らせて一緒に捕獲しましょう。それでも不安でしたら、護衛をつけてください」


 アイちゃんがアユナちゃんを弄ってる。

 ま、アイちゃんが入れば大丈夫でしょ!


「うん、わかった。だけど、3つだけ条件がある。1つ、護衛は女性にすること。2つ、なるべく早く合流できるようにすること。ボクが寂しくて耐えられないから。3つ、食べ過ぎてぽっちゃりにならないこと。重いと転移ができないからね」


『リンネちゃんっ! ありがとっ!!』



 成り行きを見守っていたギルドマスターが、安心した表情で退席した。

 あぁ、魔法書やポーション、装備を融通してほしかった。でも、ギルドも奴隷買取りに大変なお金を費やすことになるだろうから言い出せなかったよ。



「そしたら、ボクとメルちゃん、レンちゃんの目的地は王国第2の都市ティルスで、リザさん、アユナちゃん、アイちゃんはルークだね。今日はしっかり準備をして、明朝出発しよう!」


「「はい!」」

束の間の団欒も終わり、一路東、王国第2の都市ティルスへと向かう!

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