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異世界八険伝  作者: AW
第2章 新たな仲間たち
49/92

49.北の大迷宮Ⅱ

迷宮攻略初日、不安定ながらも何とか02階層を突破したリンネたち一行は、03階層への階段を上る。

 下草も土埃もない綺麗な階段を、トントンとリズムよく上っていく。

 途中、迷宮入口で見かけた転移装置らしきものがあったけど、華麗にスルーする。でも、ボクは知っている。皆が名残惜しそうにチラ見していたことを。勿論、自分を含めてだけどね。

 いくら辛くてもボクたちは30階層を目指さなきゃいけないんだ。仲間と一緒だと喜びは2倍、辛さは半分になるっていうし、この3人と一緒なら乗り越えられると信じてる!



<03階層>


 ここから本格的な迷宮が始まる。


 入り組んだ迷路は、森の中を歩くが如くに曲線と直線で造られている。MAPを改めて広げ、ざっくり確認する。


 正方形の左上(北西)がスタートで、右下(南東)がゴールかな。


 皆をぐるっと見回すと、リーダーのカッコイイ一声を今か今かと待ち望んでいるかのような視線とぶつかった。

 白系統の装備に統一された美少女が4人――はい、もう自分で美少女って言っちゃいます。今はそのくらいのハイテンションなの――これから挑むのは大陸屈指の大迷宮。ここでもう一度気合を入れ直すぞっ!


「チームピュアホワイト、これより本格的に迷宮攻略を開始する!」


 ボクは、周りに誰も居ないことを確認したうえで、少し調子に乗って言ってみた。


「もっと短くないと覚えられない!」と頭を抱えるアユナちゃんに続き、メルちゃんも「もっと真剣味のある名前を希望します」と否定的なご様子。レンちゃんに至っては「ゲーノージンは歯が命って聞くけど、誰でも歯は大事でしょ!」と見当違いの批判に走る始末――。


 即興とはいえ、全否定は想定外。


 その後、皆で自由に案を出し合ったんだけど、こういう時にスンナリ決まらないのが女の子。

 あーだこーだ言い争った挙句、自然な流れでジャンケンになる。駄々を()ねて泣きだす小学生が現れる。慈愛に満ち溢れたメルちゃん手製のあみだくじが作られる。

 その結果、やっとやっと白熱したチーム名決定戦に終止符が打たれた――。


「チームクピィ(仮)、これより迷宮攻略を開始する! メルちゃん、レンちゃん前衛宜しく。アユナちゃんは、クピィが魔族見つけたら教えてね! じゃあ行くよ! 皆、頑張ろう!」


「「「おぅ!!」」」



 まっすぐ伸びる通路を指差し、マッパーとしての責務を果たす。


「まず、300m直進、行き止まりを右に500mだよ!」


 時折聴こえてくる叫び声のする中、ボクたちは身を寄せ合って通路を前進していく。



 しばらく進むと、先頭を歩いていたメルちゃんの足が止まった。


「20m先に魔物の気配、見た目は……クマでしょうか?」


「クマ? あ、あれは……」


鑑定魔法(リサーチ):グリズリー(魔物化)。仲間すら襲う狂気の熊。爪と牙による攻撃には要注意。魔力値8》


 あっ、これはヤバイ奴だ。


「グリズリーだって! 魔力は低いけど、めちゃくちゃ強暴だから気――」


 ボクが「気をつけてね」と言い終わる前に、襲い掛かってきたクマは背を向けて走り去って行く。あぁ、バトルジャンキー――戦闘狂が2名いましたっけ。



「次、400m進んだら右側の袋小路から宝箱回収ね。元に戻って500m直進すると3分岐に出る。右側の道を2km道なりに進むよ! そしたら4分岐に出るから、まずはそこまで行こう!」


 説明はしてみたけど、誰もちゃんと理解できていないと思う。よく言えば、それだけボクが信頼されている証かな。そう前向きに考えながら、ボクたちはサクサク進んでいく。

 途中、例のグリズリーを4匹追い払い、宝箱からはポーションを入手した。


 本当は分岐を3km直進すると宝箱がもう1つあるけど、めんどいからパス。メインルートをひたすら突き進む!



「リンネさ……先輩、4分岐に出ました」


 メルちゃんが周囲を警戒しながら囁く。


 見渡すと、ボクたちが来た通路以外に大小3つの通路が見える。

 まっすぐ伸びるのが国道だとすると、左の丸いのは林道で、右の四角いのは県道かな。


「分岐を真っ直ぐ1kmくらい直進すると宝箱がある部屋に辿り着けるけど、どうする?」


「「「パスで!」」」


 さすがに最初の宝箱(ポーション)が心に堪えたのか、全員一致の回答。


「左に行くよ! 途中でまた4回分岐にぶつかるけど、まっすぐ4キロ進んだら階段だからね、頑張ろう!」


 元気を振り絞ったボクの掛け声も空しく、再びとぼとぼ歩き出す4人。

 情報によると、03階層の宝箱からは銀貨(1枚100リル=10万円)も出るらしいんだけど――守銭奴(ボンビー)と言われそうだから止めておこう。


 道中、出てきた魔物はこんな感じ。

 キラービー:魔力6~7

 ダークバット:魔力7~8

 グリズリー:魔力8~9

 アルミラージ:魔力9~10



 苦戦することもなく順調に進み、2時間後にはボクたちは04階層への階段へと到達した。

 現在ちょうどお昼くらい。朝8時に出発してから既に4時間が経過している。


「そろそろ休憩かな?」


 階段の壁に寄り掛かりながら、ため息混じりに呟くレンちゃん。

 (ぬる)すぎる彼女に、ボクは冷徹に言い放つ。


「いいえ。9時間進み3時間休憩、また9時間進んで3時間休憩。しばらくはこのパターンでいきましょう。皆さん、まだ4時間しか経ってないんですからね、あと5時間頑張ってください」


「「鬼!!」」


 アユナちゃんとレンちゃんの叫びが階段に木霊する。

 アハハ……続くボクの苦笑は、木霊に掻き消されて誰にも届かなかった。



<04階>


 ここは03階層と同じようだけど、スタートとゴールの位置が逆転した構造。迷路も少し複雑になっている。だけど、完璧な地図でメインルートを辿るだけ。道なりに8km、急げば2時間かな?


「入口から3km直進、分岐は……無し。行き止まりを右折して1kmくらい進むと5分岐に出る。まずはそこまで1時間で行こう!」


 相変わらず誰も聴いちゃいないけど、4人は重い足を引きずって歩を進める。



 道中、またまた冒険者パーティに遭遇した。


 ここ04階層まで上がってくるパーティは今では珍しいらしい。というのも、迷路が複雑なわりには得るものが少ないから――。



「お疲れ様です」


 鼓動を抑え、できるだけ平常心を装った表情で挨拶をする。


『あ、あぁ』


 すれ違いざま、リーダーらしき人が返事を返してきた。


 挨拶だけでお互いの警戒心、緊張感が解けるほどこの世界は気楽ではない。迷宮内では証拠を残さない完全犯罪が成り立つんだから、トラブルなんてあって当然。油断したら終わり。特に人が少なくなる階層では――。


『お嬢さん、あんたらだけでここまで上ってきたんか?』


 パーティは5人全員が男。

 20代っぽい風貌で、鉄製の厳つい装備が目に痛い。胡散臭さをそこはかとなく放ってるよ!


 ボクたちは目配せをせずとも、皆が武器に手を添えている。恐らく、あちらさんも同じ状況だと思う。


「はい、()()()()支部長の指示で()()()まで行くところです」


 メリンダさん、名前を借りますね?

 ギルドマスターのゴドルフィンさんにしようかと思ったけど、あの人は敵が多そうだし。


『メリンダさんの?』

『最上層だと?』


 男たちはしばらく団子状態で話し合った後、笑顔を向けて言い放つ。


『わかった。気をつけろよ』


「はい、ありがとうございます」


 何がわかったのかが全くわからないけど、何とか無事にやりすごせたみたい。

 うちのバトジャン2名が武器を鳴らしながら笑顔で威嚇していたのは、見なかったことにしよう――。



「うわぁ、道がいっぱいだね!」と、興奮気味にアユナちゃん。

「いち、にー、さん、し……本当に5分岐ですね」と、冷静に数えるメルちゃん。

「まさに初見殺し」と、渋い表情のレンちゃん。


 道中、魔力10前後の魔物を追い払いながら、予定通り1時間でここまで来た。


「左から2つ目がメインルートだよ。他はそれぞれ宝箱部屋に続いているけど、多分さっきの人たちが取ってると思う。だから無視して先に行くよ! 3km道なりに行くと階段があるから、他の分岐は無視して、1時間後には階段まで到着!」


 この大迷宮で少し理解できたことがある。

 それは、最も怖いのは他の冒険者だってこと。下層の魔物なんて、Bランクのボクたちからしたら全く危険がないもん。


 ボクのそんな緩い気持ちを察して正そうとしたのか、先頭のメルちゃんが急に立ち止まった。


「50m先に気配、1匹ですが――なんだか光っているように見えますね」


「ホントだ! オバケみたい」

「リンネちゃん!」


 なになになにっ?

 突然抱き付いてきたアユナちゃんを受け止め、前方に目を凝らす。


鑑定魔法(リサーチ):グリズリーキング(魔物化)。仲間すら襲う狂気の熊。爪と牙による攻撃には要注意。魔力値16》


「うわっ、これってレアモンスターなの? グリズリーキング、魔力値16だって!」

「一応確認ですが、倒しますか?」

「レアアイテムが出るかもよ?」


 ボクの興奮気味な声を聴き、前衛2人から同時に質問が飛んできた。


「ごめん、お願い」


 それだけで青赤コンビには伝わったみたい。

 あっという間に魔物の戦意を挫くと、逃げ出すクマを尻目に我先にと歩き出す。

 笑顔の2人だけど――もしかしたらライバル意識を抱いているのかも?


 ボクたちはその後しばらく歩き、05階層へと上がる階段に到着した。



<05階>


 ここは最初のフロアボスがいる階層だ。

 北の迷宮ボスは全部で6体。改めて情報を確認すると、こんな感じ。


 05階層……木属性

 10階層……火属性

 15階層……土属性

 20階層……金属性

 25階層……水属性

 30階層……不明


「木属性ということは、トレントかな?」


「アユナさん、ハズレです! 実は……ボクもさっきMAPを再確認して知ったんですが……ボスは全て竜種だそうです……」


「「ド……ドラゴン!?」」


 アユナちゃん、レンちゃんがわなわなしている。


「おや? メルさんは余裕そうですね」


「余裕ではありませんが、ドラゴンに対して恐怖や畏怖の感情は特にないですね」


 ボクたちはお昼ご飯のサンドイッチを食べながら作戦会議中だ。勿論、挟まれているのは竜種――いつぞやのチャイルドドラゴンのお肉。


 食べ終わる頃には作戦会議という名の団欒(リラックスタイム)は終わっていた。

 イメージするのは先日の魔人戦の連携。今回のフロアボスは木属性ということで、雷魔法と物理攻撃で攻めることになったのだ。



 階段を上り終わると、目前には高さ3mはあろうかという木製の巨大な扉が立ち塞がっている。


「センパイっ! 扉は押して下さいね!」


 アユナちゃんが絡んでくることは想定内。ボクだって何度も同じミスはしないからね。


 扉の構造を見る。

 取っ手や、引き戸用の穴らしき物は見えない。誰がどう見ても、押す以外に開けようがないね。


 全体重を掛け、両手を扉の裂け目に添えた途端、扉は触れただけでゆっくりと消えていった――。


 え~っ!

 なぜにアユナちゃんの口がへの字なのかわかんない。拍子抜けしたのはボクなのに。



 次第に05階層がその全貌を現していく――。



「完全に、森……ですね……」

「でもどうして迷宮内に森があるの?」

「迷宮の中なのか外なのか分からないよ!」


 ボクは何かデジャヴった。


 ランゲイル隊長に習ったことを言えば、会話の流れはコントロールできる。そしてボクは先輩から先生に進化できる!

 そう、これはチャンスだ! ボクは迷宮先生に、なる!!


「別に珍しくないよ。次元魔法とか空間魔法とか呼ばれてるやつですね。迷宮にはフロア一面が海というのもあるし。海底洞窟を進まないと攻略できないらしいですよ」


「なにそれ! 楽しみ!」

「私は泳ぐのは得意ですよ」

「あたしも得意! 水泳大好き!」

「ごめん、ボクは泳げない……」


 あれ? 何か変な流れだね。

 まぁ、いいや。


「かつての大魔法使いは、海を真っ二つに割ったり、業火で全ての海水を干上がらせたらしいですよ。噂ですが」


「そんな魔法、リンネちゃんにしか無理!」

「リンネさん、自然破壊しないでください」

「サンダースネークだっけ? あたし、今でも鼓膜がヒリヒリするんだから、もう使わないでよね?」


 ん?

 少しずつディスられてる?

 だが、押し通す!


「まぁ、噂なんてほとんど嘘だよ。ヒレが何枚も付いてくる。最近の巷での噂知ってる? 青や赤髪の女の子がモテないのは、すぐ男性のアソコを蹴るからだって――」


「メルちゃん、レンちゃん……汚い」

「噂の出所を突き止めてミンチ肉にします!」

「ミンチの前にあたしが細切れにする!」


 うわぁ、グロっ!

 今さらギャグです、なんて言えなくなっちゃったよ……わ、話題を変える!


「肉と言えば……ド……ドラゴンの肉のお味はどうでした?」


「お肉ぅ! また食べたい!」

「木属性だと、肉を焼く炭にしかならないですね」

「その炭とミンチ肉で、ハンバーグを作ろうよ!」


 はい、修復不可能なのですね……。


「よし! その怒りをパワーに変えて05階層を攻略しよう!」



 森の奥には神殿らしき建物の一部が見えていた。ボロブドゥール遺跡のような感じだ。静謐(せいひつ)な雰囲気を漂わせる森が、まるでその一部を譲るかのように、神殿に向けて道を伸ばしている。


 ボクたちは、その道の端を歩いて行く。神社の参道を歩くような気持ちだ。中央は神様が通るらしいからね――。


 30分ほど歩くと、開けた場所に出た。


 目の前には神殿の入口が口を開けている。近くで見ると、それは余りにも巨大。左右は500m以上あるのではないかという神殿の中へと、ボクたちは足を踏み入れて行く。



 それは目の前に居た。


 巨大な竜――全長は30mを遥かに超えるだろう。5m以上の高みからボクたちを見下ろす金色の眼、そして何より(いびつ)なのは、全身が木で造られていること。

 日本人の感覚だと、それはまさに巨大彫刻だ。大仏や雪まつりの彫刻をさらに巨大化した造形物、そこに強い生命が宿っているのを感じ――全身が、ブルブルっと震えた。


 恐る恐る試した《鑑定魔法(リサーチ)》は、案の定、効かなかった。

 有利な情報はない。これは、初見対初見のフェアーな戦い。そして、かつての英雄アルンパーティも通った道だ。


『ここを通らんとする小さき者たちよ、汝が力を我に示せ! 我が名は、木竜(ローズドラゴン)!!』


 重低音の声が響き渡る。神殿の壁に反響してオーケストラの演奏のような迫力だ。

 ボクだけじゃない、メルちゃんも、アユナちゃんも、レンちゃんも気圧(けお)されているのを感じる。


 それでも、戦わずに上に行く選択肢はない。

 だって、ここで力を示さなきゃ、認められなきゃいけない気がしたから。もっと言えば、それこそがボクたちに与えられた試練だと感じたんだ。



「みんな! 力を合わせて突破するよ! 先制で雷を頭に落とした後、頭部目掛けて雷を連発する!」

「この翼は――この竜、きっと飛べません! 私は足を潰します!」

「私は光魔法で視界を奪う!」

「尻尾の攻撃に注意だよ! あたしは背後から背中に飛び移り、首を狙う!」

『クピッピピィ!』


「フリージア王国、銀の使者リンネ、行きます!」


 ボクは禁術を解き放つ。

 といっても、さっきレンちゃんに禁止さればかりの。ただし、出力は総魔力量の2割。半径1mの雷をピンポイントで頭に当てる!


 魔力を練る!

 新しい杖――フェアリーワンドがボクの魔力を高めてくれる! 頼もしい!


「腰を砕け! 雷魔法中級奥義、《爆雷老婆(サンダーバーサン)》!!」


 魔法名なんて何でもいい。大切なのはイメージ!

 腰の曲がったうちの婆さんが四足歩行で怒り狂う――じゃなくて、半径1mの雷のヘビが地を這い、木竜(ローズドラゴン)の前脚をよじ登って顔に巻き付く!


 雷光! 雷音! そして、爆風!!


 空気が弾け、地響きが(とどろ)く!


『ぐぉおぉぉっ! み……見事な力!!』


 竜の断末魔(だんまつま)とも喝采(かっさい)とも聞こえる咆哮(ほうこう)の後、その全身が輝きを増す――そして、光は天に巻き上げられるように掻き消えた。



「あ……れ?」


 命を奪うつもりも、奪われるつもりも無かったのに――。


 でも、竜人グランさんたちのように、きっとこのドラゴンもボクたちを試し、力を授ける使命を帯びてここに居たんだよね。きっとそうだ。

 ボクたちは憎しみあって戦っているんじゃないんだから。それは皆もわかってくれているはず。


 3人がジト目で見てくる。


「えっと……さ、さすが勇者?」


 ボクはできるだけ可愛いポーズを決める……が、この人たちには効果がなかった。


「その魔法、あたし禁止したばかりよね? 今ね、耳鳴りがキーーンって、凄いんだけど!」

「また……私は役に立てないんだ……うぅぅ……」

「私は……この怒りを……何にぶつければ良いのでしょうか」


「まぁ、ドロップアイテムを拾ったら、少し寝ましょうか――寝ればストレスも吹き飛びますよ! まだ7時間しか経ってないけど、サービス、サービス!!」


《魔結晶/上級。魔力30以上の魔物の魔力結晶》

《ローズドラゴンの魂》



 そしてボクたちは、06階層への階段へと向かう。


 まだまだ先は長い。

 今日のノルマはあと3フロア、3時間休んだとしても10時間はある。この勢いで進んで行こう!

お読み頂きありがとうございます!

2019年2月5日、実母が急逝しました。あまりここでリアルを書くのは躊躇われますが、いろいろな意味を込めて書かせて頂きます。

正直、最初に連絡が入ったとき、意味が分からずに涙すら出てきませんでした。その後、母に対面したとき、そして火葬や葬儀のとき、今度は涙が止まらないほど号泣しました。

悲しくて泣いているのだろうと周りは思ったのでしょうが、私自身、涙の理由ははっきり自覚していました。『後悔』です。母に独り暮らしをさせていた後悔、旅行に連れて行く約束を果たせなかった後悔、感謝の気持ちを伝えられないことへの後悔……尽きる事のない後悔の念が溢れてきたんです。

今でも涙は溢れますが、もう涙を零さないと決めました。ガンを患い、糖尿病に苦しみ、何度も骨折を乗り越えながら女手一つで私たち兄弟を育ててくれた母、強く生きた母へ賛辞を送りたい。頑張ったねと、笑顔で拍手をして送ることに決めました。そう決めてからは、自然と母との想い出を口に出せるようにもなり、写真も見られるようになりました。その話はいつか落ち着いたときに別の形で書こうと思います。

まずはこの長編を頑張って書き終わらせないとね!

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