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異世界八険伝  作者: AW
第2章 新たな仲間たち
54/92

53.北の大迷宮Ⅵ

いよいよ後半戦、21階層へ進むリンネたち。

「水」のステージを無事にクリアできるか!

「リンネ先生! 質問です!」


「レンさん、どうしました?」


「先生がバチバチやると、あたしたちもビリビリしそうですが?」


「どうしよう? 船に乗るとか、壁を歩くとか、空を飛ぶとか――」


「リンネちゃんが《雷魔法(サンダー)》を使わなければ良いのです!」


 最近、必殺技化してきた《雷魔法(サンダー)だけど、みなさんからの評判は良くないらしい――。



<21階層>


 ボクたちは現在21階層の入口で(たたず)んでいる。

 というか、全員が靴を脱ぎ、水に足を突っ込んでひんやり感を楽しんでいる。こうすると、小川のせせらぎの中を歩いているみたいで、とっても気持ちいい。


 そう、ここから続くのは水のフロア――全員が横1列に並べるくらいの通路には、深さ5cm、ちょうど(くるぶし)くらいまで水が溜まっていて、下手に電気を流せば、全員まとめて感電死する危険性が秘められている――。


「しばらくは《雷魔法(サンダー)》禁止だね!」


「では、ここからは皆で戦いましょう!」


「あたしも頑張るよ!」


 皆さん嬉しそう。特にメルちゃんが腕まくりまでして、やる気十分だ!


 幅5mほど用水路が網目状に入り組んだ構造の迷宮を、前衛メルちゃんとレンちゃん、後衛ボク(祝☆マッパー復帰)とアユナちゃんのフォーメーションで突き進んで行く。



「いる! 水の下級精霊ウンディーネがいる!」


 アユナちゃんお決まりの精霊探知の叫びが始まった。それにしても、なんでこんな迷宮の中に精霊さんがたくさん居るんだろう――。


 さっそくお話をして契約してきたアユナちゃん。これで、風のシルフ、光のウィルオーウィスプ、火のサラマンダー、水のウンディーネという下級4大精霊は全て契約したことになる。

 コンプリート特典で何か貰えるのかと思って訊いてみたら、あまり例が無いのでわからないとのこと。こう見えても、アユナちゃんって凄いんだね――。


「えっと、次の分岐を左に行って1kmくらい進むと宝箱があるね。分岐の所に毒のトラップがあるから触らないようにね、特にそこの優秀なエルフさん!」


 褒められたのが嬉しくて、弄られたことに気づいていないらしい小学生エルフっ娘に今日も萌えます。


 途中、大きなカニやらヘビやらワニやらが現れたけど、鑑定をする前に去って行く。足場が悪いのに、前衛2人は忍者みたいに走ってるよ。バトルジャンキー復活ですね!




 ★☆★




「宝箱開けるね。あっ! 水魔法の中級!」


 水のフロアなのでもしかしたらと思っていたんだけど、本当に出たよ――。


「やったネ! リンネちゃん!」


「え? ボクが貰っていいの?」


「「「勿論です!」」」


 下級をマスターしていないと中級を覚えられないうえ、アユナちゃんには精霊さんが居るから困らないし、メルちゃんとレンちゃんはそもそも魔法への情熱が無いからね。それでは、ありがたく貰っておきます!


「ありがとう! 滝シャワー係、頑張るね!」


 早速、魔法書に魔力を流して習得。これで雷と水が中級になりました!



「2回連続で右折した後、4分岐の1番左を進むと宝箱部屋があるみたい。ちなみに、宝箱を開けると魔物が大量に湧くトラップだって――」


 水をバシャバシャ飛ばしながら、4人は小川を走る。水はゆっくりと下っているような感じで流れている。

 秘境を流れる清水のように透き通っているけど、魔物が湧く場所の水だからね、ちょっと飲みたくないかな――。


 そんな話をしているうちに、目的の宝箱部屋に到着した。


「宝箱開けるよ! おっと、武器だね。アクアブレードって片手剣。特殊効果で《水刃/初級(ウォーターカッター)》が出来るって。一応、レンちゃん持っててね」


「はーい、あんまりあたし向きじゃないけどね」


 その後、大量に湧いた魔物も協力して撃退し、迷路に詰まることもなく、ボクたちは22階層への階段に到達した――。



<22階層>


 迷宮自体は21階層と同じパターンだ。気になるのは、水位が増して膝まで達していること。

 そして――遭遇する魔物のうち、水中から攻撃してくる割合が高くなってきたこと。


 それでも、みんなが上手に連携して戦い、順調に進んで行く。


 この階層から宝箱が水に浮いていた。中身が水浸しにならないのは良いんだけど、何だか違和感がある。


 見つけた3つの宝箱の中身は、お金(22000リル)、毒消し、魔笛だ。魔笛は、魔物を呼び寄せる効果があるらしい。今は超絶必要ないね。


 3時間ほどバシャバシャと走り回り、あとは階段まで真っ直ぐ進むだけという所まで来たとき、クピィに反応が――。


「クピクピ! クピィ!!」


「リンネセンパイ! これって魔族反応だよね!?」


 クピィ係のアユナちゃんが初めて仕事をする。


「私は、半径50m以内には特に気配を感じませんけど?」


 メルちゃんの、寄せ眉な困り顔も可愛い――。


「えっと――50mより離れた所に魔族が居るのか、それとも気配を上手く消しているのか、または――クピィちゃんの勘違い?」


 分析してくれたレンちゃんに、クピィは性能が悪いと馬鹿にされたと感じたのか、ふわふわの毛を逆立てて怒っているようにも見える――。


「わかんないけど、先に進むしかないよね!」


 原因がはっきりしないままボクの誘導で慎重に進み、23階層への階段に到達。

 でも、そこはなんだか不思議な構造で――階段のある部屋にも、階段にも、水が全くない。時間もちょうどお昼時だったので、お昼ご飯を食べた後、みんなでごろごろお昼寝をした――。



<23階層>


「嫌な予感はしてたけど……これは……」


「泳ぐしかないっしょ!」


 レンちゃん、そんなに泳ぎたいの!?


 水位はおよそ1m、ちょうどボクのお腹くらいまであり、歩くには厳しい深さにまで達していた。

 とはいうものの、みんながヒラヒラ系統の服――まさか防具なしのシャツ1枚で進むわけにもいかないよね。


「ウンディちゃん、お願い!」


 アユナちゃんがウンディーネを召喚し、何やら難しい言葉で話し掛けている。ウンディーネは、ボクたちの周りを飛び跳ねた後、姿を消してしまった――。


「うわっ……う……浮いてる!」


 もしかして、《浮力強化》的な?

 まるで、布団の上を歩いているようなふんわりした感覚だけど、水の上を歩ける!

 忍者になったボクたち4人は、テンションも高めに水面を歩いて行く。




 ★☆★




「後方から気配が5つ! 魚の群れ? は、速いです!」


 メルちゃんの声で振り返ったボクは、水面に映る魚影に目を向ける。


鑑定魔法(リサーチ):キラーフィッシュ。群れで行動する凶悪な魚の魔物。魔力値38》


「キラーフィッシュ、魔力38だって! どうする?」


 こちらは水上、魔物は水中。相手にする必要はないよね?と期待を込めて「どうする?」と訊いたのに――キラーフィッシュ側は、水上を歩くボクたちを見逃してはくれなかった。


『シャァァ!』


「「わっ!」」


 50cmくらいの魚が、トビウオみたいに飛び掛かってきた!


 その歯はガッチガチだ!

 魚類というか、猛獣のそれ。久しぶりに恐怖心が湧き起こる!


 ボクたちは不意を()かれつつも、何とか避けることができた。アユナちゃんだけお尻を噛まれてたけど――。


「折り返して来ます!」


「カウンターで雷撃を撃つ!」


「ダメです! 私がやります!」


 あ、そうだった。雷禁止令が出ていたのを忘れてた――。


『シャァァ!』


「《鉄壁防御(ウォール)》!」


 ガツン! ガツン! ガツツン!!


 アリゲーターガーみたいな尖った口が4つ、ボクたちの目の前で凶悪な牙をガチガチさせている。キラーフィッシュは()()()が出っ張っているせいで、口だけがメルちゃんの壁を貫通したみたい。


「うわ、これはホラーだね」


「良い子は見ないように」


「うぅ……少し出ちゃったかも」


「魔法を解くと逃げられますので、すみませんが暫くはこのままにしますね」


 メルちゃんの鬼発言に、皆も頷くしかない。


 その後、真下から攻撃してくるエッチな外道もいたりして、心身ともに傷付けられたボクたちは最短ルートを辿りましたよ。

 それでも、宝箱を1つだけゲットしたのは執念か。


《水竜の盾。水竜の鱗から作られたと言われる楕円形の盾。火・水耐性+30%》


「火と水耐性がある水竜の盾! メルちゃん使ってね!」


「ありがとうございます。ボス戦で役に立ちそうですね!」


 メルちゃんが盾を装備しているイメージが湧かないけど、他の3人にはもっと湧かないから――。


 そして、ボクたちは24階層への階段に逃げ込んだ!



<24階層>


 もうこれはプールを超えている!


 水深は2m――泳ぐわけにもいかず、またまたウンディーネの力を借りて水上歩行することになった。ボクも泳げないけど、多分アユナちゃんの方が泳げないと思う!


 ジャンプしたら天井にも触れられるくらい窮屈な通路だったけど、お陰様で移動は早く済みそう。


 ところで、精霊魔法使いが居ないパーティは、どうやってこの階層を攻略するんだろう。普通に考えて無理だよね。もしかして、ボート持参推奨だった?


 魔物は主に5匹程度の群れで襲ってきた。

 幸いにもあまり強くはなく、戦闘自体は過酷ではなかったけど、ウンディーネちゃんの魔力がもう限界なんだって。


 残念ながら、この階層での宝箱は全て諦め、次の階段まで精一杯走りましたとさ――。



<25階層>


 階段を上り、25階層へ足を踏み入れたボクたちの目の前には、一面に広大な湖が広がっていた。


 青々と生い茂る木々に囲まれた湖は、神秘的な輝きに満ちている。

 透明感のある湖面は、こちら側とあちら側の2つの世界を芸術的なまでに美しく纏め上げ、表現している。


「とても透明感のある湖ですね」


「泳ぎたいっ!」


「まず、守護竜(フロアボス)をどうにかしてからね」


「じゃあ、やっつけたら泳ごうねっ!」


 アユナちゃんはどうしても泳ぎたいらしい。森育ちだから、生まれて初めての水泳というやつかな? 水泳なんて、水の中でもがいて遊ぶだけなのに、夢を見すぎだよ。


 それに、水着とか無いんだけど――まさか裸で? いや、まぁ、女の子4人しか居なくても、シャツくらいは着ないとね――。

 みなさん絶賛成長中ということで、大きめのシャツを買って良かったよ。良い感じに太股までカヴァーしてくれてる。逆にちょっとエッチな感じがしてしまうのは気のせいです――。


 妄想に火が付いたのか、モチベーションが上がってきた!


「よし! ドラゴンを早くやっつけて、みんなで泳ぐよ!!」




 ★☆★




「あの神殿にドラゴンが居るんですよね?」


 メルちゃんが指し示す先に見えるのは、水中にゆらゆらと映し出される神殿。深さは10mから30mくらいかな。透明な湖って、浅く見えるけど意外と深かったりするんだよね――。


「いくらあたしでも、あそこまでは(もぐ)れそうにないよ?」


「ウンディちゃんに送ってもらいたいところだけど、疲れて還っちゃったの――」


「私がまた箱を作りましょうか? でも、水圧が心配なので1人分の大きさになっちゃいますが」



 そういうことで、全員の視線を受けたボクは、ローブを脱いできちんと畳み、シャツと下着だけになった。


「リンネちゃん、セクシーポーズお願い!」


「はいはい、こっちに誘い出して戦うと思うから、心の準備しといてね!」


「「ひゃっ!」」




 ★☆★




 予想していた通り、光の屈折の関係で意外と浅く見えただけで、神殿は外から見たよりもずっと深い所あるみたい。

 本当は、どこか下の階層の宝箱に特殊魔法(オヨゲ~ル)っぽいアイテムがあったのかもしれないね。かつての大魔法使い――というか、エリ婆さんは、ランゲイル隊長が言ってたみたいに、湖の水を全て蒸発させて通ったのかな。


 青い箱(ウォール)は順調に下降していく。ボクが重いというんじゃなくて、メルちゃんが動かしてるんだよ。


 上手な遠隔操作で神殿の入口を(くぐ)り抜けると、内部は全く水がない普通の神殿だった。結界か何かで守られているのかもしれない。


 そして、床をペタペタと裸足で歩いて行くと、最奥の祭壇に辿り着く。


 そこには――蒼白く光を放つ、1人の美しい女性が居た。



『よくぞこ此処(ここ)まで来ましたね。私はアクアドラゴン、第25階層の守護竜です』


 あれ? 力を示せパターンじゃない?


「ボクは、銀の使者リンネです。最上階にある結界に行くために来ました」


『黒の召喚石ですね。確かに、魔王復活の兆しがあるとグラン様から聞いていました』


「もしかして、竜人族のグランさんですか!?」


 フロアボスのドラゴンと平和的な会話ができていること自体が不思議だったけど、その口から思わぬ名前が飛び出してきて、さらにびっくりだ!


『はい。30階層の黒龍はどうかわかりませんが、私は既に貴女の力を認めています。私が救えなかった精霊ロアを救っていただいたときにね。改めて感謝を! あの強大で、それでいて優しさに満ちた魔力――ここを通るに足る力です。階段は地上に設けますので、お仲間と共に上へ進んで下さい。勇者様に神の御加護がありますように!』


 そう言うや否や、アクアドラゴンは光と共に消えていった。

 いろいろと聞きたいことがあったのに――。


 守護竜がいう神が、この世界を創ったという邪神だったら、そんな御加護は絶対にいらない!と思いつつ、戦わずに済んだことを素直に喜ぶボク。

 できればドラゴンさんとは戦いたくないんだよね。だって、悪い存在だとは思えないんだもん。


 一応、水竜(アクアドラゴン)には認められたということだし、ここで泳いでも大丈夫だよね?


 よし、せっかくだから精一杯泳ぐぞっ!!

残る階層は26-30の5つだけ。

待ち受けるのは、黒竜らしいが――。

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